AED、心肺蘇生

2007年、福岡で開かれた第72回日本循環器学会でACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)講習会を受講し、アシスタントマスターの資格をもらいましたが、開業医レベルでは、気管挿管や薬剤投与まで行うことはほとんどなく、対象となるのは心肺停止の一次救命処置(BLS:Basic Life Support)であり、人工呼吸、心臓マッサージによる心肺蘇生法とAED(除細動)になります。

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この講習会で、初っ端からなんの前振りもなく突然「人が倒れています。意識がありません。呼吸もありません。はい、どうしますか?なにが一番大事ですか?やって下さい。」(目の前には練習用の人形が置いてある)と指名され、「え〜 え〜」と呼吸を確認しようとすると「はい、呼吸は止まっていますと言いましたよ」「え〜 え〜」心臓マッサージを始めると「それでいいですか」・・・・しばらく沈黙の後、「この患者さんは5分後には死んでしまいますね」と言われて撃沈されてしまいました。


さて、正解はというと?「人を呼ぶこと」でした。

心肺蘇生は、ひとりでしないで、出来るだけたくさんの人を集めてすることが重要なのです。ひとりで心臓マッサージだけしていても、いずれは心臓は止まってしまいます。なるべく早くAEDをかけることが必要なのです。心臓マッサージは、かなり重労働です。ひとりでするのは大変です。みんなで代わり番こに行います。たくさん集まれば、自分に心肺蘇生の知識や技術がなくても、誰かできる人がいるかもしれません。(たまたま消防士の人がいたりするものなんです)

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「人が倒れています。誰かいませんか?」
誰かが来たら、「救急車を呼んで下さい」「AEDを探して持ってきて下さい」と頼みます。余裕があれば、119に電話をかけてと付け加えましょう。みんなパニックになっているので、109?199?慌てて110番にかけたり、時報や電話案内が流れてきたりします。


我思う、故に我あり(デカルト)自分はどうして、今、この世というところに存在しているのか?そんなことをふっと思うのは、僕だけではないでしょう。38億年前に生まれた地球をいう星で、この時代を生きていてということの意味は。本当にに人の命を助けたと言えるのは、除細動器をかけるような救急現場だけのほんの一部だけであって、ほとんどの疾患は、患者さん自身が自分で治っていくの邪魔はしないようにすることの方が大事なんです。

医学が進歩し「心筋梗塞」もそう簡単には死なない病気になったことは確かです。安静にして、点滴、酸素ぐらいしか出来なかったころには、半分ぐらいの患者さんを失っていました。1970年代にCCU(心臓病専用の集中治療室)が完備され、重症不整脈の管理がされるようになって、死亡率は40%強から30%に下がりました。1980年代になって、点滴をして詰まった冠動脈の血栓を溶かして再灌流できるようになり、さらに10%下がり、1990年代になると緊急冠動脈造影を行って、透視下でバルーンカテーテルを使って直接再灌流させる方法が確立され、その後のステンとなどのデバイスの進化により、死亡率は10%を切る時代になっています。つまり、心筋梗塞で入院した患者さんのほぼ9割が、元気で退院できるようになったわけです。たつの市では、カテーテルと使った最先端の治療はできませんが、姫路(姫路赤
十字、新日鐵広畑、ツカザキ、姫路循環器など)や赤穂(赤穂市民、赤穂中央)では積極的にされており、死亡率も10%は切るレベルで治療されています。

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しかし、これは生きて病院にたどり着いた患者さんのことで、現実には病院まで生きてたどり着けない患者さんや救急隊が駆けつけた時に既に心停止になってしまっている患者さんもたくさんいます。突然死とは、症状が出現してから24時間以内に死亡に至ることです。昔から40代の男性が、就眠中死んでいたなんてことでポックリ病と呼ばれた疾患も、今ではブルガダ症候群ではないかと言われていますし、予防接種後に健康だった乳幼児が亡くなって、紛れ込みで乳幼児突然死症候群が問題になることもあります。しかし、圧倒的に多く、突然死の7割を占めるのは、心臓病が原因による不整脈であり、およそ年間6万人、なんと1日に180人近くにものぼります。しかも働き盛りの40代~50代に起こることも多く、大きな問題となっています。実際、勤務医にはどうしようもないことですが・・・。ここで、より現場に近い「循環器専門医」として開業医の立場でなにか貢献できることがあるのではないかと思いました。

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Q1 日本で心臓発作で心肺停止になって倒れた時の救命率(社会復帰率)は?

