緩和ケア

私の母は膵臓癌で亡くなりました。行年66歳でした。見つかった時は癌は6cmであり、既に腹膜にも播種しており手遅れの状態でした。余命数年と予想されましたが、現実には4ヶ月であっという間に逝ってしまいました。現在、がんによる死亡が年間30万人を超えており、我が国の死因の第1位となっています。

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勤務医時代は循環器医として心筋梗塞ばかり診ていましたので、癌の患者さんを診ることはほとんどありませんでした。しかし、開業すると、癌の患者さんはたくさんおられます。病院で治療されても最後は自分の家で死にたいと希望されて、在宅を依頼される患者さんもたくさんおられます。

緩和ケアの定義は、いろいろあるようですが、WHO(2002)によると

 

緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、QOLを改善するアプローチである。

最後の死ぬ間際まで、その人らしく生きるためには、身体的な苦痛がないということが最も重要なことです。癌の患者さんとのお付き合いは、2週間ぐらいのこともあれば、数年になることもあります。癌の患者さんが望む可能な限り快適な時間を過ごすための処方箋が「緩和ケア」です。

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日本では、癌の痛みは我慢するものと思っています。

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日本で「がんの痛み治療」の普及が遅れているのは、医療用麻薬に対する誤解や偏見があるためです。麻薬と聞くと不安に思う方もいらっしゃるでしょうが、痛みのある人に医師が適切に使用する医療用麻薬は、安全で効果的です。

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中毒になる
慢性的に痛みのある人が適切に、医療用麻薬を長期間使用し続けても、中毒(習慣性)になることはありません。疼痛下では、κ受容体が活性化され、耽溺性、耐性を生じないとされています。医師の指導の下で適切に使用した場合には、中毒になる頻度は0.2%以下と報告されています。

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死期を早めてしまう
医療用麻薬でキチンと痛みを取ることによって、気力・体力が回復し、がんと向き合うことが出来、生活の質も向上して、最後まで自分らしさを保つことが出来ます。昔は最後の最後まで痛み止めを使っていなかったので麻薬を使うと最後という間違ったイメージが定着していますが、痛みはがんの経過のいずれの時期でも生じ得ます。がんの早期でもいたみの強さに応じて適応を判断して使用することで、決して死期を早めるというようなことはありません。麻薬の使用量と予後には相関はありません。

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次第に効かなくなってくる
医療用麻薬の使用量が増えていくことがありますが、これは効かなくなっているのでははなくて,がんの進行に伴って痛みが増強したために、量が増えているためです。鎮痛のための医療用麻薬の十分量を適切に使用することが大切です。

 

日本では、がんの痛みを持つ患者さんに対して緩和治療が行われているのは、わずか4割と報告されています。患者さんも医師に痛みを訴えていないのです。

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痛みがあったら、がまんしないで遠慮なく医師や看護師さんに伝えましょう。


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WHO方式がん疼痛治療法の基本は、医療用麻薬を十分量を適切に使用することです。軽度の痛みに対しては、NSAIDsまたはアセトアミノフェン、軽度〜中等度では、NSAIDsまたはアセトアミノフェンをベースにコデインなどオピオイド鎮痛薬を併用します。また、耐え難い高度な痛みに対しては、オキシコドンのようなオピオイド鎮痛薬を使用します。しかも、必ずしも第一段階から順番に導入するのではなく、NSAIDsまたはアセトアミノフェンなどをベースに、弱オピオイドは飛ばして、最初から痛みの程度に合った第三段階のオピオイドを使用することが大切です。(二段階除痛ラダー)

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WHOの三段階除痛ラダー

1)非オピオイド
ロキソニン 屯用でもOK(ボルタレン坐剤もあり)副作用として、腎機能障害(浮腫んだり)消化管障害(胃痛、貧血)出血傾向などに注意ですが、余命1ヶ月です。痛みを取る方が大事でしょう。

アセトアミノフェン 食事が食べられなくても(空腹時)胃腸障害少ない。推奨されていますが、2000mg(〜4000mg)ぐらい使わないと効果ありません。大きくて飲みにくい。肝機能障害以外、使用制限はありません。
セレコックス    抗炎症作用も必要な場合はこちらを選択も

2)弱オピオイド
トラマール(トラマドール)神経障害性疼痛 常用量以上増やしても効果増強なし 値段が安価 

リン酸コデイン 体内で代謝されて、モルヒネになってから効きます。副作用も便秘も嘔吐もせん妄も全部あるので、弱オピオイドとして投与する意味がわかりません。最初からオプソでいいでしょう。
ペンタジン 効かなくなってオピオイドに切り替える時に、一旦中止して、ペンタゾシンの効果を切らないと拮抗してオピオイドの量がごちゃごちゃになってしまいます。

副作用として、ひどい便秘が起こることがあります。腸管のオピオイド受容体にオピオイドが作用すると腸管の運動を強力に止めることで便秘になります。トラマール、トラムセット、ワントラムによる便秘は、普通の便秘薬では効きにくいということがあります。その時に有効なのが、スインプロイクです。スインプロイクは、腸管のオピオイド受容体だけに結合し、オピオイドが腸管のオピオイド受容体にくっつくのをブロックする薬です。しかもスインプロイクは脳の中には入っていかないので、脳、脊髄のオピオイド受容体には作用しません。スインプロイクはオピオイドを服用している患者さんの6割以上に効果を示します。残りの4割の患者さんは元々便秘のある方で、スインプロイクと他の便秘薬を併用します。弱オピオイドだから、便秘は軽いと考えがちですが、強オピオイド、モルヒネなどと同じように便秘で苦しむ患者さんが多いことは知っておかなければなりません。

3)オピオイド
オキシコドン系 オプソ2.5mgを30分おきに屯用で使用し、その1日総量を徐放剤に置き換えます。 便秘、嘔吐、眠気などの対応を
フェンタニル系 副作用が少ない
モルヒネ系   呼吸困難にはこれを

副作用対策
便秘については、カマグ、プルゼニド、漢方など。
嘔吐については、ノバミンを併用して、2週間ほどで中止。
せん妄について ジプレキサを(リスパダール セロクエル、テトラミドなど)
眠気については、メガシャキ、眠眠打破(カフェイン入りドリンク)で

医療用麻薬

現在日本で使える医療用麻薬は6種類あります。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、ヒドロモルフォン、タペンタドール、メサドンです。これら医療用麻薬の特徴を解説します。まず、医療用麻薬を使うときの判断基準が5つあります。

1.内服できるかどうか
2.使用状況:オピオイドナイーブか、すでに使っているのか。
3.時期:治療中か、抗がん剤が終了した時か、終末期か。
4.症状:痛みの度合い、痛みの性状。
5.状態:腎機能障害、肝機能障害などの患者さんの身体状態、服用しやすさ

