「同意書は、よく考えて書いて下さい。もし、患者さんになにかあって訴訟でもおこされると、接骨院に損害賠償の支払い能力がないと思うや、同意書を書いた先生に請求がくることになるかもしれませんよ」(弁護士は取れるところから取る)
怖い話ですよね。ちょっとびびっちゃいますよね。こんなことになると大変です。整形外科の先生にはちょっと聞きにくい雰囲気だったので、自分で勉強しました。厚生労働省のはり、きゅう及びあん摩・マッサージの施術に係る療養費の取扱いに関する疑義解釈におおいては、同意した医師は施術に対する同意を行うものであり、施術結果に対して責任を負うものではないとは明記されています。(実際のゴタゴタにおいては、いろいろあるとは思いますが、原則はこういうことです)調べてみて、まずわかったことは、免許をもった人と持たない人がごじゃまぜになっていて、医師との間のバトル以外に、医業類似行為なる業界内でもいろいろなせめぎ合いが繰り広げられているようです。あん摩マッサージ指圧師・はり師、きゅう師、柔道整復師は、国家資格です。その他、整体、カイロプラクター、オステオパス、クイックマッサージ、レフレクソロジー、足裏マッサージ等々、民間の資格から言ったモン勝ちまで百花繚乱、どう名乗ることも開業することも一切制限なく全く自由なようです。
あん摩マッサージ指圧師・はり師、きゅう師
では、まずは国家資格からいきましょうか。「あはき」?という言葉が出てきます。あはきとは、あん摩、マッサージ、指圧師、鍼(はり)師、灸(きゅう)師の頭文字を取った総称です。平成18年の「身体障害児・者実体調査」によれば、視覚障害者の就業者数は81000人、その内の24000人(29.4%)が、あはき業に従事しています。あん摩、鍼、灸は、古代中国で発達した物理療法で、6世紀に仏教とともに日本へ伝来しました。江戸時代、全盲の杉山和一が、鍼の施術法の一つである「管鍼法」を考案し、按摩の技術の習得を主眼とした視覚障害者教育施設「杉山流鍼治導引稽古所」を開設したことをきっかけに、視覚障害者の専業といわれるほどに、あはき(あん摩・鍼・灸)によって生計を立てるようになりました。按摩(あんま)「按」は「おさえること」、「摩」は「なでること」を意味し、東洋医学の虚実という概念に応じた使い分け、気血の流れをよくして疾病を治癒に導く施術方法です。一方、マッサージはヨーロッパで生まれ、明治以降に日本に持ち込まれた皮膚に直接求心性の手技を加え、血流の改善などを目的とした施術方法です。また、指圧は古法あん摩、導引、柔道の活法を合わせた一点圧を主体とした施術方法で、大正時代にアメリカの整体療術の理論と手法を取り入れて体系化されたものです。詳しいことはわかりませんが、マッサージは直接皮膚にアプローチして、あん摩と指圧は薄い衣服の上から施術を行うという違いもあるようです。
あん摩マッサージ指圧、鍼灸を仕事として行うには、国家資格が必要です。鍼灸マッサージ師を養成する東洋医学の学校は、①はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の3つの国家試験受験資格を取得できる ②はり師・きゅう師の2つの国家試験受験資格を取得できる ③あん摩マッサージ指圧師の国家試験受験資格を取得できるの3つのパターンがあります。高校卒業後、これらの専門学校(3年)や大学(4年)を修了し、厚生労働省の国家試験に合格しないといけません。無事、国家試験に合格した曉には、あん摩マッサージ指圧(10万人)鍼灸(10万人)の施術所を自ら開業できるし、治療院や病院などの医療機関に勤務することもできます。また、スポーツトレーナーとしてプロ野球やJリーグなどのプロスポーツチームで活躍したり、舞台やステージで歌手や俳優のケアを担当したりすることもできます。
「あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律 第1条」では、「医師以外の者で、あん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゅうを業としようとする者は、それぞれ、あんまマッサージ指圧師免許、はり師免許又はきゅう師免許を受けなけらばならない。」とあります。 よって、医師も鍼灸を全くしたことがなくても鍼灸治療を行えるわけです。ちょっとびっくりですが、内科医の僕が、脳神経外科や産婦人科などやったことなくても法律的にはできる(実際は出来ませんが)のといっしょです。ただし、保険医療機関内(保険証で医療を受ける事のできる機関)での有料鍼灸治療は、健康保険法、保険医及び保険医療機関療養担当規則の混合診療に該当するため規則違反なので「禁止」です。つまり、無料(サービス)でやるなら鍼灸治療を行う事ができます。
