急性心筋梗塞

心筋梗塞の診断において、問診が最も重要であることは言うまでもありませんが・・・一番大事な症状は、冷や汗両肩への放散痛です。こういった男性が胸痛を訴えて、冷や汗をかいて、心電図はSTEMI(ステミ:ST上昇型心筋梗塞)こういった典型的な症状で来院する心筋梗塞は25%に過ぎません。典型的な症状があれば、心電図が正常でも、専門病院に紹介するのが、専門医として見逃しを減らす、最も大切なことです。

 

反対に、胸痛のない心筋梗塞を見逃さないようにしないといけません。その代表選手が、高齢の女性、糖尿病の患者さんです。急性心筋梗塞の平均発症年齢は、男性65歳、女性75歳と、女性の方が男性より10歳高齢です。高齢になればなるほど痛みを感じにくく、80歳で半数、85歳では3人に1人しか胸痛を感じないわけです。

心筋梗塞の心電図は、発症してからの時間とともに特徴的な変化を起こします。その心電図変化を知っていれば、心筋梗塞が発症してからどれくらいの時間が経っているかを知ることができるため重要です。多くは、共通発作が起こってから数時間以内に来院される事が多いので、T波の増高 → ST上昇 → 異常Q波 が急性心筋梗塞の特徴的な心電図所見と言われているわけです。

心筋梗塞

まず、ST上昇型心筋梗塞(ST-segment elevation myocardial infarction)からいきましょうか。1mm以上のST上昇が、解剖学的に隣り合った2つ以上の誘導で認められる場合というルールです。ちなみに解剖学的に隣り合ったとは、右冠動脈ではⅡⅢaVF 、左前下行枝では、V1〜V3、左回旋枝ではⅠaVLなどです。

典型的な急性心筋梗塞の心電図は、少し慣れれば救急隊の方でも「STEMI(ST上昇型心筋梗塞)です。救急搬送します」と言われます。

心筋梗塞

この心電図はどうでしょうか?ⅠaVL V1〜V5ぐらいでST上昇を認め、ⅡⅢaVFでST低下しています。急性下壁梗塞の典型的な心電図ということでいいですね。心筋梗塞の場合は、Reciprocal change(ミラーイメージ)といって反対側の誘導のST低下を伴うのが特徴です。(ST上昇とST下降の両方が混在

しかし、Reciprocal changeは、冠動脈の大きさ(前下行枝下壁まで回り込んでいる)や閉塞する場所によるバランスで、下壁梗塞には70%に見られますが、前壁梗塞では30%にしか見られないので、なくても心筋梗塞は否定はできませんが、もしあれば、心筋梗塞を強く示唆する所見になります。下記の心電図は、V2〜V6までST上昇を認めますが、対側のST低下を伴わない急性心筋梗塞です。左前下行枝の真ん中あたりで閉塞したか前下行枝が心尖部から下壁にまで回り込んでお互いを相殺したなどのバランスの結果です。

心筋梗塞

 

この心電図はどうでしょうか?

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ⅡⅢaVFでSTが上昇しています。急性下壁梗塞の心電図ということでいいですね。心筋梗塞の場合は、Reciprocal change(ミラーイメージ)といって反対側の誘導のST低下を伴うのが特徴です。(ST上昇とST下降の両方が混在)しかし、Reciprocal changeは、冠動脈の大きさ(前下行枝下壁まで回り込んでいる)や閉塞する場所によるバランスで、下壁梗塞には70%に見られますが、前壁梗塞では30%にしか見られません。もしあれば、心筋梗塞を強く示唆する所見になります。

急性心筋梗塞と診断すれば、ACLS的には、直ちにMONA(モルヒネ、酸素、ニトロ、アスピリン)が推奨されていますが、下壁梗塞の場合、いくつかの注意点があります。

下壁梗塞の場合、右冠動脈、左回旋枝のどちらの閉塞でも起こりえますが、ST上昇がⅢ>ⅡaVFの場合は、右冠動脈の閉塞と考えられます。右冠動脈からは右室枝が分枝しているため、右冠動脈の根元に近い閉塞の場合は、右室梗塞を合併している可能性があります
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V4RV5RのSTが上昇しています。右室梗塞(下壁梗塞の25〜40%に合併)に、安易にモルヒネ、ニトロを使うと血圧が低下してしまいます。治療には、輸液負荷が必要です。