(1)モルヒネ

モルヒネは、芥子の実から取れるアヘンを原料に作られた、天然の医療用麻薬です。医療用麻薬の基本と言えると思います。他の多くの医療用麻薬は、このモルヒネを合成して作られています。モルヒネは、内服、座薬、注射薬と、投与経路のバリエーションが豊富です。呼吸困難の症状緩和にも効果があります。心不全などの非がん性疾患の呼吸困難の症状にも、使うことが可能です。モルヒネの代謝物であるM3G、M6Gは体内で活性を持ち、眠気や呼吸抑制を起こします。腎臓で代謝されるため、腎機能が低下すると、体内に蓄積され、眠気や呼吸抑制が問題となってきます。呼吸困難に効果のあるとエビデンスがある医療用麻薬は、現在モルヒネだけです。

一方、モルヒネ持続点滴は疼痛や呼吸困難の症状緩和のために行うものです。鎮静が目的ではありません。モルヒネ持続点滴の目的を正しく理解し、鎮静と区別しましょう。モルヒネが、がん性疼痛に使用する医療用麻薬であることが認められたのは、比較的最近の1980年代です。それまで、一般の人たちの間には、今でもモルヒネは麻薬で恐ろしい薬であるという誤解や偏見が残っています。また、鎮静も多くの方に誤解されています。それは「鎮静は命を縮める」というものですが、鎮静で命が縮まることはありません。

モルヒネ持続点滴を終末期に始めるときに、どのように説明するのがいいでしょうか。終末期にモルヒネ持続点滴を開始するときは、多くの場合、呼吸不全で、呼吸困難症状が悪化した時です。その場合、モルヒネを使用するとCO2ナルコーシスになり意識が低下する可能性が高いといえます。「患者さんは今、呼吸困難で苦しい状態です。この症状を取るためにモルヒネを使おうと思います。モルヒネと聞いて驚かれるかもしれません。モルヒネと聞いて、どんなイメージがありますか?」と聞いて、イメージを言ってもらいます。例えば、悪いイメージを持っていたとすると、「そうですよね、でも今はそんなことはありません。モルヒネは正しく使えば、命を縮めることや依存は起こりませんから安心してください。今、患者さんは呼吸不全の状態です。呼吸困難の症状が悪化し、浅く、早い呼吸になっています。モルヒネを使うと、深くゆっくりとした呼吸になり、呼吸が楽になります。しかし、モルヒネでゆっくりした呼吸になると、身体の中に二酸化炭素がたまります。CO2ナルコーシスとは脳の中に二酸化炭素がたまり、意識が低下しますが、患者さんは苦しくありません。最期まで会話ができずに、亡くなるリスクはあります。けれども、モルヒネを使わなければ、呼吸困難を取ることができず患者さんの苦しみを取ることができませんし、苦しみながら亡くなってしまう場合もあります。残念ながらモルヒネに代わる薬は今のところありません。CO2ナルコーシスにならないように、細心の注意を払いながら少しの量からモルヒネを使っていきます。いかがでしょうか。」

(2)オキシコドン

一番使われている医療用麻薬です。内服の徐放製剤、速放製剤、さらに注射薬もあり、腎不全患者さんにも使えます。代謝物に活性はなく、腎不全患者さんにも使えるという点でモルヒネよりも優れています。μレセプターを介した副作用である、便秘、悪心・嘔吐、眠気はモルヒネとほぼ同じです。しかし、オキシコドンはCYP代謝なので、同じようにCYP代謝される薬物とは相互作用を起こし、血中濃度が上がるからです。抗真菌薬、抗生物質、抗がん剤でCYP代謝される薬物を使っている場合は注意が必要です。

(3)フェンタニル

人工的に合成された医療用麻薬です。貼付剤の剤型があるのは、このフェンタニルだけです。消化器系の副作用は少ないと言われています。フェンタニルはこの貼付剤という剤型が内服できない方にも使えることと、麻薬というイメージが少なく、患者さんからの抵抗が少ないので、たくさん使われているようです。しかし、フェンタニルをファーストチョイスでは使うのはやめましょう。第一選択薬は、速放製剤と徐放製剤の両方のある医療用麻薬を使いましょう。まず、患者さんが痛いとき速放製剤を使います。一日に何回速放製剤を使ったかをみて、その量から徐放製剤の量を決めることが1つのセオリーです。これをタイトレーションといいます。このタイトレーションは、同じ系統のオピオイドで行うほうがやりやすいのです。さらに、速放製剤、徐放製剤、注射剤の3パターンあると、さらにタイトレーションがしやすいです。フェンタニル貼付剤は、ゆっくりとしか血中濃度があげられず、素早い疼痛コントロールができません。さらに、フェンタニルには速放製剤がないので、レスキュー対応ができません。レスキュー対応をする時には、ほかの系統の医療用麻薬を使う必要があります。フェンタニルには舌下錠があり、これをレスキューとして使っている人もいますが、これは突出痛治療薬であり、基本的にはレスキューとして使ってはいけません。しかも、モルヒネなど、フェンタニル以外の医療用麻薬は、呼吸抑制などが起こる血中濃度は、効果が出る時の血中濃度の10倍以上なのに対して、フェンタニルは、2倍くらいで呼吸抑制を起こし、安全域が狭いのです。ほかの医療用麻薬のように1時間あけたら使って良いという指示を出すと、容易に呼吸抑制を起こしてしまいます。したがって、フェンタニル舌下錠は、1日4回まで、しかも2時間以上開けて使うという厳しい縛りがあります。最も注意していただきたいことは、内服のできる患者さんには、内服のオピオイドを使うことが原則です。内服の場合、過量投与になり昏睡になったとしても、寝てしまって飲めなくなるので、よっぽど大量に服用しなければ血中濃度が下がってきて、薬の効果が切れます。しかし、張り薬だと過量投与になった場合、薬が皮下組織に浸透しており、血中濃度がすぐに下がらず危険です。なぜなら、貼付剤なので、吸収・鎮痛に時間がかかりますし、吸収の個体差が大きいため、量の調整が難しいのです。また、安全域が狭いため、昏睡・呼吸抑制が起こりやすくなります。また、動物実験では、フェンタニルには天井効果があることもわかっています。強い痛みの患者さんに、どんどん貼付剤を増量しても、天井効果のため、痛みが全く取れないといったケースをたくさんみました。その際には、モルヒネの注射剤にスイッチングすると、痛みが消失したという経験も多くあります。フェンタニルは内服できなくて、痛みがさほどひどくなく、病状も落ち着いている人に使用することを推奨します。

(4)ヒドロモルフォン(第一選択薬)

