まずは、見た目:appearanceで、こどもの調子の悪さを直感できるかです。目があって、ニコッとたり、舌圧子や聴診器に興味をしめしたり、手足を動かして遊ぶ様な仕草をしたら大丈夫です。しかし、反対にぐったりして、周囲に無関心でボ〜とした感じなら、要注意ということです。顔色が悪い、胸骨上での陥没呼吸、クループ様呼吸、手足のチアノーゼ(まだら皮膚)などがあったら、毛細血管再充満時間(CRT:capillary refil time)爪を白くなるまで圧迫して、解除後2秒以内に赤みがもどるかどうかやってみましょう。心臓より高い位置でやる方が正確に評価出来ると言われています。なんとなくおかしい違和感を感じたら、バイタルを測定して、小児科に紹介しましょう。
 
こどものバイタル
 

髄膜炎

脳を覆っている髄膜に炎症がおこる病態が「髄膜炎」です。髄膜炎は原因によっていくつかに分類されますが、細菌が原因である細菌(化膿)性髄膜炎と、主にウイルスが原因であるウイルス(無菌)性髄膜炎があります。 一般的な症状は熱、頭痛、吐き気、嘔吐等があり、場合によっては「けいれん」「意識障害」が認められます。 ウイルス性髄膜炎は細菌性と違ってやや軽いのですが、炎症が強いと脳がはれ、脳細胞を傷害して後遺症を残すこともあります。ウイルス性髄膜炎の原因ウイルスは、夏に多く、ムンプスウイルスとエンテロウイルスが有名です。

 
無菌性髄膜炎
 
一方で細菌性髄膜炎は、1年中いつでも発生します。元気な子どもでも、ふだんは鼻やのどにいる細菌が血液の中に入ることがあり、その菌が脳を包む髄膜について炎症を起こす病気です。そして最終的には脳そのものなどに病気を起こします。細菌性髄膜炎の原因菌は、ヒブ(ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型:Hib)と肺炎球菌です。
 
細菌性髄膜炎

髄膜炎の好発年齢はどうでしょうか。一番多い年齢は1歳未満です。生後5か月頃から急に増えます。また、3ヶ月以内の乳児で38.5℃以上の発熱がある場合は、要注意です。予防接種歴なども確認し、小児科医へのコンサルトが必要か考えましょう。

 

髄膜炎 年齢

髄膜炎

細菌性髄膜炎の原因となる主な菌は、ヒブ(1種類)と肺炎球菌(90種類ある中で病気を起こしやすい13種類)です。これらの菌は、ふだんは鼻やのどの奥にいて、普通は症状を出しません。保育所など小さな子どもが集団生活をする場では、ヒブや肺炎球菌の検査をすると、子どもたちの鼻などから良く見つかります。これは、そばにいる子どもや家族と、咳やくしゃみなどを通じて、菌の移し合いをしているからです。その結果、元気な子どもでもこれらの菌が血液の中に入り込むことがあり、脳を包む膜(髄膜)に入り込むと細菌性髄膜炎を引き起こします。集団保育の子どもは2~3倍かかりやすいと言われています。ヒブワクチン導入前の日本では、細菌性髄膜炎は毎年約1,000人がかかっていましたが、60%がヒブによるものでした。肺炎球菌は、2歳以下の子どもは免疫がほとんどなく、小児の肺炎球菌感染症は重症化することが多くなります。高齢者もかかりやすい病気です。細菌性髄膜炎や敗血症、重い肺炎や細菌性中耳炎などの病気を起こします。

 

初発症状は、発熱やおう吐(70%)などで、普通のかぜなどと区別がつきにくいのですが、発症後2日以内に、全身状態が急速に悪くなるのが特徴で、ぐったりして、顔色も不良で、これはやばい?と直感することが大事です。頭が痛くて大きな声で泣くこともできず、弱々しい泣き声でとにかく機嫌が悪いって感じです。その後、ぐったりする、けいれん、意識障害などが出てきます。髄膜炎の三徴は、発熱と項部硬直と意識障害です。(すべて揃うのは半分以下)診察では、大泉門の膨隆を認めます。必ずチェックしましょう。(1歳半で閉じていきます)