柔道整復師(柔整師)
昔から「ほねつぎ」「接骨師」として広く知られています。柔道整復のルーツと歴史はとても古く、奈良時代の大宝律令には、外傷を専門とする官職のことが記されており、日本最古の医書である「医心方」にも、脱臼や骨折などについて記されており、武道がルーツなんです。柔道整復師とは、骨・関節・筋・腱・靭帯などに加わる急性、亜急性の原因によって発生する骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などのけがに対し、非観血的療法(手術をしないで、手で治す)によって、整復・固定などの治療を行うことができる専門家です。整復法とは骨折した箇所や肩などの関節が外れた場合、それらを正しい位置、元の状態に戻すための施術を行います。固定法とは骨折や脱臼などをしてしまった場合に三角巾や包帯、副木などを使って患部を固定する治療法です。後療法とは損傷した組織を回復させる治療法で、物理療法、運動療法、手技療法の3つの治療法あります。
柔道整復師は、高校卒業後、厚生労働省の許可した専門の養成施設(3年)か文部科学省の指定した大学(4年)を履修し(柔道整復の学校では、カリキュラムの中には柔道も含まれていて、ほとんどの学校で、卒業までに黒帯になれるよう指導されています)国家試験を受け、合格すると厚生労働大臣免許の柔道整復師(3万人)となります。資格取得後は、臨床研修を行い、「接骨院」や「整骨院」という施術所を自ら開業できます。また、勤務柔道整復師として病院や接骨院などで働くこともできます。鍼灸あん摩マッサージ指圧師の免許と合わせて活動する人も多く、体育教師、クラブ活動、社会人やプロスポーツの現場でコーチやスポーツトレーナーをされている方もたくさんおられます。また、介護保険制度では、柔道整復師は5年以上の実務経験があり、試験に合格すると介護支援専門員(ケアマネジャー)になれる。また、通所介護(デイサービス)における機能訓練指導員としても働いている方もおられます。ちなみに整体師という免許は、民間の資格で、温熱療法、光熱療法、電気療法、刺激療法などの医療類似行為を業とする者として、開業権はありますが、保険は適用されません。
受領委任
あはき師(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師)と柔整師(柔道整復師)は、厚労省によると対等の医業類似行為とされています。しかし、1970年、新たな法律で柔整師法が、あはき師と分離して以来、健康保険療養費取り扱いにおいて、柔整師に極めて有利な制度が認められており、両者の社会的格差が次第に広がっていきました。
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師は、肩こり・腰痛等の慢性症を施術対象とします。医師の同意がなければ、健康保険を適用した施術はできません。しかし、柔道整復師は、打撲・捻挫などの急性又は亜急性が原因の外傷性疾患が主な施術対象です。これらの治療は緊急性を伴う場合があるため、医師の同意を得ずに健康保険を適用した施術をすることが可能となりました(ただし骨折や脱臼の場合は、応急処置時のみ、 打撲、捻挫、挫傷などは医師の同意は必要ありません)健康保険を使ってあはき師による施術、柔道整復師の施術を受ける場合、その費用を「療養費」と言います。施術所において、患者さんが療養費の全額を一旦支払い、後日、患者さん自ら、保険者へ請求を行い、保険者から一部負担金を除いた金額の返還を受ける「償還払い」が原則となります。しかし、柔道整復師については、例外的な取扱いとして、患者さんが一部負担金分を柔道整復師に支払い、柔道整復師が患者さんに代わって残りの金額を保険者に請求する「受領委任」という制度が認められています。柔道整復師が患者さんに代わって保険の請求を行うため、支給申請書に患者さんの委任のサインをもらうことで、一時的と言えども、患者さんの経済的な負担や事務的な労力を軽減する目的で設けられた制度です。この制度は、あはき師には法律上認められておりません。(はり、きゅう及びあん摩マッサージ指圧について、受領委任制度が平成31年1月1日から認められました。)