ヒドロモルフォンも、モルヒネから作られた合成麻薬です。日本では一番新しい医療用麻薬です。モルヒネ、オキシコドンと同じく、内服の徐放製剤、速放製剤、注射薬もあります。モルヒネと同じくグルクロン酸抱合で代謝されますので、CYP代謝に影響されません。薬物代謝の影響を受けにくく、モルヒネのように代謝物に活性はありませんので、腎不全の患者さんにも使用可能です。エビデンスはありませんが、モルヒネと同様に呼吸困難の症状緩和にも効果があるようです。また、速放製剤は錠剤なのはヒドロモルフォンだけです。この錠剤は味がなく、口の中で溶けるので大変使いやすい。ヒドロモルフォンの徐放製剤は1日1回服用で、服薬コンプライアンスに優れています。

ヒドロモルフォンを医療用麻薬の第一選択薬にしているメリットを挙げます。

(1)CYP代謝の影響を受けない。チトクロームP450、いわゆるCYPによる薬物相互作用がないため、他の薬物と併用しても安全だからです。ヒドロモルフォンは肝臓でグルクロン酸抱合されるため、CYPによる薬物相互作用の可能性が低いのです。一方、オキシコドンやフェンタニルはCYP代謝の影響を受けます。

(2)代謝物に活性がない。ヒドロモルフォンの代謝物に活性がないため、体内に蓄積し、眠気、意識障害、場合によっては昏睡が起こらず安全だからです。モルヒネも同様にグルクロン酸抱合されますが、その代謝物であるM3G、M6Gは腎臓から排泄されます。腎障害時には代謝物が体内に蓄積し、眠気、意識障害、場合によっては昏睡を起こします。したがって、腎障害時には、モルヒネよりもヒドロモルフォンの方が使いやすいのです。

(3)飲みやすい。ヒドロモルフォンの速放製剤が錠剤であり、しかも味がない点です。モルヒネ速放製剤は液剤、オキシコドン速放製剤は粉末、ヒドロモルフォンの速放製剤は錠剤です。実は、オプソ、オキノームは苦みが口に残るのです。また徐放製剤もヒドロモルフォンは1回/日で良い製剤ですが、モルヒネ、オキシコドンは2回/日飲まなければいけません。

(4)呼吸困難に効果がある。ヒドロモルフォンはモルヒネと同程度に呼吸困難の症状緩和に効果があるからです。モルヒネには呼吸困難症状にも効果あるというエビデンスがあり、臨床でも効果があることは実感できます。それに比べ、フェンタニルはほとんど呼吸困難症状には効果がなく、オキシコドンも弱いと感じます。

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症例 60代男性、すい臓がん

数日前より心窩部痛が起こり、外来受診。ベースになる消炎鎮痛薬のカロナール500㎎錠を4錠 食後3回、寝る前1回の分4で処方。数日後には痛みが軽減。それから2か月後、同じところの痛みが増し、夜中に起きることが多くなりました。カロナール錠®に加え、ヒドロモルフォンの速放製剤であるナルラピド®1㎎錠を頓服で処方。疼痛時、1時間以上あけて使用と指示。嘔気時、便秘時の頓服も同時に処方。2日後「薬は効きましたが、4時間くらいで切れるので、4回使用。1㎎錠を1日に4回使ったということは、この患者さんの疼痛緩和には1日に4㎎必要、私は1回で1日効く、ヒドロモルフォンの徐放製剤であるナルサス®2㎎錠を、1日2錠、19時に定期内服。ナルラピド®1㎎錠はそれまでと変わらず、痛い時に頓服で服用。(タイトレーション)便秘への対策として、スインプロイク錠1錠朝食後に定期内服。7日後に来院した時、患者さんは「痛みは殆どありません。ナルラピドも1日1回か2回程度の使用です。夜も良く寝られています。便も2日に1回は出ていて快調です。

(5)タペンタドール

消化器症状の副作用が少ない医療用麻薬だと言われています。モルヒネ、ヒドロモルフォンと同様、グルクロン酸抱合で代謝されるので、薬剤相互作用は少ないと言えます。この薬剤の最大の特徴は、SNRI様作用があるということです。つまり、神経障害性疼痛に効果があるのです。しかし、即放製剤・注射剤が無いことは、大きなデメリットです。また、剤型が大きく、やや飲みにくいようです。さらに25mg錠・50㎎錠・100㎎錠がありますが、全て大きさが同じなので、間違えないように注意が必要です。タペンタドールは、神経障害性疼痛がある抗がん治療中の患者さんに使いましょう。

(6)メサドン

内服できる患者さんで、難治性疼痛のケースに使います。メサドンは、どうしても取り切れない難治性のがん性疼痛には大変効果がある場合があります。しかし、他の医療用麻薬にはない副作用があるため、

神経を巻き込んだ痛み      リリカなど
電気が走るような痛み      ガバペンなど
骨の痛み、息苦しい しんどい  ステロイドなど
しびれ             抗うつ薬など

ホットパック 入浴サービス リハビリ、マッサージ(関節、筋肉を動かす)音楽療法、ペットなど考えられる緩和ケアを施しましょう。

 

「痛み」は人によって感じ方や程度が異なり、主観的な感覚ですから「どのくらい痛いか」を客観的に評価することができません。そのため、「評価スケール」という痛みの強さを測る“ものさし”のようなものが使われています。

視覚的評価スケール(VAS:Visual Analog Scale)

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「0」を「痛みはない」状態、「100」を「これ以上の痛みはないくらい痛い(これまで経験した一番強い痛み)」状態として、現在の痛みが10cmの直線上のどの位置にあるかを指で示す方法です。

数値評価スケール(NRS:Numerical Rating Scale)

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VASと似た方法として、痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み(これまで経験した一番強い痛み)」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で選択する方法です。国際的に痛みの評価ツールとして合意されているスケールです。

表情評価スケール:FRS(Face Rating Scale)

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痛みの程度を、笑っている顔から泣いている顔の6段階の表情で表わし、現在感じている痛みがどの表情に近いかを選択する方法です。


日本でもWHO方式がん疼痛治療法で、90%以上のがん患者さんの痛みが消え(完全な除痛+ほぼ完全な除痛)、残りの患者さんの痛みも軽くできたという結果が出ています。

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日本での「がんの痛み治療」は、まだ始まったばかりです。がん性疼痛に使われた医療用麻薬の消費量をみても、日本人のがん患者さんが、いかに痛みをがまんしているのかがうかがえます。

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アルコールに対して強い人、弱い人がいるように、鎮痛のための医療用麻薬の十分量にも個人差があります。 痛みが消えるまで、医療用麻薬の量を増やしていきます。 たとえ医療用麻薬の量が増えたとしても、それによって中毒を起こしたりすることはありません。痛みが消えるその量が、その方の十分量なのです。これは「WHO方式がん疼痛治療法」の最も大切なことの一つです。

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とは言っても・・・

病気の症状の中でも「痛み」は、昔から医療の原点であり、実際の臨床では、がんの疼痛に限らず、痛みに苦しみながら、病院を渡り歩いている患者さんも多いのが現状です。腰痛にしても80%は原因不明です。慢性疼痛が緩和されるかどうかは、患者さんの痛みの歴史を拝聴し(診断の曖昧さや医療に対する不満、不信が多い)病態を十分に説明し、治療に限界があることを念頭に置いて、治療のゴールを痛みの消失ではなく、日常生活の目標(旅行に行ける、散歩が出来る)などに置き換えていくことが大事です。

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終末期で、がんの患者さんが在宅に帰ってきた時、痛みについては「夜、寝られていますか?」と聞いてみましょう。夜に痛みで目が覚めると言った症状がある場合は、すぐにオピオイドの増量して、十分に睡眠がとれるようにしてあげることが大切です。次の段階で、昼には安静にしていたら痛みがない状態まではなんとかもっていけるようにします。理想的には、動いても痛くないと言うレベルですが、内臓痛が主体の場合は、なんとかなりますが、骨転移やそけい部や頚部などで神経を巻き込んでいる場合は、痛みを完全に取ることは難しい、少し痛みは残りますなど、説明しておく方がいいでしょう。

 

痛みとは?