 治療は、抗生剤ですが、ヒブや肺炎球菌などの効かない菌(耐性菌)が増えているために、死亡や脳障害などの後遺症が残ってしまうことも多くあります。死亡する人がヒブでは約3~5%、肺炎球菌で約7~10% 脳の後遺症が30%くらいに残ります。また、後遺症が無いように見えても、中学生頃に軽度の知能低下が分かることもあります。
 
そのため、ワクチン接種による予防が大切です。病気が重いだけでなく早期診断が難しい上に、抗生物質(抗菌薬)が効かない菌も多いので、生後2か月になったらすぐに接種しましょう。
 

細菌性髄膜炎を予防するワクチンが導入される前の日本では、年間約1,000人の子どもが細菌性髄膜炎(昔は脳膜炎と言いました)にかかっていました。そのうち、ヒブによる髄膜炎に年間約600人、肺炎球菌による髄膜炎に約200人がかかり、2つの菌による髄膜炎で亡くなる子どもは50人近くにもなります。また、発症が10代後半に多い髄膜炎菌による髄膜炎もあります。

鹿児島県における小児細菌性髄膜炎の発生状況を調査したものです。(鹿児島県の小児細菌性髄膜炎サーベイランス)2008年からインフルエンザ菌によるもの、肺炎球菌による細菌性髄膜炎が急速に減少しています。これは、ヒブワクチンが2008年に任意接種(2013年から定期接種)となり、小児用肺炎球菌ワクチンは、2010年2月に任意接種(2013年から定期接種)で受けられるようになっています。(2013年11月からは従来の7価ワクチン(PCV7:7種類の肺炎球菌に予防効果がある)から13価ワクチン(PCV13:13種類の肺炎球菌に予防効果がある)に切り替わりました)ヒブ感染症が比較的多かった欧米では、ワクチン接種で、細菌性髄膜炎が99%減少しています。

鹿児島スタディ

 

熱性けいれん

画像の説明

38℃ 以上の高熱に伴って乳幼児期に生ずるけいれん(ひきつけ)で、脳炎や髄膜炎(約1割が伴う)や脳炎など中枢神経感染症、代謝異常(低血糖)や電解質異常、てんなんなど、その他明らかなけいれんの原因となる病気のないものをいう。小児科へ救急車で運ばれることが最も多い病気である。

 

病態は、はっきりわかっていませんが、もともと熱に弱い体質、脳の未熟性があるのではないか、遺伝性があるのではないかなどで、けいれんの閾値が下がっていると考えられています。

画像の説明

両親とも既往歴あり 40~80%発症
片親に既往歴あり  20~30%発症
両親とも既往歴なし 20%発症
兄弟に既往歴あり  50%以上

我が国では、有病率が高く、乳幼児の7〜8%ぐらいにみられる。平均年齢は、2歳3ヶ月だが、ほとんどは3歳までに起こります。(初発は3歳までが80%)男女比=2:1で、男児に多く、平均体温は、39℃前後、持続時間は10分以内が80%とほとんどです。

 
 



ひきつけを起こしてしまったら(家庭で)

画像の説明

(1)あわてない〜 あわてない〜 と言いたいところですが、みなさん、なかなか一休さんのようにはいきませんよね。とりあえずは、安全な処に運んで、衣服を緩めて、吐いたらいけないので顔を横向きにして寝せましょう。

(2)なにもする必要はありませんと言いたいところですが、することは2つ。ひとつは、時計を見て、ひきつけの持続時間を計ります。もうひとつは、どんなひきつけか?病院で説明出来るように良〜く観察しましょう。(左右差など、観察するポイントは後で説明します)

