てんかん

てんかんを一躍有名にしたのは、いわゆる「ポケモンショック」です。1997年12月16日にテレビ東京で放送されたテレビアニメ「ポケットモンスター」(ポケモン)の視聴者が光過敏性発作などを起こした事件です。各局の同時ネットにより、345万人の視聴者(4〜12歳)が見ていたと推定されています。この回の放送直後、放送を見ていた視聴者の一部が、発作様症状、眼・視覚系症状、不快気分、頭痛や吐き気などの体調不良を訴え、病院に搬送されました。患者は約750人にのぼり、そのうち135人が入院しています。原因は激しい光の点滅(1秒間に13回の赤と青の光が交互に)を断続的に見たことにより光過敏性発作が引き起こされたためとされています。事件の影響でポケモンの放送が4カ月の間休止されました。しかし、実際は光刺激で誘発されるてんかんは非常に稀です。(全般型てんかんか後頭葉に焦点があるてんかんかどちらか)ポケモン人気にあやかってたくさんの子どもたちがテレビに釘付けになったおかげで、今まで診断されていなかったてんかんの児童を洗い出した形となりました。

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てんかん」とは、種々の成因によってもたらされる慢性の脳疾患であって、大脳ニューロンの過剰な発射に由来する反復性の発作(てんかん発作)を特徴とし、それにさまざまな臨床症状及び検査所見がともなうとされています。(WHO(世界保健機関)より)てんかんの患者は、全国で約100万人の患者(人口の0.5%~1%)がいて、決して珍しくない病気ですが、ほとんどが小児科の病気であって(3歳以下の発病が最も多く、80%は18歳以下で発病)われわれには関係ないと思っていましたが、老人ホームの嘱託医をしていますと、近年、高齢化に伴い、脳血管障害や認知症に伴う疾患として、抗てんかん薬を処方する機会も増えてきました。老人ホームでの意識障害の原因の多くは、排尿、排便、食後などの状況失神(迷走神経反射性)です。失神は、一過性の意識消失発作で、数分後には、完全にもとの状態に戻るはずですが、実際の現場では、90〜100歳のスーパーお婆ちゃんは、いろいろな危ない基礎疾患をたくさん持っていて、そのまま天国へと行きそうな勢いのこともよくあります。

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診断

てんかんの診断で、最も大事なのは、脳波でも頭部MRIでもありません。診断の決めてとなるのは、あなたの発作の目撃情報です。診断学の基本、病歴が命なんです。あわてずに、すぐれた観察者になることができるかどうかが、その患者さんを正しく診断することの繋がります。発作の始まりがどうであったかをよく観察しましょう。眼球や顔面の左右いずれかへの回旋やけいれんの有無、意識が失われるかどうか(優しく静かに語りかけてみましょう)怖い、寂しい、懐かしいなどの感情発作(側頭葉てんかん)やムカムカする吐き気(島症状)失語(優位半球)おかしな音(聴覚野)おかしな光(視覚野)一点を見つめて動かないもぞもぞと手を動かす、モグモグと口を動かすなどの穏やかな自動症など、発作の持続時間を測りましょう(時計を見る)てんかんって多彩ですよね。さらに、1回だけならてんかんと診断されません。最初の「てんかん」とはにも書いたように、慢性、反復性の脳疾患なんです。「難治性てんかん」としててんかん専門医を訪れる3割はてんかんではなかったという報告もあります。初発の痙攣は入院が原則です。最も重要なことは「てんかん」という診断は、患者の将来の生活に対して医学的、社会的に大きな影響を与えるので、正確に診断することが求められています。

 

てんかん発作の種類は、脳の一部分が興奮しておこる「焦点(部分)発作」と脳の大部分または全体が興奮しておこる「全般発作」に分けられます。焦点発作は、さらに発作中に意識のある単純発作と意識のない複雑発作に分類します。もうひとつの分類法として、真性てんかんと症候性てんかんがあります。真性てんかんは、機能的な原因で特発性てんかんと呼ばれるもので遺伝子変異が見られるものもあります。脳波異常のみで、他の検査はすべて正常です。症候性てんかんは、なんらかの器質性の原因があるものでてんかんの診断の最初のステップで少なくとも1回は頭部MRIを実施すべきと考えられており、分娩時の頭部外傷、先天性代謝異常、先天性奇形、乳幼児期の虚血、感染症、変性疾患、脳腫瘍、脳出血、脳梗塞などと共に外傷検索を行います。