「体の組織の損傷、あるいは潜在的な組織損傷に関連した不快な感覚的、精神的な状動的な体験」とされている。痛みの伝達の認知は、通常、末梢神経→脊髄→視床下部→大脳へと伝達される。最終的には頭で認知されているので、その時の様々な環境、心理、肉体の状況により、同じ様な強さの刺激が違った強さの痛みとして感じられる。同じ程度の交通事故を起こして頸椎捻挫をしたとしても、自損とおかまを掘られた場合では、痛みの強さは違うのが人間です。さらに、相手のでかた次第で、痛みは強くなったり、弱くなったりするものなのです。痛みの感じやすさ(疼痛閾値)として痛みが強くなる因子として、不眠、疲労、不安、恐怖、怒り、抑うつ、孤独感などがあり、痛みを弱める因子として、熟眠、会話、気晴らし、楽しさ、安らぎなどがあると考えられています。

トータルペイン(全人的痛み)

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患者さんから 「私のこの痛みは誰も分かってくれない」 という言葉をよく耳にしますが、これは痛みの複雑さを端的に表しています。患者さんが 「痛い」 と訴えたら、身体的苦痛への対処だけでは解決しないことが多く、本当にそんなに痛いの?と思いがちですが、 その原因はともかくとして、その個人の情動体験としての痛みをそのまま受け止めることから、適切な痛みへの対処が始まることを認識すべきなのです。痛みは、症状のひとつと言うだけでなく、痛みそのものを疾患としてとらえて治療を始めなければいけません。


痛みの種類

臨床的に痛みを分類すると、外傷や手術などによって生じる「侵害受容性疼痛」神経自体が何らかの障害を受けて生じる「神経障害性疼痛」特別に組織の障害はなく、いわゆる精神的に生じる「心因性疼痛」の3つに分けられます。これらの痛みは、単純に分けられるものではありません。それぞれが混在して存在します。「転倒して膝が打った」「包丁で指を切った」「夕食を食べてお腹が痛くなった」「介護疲れで頭が痛い」と言われたとき、どの痛みが主たるものかを想像しなくてはなりません。

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また、体性痛(表面痛と深部痛)、内蔵痛、関連痛、心因痛に分けられますが、この内、心因痛以外の痛みが、侵害受容体性疼痛になります。

もうひとつの分け方としては、急性痛、慢性痛などという分け方もあります。実際の臨床の現場では、慢性疼痛といわれ、疼痛のコントロールに難渋する患者さんがいます。初期段階では、それぞれの疼痛が独立して存在していても、痛みを放置しておくと、痛みの悪循環で重複して発生したり、長期にわたって持続するようになってしまいます。「慢性疼痛」の定義は、通常治癒するに必要な期間を超えて痛みが続くような場合で、概ね3ヶ月以上続くことが目安です。

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最初の急性疼痛として、通常の痛みである侵害受容性疼痛により、大脳皮質で「痛み」として認識されると同時に、交感神経系も刺激され、アドレナリンが分泌される。また、脊髄反射によって運動神経が刺激されて、筋攣縮が生じ、血管が収縮して痛みを感じる領域が虚血を招き、炎症が誘発され、生体内に存在するブラジキニンやカリウムなど様々な発痛物質や発痛補助物質が生成される。このような痛みの悪循環が完成されてしまうと、痛みの発生・維持のメカニズムが複雑に絡み合って、元来の疼痛の原因が消滅しても痛みがとれず、難治性の慢性疼痛に進行していくことは稀ではなく、できるだけ早期に疼痛治療を始めることが非常に大切になります。

疼痛緩和の目標

もっとも大切なのは、患者さんが痛みを受け入れて安心して過ごせるということです。慢性疼痛を治療するときに最も重要なのは、ゴール設定です。長期にわたり、疼痛が持続している人の痛みをゼロにすることは簡単ではありません。薬を徐々に増量し、副作用と相談しながら、落としどころを模索する症例もあることは事実です。まずは、寝られること、30%減 → 半減で外出、家事など痛みをあるけれど日常生活が改善できるようになる。ここを目指すようにしましょう。

 

侵害受容体性疼痛(いわゆる普通の痛み)

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体の組織に害を及ぼすような強い刺激が、侵害受容器に加わると、Aδ線維(最初に感じるズキンとくる痛み:歯を治療中の痛み、弁慶の向こう脛を打った時など)C線維(後からくるじわーとくる痛み:歯の治療が終わってしばらくしてからの痛み、向こう脛を打った後に、ズキズキと残る痛みなど)を経て、脊髄後角に分布する神経細胞に信号が伝えられる。その後、介在ニューロンを経由、あるいは直接、上位中枢へ信号は伝達され、大脳皮質で「痛み」として認識される。

Aδ線維は、有髄神経で、非常に早く痛みを大脳皮質の感覚野(体性)に運んでいく。NSAIDsがよく効く。
C線維は、無髄神経で、ゆっくりと痛みを大脳辺縁系(情動)に運んでいく。オピオイドがよく効く。

侵害刺激による痛みの例

◎捻挫した関節、やけど、切り傷が腫れて熱をもって痛む:傷害された組織で炎症が起こり、痛みをおこす化学質 (発痛物質)が出て、侵害刺激となる。また腫れが神経 を機械的に刺激する。
◎虫歯であごまで腫れて痛む:感染に伴う炎症反応、腫れによる物理的刺激
◎おなかの痛み:強い消化管の収縮や拡張:機械的刺激、虚血に伴う発痛物質など腹膜への炎症波及
◎頭痛:偏頭痛でずきんずきんと痛む
◎髄膜炎での痛み:髄膜への炎症 髄膜炎での痛み などなど

白紙

 