◎おばあちゃんの知恵袋にもちょっと注意。割りばしやスプーン(口腔内を傷つける)タオル(窒息の原因)などを口の中に詰め込まないようにしましょう。けいれんで舌を噛むことは稀と言われています。

(3)ひきつけが、5分以上続く時は(実際に、我が子がひきつけを起こしているのをじっと見ているのは大変です。1分でも5分以上に、5分と言えば、1時間にも感じます)救急車を呼びましょう。

(4)5分以内で止まるようなら、夜中に子供を連れてうろうろするよりは、そのまま眠らせてあげましょう。30分〜1時間ぐらい経ってから、呼びかけにきちんと反応するか(目があって、かかわりができるか)お母さん、お父さんがわかるか、普段どおりのしゃべり方をしているか 片手だけ動かさないようなことがなければ、まず大丈夫です。家で様子を見て、翌日、かかりつけ医を受診して下さい。


さて、けいれんの小児が外来に来たら

 既にけいれんが止まっているパターン

ほとんどのけいれん発作は、医院に着いた時には止まっています。熱が出ていて、けいれんを起こしている状況なので、まず、けいれん発作が単純型なのか複雑型なのかの鑑別が重要です。それを確かめるために、質問は2つ

(1)けいれんの持続時間が15分以内か?
「救急車が来た時には、けいれんはとまっていましたか」
(2)けいれん発作の様子は?
身振り手振りを交えて、けいれんの様子を再現しながら
「こんな感じのけいれんでしたか(左右対称の間代性けいれん)」



熱性けいれんのタイプの鑑別

  単純型けいれん 複合型けいれん
体温 38℃以上 38℃未満
発病年齢 6ヵ月~6才未満 6ヵ月以下、6才以上
発作の持続時間 15分以内 15分以上
けいれんの性状 強直間代性けいれん

全身性、左右対称性
部分的、左右非対称性

弛緩発作
1回のけいれんでのけいれん回数 1回のみ 2回以上
発作終了後の意識障害、片麻痺 なし あり
明らかな神経症状、発達障害 なし あり
てんかんの家族歴 なし あり
分娩外傷、その他の脳障害 なし あり

 

単純型の熱性けいれんは、良性の疾患です。すぐにけいれんも止まって、意識も戻っていれば、問診以上の検査は必要ないし、特別な治療もいらないとされています。しかし、初めてのけいれんの場合は、保護者が心配そうなら小児科医に紹介してあげると安心されます。



お母さんの質問に「うちの子供は熱性けいれんがあるんですけど、熱が出た時に、解熱剤使った方がいいですか?」と聞かれます。解熱剤を使っても使わなくても、color(,yellow){熱性けいれんの再発率に変わりない};と言われています。熱性けいれんのひきがねは、熱が急に上がることです。 解熱剤で一旦は熱を下げることができても、その効果(3~4時間持続)がなくなれば、再度発熱し、その時に再びけいれんが起こしてしまいます。 お母さんの不安が強いようなら「しんどそうだったら使ってもいいですよ」とお答えしています。

単純型熱性けいれんには、ダイアップの坐薬は、原則必要ないとされています。こういった良性のものに、予防的にダイアップ坐薬を使うと、医療機関を受診した時に、意識がボーとなって、臨床的な判断が難しくなってしまいます。

 

 まだ、けいれんが止まっていないパターン

もし、医院に着いてもけいれんが続いている場合は、持続時間から考えても明らかに複雑型です。僕ら医師でも、目の前で子供がけいれんが起こしていたら、気持ちがいいものではありません。お母さん、お父さんなら尚更でしょう。表面上は医療従事者として落ち着いて対応しなければなりませんが、ハラハラ、ドキドキです。けいれん発作中に、血管確保するのは、小児科医でも難しいので、当院では、無理せず、ジアゼパム坐剤(ダイアップ)を使います。すぐにそのまま姫路日赤小児科に紹介です