接骨院の横暴
柔道整復師は、急性、亜急性の原因によって発生する骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などの損傷に対し、非観血的療法(手術をしない)によって、整復・固定などを行い、人間の持つ治癒能力を最大限に発揮させる治療を行っています。かっては、医師のいない田舎の農村部において地域医療の一端を担っておられ、学校の校医さんが柔道整復師で占められていた時代もありました。運動器疾患の保存的治療を一手に引き受けて、地域で尊敬されて活躍してこられた立派な柔道整復師が多くおられました。もちろん多くが柔道の有段者であり、警察官として苦労された方も多く、その労に報いるためと聞いています。しかし、現在は、脱臼や骨折が疑われる激しい症状の場合は、まず病院を受診されて、施術所を訪れることはほとんどありません。体育やスポーツの現場で働いておられる柔道整復師を除き、施術所での存在意義がなくなってきています。だから柔整師の経営する接骨院においては、生き残りをかけて、慢性の肩こり、腰痛等をあんま、鍼灸、電気治療で施術している(あんま、鍼灸の免許も持っている場合はまだなんとかいけますかね)と広く認識されています。しかし、どこにでもならず者はいますよね。(接骨院にはこの手の人が多いとも言われています。ほんと?) これは、柔整師が、打撲や捻挫ならば医師の同意を得ずに健康保険適用内で治療ができる優位性と受領委任制度を最大限に悪用して、保険不正請求をしてきた実態があります。慢性の肩こり、腰痛、神経痛などへの施術は、健康保険適用外ですが、業界流にいろいろなこじつけて解釈して、捻挫、挫傷と勝手に病名を付けて、医師の同意書が無いにも関わらず(あはきの免許をもっていれば、医師の同意があれば、保険適応あり)肩こり、腰痛への施術を、健康保険適用による打撲や捻挫の施術として行なっているのです。慢性の肩こり、腰痛は、本来あはき師が医師の同意を取った上でのみ許可されており、あはき師に対する業権侵害であり、職業的経済的自立の阻害にもなっており、詐欺的な行為であると指摘する向きもあるようです。これらの不正請求を阻止するために、後日、保険者(国保、協会けんぽ・組合)から患者さんに負傷日や負傷原因、施術内容についての照会文書が患者さんに届くようで、それに正確に回答しないと保険が効かなくなることもあるようで、院内に注意書きを掲示している接骨院も多いようです。不正請求が発覚するのと恐れているところは、領収書を発行しないところもあるようです。
つまり、国家資格により取り扱える疾患、健康保険が使えるかどうか、同意書が必要かなどできることが違うわけです。なんでもかんでも健康保険がつかえるような看板を出している接骨院、整骨院はあやしいですね。患者さんとしては、通っている接骨院の先生が、どの免許をもっているかを調べてみましょう。受付窓口で「慢性の腰痛ですけど保険で治療できますか」と聞いて、「慢性の腰痛は保険が効きません」ときちんと答えてくれる接骨院は、信用していいかもしれません。療養費を請求する手間も面倒であり、その代価としてふさわしい額を患者さんから直接徴収されている治療院もあるようです。
「同意書を書かないで下さい」
患者さんがもってくる同意書は、慢性疾患の鍼灸とマッサージのものです。①神経痛②リウマチ③頚腕症候群④五十肩⑤腰痛症⑥頸椎捻挫後遺症の6疾患と骨折の手術後の障害や脳出血後遺症による「筋麻痺」と「関節拘縮」のマッサージに対する同意書です。しかし、医師会で同意書を書かないで下さいと言われている説明資料は、なぜか柔整師(整骨院・接骨院)の同意書なんですね。柔整師がする施術で医師の同意が必要なのは骨折、脱臼の応急手当を除く治療を施すときだけです。骨折、脱臼が接骨院に行くこと自体ほとんどない時代に柔整師から同意書を求められることはありません。医師会としては、なにがなんでも同意書は書かないという立場(整形外科医2万人を守る)なので、保険が効くあはき師が持ってくる同意書ではなくて、あえて保険が効かない柔整師の同意書でチラシを作って分かりにくくしているようにしか見えません。結局は、間にいる患者さんが板挟みの状態ですね。柔道整復師、鍼灸師、按摩マッサージ師、みんな国家資格がある人たちです。もう少し歩み寄りができないものなんでしょうか。
