伝染性紅斑(リンゴ病)は、主に幼児学童期の小児にみられるヒトパルボウイルスB19による流行性の発疹性疾患で、一般的に予後良好な疾患である。潜伏期間は14〜20日で、両頬に境界鮮明な紅斑(蝶形紅斑)が出現し、続いて手足に網目状、レース状の発疹が見られ、通常は合併症もなく 1週間程度で自然軽快する。一度感染すると終生免疫が得られるため一般的に再感染はしない。頬に紅斑が出現する7-10日前に、微熱や感冒症状がみられることが多いが、この時期にウイルス血症を起こしているため感染力を有する。特徴的な発疹が出現して、臨床的に診断される時期はすでに周囲への感染性はほとんどない。「伝染性紅斑」は定点報告対象(5類感染症)であり、指定届出機関(全国約3,000カ所の小児科定点医療機関)は、原則として臨床症状から診断し、週毎に保健所に届け出ている。

成人が罹患した場合は、顔面の皮疹は出ないことが多く、感染4〜14日後の発熱、筋肉痛、頭痛、倦怠感などのウイルス血症の症状が見られ、1週間後の感染16〜26日後のレース様皮疹と関節痛(手、肘、膝、足など70%以上)や四肢の浮腫、頭痛の症状が前面に出るため、患児との接触歴を上手に聴取しないと診断に難渋する場合があります。関節炎から歩行困難になることもあります。

関節痛は、60〜80%に見られ、急性多関節炎の15%を占める。女性に多く、手指(PIP、MCP)に多く、手首、肘、膝、足にも見られる。24〜48時間で多関節に及ぶ、朝のこわばりも見られる。X線写真で骨破壊は見られません。皮疹は75%に見られ、伝染性紅斑の典型的な顔面の蝶形紅斑、体幹、四肢のレース状後半は20%しか見られず、風疹様の斑丘疹、出血斑、紫斑、血管炎などが見られる。PPGSS(papular-purpuric gloves and socks syndrome)手足に痛痒さを伴う皮疹(紅斑、丘疹、点状紫斑)が両手〜前腕、両下肢から足背にかけて見られる。浮腫は、関節周囲や全身に見られることがある。筋肉痛は50%(小児では4%)

成人が、パルボウイルスB19に感染した場合は、多彩な臨床像のために診断が難しいこと、不顕性感染は全症例の4分の1程度でみられるため症状がなくてもウイルス感染は否定できず、その不顕性感染者からの感染があること、リンゴ病の患者さんはリンゴ病とわかる症状(両頬が赤くなる)がでる前からウイルス排泄時期であること(発症前のウイルス血症の時期に採取された血液には感染リスクがあるため、国内ではすべての献血血液について、血漿分画製剤の原料血漿に対しては凝集法(RHA法)によるスクリーニング検査が1997年に導入されました)等の理由によりその対策は容易ではありません。

リンゴ病(伝染性紅斑)は4〜5年周期で流行します。季節では春から夏にかけて流行する傾向があります。パルボウイルスB19の流行時期には流産や死産が多い事がわかっています。妊婦さんが妊娠の早い時期に感染した場合、ウイルスが胎盤を通過し、約20%の割合で胎児に感染を起こします。小児期にリンゴ病(伝染性紅斑)に感染したことがない妊婦さんは感染に注意しましょう。日本人の妊婦さんの抗体保有率は20〜50%と言われています。

流行時期には感染者や風邪症状のある人との接触をできるだけ減らしましょう。パルボウイルスB19は感染した人の唾液、痰、鼻水の中に出てきて飛沫感染や接触感染により人から人へと広がります。家庭では感染した人と接触した人の約50%が感染します。学校での流行では、感染した人と おなじクラスの10〜60%の生徒が感染します。家庭内にリンゴ病のお子さんがいる場合だけでな く、地域でリンゴ病が流行している場合、小児と接することが多い職業の方は特に注意が必要です。学校や地域で流行している場合、ご家族、特に上のお子さんの発熱や風邪症状(不顕性感染もあり得る)に注意し、流行時期には子供にキスをしない、 食事や食器を共有しないこと、よく手 を洗うなど、また、兄弟がいる場合は上のお子さんが乳幼児に近づかないように気をつけましょう

また、パルボウイルスB19は赤血球に感染するため、もともと遺伝性球状赤血球症やサラセミアなどの溶血性疾患を持つ人では重症の貧血発作になることがある。またステロイド内服中など、免疫抑制者ではウイルスが排除されず、ウイルス血症が持続して数ヶ月〜数年続く慢性の骨髄機能不全や貧血になったり、感染を契機にSLEやRAなどの膠原病に進展することあります。妊婦や重症化しやすい人で、リンゴ病の人と接触したまたはパルボウイルスB19にかかったかもしれないと思ったら血中のIgG、IgMの測定により感染を判定します。

診断は、パルボウイルスB19IgM抗体は、急性期7〜10日で陽性(感度89% 特異度99%)約3カ月間持続する。但し保険適応は妊婦のみです。数日遅れてIgG(保険未収載)が上昇し生涯持続します。

特異的な治療はなく、対症療法で経過観察、通常、症状は6週間以内に消退します。