◎専門医は、即効性があり、ミタゾラム(ドルミカム)筋注、点鼻することもあるようですが、保険適応なし。

その他、紹介した方が良いかなと思われる状態として
(1)発作が繰り返し起こしている。(意識障害が続く)
(2)半身けいれん、あるいは部分優位性のある発作(部分発作)
(3)初回発作、特に1才未満の場合。
(4)発熱と発作に加え、麻痺など他の神経症状をともなうときなど



再発予防の適応

熱性けいれんの2/3は1回だけで終わりです。再発(2回)するのは約30%、3回起こすのは9%とされています。再発の時期は、初回発作から2年以内が90%。5歳までに2回目の発作を起こす確率は32%。

熱性けいれんが、再発しやすく、再発予防が勧められているのは、
(1)15分以上の発作があった場合。
(2)1才未満の発症(発症年齢が低い 特に6ヶ月前後)
(3)両親または片親の熱性けいれんの既往
いずれも熱性けいれんの再発率は50%に達する。
(4)短期間に発作が繰り返す場合(1日で2回以上、1年で4回以上など)
(5)けいれんが、片側性(部分性)のもの

37.5℃を超す発熱時にジアゼパム坐剤を保護者が速やかに投与する。初回投与後8時間経過してもなお発熱(38℃以上)が持続する時は、同量を追加投与してもよい。通常、2回投与で終了とする。

画像の説明

◎ジアゼパム坐剤に解熱剤を併用するときは、解熱剤を経口剤にするか、坐剤を用いる場合にはジアゼパム座剤投与後少なくとも30分以上間隔をあけることが望ましい。ジアゼパム坐剤に解熱剤坐剤を併用すると、ジアゼパムの初期の吸収が阻害される可能性がある。
◎実施期間は通常2年間、もしくは4~5才までを目標とする。
◎副作用として、しばしば一過性に軽度のふらつき、興奮、嗜眠(眠り込む)などがみられるが、呼吸抑制のような重大な副作用はない。
◎発熱時応急投与によって、再発率は約1/3に低下する。保護者が家庭や外出先で再発予防に自らができる、あるいは緊急時にも保護者は安心感を得ることができる。


抗けいれん剤の持続投与の適応

低熱性(37℃台)発作を繰り返し起こし、発熱に気づかず、ジアゼパム投与のタイミングを失する可能性がある場合や、発熱時ジアゼパム応急投与に拘わらず、遷延性発作を生じた場合などは、発作再発の予防法として、抗けいれん剤(バルプロ酸ナトリウムなど)の持続投与が望ましいと思われるが、(後年の無熱性発作(てんかん)の出現に対する予防効果は認められない)
副作用(フェノバルビタールでは嗜眠、注意力散漫、多動など。バルプロ酸ナトリウムでは血小板減少、とくに乳児では肝機能障害、高アンモニア血症、ライ様症候)もあり、小児科医に任せています。



てんかん発作との関連

大部分の熱性けんれいは、小学校入学までに治りますが、7%程度がてんかんに移行すると云われています。複雑型熱性けいれんが、みんな、てんかんになるわけではありませんが、てんかんを持っている場合は、ほとんどのてんかんの子供が、複雑性の熱性けいれんを起こしていることが多いので、複雑性の熱性けいれんを起こす中にてんかんの子供が紛れ込んでいるので注意が必要という訳です。つまり、てんかんに移行する可能性があるものは複合型熱性けいれん、そうでないものは単純型熱性けいれんと呼ばれているとも言えるわけで、その後の転帰を予想したり、再発予防のための抗けいれん薬の長期投薬の目安となっていました。

てんかん発症の可能性が高くなる因子(複雑型熱性けいれん)があるときは、脳波などの検査を行った上で慎重な経過観察を要します。

(1)熱性けいれん発症前の明らかな神経学的異常(脳性マヒ、精神遅滞)発達遅滞
(2)部分発作
(3)発作の持続が15分以上
(4)24時間以内のけいれん発作の繰り返し
(5)発作後の麻痺
(6)両親、同胞におけるてんかんの家族歴

