むくみ

「むくみ」は、医学用語では「浮腫(ふしゅ)」と言います。むくみ=病気ではありません。多くは身体の中の水分の分布が変化した状態なんです。高齢になって足腰が弱って、車椅子に乗っていると足ってむくんであたりまえです。患者さんは、むくんでいるからなんとかしてほしいといいますが、別に身体は元気でごはんもおいしいんです。夕方にちょっとむくんで朝には少しましになっているぐらいがちょうどいいんです。へたに利尿剤を飲んで、見た目はむくみがとれたとしても、脱水状態になったらなにをしているかわからなくなりますね。とくに女性はむくみに対して敏感ですよね。

 

むくみについてのアンケート調査

厚労省が行った国民生活基礎調査の結果では女性の47%が足に”むくみやだるさ”を感じています。女性にむくみが多い理由としては、男性に比べ筋肉があまり発達していないこと、運動する習慣や機会が少ないこと、女性ホルモンによること、高いヒールの靴やボディースーツを着用したりするなどが挙げられます。

むくみ

ここで注意が必要ですが、足のむくみやだるさとあります。つまり医学的な浮腫だけでなく、だるさという抽象的な自覚症状も入っています。一言にむくみと言っても、一般のアンケートでは、様々な症状がむくみというくくりで表現されていました。

むくみ

むくみ

むくみ

週に半分以上、夕方以降にむくみを自覚されているようです。

むくみの原因としては、長時間が立っていること、座っていること、運動不足など身体を動かさずに長時間いることがダメだと考えているようです。また太っている、水分のとりすぎ、睡眠不足なども回答も多いようです。

むくみの原因

足がむくんでしまったときに、むくみを解消するために行うことで多かったのは、自分でマッサージ、ツボ押しをする、お風呂、足湯、足を挙げて寝る、ストレッチ、体操などでした。その効果としては、お風呂、足湯、マッサージでの満足度が高い結果でした。一方で、むくみを病的なものととらえている人は7.9%で、むくみのために病院を受診した人は13.2%しかありませんでした。

むくみ

 

むくみのメカニズム

人間の身体の60%は水分でできていて、そのうち細胞の中に3分の2、細胞の外に3分の1(血液と細胞間質液)の割合で分布しています。

むくみ

動脈は、酸素と栄養を乗せて運ぶ血液を心臓から全身にポンプで送り出しています。静脈は、末梢に行き渡った血液が炭酸ガスや老廃物を回収して心臓へ戻ります。成人の血液はおよそ5L(体重の8%)動脈に900ml、静脈に3600ml分布しています。

血液量

 

毛細血管は、動脈と静脈をつなぐ網の目のような細い血管でここでむくみがおこります。

動静脈

 

血液が流れる毛細血管の壁には微小な穴があり、細胞間質液には毛細血管からしみ出した酸素や栄養素を細胞に届け、細胞の代謝によってできる二酸化炭素や老廃物を毛細血管に戻すはたらきがあります。むくみは何らかの原因によって、毛細血管からしみ出す水分量が増える、または細胞間質液から血管に戻す量が減り、細胞間質液が多くなることで起こるものです。

むくみ

足のすねの上を押すとひっこんだまま戻らない。

浮腫

 

エコーで見ると皮下脂肪の隙間に水(組織間液)が溜まっています。

浮腫 エコー

 

 

むくみはなぜ起こるのか?

原因である体内水分の分布のコントロールには、①血管内の静水圧(血管内の水分量)②血管内の浸透圧③血管の透過性があげられます。

(1)血管内の静水圧の上昇
むくみは血管内の水分が多くなりすぎたとき、もしくは静脈がどこかでせき止められ、静脈血圧(血液が流れる圧力)が上昇し、血管からしみ出す水分量が増えることで起こります。水分や塩分(摂取すると水分を多く取り込む性質があるナトリウムとなって体内へ運ばれる)を摂りすぎたときにむくむのは血管内の水分量が多くなり、静水圧が上昇するためです。
・心不全(心臓が血液をうまく巡回させられない)
・腎不全(腎臓がうまく水分を尿として排泄できない)
・下肢静脈瘤(下肢の静脈に水分が貯まりやすくなる)
・深部静脈血栓症(静脈の中に血栓ができる)や、子宮筋腫(腹腔内の腫瘍)で、血栓や腫瘍により血管が圧迫されたときなど

(2)浸透圧の低下
血液内の栄養が少なくなると血管内に水分を保つための力(浸透圧)が低下するので、水分を血管内に保っておくことが難しくなることがあります。そのため、血管の外に水分や塩分が増え、身体がむくみます。
・栄養失調(消化管の病気で血管に水分の吸収ができない)
・ネフローゼ症候群(腎臓からアルブミンが漏れてしまう)
・肝硬変(肝臓でアルブミンの生産が低下している)など

(3)血管透過性が高くなる
血管透過性とは、血管と血管外の物質の出入りのことです。何らかの疾患で、血管自体が血液を保っておくことが難しくなり、水分が血管外に出てしまいむくむことがあります。
・膠原病(リウマチ関連疾患)
・内分泌疾患(主に甲状腺疾患)など

