熱中症
さて、問題です。
Q:トマトの水分は何%でしょうか?
A:90%です。
では、
Q: 人間は何%水で出来ているでしょうか?
A: 60%は水です。
人間の体もほとんどが水でできています。性別や年齢で差はありますが、成人では約60~65%を水が占めているのです。 絶食でも、水だけあれば、1ヶ月生きられますが、水がなければ1週間も生きられません。人間が生きていくには、水は大切なもので、水を失うことは命取りなのです。
人間は、生まれた時は身体の80%が水分です。トマトの水分量が90%といいますから、いかに赤ちゃんが水分で満たされているのかがよく分かると思います。成人男性が60%、性別では女性のほうが水分量の割合が少なくなっています。これは、女性の方が脂肪が多いからです。高齢者になると約50%まで水分量は落ち込み、高齢者は慢性的な脱水症状といっても過言ではありません。

もうひとつ大事なものが、Na(ナトリウム)つまり塩です。46億年前に地球が誕生し、38億年前に海で生命が誕生しました。そして約3億年前に、生命は、腎臓(海水ボンベ= 水とNaを蓄えるシステム)を進化させて、 海から陸へ上がってきました。人間も体の中に海を抱えているのです。 
敵に塩を送る
戦国時代のお話です。1567年武田信玄は今川氏との同盟を破棄し、東海方面への進出を企てますが、それに怒った今川氏は北条氏と協力し、武田領内への「塩留め」(経済封鎖)を行いました。武田の領地は甲斐・信濃(現在の山梨・長野)で、海に面していなかったため塩を取ることが出来ず領民は苦しみました。塩は、人が生きていくのになくてはならない物でした。 しかも、越後の上杉謙信とは、これまで何度も合戦を繰り返し、敵対していた間柄であり、 越後から塩を送ってもらうわけにもいきません。 ところがこの事を、聞きつけた「義」を重んじる上杉謙信は、 たとえ敵とはいえ、これを見すごす事は武士の恥と「すぐにも松本に塩を送り届けよ」命じて、武田氏とその領民を助けたそうです。このことから、敵対関係にある相手でも、相手が苦しい立場にあるときには助けてあげることを「敵に塩を送る」というようになりました。
塩って生きていく上で大切なものでしたが、最近では、塩漬けされ体から塩を抜くのにひと苦労、時代についていくのも大変ですね。
熱中症とは
熱中症とは、読んで字の如く「熱に中る」という意味であります。高血圧症の診断基準では、収縮期血圧や拡張期血圧などがあり、糖尿病では、血糖やHbA1cなどがありますが、熱中症の診断基準は、単純に暑さが直接原因になって生じる、めまいや痙攣、頭痛などの症状の総称です。
熱中症は、7月下旬から8月上旬に多く、特に7月がもっとも多くなっています。これは、体が暑さになれていないため、熱中症にかかりやすいと考えられています。梅雨明けは、熱中症に気をつけましょう。
年齢別に見ると、乳幼児と高齢者がとくに熱中症になりやすいことがわかります。

なぜ、 乳幼児や高齢者に熱中症が多いのでしょうか?

暑い環境では、人間は汗をかいて体表面から汗を放散し、体温を37℃程度に保とうとします。 しかし体温を一定に保つ機能には限界があります。とくに子どもはおとなにくらべて、体温の調節機能があまり発達しておらず、また体の大きさにくらべて体表面積が大きく、環境の温度変化の影響を受けやすいため、子どもは熱中症になりやすいといえます。 しかも乳幼児(寝たきり老人)の場合、暑さを感じても、おとなのように自分で服を脱ぐのが難しく、自分で水分を補給することもできないのです。
高齢者が熱中症になりやすい主な理由を3つ紹介します。 1つは、人は汗をかいて体温を下げようとしますが、高齢者では汗をかきにくくなっており、体温をうまく下げることができません。2つ目は、もともと若い人よりも体内の水分量が少ないので、それほど汗をかいていないようでも、血液の濃度が濃くなってきます。こういうときは脳の働きで「のどが渇いた」と認識し、水を飲もうと思うはずなのですが、高齢者の場合はこの仕組みが低下しているため、渇きに気づきにくい状態になり、水を飲むのが遅れるため、いつのまにか脱水を起こしてしまうのです。また、夜間などにトイレに行く回数が増えるのを嫌って、水分をとるのを控える人もいます。3つ目はのどの渇きや立ちくらみなどの症状があっても、持病のせいだと思いこんだりするケースがあって、気づくのが遅れてしまうことがあります。
1日の水分摂取量(ml) 成人
代謝水:体内で、脂肪や糖質などの栄養素が燃焼することで発生する水分 (燃焼水ともいう)
不可避尿:体内の老廃物を溶かすのに最低限必要な尿。 つまり、1日最低500mlの尿を出さないと、身体に老廃物が貯まり、病的な状態になってしまう
随意尿:摂取した水分の量によって調節される分の尿。多く水分をとり過ぎたら、これで排せつする
1日に人間の体から出る水分は、尿が約1200ml〜1500ml、便が約100ml、呼吸で350ml、汗に550ml。合計、2200〜2,500mlもの水分が失われている。一方、食事から摂取する水分は約700ml、体内での代謝水が約300mlだということを考えると、飲料水として必要なのは1日約1200〜1500mlになる。「ちょっと汗をかいたな」というときは、さらに余分に水分を摂るように心がけましょう。
どうやって飲むのがベスト?