7才までにてんかんを発症する確率は、上記の因子が無い場合は1%、1因子のみ陽性の場合は2%、2~3因子陽性の場合は10%である。

予防接種については、初回の熱性けいれんは、3ヶ月ぐらい間を空けて行っていますが、複数回、熱性けいれんを起こしていれば、1ヶ月後でも施行しています。
ウイルス性腸炎に伴う無熱性けいれん

数分以内の短い全身性強直性けいれんを繰り返す。けいれんが群発(数時間から数日)するが、重積はしない。けいれんの合間は、ケロッとして比較的元気。3歳未満までの多く認められ、特にロタ(2〜5%)やノロ(8%程度)に多い。ジアゼパムは無効(治療にはカルバマゼピン)コンサルト前に血糖のチェックをしましょう。

 

川崎病

川崎病は、世界でも”Kawasaki disease”と呼ばれ、病名に日本人の名前がついています。川崎富作先生(日赤中央病院 小児科)が、1967年に「急性熱性皮膚粘膜りんぱ腺症候群」として発表された疾患です。この病気は世界各地で報告されていますが、特に日本人、日系アメリカ人、韓国人などアジア系の人々に多くみられます。原因は不明で、全身の中小の血管に炎症が生じるのではないかと考えられています。


川崎病(MCLS、小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群)診断の手引き

厚生労働省川崎病研究班 2002年改訂版

本症は、主として 4 歳以下の乳幼児に好発する原因不明の疾患で、その症候は以下の主要症状と参考条項 とに分けられる。
A 主要症状
(1)5日以上続く発熱(ただし、治療により 5日未満で解熱した場合も含む)
(2)両側眼球結膜の充血
(3)口唇、口腔所見:口唇の紅潮、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤 (4)不定形発疹
(5)四肢末端の変化:(急性期)手足の硬性浮腫、掌蹠ないしは指趾先端の紅斑
(回復期)指先からの膜様落屑
(6)急性期における非化膿性頸部リンパ節腫脹

6つの主要症状のうち5つ以上の症状を伴うものを本症とする。 ただし、上記6主要症状のうち、4つの症状しか認められなくても、経過中に断層心エコー法もしくは、 心血管造影法で、冠動脈瘤(いわゆる拡大を含む)が確認され、他の疾患が除外されれば本症とする。

B 参考条項は省きます。家庭医のレベルでは、高熱が続いている小児を診た時に、ちょっと頭に浮かべられれば、OKと思います。(清書を参考にして下さい)

 

画像の説明

両目が真っ赤になっているが(眼球結膜充血)目やにはないのが特徴です。

 
 
画像の説明

口唇が紅をさしたように赤くなったり出血したり、口の中は粘膜が真っ赤に充血しますが、水ぶくれや潰瘍、偽膜などはありません。苺舌もみられます。

 
 
画像の説明

首のリンパ節鶏卵大に腫大し、痛みを伴います。

 
 
画像の説明

全身に、多型紅斑様の不定型の紅斑を認めます。はしかや風疹とは明らかに異なる発疹ですが、典型例でない場合は、似る場合もあります。

 
 
画像の説明

急性期には、手掌や足の裏が真っ赤になってしもやけのように腫れますが、熱が下がって回復期には、指先(爪と皮膚との間)から皮がむけてきます。(膜様落屑

 
 
画像の説明

主要症状のほかに、BCG接種部位が赤くなっています。

 
 



これらの写真は、日本川崎病学会のHPから拝借したので、正真正銘の川崎病の典型例です。これを参考に診断しております。

画像の説明

日ごろ元気だった小児が、急に38度以上の熱が5日以上続き、ぐったりしてして重症感があれば、川崎病も急性熱症の鑑別診断に入ってくるわけですが、これらの特徴的な症状は同時に出るわけではありません。それぞれの症状の程度もかなり個人差があり、診断のむずかしいことが少なくありません。また、全身の血管炎のため、関節の痛み、下痢、腹部膨満などその他のいろいろな症状が出ることもあります。血液検査では、白血球・CRP(炎症反応)・肝細胞逸脱酵素が上昇し、ナトリウム、アルブミンが低下し、回復期に血小板が上昇します。