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焦点(部分)発作
単純部分発作(意識障害なし)
患者さんの意識がはっきりしているなかでおこる発作をいいます。意識がはっきりしているため、発作中、どんな症状があったか覚えています。手足や顔がつっぱる、ねじれる、ガクガクとけいれんする、光や色が見える、人の声が聞こえる、片側の手や足のしびれ、吐き気をもよおす等があります。

複雑部分発作(意識障害あり)
意識が遠のくため、患者さんは発作中のことを覚えていません。発作は通常1~3分続きます。単純部分発作から続くこともあれば、突然複雑部分発作から始まることもあります。脳のどの部分が興奮するかにより、意識障害に伴ってどのような症状があらわれるか異なります。たとえば、側頭葉から興奮がおこった場合、衣服をまさぐる、口をもぐもぐする、口をぺちゃくちゃ鳴らす、ウロウロ歩くといった一見無意味な動作があらわれます。前頭葉から興奮がおこった場合、身体をバタバタさせたり、自転車をこぐような動きをします。

二次性全般化発作 (全般発作の強直間代発作とあわせて広義の意味で大発作とよびます)
単純部分発作あるいは複雑部分発作から、電気的興奮が脳全体に広がって全身のけいれんにつながることをいいます。発作の後半は、全般発作の強直間代発作と似ています。

全般発作
脳の広い範囲が興奮しておこる発作で、患者さんはミオクロニー発作を除いて意識がありません。「強直間代発作」「欠神発作」「ミオクロニー発作」「脱力発作」があります。
強直間代発作(狭義の大発作)
もっともよく知られているてんかん発作です。前兆がなく突然、全身のけいれんをおこします。その際、最初に叫び声やうめき声が出ます。手足を硬く伸ばして全身が硬くなる状態が数秒~10数秒続きます(強直期)。その後、手足を一定のリズムでガクンガクンさせながらけいれんします(間代期)。発作中は口を固くくいしばるため、口の中や舌を噛んだり、呼吸停止がみられます。発作は突然おこるため、転倒によるけがに注意が必要です。発作は1分ほどで終息しますが、そのまま眠りに入ったり、意識がもうろうとしたり、失禁することもあります。15~30分で意識は回復しますが、その後、頭痛、筋肉痛、嘔吐がみられる場合もあります。

欠神発作
突然、動作が止まったり、ボーっとしたり、話が途切れたり、反応がなくなるという症状の発作です。発作時間は5~20秒くらいと短いために周りの人にてんかん発作と気づかれず、集中力がない、注意力散漫などと勘違いされることもあります。主に小児期に発症し、成人期に発症することはまれです。

ミオクロニー発作
突然、手足や全身がびくっとけいれんする状態です。単発でおこったり、連続しておこったりとさまざまです。寝起きによくおこります。
思春期の若年性ミオクローヌスてんかんは両上肢や肩などが一瞬ピクッとする発作で、朝起きてすぐや昼寝の後に手や肩が 持っていたものを落としたことはありませんかなどの問診が決め手になることも、

脱力発作
突然、全身の力が入らなくなり、頭がガクンと垂れて、倒れこんでしまいます。持続時間は1~2秒ですが、突然転倒するためけがをしやすく頭部を保護することが必要です。

 

まずは、「失神」と「痙攣」も紛らわしい病態です。この辺の語句の整理から始めてみましょう。

Convuision:痙攣 症候名です。全身または一部の筋肉の不随意かつ発作的収縮。
Seizure:  痙攣(てんかん)発作 症候名です。1回毎の発作で、てんかんを思わせるような痙攣のことです。
Epilepsy: てんかん 病名です。つまり、てんかん発作は症状で、てんかん発作という症状をもった病気をてんかんと呼びます。
Syncope: 失神 循環器系、脳への血流不足によって起こります。(脳の器質的異常はありません)