高齢者の場合は、喉の渇きを感じにくくなっていたり、脱水になりやすいので、こまめに水分を補給するように心がけましょう。1日1リットルの水を飲むといっても、一度にがぶ飲みしてしまっては、過剰の水が胃液を薄めてしまい、消化不良を起こし、よけいにばててしまうこともあります。飲むなら、1回200ml程度を何度かに分けて摂取したい。1日のサイクルとしては、朝目覚めたとき、1日3回の食事のとき、午後3時のおやつのとき、入浴前後、寝る前などにコップ1杯ずつの水を飲むなど決めた時間に、水分補給するのが上手な水分補給です。
体温調節の仕組み
生理学的な知識として正常な体温調節の仕組みについてお話します。体温は、体内での熱の産生と外部との熱の交換のバランスで決まります。このバランスをとっているところが視床下部の体温管理中枢であります。体温管理中枢は整理的に日内変動(0.5℃)を作るとされており、体温は午前中に低く夕方に高くなる傾向にあります。
熱交換の原理についてですが、以下の4つが基本となっています。
熱伝導は、直接皮膚に触れている冷たいものに熱い皮膚からの熱が移動する。氷水のお風呂に入ることで体表から冷たい水に熱が移動する、これを冷水浸漬(しんし)と言います。
熱放射は皮膚から外界に向かって熱が拡散していく、やかんでお湯を沸かすと周りは熱くなりますよね。
蒸発(気化熱)汗などの水分が蒸発する際に熱を奪い取る、打ち水、熱い地面に水をまくことで、水が蒸発することで涼しくなる
対流は皮膚に風が当たることによって放射や蒸発をさらに促進する働きがあります。扇風機やうちわで扇ぐことで涼しくなります。
体温を管理するのに皮膚の血流は重要です。皮膚の毛細血管が拡張し、血液の流れることで皮膚の広い体表面積を有効に使って外部との熱交換の効率が上がります。
熱中症の病態
人間の体は外界の気温の上昇に対し順応しようと努力するわけです。運動や暑熱環境下において代謝が亢進し、深部体温が上昇すると発汗により体温を下げ、代償期においては心拍出量上昇させるとともに体表の毛細血管を拡張させ体表の血流増加と内臓血流の低下のバランスを保ちながら体の中に溜まった熱を体の外へ出して行こうとする働きが起こります。しかし、非代償期になると脱水により更に深部体温が上昇し、細胞の低酸素、 腸管透過性亢進、循環虚脱などにより、中枢神経、肝臓、腎臓、心臓などの全身の臓器の障害、凝固異常、横紋筋融解などをきたすのが、これが熱中症の本体であります。一般に体温耐性範囲は、高温領域の方が狭く、体温が41℃を超えるとミトコンドリアの酵素活性が傷害され、さらには細胞死やタンパク変性が起こり死に至ることになります。したがって、一番の治療はいかにこの深部体温の上昇を早く押さえ込んでいくことが重要です。熱中症はすぐに冷やすこと、暑熱環境から救い出すことが大事です。
発熱と高体温の違い
体温の設定は視床下部で調節されています。感染症などにかかると設定温度がリセットされて、設定温度が高くなると言われています。人間の体は、体温中枢が定めた設定温度に到達するように、筋肉を震えさせたり、外部との熱交換を抑えて、うつ熱、熱を上げていきます。感染症に立ち向かうために生理学的に熱を上げて免疫賦活作用を高めるとされています。すなわち、発熱は視床下部のセットポイント自体を上げる働きによって起こる、これが感染症による発熱です。
通常であれば、普段の平熱の視床下部のセットポイントは、36〜37℃になるわけですが、感染症にかかるとセットポイント自体が高く設定されてしまいますので、それに追いつくように人体は体温を上げていくことになります。解熱薬というのはこのセットポイントを下げる働きがあるので、発熱や血管拡張して熱が下がってきます。しかし、熱中症(高体温)は視床下部のセットポイントは変わっていないにもかかわらず、外部の暑熱環境で体温が上昇しているので、セットポイントを下げる解熱剤は効果はありません。感染症による発熱と熱中症による高体温の生理学的なメカニズムの違いを理解しておく必要があります。