 



川崎病は、急性熱性疾患(急性期)と冠動脈障害(心疾患)を主とした回復期(後遺症)があります。急性期はふつう1~2週間で、自然に回復しますが、症状の強い場合は1ヶ月以上続くこともあり、ごく稀に敗血症、心筋炎等で、亡くなることもあります。川崎病は全身の血管に炎症を起こす病気なので、もっとも問題となるのは、心臓の筋肉に酸素や栄養を送る冠状動脈という血管に瘤ができる(後遺症)場合があることです。

画像の説明

急性期の症状とともに冠動脈に血管炎がおこっています。ほとんどの症例は、そのまま炎症がおさまって事なきを得るのですが、急性期の炎症が強かったり発熱が10日以上続いたりすると、冠動脈瘤ができやすくなります。全患者の約10%前後の小児に冠状動脈瘤が起こりますが、軽度の拡張(通常3mm以下)は、数か月〜数年で、瘤がなくなって正常な冠動脈の太さに戻る場合もよく観察されます。1982年から免疫グロブリン大量療法が行われるようになり、急性期の冠動脈瘤は減りましたが、早期に免疫グロブリン製剤を投与しても効果がなく、巨大瘤(冠動脈径8mm以上)ができてしまう症例もあります。

巨大瘤(冠動脈の起始部や左冠動脈の左前下行枝と左回旋枝の分かれ目のところができやすい)は、血管壁の肥厚は強くなって血管内腔が狭窄し、川崎病の発症から1年半以内に血栓ができてしまうと、小児が心筋梗塞を起こし最悪死亡するケースもあります。

 

川崎病にかかった子どもが将来どのような経過をたどるかは、全くわかってはいません。特に、冠状動脈に後遺症が残ってしまった子どもは定期的な検査を受けることが大切です。狭窄が出てくる時期は、いろいろで10年を経過してから出てくる場合が多いです。巨大瘤では発症後10年で約60%、15年で約70%の患者さんに冠動脈に狭窄や閉塞が見つかっています。

画像の説明

全国調査では、毎年6,000人ぐらいの小児がかかっており(1982年と1986年の流行を除く)1990年代からしだいに増える傾向にあり、最近は10000人を超えてます。1歳をピークとして、主に4歳以下の乳幼児がかかり、男子が女子の約1.5倍です。再発することも2~3%あります。冠動脈に大きな瘤(冠動脈径8ミリ以上)ができる患者が毎年約0.5%(200人に1人)います。川崎病による死亡率は、最近では約0.05%、2,000人に1人となっています。

 

クループ症候群

喉頭およびその周辺の炎症性浮腫によって起こる上気道(声門下)の狭窄、閉塞によって吸気性喘鳴、犬吠様咳そう(ケンケンという)さ声、咳き込んで寝られないなどを主訴とし、重症化すると呼吸困難、チアノーゼが見られる。好発年齢は6ヶ月〜5歳で1〜2歳にピーク、冬に多い。原因ウイルスは、パラインフルエンザが重要だが、インフルエンザ、RS、アデノなどの感染でも起こる。夜間に突然発症、悪化することが多い。安静時の吸気性の喘鳴と陥没呼吸を確認しましょう。以前は、ジフテリアによるものを真性クループと呼び、それ以外を仮性クループとしていたが、三種混合ワクチンの接種からジフテリアによるクループが皆無となり、現在は、クループ症候群としている。