整形外科医にもプライドがありますから、自らの西洋治療をギブアップしてまで鍼灸師に同意を与える医師は少ないわけです。「整形外科の先生は書いてくれないので・・・」と患者さんから泣きつかれるわけです。患者に診断書を求められた場合は医師は書く義務があるが、同意書は、あくまで医師の医学的見地に基づく所見なので、医師の自由意思にゆだねられているそうで、拒むこともできます。医師会が書くなと言っているので、門前払いというのも全然ありかと思いますが、実際に目の前のかかりつけの患者さんが困っているのにどう対応するのが僕らしいか?と考えると、患者さんの希望する方向で同意書を書いてしまっています。まずは、同意する疾患について整形外科で診断がついていること、整形外科で治療を受けていること、病名と症状の経過を問診し、整形外科で何年も治療しているが、患者さんの自覚症状として良くなっていないこと、同意書を書いてしまうと鍼灸の治療している間は同じ病気では整形外科で保険診療ができないこと(検査はできるが、薬がでない)を理解しているかなどを確認しています。医師が同意書を書かない理由として、接骨院の先生と面識もないし、めんどくさい、触らぬ神にたたりなしという気持ちから書かないことがあるように思います。また、鍼灸治療や東洋医学自体の治療効果に疑問を感じている先生方も多いのではないのでしょうか。鍼灸なんて本当に聞くの?まゆつばものなんじゃない?と。僕も開業するまでは漢方薬なんてほとんど使ったこともありませんでした。東洋医学会に参加するまでは、葛根湯や芍薬甘草湯などの名前は知っていましたが、効くと思って処方していなかったかもしれません。しかし、開業して、ブルーになっている時期に、漢方薬にはずいぶん救われました。東洋医学は、西洋医学のように人体をパーツに分けるのではなく、人の体を全体としてとらえ、全人的に治療しようとするものです。鍼灸治療は、経絡や人の体に約361あるといわれる経穴(ツボ)に、鍼や灸を用いて刺激を与え、自分の体に備わっている自然治癒力を高めて体全体のバランスを健康な状態に戻そうとする治療です。中国最古の医学書「黄帝内経素問」に「上工は未病を治す」と述べられています。つまり発病に至るまでに早めに病気を発見して治療したり、患者の養生や生活指導を行い、病気を予防するのが良い医療者という意味です。これこそが東洋医学の真髄であり、目指しているところです。鍼灸の勉強もしたことがないのに勝手に効かないと思ってしまうのはいかがなものでしょうか?「無知の知」ですね。万年研修医、謙虚にいきましょう。ただ、当院にかかっていない、初診の一見さんについてはお断りしています。
はり、きゅうの施術で保険が使えるのは?
医師が同意書を求められる多くは、あはき師が持ってくる①神経痛②リウマチ③頚腕症候群④五十肩⑤腰痛症⑥頸椎捻挫後遺症の慢性の痛み6疾患に対する同意書で、医師の同意があれば、鍼治療をする時に健康保険が使えます。
①神経痛は、身体のあらゆる場所の慢性的疼痛です。
②リウマチは、病院でリウマチと診断されたものに限ります。
③頚腕症候群は、頚部、肩関節、上肢の筋肉や靭帯から発生する痛みです。症状としては頚、肩、腕の痛み、こり感、しびれ感、重だるさなどです。
④五十肩は、40代~50代ぐらいにみられる肩関節の疼痛疾患で、腕に痛みがあり、挙上困難、結帯動作困難、結髪動作困難などを認めます。
⑤腰痛症は、腰の痛み、重だるさ、下肢への関連痛を認めます。
⑥頸椎捻挫後遺症は、いわゆるむち打ち症の後遺症です。
健康保険で治療を受けるためには、医師の同意書が必要です。同意書用紙は健康保険治療に対応している鍼灸院にあります。鍼灸院から同意書用紙をもらって、医療機関(病院・診療所等)に行って医師に症状を話して、同意書を書いてもらいます。患者さんを治療した後、鍼灸院が治療費を保険者(保険組合等)に保険請求するときには、同意書を添付しなければならないことになっています。 同意書を添付しないで保険請求すると、請求は認められず、全額不支給になります。
同意書の有効期間は初療日から約3ヶ月です。それ以降も施術を受ける場合は3ヶ月毎に再度、医師の同意が必要です。(再度の同意は口頭でも可)鍼灸の場合、健康保険を使って治療を受けいている期間、その疾患については、病院にかかることができません。(他の疾患の治療は可能です)
あん摩、マッサージの施術で保険が使えるのは?