コロナ禍における熱中症
実際の臨床現場では、感染症の発熱を熱中症の鑑別はそんなに簡単ではありません。一般的には、高熱が出る代表格であるインフルエンザは冬に流行するので、熱中症の鑑別診断に挙がって来ない疾患ですが、新型コロナウイルスに関しては、まだ夏の流行が見られています。年齢分布も類似しており、発熱が主体である場合は、血液検査で特異なものもなく、COVID19か熱中症かは判断しにくい状況です。先日も90歳の認知症のおばあちゃんが冷房もつけずに寝ていて、水分も十分飲んでいない、熱が39度もある。風邪症状はない。状況的には熱中症が疑われ、点滴していると時々咳が出ているので、念のために新型コロナの検査をしたら陽性が出てしまいました。
発熱外来では、PCR検査を行います。患者さんを集めて、午前11時30分から開始しました。駐車場の車の中で待機してもらい(患者さんはクーラーが効いている)我々、医療従事者は、炎天下の中、PPE(個人防護服)として、マスクや手袋、フェイスシールド、ガウンなど完全防備で問診、説明、検査等行います。1人5〜10分としてせいぜい10人ぐらいが限度です。後は午後に回ってもらいます。汗びっしょりで、こちらが熱中症になってしまいそうですね。ホントに大変です。スタッフの皆さんに感謝です。
重症度分類
熱中症の重症度分類は、日本救急学会の熱中症に関する委員会が2015年に発表した熱中症ガイドラインを使用しています。それ以前は、熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病、日射病などの病名が使われていて、かなり臨床現場を混乱させていました。これを新しい分類は、Ⅰ度、Ⅱ度、Ⅲ度と単純化し、それぞれⅠ度は、現場で対応可能であり、医療機関への受診は必要がありません。Ⅱ度は、救急車で医療機関を搬送し、ヘルスチェックが必要、Ⅲ度は入院治療が原則なり、臨床現場に則した分類になっています。
日本救急医学会の来院時の重症度分類はI度が約半数を占めています。医療機関を受診した熱中症の患者さんのまとめなので、実際は、医療機関を受診しなかったI度の熱中症がたくさんおられることを考えると多くはI度と考えられる。
I度
熱中症Ⅰ度は、従来、熱失神、熱けいれんと言われていたもので、めまい、発汗、こむら返りなどがみられます。直射日光の下で長時間立っていたり長時間行動や高温多湿の室内などで、長時間活動していた時に、皮膚血管の拡張によって血圧が下がり、脳血流が減少しておこるもので、めまい、失神などがみられる。 顔色が真っ青になり、呼吸回数が増え、脈は速く、しかし弱くなり、唇のしびれがおこることもあります。長時間立っていたり、座った姿勢から立ち上がったとき、運動の後にも起こります。
上海万博では、熱中症対策に胡瓜(きゅうり)をほおばる姿がみられました。胡瓜は、水分90%含み、1本で100mlの水分を補給できます。冷やして携帯性にも優れ、カリウムなどのミネラルも豊富で、中国4000年の歴史を感じますよね。

汗を大量にかいた後に (水分と一緒に塩分も失われる) 水ばかり飲んで、塩分の補給をしなかった場合に起こりやすい症状です。血液中の塩分やミネラル濃度が低くなり、お腹やふくらはぎの筋肉が、痛みを伴い、けいれんします。体温は正常であることが多い。
帯に短したすきに長し
(ナトリウムは少なく、糖は多すぎ・・・ちょっと苦しい?)