ちなみに、この心電図は、超急性期の心筋梗塞です。R波とST上昇がくっついて台形状になっています。これをTomb stone(墓石状)と呼ばれています。よく見るとR波とST上昇が離れているところがあるんですが、頻拍になるとSlow VTや脚ブロックに見えたりして、時間が勝負なので誤診のないように中止が必要です。

心筋梗塞

 

ちょっと難しい心筋梗塞

1mm以上のST上昇が、解剖学的に隣り合った2つ以上の誘導(右冠動脈ではⅡⅢaVF 、左前下行枝では、V1〜V3、左回旋枝ではⅠaVLなど)で認められ、Reciprocal change(ミラーイメージ)といって反対側の誘導のST低下を伴うのが特徴です。(ST上昇とST下降の両方が混在)していれば、典型的な心筋梗塞の心電図として誰でも自信をもって診断できるわけですが、中には冷や汗をかいて、胸部絞扼感を訴えられ、臨床的には心筋梗塞が疑われるけど、心電図がちょっといつもと違うという場合もあります。

後壁梗塞

通常の12誘導心電図には後壁梗塞に対応するQ波が観察できる誘導がなく、その鏡面像変化としてV1〜V3のR波が増高する。初めSTは下降し、のちに左右対称にT波の増高が見られる。

純粋な後壁梗塞は稀で、多くは下壁梗塞や側壁梗塞と同時に起こることが多いので、IIⅢaVF誘導やIaVLV5V6誘導にQ波やST変化を見逃さないことが大切です。

V1V2でST低下は、ミラーイメージとしては、ちょっと低下の度合いが大きいような?。後壁梗塞も疑います。右室梗塞や側壁梗塞には、後壁梗塞も合併しやすいわけです。背中の誘導も大事です。しかし、経過を見て、右側胸部誘導がpoor r progressionのままで、R波増高や陽性T波が出てこないようであれば、陳旧性前壁梗塞の合併が考えられます。

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付)後壁梗塞(回旋枝の完全閉塞)

V1〜V3のT波増高。側壁(ⅠaVL V5V6)下壁(ⅡⅢaVF)にq波やST異常を伴う。

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(3)完全房室ブロックを合併しています。一部の症例で、一時ペーシングが必要かもしれません。注意して経過観察しなければなりません。

(4)下壁梗塞の原因が大動脈解離であることは稀ですが、反対に大動脈解離には5%に右冠動脈を絡めて、下壁梗塞を認めます。tPA を流す前には、病歴で痛みが移動していたか?胸部レントゲンで上縦隔の拡大は?血圧の左右差あるか?などの確認は必要です。(ちょっと頭の隅に置いておきましょう)

 

心筋梗塞と紛らわしい胸痛、心電図異常

急性心膜炎

54歳 女性 胸痛

さて、この心電図はどうでしょうか? V2〜V4のあたりのST上昇がありそうな、V5V6も上昇?、ⅠⅡaVFも上昇??

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隣り合った2つ以上の誘導でとういのはクリアしますが、右も左も?「これは大変です。背筋も凍る・・・」と言う割には元気そう、解剖学的にというとちょっと違うような感じですよね。すべての誘導でSTが上昇しているとなると急性心膜炎ですよね。ST上昇の形態が、心筋梗塞は上に凸、急性心膜炎は下に凸になります。

急性心膜炎      心筋梗塞

心電図では、心臓丸ごとみんなやられるので心房にも変化がおこります。aVRでPR部分の上昇(80%)ⅡⅢaVFの誘導ではPR部分が低下します。心膜液貯留が多い場合は、低電位を示します。