マッサージの施術については、療養費の支給対象となる傷病名を限定していないため「筋麻痺」 と「関節拘縮」があって、医療上マッサージを必要とする医師の指示または同意により判断されるものである。つまり関節が硬くて動かない、又は動きが悪い、筋肉が麻痺して、自由に動けない等が健康保険の対象です。具体的な疾患として、脱臼や骨折はもとより、手術後の障害や脳出血による片麻痺、神経麻痺、神経痛などの後遺症が療養費の支給対象となる適応症です。頭から尾頭までの躯幹、右上肢、左上肢、右下肢及び左下肢をそれぞれ1単位として、最大5箇所となっています。
同意書の有効期間は初療日から約3ヶ月です。それ以降も施術を受ける場合は3ヶ月毎に再度、医師の同意が必要です。(再度の同意は口頭でも可)マッサージの場合は、原則として医師による治療と並行して受ける必要があります。
往療とは、患者宅に往診して施術(マッサージ)することです。
変形徒手矯正術とは、関節可動域訓練のことです。1ヶ月に1回同意書が必要になります。
温罨法とは、施術効果を促進するためにあん摩、マッサージの業務範囲内において人の健康に危害を及ぼす恐れのない器具を使用します。
柔道整復師の施術で保険が使えるのは?
急性又は亜急性が原因の外傷性の打撲、捻挫、挫傷、肉離れが主な施術対象です。これらの治療は緊急性を伴う場合があるため、医師の同意を得ずに健康保険を適用した施術をすることが可能です。骨折や不全骨折、脱臼は、応急処置時のみ、健康保険が適応されます。そもそも接骨院(柔道整復師)で、施術できる疾患は上記のものだけです。肩こりや腰痛、筋肉痛、神経痛、リウマチ、五十肩、ヘルニア、脳血管後遺症などの疾患を施術できる免許ではないわけです。患者さんが、接骨院で腰痛や神経痛の施術を保険診療で受けられているとしたら、頸椎捻挫や腰部挫傷などの嘘の病名をつけて不正請求しているということです。
このご時世、骨折、脱臼で接骨院に行くこと自体ほとんどないわけで、柔整師から同意書を求められることはありません。(柔整師がする施術で医師の同意が必要なのは骨折、脱臼の応急手当を除く治療を施すときだけです)
患者満足度は?
当院の理念は「あなたが笑顔になれるようお手伝いします」なので、患者満足度は、最重要事項です。医療業をサービス業とするならば、孫のようにやさしい施術師さんに話をじっくり聞いてもらえて、痛みを一時的ではあっても和らげて気持ちよくしてくれる、本当にうれしいかも知れません。その人格に惹かれて接骨院にいかれるのは全く患者さんの自由です。僕もホテルで5000円ほど出して、マッサージを受けたことがありますが、痛くて痛くて途中でギブアップしてしまいました。安楽かどうかは個人差があり、やはり合う合わないはあるようです。20歳そこそこの若者相手ならいざ知らず、60歳70歳のご老人になんの診断もせずに、首や腰をゴキッ、ボキッといわせて本当に大丈夫かなとゾ〜とします。なにかあった場合の後始末は、整形外科の先生が面倒をみているのでしょうか。総務省の統計基準「日本標準産業分類」によれば、医療業とは医師又は歯科医師等が患者に対して医業又は医業類似行為を行う事業所およびこれに直接関連するサービスを提供する事業所をいうと定義されています。サービス業ではないようです。安心しました。患者さんのことを「患者様」と呼ぶ医療機関があります。「お客様は神様です」はちょっと違うのではないでしょうか。当院は開業以来ずっと「患者さん」と呼んでいます。
慶應義塾大学の中村雅也氏がまとめた調査結果によると、運動器慢性痛(腰痛・肩こり・関節痛など)の症状がある患者さんのうち、整形外科を受診した人は19%、整体・整骨院・鍼灸などの治療を受けた人が20%、全く治療を受けていない人は55%。そして、整形外科を受診した人の約半数が治療を中止または 変更していたようです。僕も五十肩の診断で、湿布と痛み止めだけで、リハビリに3ヶ月ぐらいは通院しましたが、一向によくならず、止めてしまいました。鍼治療でも受けようかと思いましたが、痛いのは嫌いなのでそのまま放置、治るのに2年間ぐらいかかりました。・・・が、実際には、五十肩自体がこういう疾患なんです。マラソン練習中に坐骨神経痛になり、牽引、電気治療を何回か受けましたが、忙しくて通院もままならず、マラソンなんて体に悪いことは止めた方がいいですよとごもっともなアドバイスも頂き、患者さんの気持ちもわかる気がします。