失神と痙攣の鑑別は、目撃者がいないと難渋する場合も多いのですが、筋肉の収縮があったか?失禁、失便があるか?などが見分けるポイントになります。

  痙攣 失神
前兆 あり なし
舌を噛む 舌側方 舌前方
痙攣 強直性 弛緩性
分布 対称性 非対称性
起こり方 痙攣→意識障害 意識障害→痙攣
意識回復 遅い(>5分) 早い
失禁/失便 あり
代謝性アシドーシス(AG開大) あり なし

 

脳波検査
てんかんの症状は、発作時のみです。頭痛、全身倦怠感などの症状はてんかんとは関係ありません。てんかんの診断に目撃情報が最も重要とは言ってもやはり脳波検査も大切です。ただ、脳波検査は見落としの多い検査であると同時に読み過ぎも多い検査ということも知っておかなくてはなりません。脳波が正常でもてんかんは否定できません。反対に、異常な突発波を認めても早合点は禁物です。非常に難治性のてんかんであっても普段は脳波異常のない人もいます。脳波の異常のある人は人口の2〜3%、てんかんは1%なので、脳波の異常=てんかんではありません。脳波異常は、発作とセットではじめて意味があります。てんかんの診断に脳波は有用ですが、てんかん(疑)で脳波検査をして所見があったとしても、その時に発作が起こっていなければ、診断には至りません。外来での脳波の検査は、せいぜい30分〜1時間ぐらいです。何回も繰り返し検査し、ようやく異常波をつかまえることもあります。てんかん性棘波は、1時間に数個という場合もあります。睡眠時にしか出ない場合もあります。海馬など側頭葉内部構造、大脳半球間裂、脳底部など焦点が深部にある場合は検出出来ない場合もあります。外来診療でてんかんの診断が難しい場合は、入院による長期間ビデオ脳波モニタリング検査(数日間連続して昼も夜も2〜5日以上)を実施し、発作時の脳波が症状とあっているかを確認(ビデオで見た症状と脳波所見から部分発作か全般発作かを区別できる)することが重要です。

 

治療

「治らない病気」「発作がいつ起こるかわからない」など、てんかんに対する偏見も依然強くありますが、てんかんの約70%は、薬で完全にコントロールできます。特に子どもの良性てんかんは9割は止めらます。治療は、あわてて開始しないことが大切です。てんかんは、慢性的に繰り返す脳の疾患であり、初回の発作は経過観察です。「てんかんかもしれない」程度の判断で治療を始めるとてんかんの診断が一人歩きして、長い人生に多大な不利益を与えるかもしれません。一回きりの発作を持つ人が、5年以内にもう一度発作を起こす危険性は33%ですが、2回目の発作を起こした人が次に発作を起こす危険性は73%と上昇します。脳に器質的な異常が無ければ、一回きりの発作では治療の必要も無く、行動の制限も必要ありません。

てんかん」とはいろいろな病気の集まりのいわば総称で1989年に国際抗てんかん連盟によって提唱された分類です。この分類では、てんかんを原因から「特発性」と「症候性」に、発作型から「局在関連」(焦点性)と「全般」に大きく4つに分類しています。(現在は、新しい分類法が提唱されていますが、素人にはわかりにくいので、プライマリケア医はこれで十分だと思います)この分類を用いれば、最終的な病名が決まらなくても4つの大分類のどれに入るかがわかれば治療方針が立ち、これからどうなるかという予後が推測できます。

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特発性局在関連てんかんのほとんどの患者は、ある年齢に達すると自然に発作がなくなってしまいます。特発性全般てんかんでは抗てんかん薬がよく効くため、約80%の患者で発作は寛解します。一方、症候性局在関連てんかんでは、抗てんかん薬で発作を良好に抑制できる患者は50%程度です。症候性全般てんかんは、てんかん性脳症ともよばれ、どのような抗てんかん薬を用いても発作が消失することは少なく、ほとんどはてんかん発作以外に知能や運動機能の発達障害を伴います。

全般発作タイプのてんかん治療薬

  薬剤名 一般名 略語 常用量(mg/dl) 血中濃度(μg/ml) 半減期(hr) 蛋白結合率(%)
第一選択 デパケン パルプロ酸ナトリウム VPA 500〜2000 40〜100 4〜15 84〜95
第二選択