七転八倒している患者さんとじっと蹲っている患者さん、どちらが重症でしょうか?痛みの程度で、判断するのは危険な事もあります。体性痛は、Aδ線維で伝わる強い痛みで、右下腹部とか、左側背部とか場所がはっきり限局していて、動くと痛いので患者さんはじっとしています。内蔵痛は、だいたい体の真ん中あたりで、痛みの局在がはっきりせず、吐いたり、冷や汗をかいたり、患者さんは体の置き場がなくてあっち向いたり、こっち向いたりしています。炎症が腹膜に及ぶと体性痛に変わる事もあります。

通常は、アラキドン酸カスケード系の活性化によってシクロオキシゲナーゼを介して産生されるプロスタグランジンなどの物質が痛みの発生に関与しているため、NSAIDsアセトアミノフェンが第一選択である。効果が乏しい場合は、オピオイド(脊髄後角に作用し、疼痛伝導を抑制する)も選択肢のひとつである。

 

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関連痛

関連痛とは、ある部位の痛みを異なる部位の痛みと脳が勘違いをしています。内蔵痛(C線維)が後根に入ると、同じレベルに入ってくる体性痛(Aδ線維)と勘違いして、そのレベルの皮膚の痛みとして感じてしまうわけです。

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例えば、虫垂から入る内蔵痛は同じ高さの皮膚からのAδ線維に投射して、臍のあたりが痛いと感じます。腹腔内の臓器は、腹腔神経節に入って、投射されるところは、せいぜいT5ぐらいまで(肩甲骨の下縁)です。胆嚢炎で有名なのはボアス点(T10レベルの右3cmぐらい)へ投射されます。心臓は、迷走神経と交感神経によって支配されています。この中で、痛覚を伝える知覚線維は交感神経に含まれており、T1~T4の脊髄の後根を通ります。この高さの脊髄の後角に入ってくる皮膚の痛みと取り違えて脳へ伝えてしまいます。また、心臓の心膜には、左右の横隔神経が付着していおり、心筋の炎症が心膜にまで及ぶと、心膜に付着している横隔神経の知覚線維を刺激し、神経発生学的に、横隔膜の刺激は、C2C3の脊髄後角へと伝えられ、両肩の皮膚の痛みとして感じます。つまり、心臓に障害が起きるとC2C3、T1~T4が支配している皮膚領域に関連痛が生じる可能性があります。具体的には、肩の周囲、腕内側から上肢にかけての領域である。心臓の関連痛が左に優位なのは、心臓の左室にて心筋梗塞がおこっているからと考えられています。

 

神経障害性疼痛(しびれ)

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神経組織そのものが傷害された時の起こる痛みです。末梢神経性疼痛(神経根、神経叢、末消神経)と中枢神経性疼痛(脊髄や脳幹、視床、大脳皮質など)があります。その発生には、下行性疼痛抑制系の異常や侵害受容伝達の亢進などの機序が考えれています。しびれが切れた時に似た何とも言いようのない電気の走るようなシビレ痛みなど、様々な表現がなされる(灼熱痛、電撃痛、痛覚過敏、アロディニアなど)痛みの感じる場所は、傷害されている場所から離れたところになることも多い。

神経障害性疼痛の例

◎三叉神経痛
◎肺尖部の肺癌が腕神経叢へ浸潤したときの上肢や肩の痛み
◎腰椎椎間板ヘルニアでの下肢の痛み
◎骨盤内の腫瘍が坐骨神経叢へ浸潤したときの下肢の痛み
◎帯状疱疹後疼痛
◎脊髄損傷後の痛み
脳卒中後疼痛
がんによる神経障害性疼痛
がんによるものは大きくは3つパターンです。ひとつは、肺がんによるパンコースト腫瘍でリンパ節転移で腕神経叢への浸潤で上腕が腫れて痛みがある場合、ふたつめは、肺がんの胸膜播種で肋間神経に浸潤して胸が刺されるように痛い場合、みっつめは、骨盤内に転移して腰仙部神経叢への浸潤して坐骨神経の痛みがある場合ですです。その他としては、脊髄圧迫症候群などもあります。がん全体の15〜20%に認められ、体性痛や内臓痛と異なり、NSAIDsやアセトアミノフェンは無効で、オピオイドなどの鎮痛薬でも十分なコントロールが得られないことも多く、様々に鎮痛補助薬(抗うつ薬や抗てんかん薬)やが併用されます。


採血による神経障害性疼痛

ほとんどの看護師さんが肘のやや内側にある一番太い静脈(尺側正中皮静脈)から採血しますが、その下には正中神経(上腕動脈のすぐ内側)が走っており、また内側前腕皮神経(交差している)を傷つける可能性があります。患者さんへの負担や事故のリスクを極力避けるということを考えれば、できれば外側の細い静脈からの採血をお勧めします。橈骨皮静脈は、深部に動脈がありませんし、近くに神経もあまりなく、また外側のほうが痛みを感じにくい(上半身は背面より前面、下半身は前面より後面、一般的に皮膚の柔らかい部分は敏感)とされています。

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採血による神経障害性疼痛の症状は、採血時にひびくような痛みを感じ、針を刺した局部は、腫れたり内出血したりしていないのに、前腕に広かって行くような焼ける様な感覚鈍麻なしびれの様な痛みで(感覚障害あり)NSAIDsを処方しても効果ない場合に強く疑います。トリプタノール(テグレトール)などの処方でよくなる場合もあります。5000〜3万回の採血に1回起こると言われています。医療訴訟になることもあり、気をつけるにこしたことはありません。

 

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アロディニア

アロディニア症は、異痛症とも呼ばる症状で、わずかな刺激が激痛に認識される感覚異常を指します。その痛みは神経の痛みではなく、脳が勝手に痛みを感じて起こす症状だと言われています。健常者では、痛みを認識した場合、脳はセロトニン等を出して痛みを抑えるという働きをしますが、アロディニア症の人の場合は、セロトニン等の痛みを抑える物質の量が減り、少しの刺激が激痛に感じてしまうようです。

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アロディニア症は、男性よりも女性に多い症状のようです。帯状疱疹後疼痛、片頭痛などの痛みのメカニズムとして注目されています。片頭痛は、血管の拡張と炎症が脳幹部の三叉神経に伝わることで起こる頭痛といわれています。片頭痛患者が示す症状の中には、顔に風が当たると痛い、メガネやイヤリングが不快、くしやブラシが痛くて使えないといったものがありますが、これらは頭部アロディニアと呼ばれています。さらに脳が過敏になると、頭部だけではなく、手足のしびれや腕時計、ベルトが不快になることもあり、これらは頭蓋外アロディニアに分類されます。また、帯状疱疹後疼痛で悩む人は、衣服が体に擦れるだけで電気が走ったような激しい痛みを感じて、服も着れず、裸でいる人もいます。

 

鎮痛補助薬

抗けいれん薬
電撃痛など発作性の痛みに効果的である。作用機序としては、興奮性神経の前シナプスに存在するCaチャンネルの遮断作用(リリカ、ガバペン)や損傷神経や脊髄後根神経節に過剰発現し、異常発火の原因となるNaチャンネルの遮断作用(テグレトール)過剰な神経興奮を抑制するGABA系賦活作用(デパケン、リボトリール)などがある。