急性心膜炎は、頭にあれば結構見つけることができる疾患です。心筋梗塞を除外した胸痛のうち5%)問診では、ここが痛いと言って胸を指さす患者さんで、呼吸で痛みが増強(気胸?肋骨骨折?肋軟骨炎?)心摩擦音聞こえることもある?(ガサガサ?教科書には書いてありますが、聞いたことはありません)場合は、怪しいです。しかし、この心電図のST上昇は微妙ですよね。一般的に心膜炎のST上昇は0.4mV未満とおとなしく、心筋炎を合併することも多く、ST上昇も顕著になります。多くのの誘導で下に凸なST上昇が見られ、PRの変化も見られ、Reciprocal change(ミラーイメージ)も見られていないということで、急性心膜炎と診断されました。しかし、ST上昇も全ての誘導でとなると早期再分極もありかと思いますが、やはりST上昇で一番心配なのは心筋梗塞との鑑別です。

早期再分極症候群

症例 40歳 男性 健康診断で要精査

さて、この心電図はどうでしょうか? V1〜V6のST上昇、ⅡⅠⅡaVFも上昇しているようです。ⅡⅢV5V6のQRSの終わりごろにノッチのようなものもあります。

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よくみかける心電図ですよね。異常なし(正常範囲内)、早期再分極症候群と言います。症例1の心電図と比べてどうでしょうか?解剖学的な分布と異なった誘導、すべての誘導でSTが上昇下に凸のST上昇を認め、急性心筋炎と同じような心電図ですよね。鑑別のポイントは、J波を伴うことが多く(心筋梗塞にも、J波らしきものが見られることがあるので注意)T波が高いと言うことです。急性心筋炎では、普通のT波ですが、早期再分極では、T波は高く非対称にツンツンと尖ります。(対称性に尖るのは、高カリウム血症)また、副交感神経が有意な時に起こりやすいので、運動負荷により頻脈になり、副交感神経が抑制されるとJ波やSTの上昇は消失します。通常の臨床では、胸が痛くないので迷うはずはありません。早期再分極の特徴は、若い男性に多い、前胸部誘導に多い(四肢誘導だけに出ることはない)昔の心電図があれば、比べてみれば一目瞭然です。

昔は、これでちゃんちゃんと終わりのはずでしたが・・・。

早期再分極は、病的な意義はない良性の所見と長らく考えられてきましたが、近年、Brugada症候群と同様に、心室細動や突然死との関与が指摘されています。日本循環器学会のガイドラインでは、早期再分極は健常者(特に若年男性)にも比較的高頻度(3~ 13%)で認められ、特異度が低すぎるため(1)下壁誘導にJ波(ノッチ)を伴う早期再分極(特に 0.2mV 以上)(2)ST 上昇が下壁と側壁誘導の双方に認められ、かつ失神・めまい・動悸等重症な不整脈を疑わせる症状、または若年~中年者の突然死の家族歴がある場合に電気生理検査によるリスク評価の意義はあるとしています。

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J波

12誘導心電図のIIIIIaVFV5V6のQRS波の終末部に注目してみると、小さなノッチが認められます。この小さく鈍なノッチは,J波と呼ばれています。(J波が記録される誘導は、下壁誘導(II,III,aVF)または側壁誘導(I,aVL,V4, V5,V6)です。低体温時に記録される場合はOsborn波とも呼ばれる)J波やST上昇は、V4あたりで最大の事が多く(ノッチやスラー、分裂などの成因として、電気的ベクトルを直角方向から見ている移行帯付近で見られやすい)健常者にもJ波が約2%認められますが、J波が認められる特発性心室細動の患者は,若い男性に多いことと報告されています。J波はQRS波の終末部であるため、脱分極異常ではなく,再分極異常なのかもしれません。

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ちなみに、症例自体はフィクションですので、あしからず。

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早期再分極と急性心筋梗塞のST上昇を見分けられるか

早期再分極のST上昇の特徴として(1)すべての誘導でSTが上昇(2)J波が伴う事が多い(3)副交感神経優位で生じる(徐脈)(4)T波の増高も伴いやすい などを認めます。しかし、急性心筋梗塞のST上昇でもJ波を伴う事もありますし、Reciprocal change(ミラーイメージ)といって反対側の誘導のST低下を伴なわないものもあります。つまり、ST上昇とST下降の両方が混在していると場合は、心筋梗塞と断言できますが、Reciprocal changeは、冠動脈の大きさ(前下行枝下壁まで回り込んでいる)や閉塞する場所によるバランスで、下壁梗塞には70%に見られますが、前壁梗塞では30%にしか見られません。もしあれば、心筋梗塞を強く示唆する所見になりますが、ST上昇だけでも急性心筋梗塞の可能性は否定できないわけで、心電図だけで鑑別することは限界がありそうです。