発作型などで使う薬に違いあり
アレビアチン フェニトイン PHT 100〜300 5〜20 5〜42 80〜95
  フェノバール フェノバルビタール PB 50〜150 10〜25 20〜130 45〜60
  リボトリール クロナゼパム CZP 1〜5 0.02〜0.08 20〜60 20〜60



焦点(部分)発作タイプのてんかん治療薬

  薬剤名 一般名 略語 常用量(mg/dl) 血中濃度(μg/ml) 半減期(hr) 蛋白結合率(%)
第一選択 テグレトール カルバマゼピン CBZ 200〜1200 3〜12 3〜26 65〜85
第二選択

発作型などで使う薬に違いあり
アレビアチン フェニトイン PHT 100〜300 5〜20 5〜42 80〜95
  エクセグラン ゾニサミド ZNS 200〜600 10〜30 24〜60 45〜50
  デパケン パルプロ酸ナトリウム VPA 500〜2000 40〜100 4〜15 84〜95

新しい抗てんかん薬には、ラミクタール(ラモトリギン)トピナ(トピラマート)イーケプラ(レベチラセタム)ガパペン(ガバペンチン)などがあります。抗てんかん薬の併用も含め、専門医にお任せです。僕は、デパケンかテグレトールのどちらかでスタートしています。

バルプロ酸は大量服用や多剤併用で催奇形性のリスクは上昇するが、常用での使用と葉酸を併用していれば妊娠を禁止するのは行き過ぎた指導です。

てんかん患者の約80%が薬物によって発作が完全に抑制されますが、発作型によっては一定の年齢でほぼ完治するものもあります(例えば、小児良性部分てんかん)が、あらゆる薬物治療に抵抗性を示すような群もあります。従って、てんかんの発作型を確実に診断することが大切です。

部分発作にはカルバマゼピン、全般発作にはバルプロ酸が用いるのが基本です。さらに、ウエスト症候群にはACTH、小児のミオクロニー発作にクロナゼパム、側頭葉てんかんの複雑部分発作にはテグレトール等が用いられることが多い。てんかんの分類、発作型が明らかな場合は、適薬を単剤(一種類のみの薬)が原則で、発作が抑制されるまで薬を徐々に増量し、その薬物の血中濃度を測定し、これを参考にして服薬量を調節します。第一選択薬で十分な治療効果が得られない場合には第二選択薬が追加される。実際は、2剤どかろか3剤、4剤併用されているケースもよく見られる。

フェニトイン(ジフェニルヒダントイン)で起こる副作用として歯肉増殖と多毛が伴うことが良く知られている。歯肉増殖は小児や若年者で多く見られ、歯肉炎など憎悪する傾向があるので、口腔内の衛生を保つよう特に努める必要がある。フェニトインの商品名は、アレビアチン、ヒダントール(フェノバルビタールとの合剤)などである。

Naチャンネルが異常

成人の場合は、脳の構造が変化しないのでなかなか中止しにくい
妊娠 4年発作がなければ、減量中止
男 仕事で何かあったら首になったらこまる

手術は、内側側頭葉てんかんの海馬切除は、95%ぐらい意識消失発作が治る MRIに異常があっても5分5分
てんかんの1/3は薬剤抵抗性です。1年治療しても、発作をコントロール出来ない場合は、難治性てんかんと言います。その効果は、併用薬との相互作用や脱水、低アルブミン血症などに影響され、
とりあえず、抗てんかん薬を2〜3剤試しても発作がコントロールできない場合は、専門医に紹介しております。

薬物血中濃度が有効域に達していなくても痙攣がコントロールされている症例も多く見られます。フェニトインやカルマバマピンなどが過量域に達していないかどうか

MRIが正常でも手術で発作が消える症例もたくさんあります。

外科治療のターゲットを決めることが可能に

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重積発作が起こると呼吸できないので低酸素血症で脳障害が起こると書いてある教科書もありが、これはほぼ否定されているようです。発作が続いて、顔色が土色で死んでしまうんじゃないかと思っても死ぬこともありません。呼吸が止まったとしても30秒ぐらいまでです。だから酸素投与は必要ありません。脳障害もほとんどありません。発作が30分〜1時間続いていましたというお話しもありますが、実際の発作は、長く感じても3〜5分ほどで、後は発作後のもうろう状態や寝ていた状態が1時間続いていたというのが正しい症状です。目の前で痙攣発作が起こってしまうと慌てるなというほうが難しいかも知れませんが、何もしないで勇気を持って、様子を見ているだけで良いです。発作中は本当にかなり大きな力がかかるので、生半可に手を出さない方が無難です。口の中に手を入れようものなら噛み切られるかもしれません。もしお風呂などで、溺れそうな場合は、まず水を抜いて、沈まないように顔を上げて置くぐらいで十分です。慌てない慌てない!