抗うつ薬
三環系抗うつ薬(トリプタノール)は中枢神経系におけるセロトニン・ノルアドレナリン再取り込みを阻害し、下行性抑制系の賦活化することにより効果を発揮する。灼熱痛のような持続性の痛みに効果的である。鎮痛効果は1週間でみられ、抗コリン作用による副作用に注意が必要である。

局所麻酔薬/抗不整脈
Naチャンネル遮断作用により効果を発揮する。リドカインは内服困難時にも使用でき、他の鎮痛補助薬と異なり眠気の副作用はない利点はあるが、用量依存的に局所麻酔中毒(めまい、興奮、意識消失、けいれん、呼吸停止など)が、全身状態が悪化したがん患者では少量でも生じるので注意が必要です。

NMDA受容体拮抗薬
グルタミン酸受容体のサブタイプのひとつで、その活性化が、疼痛の促進、増幅に関与している。ケタミンは、NMDA受容体拮抗作用により、鎮痛効果を増幅する。内服困難時にも使用可能な鎮痛補助薬である。

非薬物療法
神経ブロック(硬膜外ブロック等)が著効する症例もある。結果として鎮痛薬の減量が可能になり、その副作用も軽減される。その他、ボツリヌス毒素によるもの、トリガーポイント注射、局所静注療法、関節内注射、鍼灸などがある。また、低侵襲治療法として、脊髄電気刺激療法や胸腔鏡下交感神経遮断術などが行われている。

 

嘔気、嘔吐の治療

嘔気・嘔吐は、外来通院中のがん患者さんの約2割が経験すると言われています。嘔吐は、延髄にある嘔吐中枢が刺激されて起こる。そして、その刺激は、前庭器、大脳、消化管、CTZの4つからの刺激です。この4つのどこの刺激で嘔吐が起こっているのかを知ることで、使う薬が違ってきます。

前庭器は、耳の奥の内耳にあります。乗り物酔いの嘔気・嘔吐はこの前庭器によるものです。脳腫瘍などにより、脳が圧迫されて、吐き気が起こります。これは、大脳からの刺激によって起こる嘔吐です。また、ストレスからくる嘔吐も大脳の刺激です。例えば、抗がん剤と考えただけでも吐き気がするとか、会社に行きたくないと思っている人が、会社の前に行くと吐き気がするという例もあります。食道から肛門までの消化管の刺激が、嘔吐中枢に伝えられて起きる嘔気・嘔吐もあります。この他にも、便秘、消化性潰瘍、胆のう結石や尿路結石などでも起こります。CTZ:Chemorecepter Trigger Zoneの略で、化学物質による刺激のことです。例えば、抗がん剤や医療用麻薬による嘔気・嘔吐が代表的なものです。高カルシウム血症などの電解質異常、尿毒症などの代謝異常なども、直接CTZを刺激して嘔気を生じます。そして、こういった情報を伝えるのは、ドパミン、ヒスタミン、アセチルコリン、セロトニンといった情報伝達物質が担います。脳転移による吐き気は、大脳の脳圧亢進による吐き気です。その場合、脳腫瘍の治療をすることが、根本原因を取り除くことになります。制吐剤としては、ステロイドが有効です。便秘が原因の吐き気は、消化管の刺激による吐き気です。この場合、制吐剤としては、プリンペランが有効です。CTZの刺激で起こる嘔気・嘔吐は薬剤で起こりますが、その代表的なものが医療用麻薬です。これに対しては、ドパミン受容体拮抗薬を使います。ドパミン受容体拮抗薬には、ノバミンという薬があります。医療用麻薬を初めて導入する際、嘔気予防のために、全員にノバミンを処方しています。皮下注射で医療用麻薬を投与するときは、セレネースを使います。ドパミン受容体拮抗薬を長期間使うと、手が震えたり、舌が震える、錐体外路症状という副作用が高い確率で起こります。ちなみに、嘔気・嘔吐を起こしやすい患者さんは、比較的若い女性で、非喫煙者です。また、錐体外路症状の中には、アカシジアという、イライラして、じっとしていれないという症状が1日中続くものがあります。これは、患者さんにとっては、非常につらい症状です。原因になっている薬剤をやめるとすぐに良くなります。ドパミン受容体拮抗薬を投与する際には、アカシジアに注意してください。動くと気持ちが悪くなったり、めまいを伴うような嘔気では、耳の奥の内耳にある前庭器の刺激が疑われます。この場合、原因を取り除くことは難しいのですが、このようなときの制吐剤は、抗ヒスタミン剤が有効なことがあります。

吐き気は患者の服用意欲を削ぐ最も一般的な副作用である。一般的な制吐薬(メトクロプラミドやドンペリドン)を予防的に併用してもよいが,制吐効果が不十分であることが多いので,それが無効の場合直ちに,あるいは最初から制吐作用のある非定型抗精神病薬(プロクロルペラジン,ハロペリドール,オランザピン)を病名記載に配慮しつつ併用する。メトクロプラミドと非定型抗精神病薬の併用はパーキンソン兆候をきたしやすいので避ける。(Dr.Tosh)

呼吸困難

呼吸困難は、がん末期の患者の50〜70%に起こるよく見られる症状です。トイレに行くだけで、ベットから起き上がるだけで息切れがします。モルヒネは、頻回の浅い呼吸を深いゆっくりとした呼吸にして、息が楽になると考えられています。呼吸困難の初期は、動いた時に息切れがする体動時呼吸困難です。この時期は、じっとしていると呼吸困難はありません。体動時の息切れに対しては速放性の「オプソ」という液剤の製剤を使います。オプソを飲んで30分〜1時間で効果が出始め、3〜4時間で効果が切れます。お風呂に入る、出かける時、家事をする30分ぐらい前にオプソを飲んでおくと効果的です。症状が進んで、じっとしていても呼吸困難を自覚するようになった時期では、徐放製剤の「MSコンチン』を使います。1日2回、決められた時間に内服します。(朝8時と晩8時)これで安静時も呼吸困難が和ら義ます。しかし、さらに進行して、息苦しくて薬を飲むのも大変だという患者さんについては、モルヒネの持続皮下注射(皮下注射用シリンジポンプ)を行うことが多いです。