イチローがシアトルマリナーズに移籍して、最初の年に3割5分打って、新人賞と最高打率、MVPを総なめにしています。それはさておいて、シアトルにはメディックワンという有名な救急隊がいて「心臓発作を起こすなら、シアトルで」という言葉があるぐらい、アメリカのシアトルでは救急のレベルが高い地区です。心臓発作で倒れて、心臓が止まった人が、元気に社会復帰する確率も35%もあるのです。アメリカの空港やカジノなどトレーニングされた警備員がいる特殊な施設では、救命率は6割を超えるのはあたりまえですが、ある街全体として35%というのは驚異的な数字です。それに対して、日本ではだだの3%なのです。

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Answer 3%

今の日本の医療レベルは、アメリカと比べても遜色ないと思いますが、なぜ、アメリカで35%の人が助かって、日本では3%なんでしょうか?

生存の連鎖と呼ばれる救急蘇生の考え方があります。四つも輪がきちんと繋がれば、その人は助かり、切れてしますと死んでしまうということです。一つ目の輪は救急車、二つ目は心肺蘇生、三つ目はAED、四つ目はCCU(集中治療室)です。

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最初の輪は、救急車の要請です。アメリカは国土も広いので、9分かかります。(ちなみにアメリカでは救急車は911、有料です)日本は6分ということで、日本に軍配があがります。最後の輪も日本もアメリカの急性心筋梗塞の救命率の医療レベルは、7%前後と変わりません。つまり、二つ目は心肺蘇生、三つ目はAEDが日本ではできていないので、日本で心臓発作を起こして、危うい人はみんな揃って、三途の川を渡ってしまうわけです。

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あなたは、愛する人を救えますか?

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このキャッチコピーは、河村剛史先生の心肺蘇生法の普及啓発活動に使われているものです。河村先生曰く、1986年1月24日、松江で行われた日本リーグ(ダイエーvs日立戦)バレーボールの試合でフローラ・ハイマン選手(ロサンゼルスオリンピック 銀メダリスト 彼女の功績を称えアメリカ国内女子スポーツ選手を対象とした賞も設立された)が、試合中に倒れ、何もされずに担架で会場から運び出された。そのテレビ映像を見た米国の友人みんな口を揃えてが「日本人は、なぜ心肺蘇生をしないのか」「心肺蘇生を知らないのか」「選手の命よりも、試合の方が大事なのか」と批判の言葉を次々と浴びせましたが、当の本人は「何で必要があるんだと。どうして生きているか死んでいるか、このテレビの画面でわかるんだ」と思ったそうです。なぜアメリカ人の100人が100人ともが、このニュースを見て、おかしいと言ったのは、アメリカでは中学生に、人が倒れたらどうするのかを教えているからなのです。日本人の「命の教育」の欠如していることに気づいたわけです。そこで河村先生は、もし目の前であなたの愛する人が倒れた時、その命を救えますか?日本における心肺蘇生啓発の先駆者として、昭和63年から兵庫県を基点に活動を始められたわけです。


Q2 日本で一番最初に、医師の指示なしに、AEDを使うことができるようになったのは?

消防 のコピー

日本で一番最初に、医師以外の職業で、AEDを使うことが認められたのは、看護師でも救命救急士でもなく、客室乗務員なんですね。日本という国は、ほとほと変わってますよね。米国ではとっくの昔から、だれでもAEDを使うことができるようになっていました。飛行機の中で、突然胸が痛いと訴えて心肺停止に陥った場合、緊急着陸してというわけにもいかず、外国の飛行機だと誰でもAEDをかけてくれて助けてくれるのに、日本の飛行機に乗ったばかりに何時間も放置されたということになりかねません。(国際線で医師が搭乗している確率は75%と言われています)厚労省は外圧に屈して、こともあろうに客室乗務員だけに、AEDの使用を認めたという訳です。

Answer 客室乗務員(2002年)


