ロタウイルス

生ワクチン
経口ワクチン(口から飲むタイプ
任意接種 2011年7月、承認。

現在、ロタウイルス感染症を予防するワクチンとして、ロタリックス(GSK:1価ワクチン)ロタテック(MSD:5価ワクチン)の2種類がありまが、安全に接種するためには、接種時期(腸重積症が起こりにくい低い年齢で接種すること)を守ることが大切です。(初代のロタシールドは接種後の腸重積症の発症が増加したため発売中止になってしまいました )どちらも効果は変わらないようですからお好きな方をどうぞ。ちなみに、当院では、2回で済むロタリックスを採用しております。

種類 ロタリックス ロタテック
接種回数 画像の説明 画像の説明
接種回数 2回

4週間隔
3回

4週間隔
投与量 1.5ml 2.0ml
投与期間 生後6週~24週

初回は15週未満を推奨

ほかのワクチンとの同時接種を考えて、生後2か月からが最適です。遅くとも生後14週6日(生後3か月半過ぎ)までに1回目を受け、生後24週(168日)までに接種を完了します。生後24週以降は接種することができません。
生後6週~32週

ほかのワクチンとの同時接種を考えて、生後2か月からが最適です。遅くとも生後14週6日(生後3か月半過ぎ)までに1回目を受け、生後32週(224日)までに接種を完了します。生後32週以降は接種することができません。
特徴 一番流行して重症化しやすいG1P(8)のロタウイルスを弱毒化したワクチンです。交差免疫(タイプの似ているほかのウイルスにも防御反応を示す)によってほかの種類のロタウイルスにも有効であることがわかっています。 流行して重症化しやすいウイルスを含む5種類のロタウイルスを弱毒化したワクチンです。

 

WHO(世界保健機関)は2009年6月に、ロタウイルスワクチンを子供のワクチンの一つに指定し、すでに世界130か国以上で認可されました。入院を必要とするような重症のロタウイルス胃腸炎は、ワクチン接種によって大多数を防ぐことができると考えられています。2011年11月より日本でも接種が可能になり、2013年には全国平均接種率が45%に達しています。

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ワクチンの飲ませ方

ワクチンは、ロタウイルスの病原性を弱めてつくられた経口生ワクチンで、甘いシロップ状に仕上げてあります。ワクチンは、チューブ式の小さな容器に1回分が入っていて、それを赤ちゃんに飲ませて接種します。ワクチン接種後1週間程度はワクチンウイルスが便中に排泄される。これにより周りの人が胃腸炎を発症する可能性は低いが便を取り扱う際には手洗いを行うなどの注意が必要です。

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ロタリックス®の有効性

ヒトに感染するロタウイルスは、G1、G2、G3、G4、G9という5つの型で90%以上を占めます。ロタリックス®はG1に属するヒト由来株からつくられたワクチンですが、交叉免疫によって、2回の接種により前述の他の血清型に起因するロタウイルス胃腸炎に対しても8~9割以上の予防効果が示されています。ロタウイルス胃腸炎は初回感染時の症状が最も重く、2回目以降の感染は症状が軽くります。ロタウイルスワクチンはこの性質を応用し、ロタウイルス胃腸炎の重症化を予防することが目的のワクチンです。

 



毎年、流行するロタウイルス胃腸炎、実はその原因となるロタウイルスにはいくつもの型があって、年によって、流行する型が違うんです。また、違う型に何度もくりかえし感染することがありますので注意が必要です。

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アジアの主要先進地域で実施された重症ロタウイルス胃腸炎の発症およびロタウイルス胃腸炎による入院を検討した試験では、ロタリックス®接種後3歳まで、ロタウイルスによる嘔吐下痢症を防いだり、軽くしたりして、点滴や入院が必要になるほどの重症例を約90%減らします。

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アメリカにおけるロタウィルス流行の年次推移を表したグラフです。青点線グラフは2000年~2006年のロタウィルス患者率の中央値です。2006年にロタウィルスワクチン導入されました。2007年~2008年シーズン(黒点線)は、ロタウィルス患者率が減少しています。また、流行期間が短くなり、ピークも遅れる傾向がわかります。2012年には、世界120ヶ国以上でロタウィルスワクチンが導入されており、ロタウィルス胃腸炎総数を68~79%減らし、重症例を90%~98%減らし、入院を96%減らす事がわかっています。