薬が内服できなくなったら、皮下投与が最適です。終末期には、痛みや呼吸困難、せん妄などの精神症状が悪化してきます。これらの症状をしっかり緩和することが、在宅ケアの継続には必須です。医療用麻薬のフェンタニルパッチを使う方も多いようですが、効果は限られているうえに、用量調節が難しく、レスキューがありません。呼吸抑制の危険性もあります。また、呼吸困難の症状緩和には、フェンタニルは効きません。結局、十分な症状緩和ができずに、患者さんが苦しみながら最期を迎えなければならなかったり、救急車で病院に運ばれて、病院で最期を迎えなければいけなくなりがちです。皮下投与は、在宅ケア中の患者さんの症状緩和にとても有用です。皮下投与の方法については、皮下点滴と、持続皮下注射の2種類があります。皮下点滴はプラスチック留置針を用いて皮膚に穿刺し、輸液します。投与量は個人差がありますが、20~100ml/時で吸収が可能です。通常は500ml/日、最大1500ml/ 日くらいまで投与できます。一方、持続皮下注射には、電動シリンジポンプ、ディスポーザルポンプを使います。色々種類があります。ここでは、ディスポーザルポンプであるク―ディック・シリンジェクターを使っています。

医療用麻薬の注射薬を持続皮下注で使えば、量の調節ができ、患者さん・ご家族がPCAのボタンを押すことで、レスキューが可能です。疼痛の緩和にはモルヒネ、ヒドロもルフォン、オキシコドンが有効です。モルヒネを持続皮下注射で使えば、呼吸困難の症状にも対応できます。終末期には、せん妄を起したり、不眠に悩む患者さんも多いと思います。コントミン、セレネースといった抗精神病薬、サイレース、ミタゾラムといったベンゾジアゼピン系の安定剤も、皮下投与ができます。2~3種類の薬剤を混注することもできます。夜間は皮下点滴を用い、夜間だけ寝て、昼間は会話ができる間欠的鎮静が可能です。皮下注射により、24時間の持続的鎮静に持っていくことができます。(フェノバルビタールは混注ができず、水にも溶解しないので、原液で使用)

アキュフィーザー

クーデックシリンジェクター

クーデックエイミーPCA

 

全身倦怠感

終末期の倦怠感に対して、ステロイドはとても効果的な薬剤です。ステロイドが有効な「時期」は、患者さんの余命が、2~3カ月くらいになった頃です。一方、余命が短い週単位以内になると、効果は得られないばかりか、むしろ、不眠・せん妄や体液貯留などの有害事象が生じてくるので、ステロイドは減量、中止が望ましいと思います。また、余命が3ヶ月以上の長い時期に使い始めると、効果も少ないばかりか、結果として長い期間ステロイドを使うことになるので副作用が出てくることがあります。余命が3ヶ月以上の長い時期の倦怠感には、ステロイドではなくエドルミズを使う方が効果的です。ただし、エドルミズは限られたがんにしか使えませんので注意が必要です。また、ステロイドを選択する前に、貧血、感染、脱水、電解質異常など、倦怠感の原因が別にないかも調べておく必要があります。

一般的に余命2~3カ月の時期は、がんの進行速度が速くなり、抗がん剤治療が難しくなり、中止する時期です。倦怠感の訴えも、「動くのが億劫になった」「最近疲れやすい」「動くとだるいので、休みがちになる」などの比較的軽い訴えから「だるいので、横になっている時間が増えた」「横になってもしんどさは変わらない」「少し動くだけで身体中が気怠い」などの訴えに変わってくることが多いです。こういった時が余命2~3カ月だと考えてください。この余命2~3カ月の頃にステロイドを使うとがん終末期の一時的倦怠感にはとても効果があります。使用するステロイドは、コルチコステロイドです。商品名はリンデロン®、デカドロン®です。倦怠感の緩和にコルチコステロイドを使う場合の量は、経験的に4~8㎎/日、朝に内服処方します。(ステロイドは夕方以降には使用しない、夜寝られなくなることがある)1~2週間で効果判定をし、効果があるなら2~4㎎/日で継続します。効果がないなら速やかに中止します。

問題になってくるのは、2か月以上の長期投与になった時です。もし、早い時期からステロイドを使用して、2か月以上経過した時には、日和見感染防止のため、バクタを半錠~1錠/日の予防投与を行います。患者さんの腎機能が悪い場合は、薬剤師と相談してバクタ®の量を減らします。また、口腔内カンジダ症も発症しやすいので、必ず口腔内の診察と、患者さんに最近舌がピリピリしていないかなどの問診が必要です。もし口腔内カンジダ症になっていた場合の治療法としては、うがい薬、軟膏などの抗真菌薬を使用します。薬を使用することで、ほとんどの場合、早期に症状が軽快します。ステロイドを長期に服用すると、胃粘膜障害を起こしやすくなります。Nsaidsが併用されていると、特に起こしやすいので、PPIなどの胃薬は忘れずに処方しておきましょう。

一方、余命が1カ月を切る頃になると、患者さんの倦怠感の訴えは「だるくて、一日のほとんど横になっている」「横になっていても身の置き所が無い」といった訴えに変わってきます。もし今までステロイドを使用していたとしても、ステロイドの効果がないな、と感じるようになるでしょう。経験的に、ステロイドを使っていても、倦怠感が増していると感じるようになると、私は患者さんの残された時間はだいたい数週間だと思っています。この余命1カ月未満の時期にステロイドを使用・継続すると、長期に使うことになります。したがって、不眠、せん妄や体液貯留などの副作用が前面に出てきてしまうので、余命1カ月未満の時期にはステロイドの減量・中止します。

余命1カ月未満の終末期の時期は倦怠感を取るというよりは、むしろ倦怠感とうまく付き合うという事に目標をシフトします。エネルギー温存療法というものがあります。エネルギー温存療法は、普段はできるだけ横になった状態で、主として休息を十分に取りながら、患者さんにとって大事な活動をしたいときに動くということです。エネルギー温存療法は休息すること自体が治療です。また、この時期は特にアロマセラピー・マッサージも効果のあるケアです。余命1カ月未満の終末期には、薬の投与よりも、患者さんが気持ちが良いと思えることをすることが、倦怠感を取る最も良いケアです。また、患者さんの余命が1週間未満となった場合、倦怠感が増し、身の置き所のなさが十分に取れないこともしばしばあります。その時には鎮静も考慮する必要があるかもしれません。(Dr.Tosh)

 

脊髄圧迫

オンコロジーエマージェンシーという言葉を知っていますか?オンコロジーエマージェンシーとは、がんやがん治療が原因で、発症してから数時間から数日以内に重篤な障害を起こして、QOLやADLの著しい低下を起こしたり、場合によっては致命的になる状態のことを言います。オンコロジーエマージェンシーの一つに脊髄圧迫があります。これは、脊髄にがんが転移することで起こる病態です。まず、脊椎にがんの転移のある患者さんは、今後脊髄圧迫が起こるかもしれないと考えましょう。脊髄圧迫は、歩行可能な状態で治療すれば、90%以上が回復できますが、全く足が動かない状態で48時間が経過した患者さんでは、回復する可能性はほぼゼロなのです。