スポーツドリンクは飲みやすくするために、塩分を少なくして、糖分がたくさん入っています。汗を大量にかいた時などの塩分補給は、ちょっと難しいかも知れません。
ここで、ちょっと難しいけど、大事な話をします。ナトリウムはブドウ糖といっしょに吸収されます。つまり、ナトリウム1個吸収するのに、糖も1個いるのです(Na-糖共輸送担体)また、ナトリウムの吸収とともに、水も吸収されます。従って、熱中症や胃腸炎で脱水がある場合に、水分を腸から吸収するために、飲ませる液にはナトリウムとブドウ糖が入っていた方が効率がいいわけです。日本では、昔から重湯に少量の塩を混ぜて、飲ませる方法は理にかなっていたわけです。

とりあえずは、声とかけてみて下さい。「大丈夫ですか」普通に受け答えできれば、ほぼ心配ありませんが、少しでもおかしければ、すぐに救急車を呼びましょう。意識がしっかりしていれば、その現場で応急処置を始めます。まずは涼しいところに移動します。屋外であれば、木陰などで風通しのいい所やクーラーの効いた車の中とか、屋内なら冷房の効いた涼しい部屋(保健室)に入れてあげて安静にします。そしてできれば体を冷やす、冷たい水を与える。お水を自分で飲めるかどうかを確認します。うまく飲めなければ、すぐに救急車を呼んでください。ペットボトルだと蓋をちゃんと開けて口に持ってこれてむせずに飲める。これでその人が意識がしっかりしていること、冷たい水を飲み始めたと言うことは、体に水分が入り始めた、体を冷やし始めたと言うことで、すでに熱中症の応急処置が進んでいると言うことになります。その状態で見守ってあげる、少なくとも20分ぐらいは見てあげて、状態がよくなっているかどうかを確認します。良くなっていなければ、その時点で救急車を呼びます。良くなっていれば、うまく行けばそのまま自宅に帰って様子を見てもらっても構いません。高齢者や持病のある人で心配であれば、医療機関への受診を勧めます。
1日の水分摂取量(ml) 成人
代謝水:体内で、脂肪や糖質などの栄養素が燃焼することで発生する水分 (燃焼水ともいう)
不可避尿:体内の老廃物を溶かすのに最低限必要な尿。 つまり、1日最低500mlの尿を出さないと、身体に老廃物が貯まり、病的な状態になってしまう
随意尿:摂取した水分の量によって調節される分の尿。多く水分をとり過ぎたら、これで排せつする
1日に人間の体から出る水分は、尿が約1200ml〜1500ml、便が約100ml、呼吸で350ml、汗に550ml。合計、2200〜2,500mlもの水分が失われている。一方、食事から摂取する水分は約700ml、体内での代謝水が約300mlだということを考えると、飲料水として必要なのは1日約1200〜1500mlになる。「ちょっと汗をかいたな」というときは、さらに余分に水分を摂るように心がけましょう。
Ⅱ度
高音多湿下で長時間いたり、運動や仕事によって大量に汗をかいても水分を補給しなかった場合に、体内の水分や塩分不足による、脱水症状が原因になります。寝たきりで水分補給が自力で出来ない高齢者や高温環境になれていない人が起こしやすい。頭痛やめまい、吐き気や脱力感などを生じます。 体温はやや上昇傾向にあることが多い。自力で水分の摂取ができないときは、医療機関に搬送しましょう。
高齢者は、屋内でも熱中症になります。
さて、熱中症というと夏の炎天下で活動した時にかかるという印象がありますが、件数では屋内の方が多いのです。東京消防庁が、平成19年に熱中症にかかって救急車で運ばれた患者1277人について詳しく分析したところ、熱中症にかかった場所で最も多かったのはマンションを含む住宅内で32%、次いで路上が19%、3番目がグラウンドなどの13%の順でした。 ちょっと意外な結果ですが、住宅の中で熱中症にかかるのは60歳以上の人が57%を占めていました。逆にグラウンドなどは10代が58%という結果でした。 つまり、高齢者が家の中で熱中症になるケースが多くなっているのです。高齢者は普通に生活していて熱中症になってしまうのです。
油断は禁物 元気盛りの人でも熱中症になります