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ロタウイルスは、レオウイルス科、ロタウイルス属に分類され、二重鎖RNA ゲノムを含む正二十面体タンパク質カプシドを有する直径約100nmの粒子である。下痢を起こした患児から1973年に発見され、電子顕微鏡で車輪のような形に見えることから、ロタ(rotaはラテン語の「車輪」の意味)と名付けられました。

 
 

 

「感染性胃腸炎」は定点報告対象(5類感染症)であり、わが国では感染症法に基づく感染症発生動向調査において、全国約3,000の小児科定点から週毎に保健所に報告される「感染性胃腸炎」には多種の病原体による胃腸炎が含まれており、ロタウイルス胃腸炎もそこに含まれます。

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感染性胃腸炎の流行曲線を描くと、ロタウイルスによる胃腸炎は、毎年冬から春にかけて流行がみられます。

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感染症発生動向調査に報告された感染性胃腸炎並びにロタウイルス胃腸炎の流行曲線


赤ちゃんは免疫力がまだ弱く、胃や腸も未発達なため、吐いたり、下痢したりすることはいろいろな原因で起こりますが、ほとんどの場合は、水分補給等の経過観察で軽快します。胃腸炎の原因ウィルスとして、最も有名かつ頻度も高いのはノロウィルス(年齢に関係なく罹かる)ですが、5歳未満の乳幼児に限って言えば、胃腸炎の原因として最も多いのはロタウィルスです。

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ロタウイルス感染性胃腸炎の主な感染経路はヒトとヒトとの間で起こる糞口感染と考えられています。吐瀉物やオムツ、汚染された衣類等の多量のウイルスが感染源となるため、インフルエンザとは違い、消毒用のアルコールにも強いので、次亜塩素酸消毒などで、しっかり消毒しなければ取り除けません。しかし、ロタウイルスは、環境中でも安定で、条件が合えば10日間ほど生きています。また、感染力が極めて高く、ウイルス粒子10~100個で感染が成立すると考えられています。たとえ衛生状態が改善されている先進国でもロタウイルスの感染予防はきわめて難しいと考えられています。

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口から侵入したロタウイルスは、小腸の腸管上皮細胞に感染し、腸からの水の吸収が阻害され主に乳幼児に急性胃腸炎を引き起こします。通常2日間の潜伏期間をおいて発症し、通常は、突然の嘔吐から始まり、発熱(1/3の小児が39度以上の発熱を認める)を伴い、24~48時間後に激しい米のとぎ汁のような水様性の下痢(血便、粘血便は伴わない)を繰り返すのが特徴的で、通常1~2週間で自然に治癒します。(ノロウイルスは2〜3日)

ロタウイルスは、新生児は、母体由来の免疫により不顕性感染に終わることが多く、4ヶ月ぐらいから初感染が成立します。ロタウイルスは遺伝子型が異なってもある程度の交差免疫が成立しますが、免疫は不完全で、乳幼児以降も再感染を繰り返しながら、感染を繰り返すごとに症状は軽くなっていきます。ロタウイルスに感染している子どもと接触した成人のうち30~50%が感染すると言われているが、不顕性感染に終わることが多いと考えられている。ウイルスの便中排出は、発症前から始まり、発症後1ヶ月以上持続するとされています。

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実はママも大変です

ロタウイルス胃腸炎にかかると、 赤ちゃんやまだ小さい子どもが 体力をうばわれてぐったり。 とても心配ですが、実はママも大変。 看病する家族にも大きな負担がかかります。 小さい子は「吐くよ」と伝えられないから・・・ それは突然やってきます。

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体験ママの声

38歳、フルタイム、3児のママ
保育園で流行し、きょうだい3人次々にうつりました。 全員治るまで、2週間以上かかり、有休が一気になくなりました。

30歳、パート、2児のママ
寝ているときに、いきなり仰向けで吐かれました・・・ 髪の毛も枕も布団もベトベト。とにかくシャワーへ直行。 夜中に風呂場で布団と格闘しながら、泣きそうになりました。

27歳、パート、2児のママ
冬場だと、カーペットとか、掛布団とか、洗いにくいものが被害に遭いやすいですよね・・・

34歳、フルタイム、2児のママ
ふつうにかかる病気のなかで、親としても一番いや。幼稚園で流行しているとドキドキする。できることなら休ませたい!