脊髄圧迫の原因は、ほとんどがんの骨転移によるものです。頸椎、胸椎、腰椎のどの部位の転移でも起こりえます。肺がん、乳がん、前立腺がんは頻度が高いですが、どのがん腫でも脊髄圧迫をきたします。症状としては、多くの場合、骨転移による痛みが先に起こるので、頸部痛や背部痛が生じた時は、レントゲン、CTなどで骨転移の有無を確認しましょう。下肢の運動麻痺、知覚麻痺、さらには膀胱直腸障害が主たる症状です。足の脱力感、歩きにくさやしびれ、足の感覚が鈍くなるといった症状や、尿が出にくくなったり、尿漏れしやすくなるなどの症状が急に起こり、時間経過とともに進行し、増悪します。

治療としては、まず、ステロイド投与です。デキサメタゾンで1日10㎎~13㎎から開始し、徐々に減量します。少しでも症状があれば、ただちにステロイド投与を開始 してください。ステロイド投与は神経機能の改善、疼痛緩和などの症状軽減目的で行います。次に整形外科では、出来るだけ腫瘍を減量し、椎体を固定する手術を行います。また、放射線治療科では放射線を病巣部に照射し、腫瘍を小さくすることで、神経圧迫を解除します。(Dr.Tosh)

 

手足のしびれ(抗がん剤の副作用)

抗がん剤の副作用に「手足のしびれ」があります。しびれて鉛筆が握れない、パソコンのキーボードが操作できない、家事がうまくできない、足が地面についている感覚がないから歩きにくくてこけてしまう、手を洗おうとしても痛くて洗えない、こういった症状が、抗がん剤治療が終わった後でも何年も続いて、残念ながら、いつ改善するかはっきりわからないのです。半年で良くなる人もいれば、5年経ったも良くならない人もいて、個人差がとても大きいのが現状です。この長期間続く慢性の手足のしびれは、本当に治るのか心配されている患者さんがたくさんいますが。良くなる時間には個人差はあってもほとんどの方は症状がなくなったり、気にならない程度まで良くなります。徐々に良くなる人もいれば、ある時、急に良くなったという方もおられます。また、完全にしびれは良くなってはいないけれど、これくらいなら普通に生活できているので、気にならなくなったという方もおられます。どうしても良くならない人は、精神的、心理的、社会的要因が複雑に絡んでいる場合もあり、慢性疼痛を専門的に診ているペインクリニックや心療内科を紹介してもらいましょう。

手足のしびれは、末梢神経(運動神経、感覚神経、自律神経)の障害で起こります。末梢神経や末梢神経に栄養を運ぶ血管の障害で、間違った情報が脳に伝えられてしびれの症状が起こると考えられています。手足のしびれを起こしやすい抗がん剤は主に2種類あります。タキサン系抗がん剤(パクリタキセルやアブラキサンなど)と白金系抗がん剤(オキサリプラチンやシスプラチンなど)が有名です。これらの抗がん剤を使った人が皆さん副作用が出るわけではありませんが、何年もしびれが続いてつらい思いをしている人もたくさんいます。しびれの副作用は、患者さんが訴えないとかかりつけ医にはわからないので、我慢していると対応が遅れてしまうこともあります。

慢性的に手足のしびれを感じている人は、末梢の血行不良と痛みに敏感になることが原因になっています。慢性的な末梢の血行不良については、手足を冷やさないで温めること、運動することが重要です。具体的には、できるだけ冷たいものを飲んだり触ったりしないこと、洗面や手洗いはできるだけ温水を使うこと、炊事や洗濯の時は厚めのゴム手袋をすることなどを指導します。運動はウォーキングがお勧めですが、転倒に気をつけて無理しない範囲で行いましょう。薬では、牛車腎気丸や八味地黄丸などが効果的です。ー方、痛みに敏感になって感じる慢性的な痛みに対して、アセトアミノフェンやNSAIDsはあまり効きませが、抗うつ薬(デュロキセチンやミルタザピンなど)は、痛みを敏感に感じることを抑える効果があります。(Dr.Tosh)

 

心因性疼痛

解剖学的には説明のできない痛みで、身体表現性障害に分類されることが多い。抗不安薬や抗うつ薬が選択されることも多いが、薬のみに頼るのではなく、精神心理的治療が必要である。

 

医療用麻薬が効かない

がんの患者さんに医療用麻薬を投与しても一向に効かないことがありますが、原因には大きく分け2つあると思います。一つは、そもそも麻薬の量が足りていない場合と神経障害性疼痛の場合です。神経障害性疼痛は、医療用麻薬が全く効かないというわけではありませんが、効きにくいとされています。がん性疼痛はがんが直接に内臓に浸潤して起こす「侵害受容性疼痛」には効果がありますが、がんが、神経、血管を圧迫し破壊し引っ張るということで生じる痛みで、ピリピリ、ジンジン、チクチクという痛みには効きにくく、リリカなどを使います。次に、がんになり、体重減少、全身倦怠感、筋肉量の低下が起こり、体を動かす際に体に負担がかかり、頭痛や背部痛、腰痛が多いようです。筋膜性疼痛には、NSAIDsが効果的です。また、抗うつ薬など痛みの閾値を上げる薬剤や芍薬甘草湯、ペインクリニックでトリガーポイント注射を売ってもらうことも有効で、風呂に入ったり、マッサージで血行を促進することで楽になります。アロマセラピーも効果的です。がん治療によって起こる痛みとして手術後の傷跡の痛み、化学療法や放射線療法の副作用による痛みなどはNSAIDsが有効です。

 

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鎌田實先生、つぶれかけていた長野県茅野市の諏訪中央病院を「住民とともに作る地域医療」の病院として再生します。最初に赴任したときの下りで、なるべく注射をしない、できるだけ薬は出さない、という医療を徹底的にして、患者さんはますます減っていきました。僕も開業した当時、悩んだ問題です。お年寄りは、注射やお薬が楽しみなんです。これは、病気を診るのではなく、人を診る感覚としては大事なことなのです。大腸カメラの穴あきパンツも諏訪中央病院発のようです。医学はscienceではなくて、artである。医療者がつい口に出してしまう「がんばりましょう」という言葉に傷つく患者さんがいることを心に留めておかなければいけません。

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徳永進先生、鳥取市内に19床のホスピスケア「野の花診療所」を開設しています。いろいろな「お薬」がでてきます。焼き肉であったり、自転車、ホタル狩り、花火大会、ピアノ、ただ道を歩く、碁が打ちたいなど・・・患者さんを癒すのは、みなれた風景であったり、ありふれた日常なんですね。 また、医療者としての徳永先生の飄々とした立ち位置が、大変参考になりました。がんの末期の患者さんを目の前にして、誰も代わってあげられないし、医師としてなにもできないのですが、話を聴いてあげるところからはじめています。やはり、鎌田先生のお話との共通点は「日常のすばらしさ」「あるがままの大切さ」人の人生って、本当に人それぞれですよね。 でも、いろいろあっても終わりよければすべてよしって気がしています。「死は別に恐ろしいことではない」人生が終わる時、いつもの日のように穏やかに過ごせたらいいですね。