 

セルシン 10mg(5mg/mlを2A) 筋注
痙攣が止まらなければ、3〜5分毎に5mg(最大20mgまで)投与する

痙攣予防 アレビアチン500mg(250mgを2A)+生理食塩水100ml 点滴(ゆっくり、血管痛あり)

どうしても止まらなかったら、筋弛緩薬、挿管の世界なので、さっさと救急車を呼んで専門医に任せましょう。

 

本当に発作ゼロ?

発作が本人が気づくものなのか 意識消失もてんかんと同様大脳辺縁系の発作では、意識減損を伴う複雑部分発作が特徴的です。側頭葉てんかんなら一点を見つめて動かない動作停止や目撃者から見ると明らかに意識がないのに、本人は意識を失ってはいないと感じていることもあります。睡眠中の発作も一緒に寝ている人がいないと気づかれないこともあります。

真のてんかん発作と心因性非てんかん発作

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心因性非てんかん発作

心因性非てんかん発作(psychogenic non-epileptic seizure, PNES)は、発作時間が長く、2分を越えることが多く、さらに30分以上続くことも稀ではありません。発作中ずっと閉眼していることが多く、対光反射の発作中チアノーゼは伴わなかったり、発作後にもうろう状態がなかったりする。と真のてんかん発作との鑑別は、ちょっと素人には難しいかもしれません。の診断は、発作症状の観察と病歴聴取、複数回のビデオ脳波同時記録、カウンセリングや抗てんかん薬減量など素人には難しい。治療的介入が有効としている。
PNESは環境変化、情動葛藤、暗示、人前などの誘発因子が前駆することが多い。発作は緩徐に始まり、緩徐に終わり、発作の経過中に意識晴明と思われる反応がみられたりする。発作中ずっと閉眼していたり、眼瞼に速い振戦がみられたりする。強制開眼を試みるとこれに抵抗し、強制開眼させると眼球は上方に転位している。頭部を回転させても眼球位置が固定したままである。発作中ずっと口を硬く結んでいたり、強制開口に抵抗する。神経学的検査に抵抗する。痛み刺激への反応はないことがある。打ち身や切り傷は起こりうる。失禁ではなく、意図的な放尿はある。全身けいれん様の発作であるのにチアノーゼを伴わなかったり、発作後にもうろう状態がなかったりする。

  てんかん発作 心因性非てんかん発作
発作時間 2分以内 2分以上(30分以上続くことも稀ではない)
運動症状 強直 間代 躯幹を跳ね上げたり、後弓反張などあり
発作性脱力 時々ある
対光反射 しばしば消失 維持されている
開眼していることが多い 発作中ずっと閉眼していることが多い
発作後の見当識回復 たいていは分単位 なかったり、とても長かったり
皮膚 チアノーゼあり チアノーゼなし
咬舌 稀(舌側方部) ときどき(舌尖部)

 

抗てんかん薬血中濃度モニタリングの臨床的意義

てんかん薬の効果や副作用の発現には個人差が大きく、日常臨床でルーチンに血中濃度を測定しても、治療効果の判定や副作用の予防・早期発見には結びつくことを証明した無作為化試験はありません。抗てんかん薬の血中濃度モニタリング(therapeutic drug monitoring, TDM)に関する勧告によると、集団で良い効果が想定される血中濃度の範囲を基準範囲と呼んでいるが、これは個人には適用できないとしており、てんかん治療では患者ごとに個々人にとって最も良い効果がでる至適用量を決めることが重要です。TDMが有用な場合として
(1)望ましい効果が出た時のその患者の治療域を確認する
(2)臨床毒性の診断補助
(3)コンプライアンスの評価
TDMは、半減期の短い薬物ほど血中濃度の日内変動が大きく、血中濃度のピーク値はばらつきが大きいため、薬物の反復投与によって定常状態(半減期の約5倍)になってから服薬前の時間帯(平均血中濃度は最低値(トラフ値)とよく相関するため)の採血が勧められます。TDMは蛋白結合型と遊離型を合わせた薬物の総濃度を測定されていますが、抗てんかん作用を示すのは遊離型だけなので、低アルブミン血症などでは、蛋白結合率が高い薬物の場合は血中濃度が基準濃度内であっても遊離型の濃度が予想以上に上昇して副作用が発現することがあります。