熱中症は暑い日に起こりやすいのですが、実際はそれほど暑いと思わない程度の気温でも、熱中症の症状を起こす人はいます。その人の年齢、体調、病気、水分の取りかた、住居の環境、運動や労働の程度、暑さに慣れているかといった、いろいろな要素がからんで、熱中症は起こったり、起こらなかったりするのです。 体調が悪いときは、自分の体温をコントロールする「体温調節機能」が低下し、ふだんは平気な程度の暑さでも熱中症を起こすことがあります。発熱、下痢、二日酔いなどで体調が悪いときは気をつけてください。また、肥満の人は軽い運動でもエネルギー消費が大きく、熱の発生が多くなります。また脂肪が熱の放散を防ぎ、体温を閉じ込めてしまいます。このため体温が上昇しやすく、熱中症を起こしやすくなります。病気がある人(高血圧、心臓病、慢性肺疾患、肝臓病、腎臓病、糖尿病など)も熱中症を起こしやすくなります。また発汗を抑制する作用がある薬、利尿作用がある薬、興奮性のある薬、抗精神病薬を服用している人は、薬の種類によっては熱中症を起こしやすくなります。
Ⅱ度の症状は倦怠感、頭痛、嘔吐、軽度の中枢神経障害を伴う状態である。なんとなくおかしい(いつもと違う)自力で水分が取れない場合は、症状が軽そうに見えても医療機関へ搬送しましょう。一人にしないで必ず誰かが付き添うことが大事です。医療機関に搬送されると、バイタルサイン(血圧、脈拍、体温、呼吸数、意識状態、SpO2)をチェックして、それは安定しているとなると保冷剤をタオルで包んで、両脇、両鼠蹊部に当てます。首筋には氷水に浸したタオルをよく絞ってから当てます。扇風機で風を当てます。体感を冷やすには全胸部から腹部に氷水に浸したタオルをよく絞ってから置いて、霧吹きで水をかけます。そして末梢血管を確保し点滴をして様子を見ます。
日本では、熱痙攣程度の軽い熱中症の患者さんが来たら、点滴をしますよね。(経口補水液でも十分だと思いますが、安いものだし、ベットが空いてて、急患もいなければいいかなあと最近は思えるようになってきました)熱疲労以上の体温の上昇が認めれるような熱中症は、原則として入院です。横紋筋融解症(尿がコーラ色)や高カリウム血症などの合併がないかどうか見極めながら、十分量の点滴をします。
Ⅲ度
熱疲労の状態が続き、体内で発生した熱が外に放散できなくなり、体温調節機能が失われ、発汗はなくなり、皮膚は乾燥し、体温が40℃以上まで上昇します。 頭痛、吐き気に加え、意識障害、けいれんなどが起こり、最悪の場合、死にいたるケースがあるため、救急車で病院に搬送する必要があります。毎年のように、車の中に置かれた子どもが熱中症で亡くなる事故が起きます。炎天下の車の中の温度を30分ほどで50度以上になります。ちょっとの間だから大丈夫と思って、子どもを車の中に置くのは絶対にやめてください。

Ⅲ度は、従来、熱射病と言われていたものですが、意識障害、けいれん、真っ直ぐ歩けないなど明らかな中枢神経障害があり、肝障害、腎障害、凝固障害なども認める場合です。入院治療については、救急の専門医ではないので割愛させていただきます。
予防
暑さ指数(WBGT)がとても大事だと言われています。気温、湿度、輻射熱などの要素を取り入れて計算される指標です。皮膚の表面に発汗をしたとしても外界の湿度が高ければ、汗が蒸発しにくくなり、熱中症になりやすいということになりますので、人間の体の中の熱を外界に放散させるためには、単純に気温だけではなくて湿度も大切な要素になります。
熱中症とWBGTとの関係ですが、WBGT28が、乾球温度31度(気温)に相当し、ひとつの大きな判断の基準として厳重警戒「激しい運動は避ける」となります。
気温は温度計で確認することが大切です。部屋の環境で西陽などが当たるとエアコンの設定温度を28度に設定していても、実際は30度を超えていることもあります。高齢者は冷房が嫌いという人もいますが、あまり冷やしすぎないように、28度以上にならないように調整します。湿度も50〜60%をキープしましょう。気温と湿度で、熱中症の起こりやすさを知らせるものもあります。針が交差しているところが、黄色なので、厳重注意:喚気、冷房、水分補給は必要となります。