浮腫

むくみやすい体質とライフスタイル

(1)太った人はむくみやすい。呼吸が浅くなるので心臓が静脈血を引き上げる力が弱くなり、足に静脈血が貯まってしまうのです。

(2)女性はむくみやすい。女性ホルモンによって血管が拡がり、尿量が減少することで体内に水分をためこもうとするからです。また皮下脂肪が多く、皮膚も柔らかいため皮下組織の圧が低くなり、水分を静脈に戻しにくくなっています。女性でもアスリートには当てはまりませんが、男性に比べ筋肉量が少ないため、足の筋肉の収縮による筋ポンプ作用の働きが弱いことが大きな原因となっています。

(3)高齢者はむくみやすい。運動能力の低下により歩くことも少なくなり筋肉量が低下する、肌の張りがなくなって皮膚組織圧が低下することで水分を静脈に押し戻す力が小さくなります。加齢によって心臓や腎臓などの機能が低下してきていることもあります。

(4)立ち仕事、座り仕事はむくみやすい。調理師、看護師、店員、理容師やパソコンなどで長時間座って仕事をしている人などが足のむくみに悩んでいます。重力で足の血液がうっ滞して、足を動かさないと筋ポンプ作用も働かないためです。

(5)運動不足の人はむくみやすい。運動不足が筋肉それ自体を弱くし、下肢の筋ポンプ作用が十分に働かないことがあります。

(6)ダイエットのしすぎの人はむくみやすい。足の筋肉量も減少してしまうと足のポンプ機能の低下に繋がり、低栄養は低蛋白血症をきたし、ビタミンB1欠乏も全身のむくみを生じます。極端なダイエットは控えましょう。

(7)塩分、アルコールの摂りすぎはむくみやすい。身体の水分のうち2/3は細胞外にあり、間質液(むくみ)の量はナトリウムによって調節されています。塩分をたくさん摂れば、その7倍の水がくっついてきます。アルコールを飲むと抗利尿ホルモンが抑制されるために尿がたくさん出て脱水になって、口渇から水分をたくさん飲みます。同時に血管透過性が亢進し血管外に水が出てきてむくみを助長し、血管内脱水になってまた水分をのむという悪循環になっているわけです。

むくみの予防と解消法

(1)足の挙上

重力で足がむくむわけですから、物理的に足を挙上すれば足のむくみはとれます。

足の挙上

(2)空中自転車こぎ

寝て足を挙げて自転車をこぐ要領で足をぐるぐる回してもらいます。10分ほどで効果てきめんです。

空中自転車こぎ

(3)足首運動

長時間座って仕事をする人などは、20分毎に10回程度足首を曲げたり伸ばしたりする運動をすると足のむくみを予防できます。

足首運動

(4)ふくろはぎのマッサージ

マッサージ

足首から膝にかけてふくろはぎの筋肉をしっかりともみ上げるマッサージは足に筋ポンプ作用と同じ働きで静脈の流れを促進するのでむくみの予防になります。

(5)ウオーキング、ジョギングなどの運動

ジョギング

筋肉をつけると筋ポンプ作用が増強され、むくみにくい身体を手に入れることが出来ます。

(6)弾性ストッキング

弾性ストッキング

弾性ストッキングは、圧力のあるストッキングで足を圧迫してむくみを予防します。弾性ストッキングは筋ポンプ作用を強くしたり、血管からの血液のしみだしを少なくする効果があります。朝、足がむくんでない状態でしわにならないように装着履くのが効果的です。いろいろなタイプがありますが、ハイソックスタイプで十分です。圧力もむくみの程度によって10〜25mmHgのものを使用するといいでしょう。

こんなときは病気がかくれているかも

比較的急速に(数時間〜数日)むくみが出現した場合などは、アレルギー的なもの急性の心不全、腎不全などの可能性もあり、できるだけ早く病院で精査を受けた方がいいでしょう。

疲れやすい、脈がとてもゆっくり(もしくはとても速い)暑がりで汗をかくようになった(もしくは寒がりになった)急に体重が減った場合(甲状腺疾患)関節の痛みをともなう(リウマチ関連疾患)場合や下肢静脈瘤や発赤、腫脹など、肝臓がわるいと言われているなどがあり、むくみに加えて突然身体が変調をきたした場合は病院を受診するようにしましょう。

むくみを治療する場合に、最も重要なことは、むくみの原因を見つけることなのです。その背後に病気が潜んでいないか調べることから始まります。つまり、心臓、腎臓、肝臓、足の静脈やリンパ管の病気、あるいは甲状腺や栄養障害、薬剤によるものが疑われます。また、細胞間質液はリンパ管にも液体を送り込んでおり、リンパ管が手術などによって詰まることがむくみの原因になる場合があります。

 

成人パルボウイルスB19感染症(伝染性紅斑) Edit

大人がリンゴ病に罹ると、熱や頭痛、筋肉痛、倦怠感などのインフルエンザのような症状が出た後、頬部が赤くなることはほぼなく、手足に網状紅斑、レース状紅斑といった発疹や、関節痛、むくみがでることがあります。 感染してから発疹が出るまでは、3~4週間かかかるので、患児との接触歴を聴取できるかがポイントです。

 

ベーカー嚢腫の破裂

膝裏の腫れ、違和感、不快感などがあります。嚢胞(滑液包)が破裂すると、嚢胞内の関節液が漏れ出し周囲の組織に炎症を生じさせ、急速に局所的な痛みや腫れを起こす場合があります。