てんかんの薬物療法では、かつてはTDMの重要性が強調されてきた。抗てんかん薬は第1世代(フェニトイン:PHT、フェノバルビタール:PBなど)、第2世代(バルプロ酸:VPA、カルバマゼピン:CBZ、ゾニサミド:ZNS、クロバザム:CLBなど)および第3世代(ガバペンチン:GBP、レベチラセタム:LEVなど)に分けることが出来る。第1世代のPHT、PB、PRMと第2世代のCBZは強力な肝酵素チトクロームP450(CYP)誘導作用を持ち、肝臓で代謝される併用薬物の血中濃度を低下させる。一方、第2世代のVPAは肝酵素阻害作用やグルクロン酸抱合競合作用をもち、肝代謝の併用薬物の血中濃度を上昇させる。したがって、第1世代と第2世代の抗てんかん薬を使用する際は薬物相互作用に注意を払う必要があり、ガイドラインでもTDMを行うことが推奨されているが、第3世代の抗てんかん薬はLTGを除いて腎排泄が主体であり、日常的にTDMを施行することの臨床的有用性は少ないとされています。

抗てんかん薬を服薬の患者さんは、怠薬が大きな事故に繋がるので、ちゃんと服薬しているかどうかのコンプライアンスのメルクマールとしての血中濃度測定が重要です。

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2012年4月12 日、京都市東山区において軽ワゴン車が歩行者7人を死亡させ11 人を負傷させるという重大な事故が発生しました。この事故は、記憶にある方も多いかも知れません。こういった若い患者さんのほとんどは、精神科、心療内科などの専門医で治療されていることが多いようですが、加害者(運転手)はてんかんの治療を受けていることを免許更新時に申告をしていなかったようです。

てんかんのある人の運転免許取得には、5年以上発作がコントロールされていて服薬も継続している場合、大型免許と第2種免許の取得は控えるなど(運転を主たる職業とする仕事もお勧めできません)一定の条件が決められています。

この事故を契機に、「改正道路交通法(改正道交法)」と「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷処罰法)」の2つの法律が施行され、運転免許の取得(更新)の際には、虚偽の申告をして事故を起こしたり、体調不良や抗てんかん薬を飲み忘れた時などに、運転し、死傷事故を起こした場合の刑罰が重くなりました。また、運転をすることができない状態であるのに運転をし続ける人を、医師が公安委員会に届け出ることができるようになりました。てんかんのある人に対する社会の偏見が助長されることのないようてんかんのある人やご家族の皆さんには、運転免許取得・更新において、このような事故が繰り返されないように、法令遵守を心がけて頂かなれけばなりません。




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てんかんは、神経内科的な疾患ですが、歴史的な背景から、精神科的疾患に分類されており自立支援医療(精神通院医療)が適応され、医療費の補助が受けられます。

てんかんは、遺伝はほとんど関係なく、兄弟では見られること有り。

大脳皮質の異常 大脳基底核は発作性運動誘発性ジスキネジアなど

低血糖と心室細動を除外
ヒステリー発作を否定

日常生活での注意は、言い出したら切りがないけれど、プールでもおこることあり
ホームの先端に立つな
デスクワークなどの仕事はかまわないが、
介護職などで入所者の入浴などは2人体制で行う配慮も必要

普通免許であれば、

ルーチン脳波検査の有用性はなく、発作症状と発作時脳波を同時に観察できるビデオ脳波同時記録が有用である。診断のためにPNESを誘発する場合は、治療的配慮から患者や家族に嘘をつかないというスタンスで行う。発作後30分以内の採血でステロイドやプロラクチンの上昇がない、全身けいれん様重積で動脈血ガス分析に変化がないなども、PNESの特徴である。