症例5 44歳 男性 胸痛

この症例は、2時間前に胸痛あったが、来院時には胸痛は少しましになっていると言われた患者さんです。
心筋梗塞
急性心筋梗塞は、半分は完全に詰まった状態が持続しますが、半数は一旦は自然に再還流して翌日に再度詰まってしまうことがあります。この心電図は、冠動脈が一旦詰まった後、幸運にも再還流したものです。「大丈夫そうですね」と言って、そのまま帰すと再度詰まった時には、不整脈で突然死するかもしれません。
陰性T
冠動脈の左冠動脈が再還流した時点で受診された時に取られた心電図では、その詰まって、ST上昇の名残が残っています。V2〜V4誘導で、STTの変化しています。J点でSTが1〜2mm上昇し、そこからSTがゆるやかに上昇してT波の終末部分の陰性化を認めます。Wellens syndrome:ST上昇と T terminal inversionと呼ばれています。この変化は、急性冠症候群かHCM(肥大型心筋症)肺塞栓症以外にはないとされています。

 たこつぼ心筋症

症例 82歳 女性 胸痛

たこつぼ心筋症
これは、たこつぼ心筋症の症例です。心尖部の収縮低下と代償性の心基部過収縮を特徴とする心筋障害。高齢の女性に多く、精神的ストレスや身体的侵襲を契機に、心筋梗塞に類似した胸痛、呼吸困難を呈する。心電図変化は、発症直後にはST上昇や異常Q波がみられることがあり、その後、典型例では、広範な誘導でT波が陰転し、次第に陰性部分が深くなり、QT延長を伴う。予後良好で死亡率は0〜8%、1〜4週間以内に正常の心機能に回復します。心電図変化の特徴としては、ミラーイメージがないこと、ST上昇がV1-V3誘導よりV4-V6誘導が顕著にあり(aVRでST上昇はない)48時間以内にT波の陰転化し巨大陰性T波(T波の陰転化は数か月続くことがある)QT延長などとされていますが、急性期の胸痛発作時に心筋梗塞と鑑別することは難しい。
→ たこつぼ心筋症

急性冠症候群

症例 60歳 男性 高血圧放置 ちょっとしんどい

 この心電図所見は、reversed r progressionと呼ばれ、明らかに異常です。
 poor r
poor r progressionは、V1からV3にかけてr波が増大しない所見として精査の対象となることもあるが、reversed r progressionは、V1V2V3と順次r波が小さくなっていくものやV1V2といったん大きくなったr波がV2V3と逆に小さくなるものなどがある。この所見は、80%以上の確率で前壁中隔の心筋梗塞、拡張型心筋症、拡張相肥大型心筋症など心筋細胞の喪失を伴う病態を示している。この症例もST変化も伴い、高血圧などのリスクもあり、症状も怪しい、冠動脈狭窄を伴う可能性が高いと思われる。
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poor r progression

心室の特定部位に心筋が壊死、脱落するとR波が減高する。さらにその部位に心筋が貫壁性に失われると異常Q波を生じるため、R波減高と異常Q波は同義である。
R波は、V1〜V4V5にかけて徐々に大きくなってくるが、R波とS波が等しくなったところを移行帯と呼び、移行帯がV3V4の付近にあれば正常とされる。

移行帯

poor r progressionの心電図と所見をつけているのは、ほとんどはコンピューター判定ですが、医師がこう判断しているときは、その先生は、経験的にR波の連続性が失われていると感じている前壁中隔梗塞を疑っているわけです。

poor r

移行帯がV5V6となるとr波増高がなかなか進まず、poor r progressionになる。時計方向回転は、電気軸上の概念であり、決して実際に心臓がその方向に回転しているわけではない。