25歳、主婦、1児のママ
おっぱいもすぐに吐いてしまって、ぐったりして心配でした。 熱も出て、けいれんも起きたときは、怖くてパニックになりました。

31歳、主婦、2児のママ
離乳食を始めて順調だったのに、何も食べられなくなって、おかゆに逆戻り。もとのペースに戻るのに時間がかかりました。

28歳、主婦、1児のママ
水分をあげてもすぐ吐いてしまううえに、下痢も始まって、ぐったり。重い脱水症状になり、入院することに。 初めての入院で心配だし、子どもはぐずるし、大変でした。

 

感染性胃腸炎は、世界における死亡者の最も多い原因の一つであり、特にロタウイルスは乳幼児の重症急性胃腸炎の主要な原因病原体です。赤痢や腸チフスは、公衆衛生の改善により制御されましたが、ロタウイルスは環境中でも安定で、感染力が非常に強いためたとえ衛生状態が改善されている我が国や先進国でもその感染予防はきわめて難しく、事実、生後6カ月から2歳をピークに、5歳までに世界中のほぼすべての小児がロタウイルスに感染し、胃腸炎を発症すると言われています。日本においては、推計すると毎年120万人が発症し、ほとんどの症例は、軽症で4~7日で自然に治っていきますが、小さな赤ちゃん(ママからの免疫がなくなる3~6か月頃)が初めて感染したときは、激しい嘔吐下痢で脱水が進行し、8万人近くが入院しています。(8人に1人。乳幼児が胃腸炎で入院した場合、その約半数がロタウイルスによるものと言われています。)わが国におけるロタウイルス感染症による死亡者は、栄養不良の小児が少なく、医療機関や家庭での治療や患者管理がより適切に行われているため、稀ではありますが、それでもほぼ100%の子供が5歳になるまでに1度は感染するので、全感染者数は非常に多いため、、脳炎・脳症(痙攣や意識障害)が発症し、10〜20名の死亡例も報告されています。

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ロタウイルス胃腸炎は、水様性下痢や激しい嘔吐を頻回に繰り返すことで、重症の脱水をきたすことが多い。現在、ロタウイルス胃腸炎の治療は経口補液(ORS)や点滴など体液管理を中心とした対症療法しかありませんが、小腸絨毛細胞が破壊されているため、水の吸収がうまくいかないため、脱水の程度や臨床的重症度は他のウイルス性胃腸炎より重いことが多く、主に2歳以下の小児に重度の脱水症を認める。このほか、重度脱水症から生じる腎前性腎不全や高尿酸血症とそれに続く尿酸結石、腎後性腎不全やロタウイルスの脳炎・脳症の特徴としては、けいれんが難治性で、後遺症を残した症例が38%にのぼり予後不良であった。その他、消化管出血、急性膵炎など、多くの重篤な合併症を発症することがあります。
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ロタウイルスによる胃腸炎は、ほとんどは軽症で心配ありませんが、ほぼすべての乳幼児が罹るため、頻度は少ないのですが、一部で重症化し、脳炎・脳症の原因の第3位を占めています。ちなみに、HHV-6、7とは突発性発疹のウィルスです。ほとんどの小児が罹患し、高熱の割には、なにもなく元気に経過する疾患ですが、結構恐いんですね。

 

小児の急性脳炎・脳症の原因

 

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腸重積

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腸重積は、腸が腸の中に折り重なるように入り込み(小腸が大腸に入ることが多い)腸閉塞を起こします。原因はよくわかっていません。生後4ヶ月から2歳に多く発症し、ぐったりしたり(不機嫌)顔色が悪い、繰り返す嘔吐、お腹の張り、腫瘤の触知、いちごゼリー状の血便5~10分おきに突然激しく泣き叫んだり、何事もなかったような様子を繰り返したりします。ロタウイルス胃腸炎の予防ワクチンを摂取後(7日以内に発症することが多い)にこのような症状がみられた場合は、速やかに医師の診察を受けるようにしてください。確定診断は、腹部エコーで行います。米国の調査では腸重積の自然好発時期は、生後26~29週であることが示されています。腸重積の紛れ込みを防ぐために、自然発症のピーク時を避け、ロタウイルスワクチンは、生後8~14週の間に初回接種することを日本小児科学会は推奨しています。

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米国における乳幼児10万人あたりの腸重積発症数