声門下

クループでは声門の下が腫れて気管が狭くなるので、気管が刺激されて、激しい犬吠様咳がでます。嚥下痛や因疼痛はあまり訴えません。一方、急性喉頭蓋炎は、喉頭が腫れるので、嚥下痛のため飲み込みができなくなり、よだれが出るのが特徴です。咳はあまり出ません。

 

クループ症候群は、一般的に夜に症状が悪化します。治療は,ボスミン吸入と全身性ステロイド(通常はデキサメタゾンの注射)です。軽症で安静時にstridorない場合は、デキサメサゾン(デカドロンエリキシル0.15mg/kg:およそ1ml/kg) 投与して、再診する必要のある症状(中等度の所見)を指導して帰宅させて構いません。中等度(安静時のstridorがあり、陥没呼吸ある)の場合は、デキサメサゾン(デカドロンエリキシル0.15mg/kg:およそ1ml/kg) 内服に加え、ボスミン(エピネフリン0.1%:0.2ml+生食ml)の吸入を行い、1時間程度は経過観察し、反応が悪ければ、小児科医に転送します。

クループ症候群

ボスミン吸入の効果は吸入後すぐに現れ、3-4時間は持続します。一方ステロイドは注射で使用しても効果が現れるまで4時間程度かかりますが、24時間以上持続します。クループ症候群はほとんどがウイルス疾患のため自然軽快しますが、注意が必要なのは「ボスミン吸入後のリバウンド」があることです。前述の通りボスミン吸入の効果は3-4時間で切れてしまい、その際治療前よりも症状が悪化する場合があるので、またすぐに救急受診するようにしてもらえばよいのですが、自宅が病院から遠く離れているときは、入院で経過観察した方がいいかもしれません。

 

 

突発性発疹

大多数の赤ちゃんが最初に罹患するウイルス感染症です。原因はヒトヘルペスウイルス6・7(HHV-6、HHV-7)です。HHV-6、HHV-7は一度罹患すると終生体内に潜伏して、ウイルスの再活性化による発疹、DIHS(薬剤惹起過敏性症候群)などと関係していることがわかっています。また、唾液や母乳等に分泌され、母親からの移行抗体(受動免疫)が枯渇する10ヶ月前後に母親もしくは家族から感染、発病します。(突発性発疹の患児から感染するわけではありません)HHV-6の感染では、突然の高熱(38~40℃)が、3日間程度発熱が続き、解熱すると同時に発疹(丘疹様・紅斑様・斑状丘疹様)が、顔から体幹さらには四肢等に広がってゆき、3~4日で消失します。多くは元気で合併症無く治癒しますが、10%に熱性けいれんや脳炎・脳症(HHV-6が脳のグリア細胞に親和性を持っている)などを合併することもあります。HHV-7の感染は、HHV-6より遅れて1~4歳のことが多く、突発性発疹の経過をとります。したがって2度突発性発疹に罹患ということは不思議なことではありません。

 

急性細気管支炎(RSウイルス感染症 )

RSウイルス(RS:Respiratory Syncytial 呼吸器合胞体)によるものが70〜80%を占めています。乳児(1歳未満の赤ちゃん)が感染すると鼻汁や鼻閉塞から哺乳欲低下と多呼吸を呈します。分泌物が増えてくると呼吸が止まる(無呼吸発作)ことがあり、注意が必要です。特に6ヶ月未満の乳児、早期産児、慢性肺疾患、先天性心疾患、免疫不全を有する子どもでは、細気管支炎や肺炎など重症化する恐れがあります。また、2歳以上の子どもや大人が感染しても風邪のような軽症であり、RSウイルス感染症とは気が付かずに乳児にうつしてしまうことが問題となるウイルスです。

RSウイルス感染症は、感染症法での5類の小児科定点把握疾患で、通常秋から増加し12月頃にピーク、年明けは徐々に減少し3月ころに落ち着くという流行パターンを呈します。インフルエンザは流行る年と流行らない年があるが、RSウイルスは毎年必ず流行します。