時計方向回転

この症例は一見、V2からV3の間で、r波が小さくなって、poor r progressionのように見えますが、R/Sの比率は順次大きくなっています。つまり、V2からV3で胸部誘導の電極の位置が心臓から遠ざかっていくため、QRSの振幅が小さくなってしまってr波が減高したように見えたわけです。このような心電図は正常であると判断されます。

poor r

 急性冠症候群(その2)

症例 64歳 男性 胸痛

 異常Q波の症例です。(Cardio2012のECGブログより
異常Q波

通常、心室中隔は左室側→右室側へと、興奮が進みます。そのため、V1V2小さなr波がV5V6には小さなq波が出現します。だからV1V2に、q波があること自体がおかしいんです。

胸部誘導

 

V1〜V4に認めるq波は、明らかに前壁の虚血を示しています。臨床情報がなければ、陳旧性の前壁梗塞と思います。今回は、胸痛発作後なのでACSとして取り扱う必要があります。この症例は、経過観察入院となって、急性心筋梗塞の経過をとりました。

冠動脈ステント留置術後の血栓予防

ベアメタルステントの時代、抗血小板薬の2剤併用療法といわれているDAPTの期間は1カ月程度といわれていました。その理由は、ベアメタルステントの場合には内皮化といって、だいたい1カ月程度でステントの内側 に内膜が張ってくるので、その期間だ けDAPTを使用し、その後は1剤の抗 血小板療法にするという、いわゆるSAPTでした。薬剤溶出性ステントの場合は、内皮による修復の過程が遅れるのでその間、血栓予防をしなくてはいけないので、DAPTの期間が長くなります。薬剤溶出性のステント時代に なり、急性冠症候群の症例においては DAPTの期間は約1年間が、ガイドラ インで推奨されています。ただ、出血の リスクが高い症例においては、DAPT の期間は約半分の6カ月程度でもいい のではないかともいわれています。 一方、安定型の冠動脈疾患では、DAPTの期間は急性冠症候群の症例よりも短くていいと考えられており、ガ イドライン上は6カ月のDAPTが推奨 されていますが、出血のリスクが高い 症例では、その約半分の3カ月でいいといわれています。 基本的に1 年以上は続けなくてもいいということですが、ただ、DAPTスコアが2点以上という高い症例では、長期間(30カ月間)のDAPTのほうの予後がよかったという報告もあります。DAPTスコアは、年齢、糖尿病、喫煙の有無、 PCIもしくは心筋梗塞の既往があるか、 心不全や低心機能があるかどうか、ス テントの径がどうか、といった因子によって点数化するのがDAPTスコアです。 75歳以上は点数が-2点で、65歳未満が0点です。高齢者は出血のリスクが高くなるので、DAPTの期間はむしろ短いほうがいいのではないかと考えられています。DAPTをSAPTにするということは、2剤使っていた抗血小板薬、アスピリンとクロピドグレル、どちらを抜くのかですが、現時点ではまだエビデンスがないようですが、消化管出血の既往があるような症例、すなわち胃潰瘍とか十二指腸潰瘍の既往がある症例の場合には、アスピリン製剤は消化管出血を起こしやすいことから、アスピリン製剤を中止してクロピドグレルもしくはプラスグレルを残す症例が多いかと思います。 逆に消化管出血の既往がない症例の場 合には、クロピドグレルを中止してアスピリンの単剤 にすることも十分可能ではないかと思います。

心房細動を合併していると、いわゆる抗凝固療法といわれている DOACというものが必要になってきます。さらにそういった症例にPCI、す なわちステントを留置しますと、そこ に抗血小板薬が2剤入ってくるので、 3剤併用になります。薬剤溶出性ステ ントを留置した場合、安定型の狭心症 であっても6カ月間DAPTが推奨され ているわけですが、6カ月3剤継続と いうかたちになると、極めて出血性イ ベントのリスクが高くなることから、 近年DAPTの期間が徐々に短くなって きているというのが現状です。これも 施設によって多少差はありますが、PCI 後、1カ月間だけ3剤併用で、1カ月 たったら抗凝固薬とSAPTにするという施設もあります。


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頭蓋内圧亢進
Cerebral T

「胸が痛い」の鑑別診断

胸郭出口症候群

縦隔気腫

前胸部痛、頸部/上肢への放散痛、皮下気腫