画像の説明

母胎からの移行抗体は、残念ながらRSウイルス感染を防ぐことはできず、新生児を含め乳児早期に容易に感染します。そして生後2歳までにほとんどのお子さんがかかるといわれています。症状は、軽い風邪のような症状から重い肺炎までさまざまですが、初めて感染した場合は重くなりやすく、乳児期早期(生後数週間~数カ月間)にRSウイルスに初感染した場合は、細気管支炎、肺炎といった重篤な症状を引き起こし、呼吸困難等のために0.5〜2%で入院が必要となります。全乳児の2/3が初めての冬に罹患し、その内1/3が下気道に進展します。(乳児は下気道に進展しやすい)また、赤ちゃんが未熟児であったり、心臓疾患を持っているような場合には、しばしば重症化するので特に注意が必要です。生涯にわたって何度も感染し、幼児期に再感染がよく見られますが、2歳を過ぎた子どもや大人が感染しても、多くはかぜ症候群として軽症で済むため、RSウイルスだとわからないので、予防のためには、自分自身や年長児の兄弟姉妹が風邪のような症状の時には、乳児にはなるべく近づかないようにしましょう。しかし、実際は症状が現れる前にも、周囲の人たちを感染させる力がありますし、症状が消えてからも、1〜3週間は周囲の人たちを感染させる力があるので、感染が広がりをくいとめるのは至難の業なのです。

画像の説明

RSウイルスによる気道の感染症の潜伏期は5日程度です。感染経路は、飛沫感染、接触感染が主です。 まず、鼻水から始まります。そして38〜39度の発熱と咳が続きます。7割の乳幼児は通常のかぜのような症状で8〜15日で軽快します。残りの3割は、呼吸が浅くなる、ゼーゼーする、痰がつまる、呼吸数が増える(1分間に60回)眠れないなどの症状が現れ、場合によっては細気管支炎・肺炎となります。さらに生後1ヶ月未満児が初めてかかった場合は、無呼吸発作から突然死をおこすこともあります。RSウイルスによる気道の感染症のために入院を要するこどもの大部分は、6か月以下の赤ちゃんです。

診断は、患者の鼻水などからRSウイルスを30分ほどで検出する簡易キットがあります。保険適用は、1歳未満の子どもと入院中、あるいは入院が必要と判断された患者、パリビズマブ製剤の適用となる患者です。それ以外の方は自費での検査となります。

RSウイルス感染症の治療法に特効薬はありません。対症療法が重要になります。咳や発熱などの辛さを和らげてあげましょう。 水分補給も重要となります。また、タバコの煙を吸うことは、RSウイルスによる気道の感染症の危険因子の一つと考えられています。こどものRSウイルスによる気道の感染症を防ぐためには、こどもの受動喫煙を防ぐことも大切です。

 

画像の説明


シナジス(パリビズマブ)

RSウイルスに対するモノクローナル抗体「シナジス」は、乳児がRSウイルスの感染を受けても重症化しにくくします。予防接種ではありません。ウイルスの流行する9~10月頃から3~5月ころまでの間、毎月1回筋肉注射します。このお薬は、 生物由来製品 (マウスの成分、ウシの血液由来成分、羊毛由来成分)で、原料の汚染による感染のリスクはゼロではありませんが、副作用はほとんどありません。保険適応の適応は、当初は早産児や気管支肺異形成症などの疾患に限られていましたが、2005年から重症の先天性心疾患や免疫不全、ダウン症などにも認められるようになりました。とても高価なお薬(1回につき約80,000円~320,000円かかります。体重によって金額が異なります)で、健康保険の適応や乳幼児医療などの公的負担制度を併用すると負担金は大幅に減るものと思われますが、投与を希望される方は、小児科を標榜している医療機関にご相談ください。(当院では取り扱っておりません)

乳児は、主に鼻呼吸をしているため、鼻汁を吸ってあげるだけで呼吸状態がよくなることが知られています。家庭での鼻汁吸引の指導が大変有効です。

 




画像の説明