なにもできない救命救急士

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実は、その10年以上前の1991年(平成3年)救命救急士法制定が制定され、医師の指示下にという条件付きで、救命救急士にAEDの使用が認められていましたが、現場では全く機能していなかった机上の法律でした。どういうことかと言うと、僕はその頃、香川県立中央病院に勤務していましたが、CCUの詰所に救急隊からの心電図転送されてくる器械が設置されました。救急隊が現場に駆けつけて、心肺停止と判断したら、心電図検査を行って、香川県立中央病院に心電図転送してくるわけです。心電図が転送してくると看護師さんが、院内放送で知らせてくれます。それを聞いた循環器の医師(当時4名)がCCUの詰所(東病棟4階)まで走っていって心電図を判読し、心室細動と診断したら、救急隊に電話して、救急隊が除細動をかけるというまとろっこしいシステムです。このシステムは、医師が病院にいる勤務時間帯が原則ですし、みんな検査や処置などをして手が離せない場合も多く、すぐに対応できても5分はかかります。救急隊が現場につくのに6分、それから心電図を付けるのに数分、転送して答えが帰ってくるのに5分以上かかっていると、1秒でも早く除細動をかけないといけない現場で、なにをしているのかわからなくなってしまいます。結局は、現場での不慣れ、患者の選定の問題、受け入れの問題と重なり、全くうまく機能していなかったのを憶えています。

2002年(平成14年)11月、サッカーの宮様とスポーツが大好きな高円宮殿下が、カナダ大使館でスカッシュ練習中の突然倒れ、心肺停止状態となりました。すぐに慶応病院に搬送されたが、残念ながらお亡くなりになりました。これがきっかけとなり国もやっと重い腰を上げ、助かる命を救うため、本来なら、1991年(平成3年)救命救急士法制定が制定された時に、認めるべきだった救命救急士に2003年4月にやっと医師の指示がなくても除細動ができるようになり、2004年7月からは、近くにいる一般市民(バイスタンダー)がだれでもAEDを使用してもOKというお墨付きが出たわけです。

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しかしながら、AEDの器械が普及したとしても、シャイな日本人が、本当にアメリカ人のようにAEDを使えるのか?疑問でした。AED、心肺蘇生をするというのは、勇気が要ります。目の前の人が倒れたとして、果たして大声で「大丈夫ですか」の一言がでるかどうかが勝負の分かれ目です。この頃は、まだ国民の中でそういった認識というか意識がなく(医師でもありませんでした)心肺蘇生をしなかった理由として、一番多いのは、やり方がわからなかったというものですが、これは、講習会などをしていくことで解決できるかもしれませんが、もうひとつの大きな理由として、心肺蘇生をしたことによって、かえって悪くなったら困るからというものがあります。アメリカでは、「良きサマリア人法」という法律があって、助けようと心肺蘇生をして、死んでしまったとしても責任は問われないと保証されています。このことについては、学会で厚労省の役人に質問したことがあるのですが、その時点でのAED、心肺蘇生に対する医療界、国民の意識、日本人の思想、感情等を勘案すると法律を作るのは大変困難で、最低でも10年以上はかかると考えられており、現状では、今ある法解釈として善意に法的責任なしとの原則で、刑法第37条(緊急避難時)民法第698条(緊急事務管理)により免責されるとして、AED、心肺蘇生を普及していく方が得策という行政の判断があると言われていましたが、判例を積み重ねていく間に、状況によっては罪を問われる場合も否定はできないとのことでした。

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2005年に開催された「愛・地球博」自然の叡智をテーマとし、121カ国が参加、185日間で2200万人が訪れました。173ヘクタールの広い会場には300mおきにAEDが100台設置されました。万博開幕前に約3000人の万博スタッフがAEDの講習を受け、ゴルフ用カートを改造した専用の救急カート(バックボードや応急手当キットを搭載)で救急救命土が巡回し、来場者の安全確保に力を入れました。この会場で、心停止状態になった方が5人いました。万博の警備員やスタッフ、救急隊、たまたま居合わせた医学生らの手によって心肺蘇生法とAEDが実施され、4人が助かりました。救命率は80%です。アメリカのカジノに匹敵する数値です。日本人もやれば出来ることを証明したイベントでした。

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牛田尊さんとは、2006年の日本循環器学会の心肺蘇生の講習会でお会いしました。愛知万博会場で、心臓マッサージとAEDによって救命され、何の後遺症もなく今まで通り元気に過ごされています。彼は身をもって体験したことを自らが広告塔となって語ることで、AEDを普及させる活動をされています。



心肺蘇生法

AEDが、誰でも使えるようになったといっても、目の前で誰かが倒れた時に、AEDを見たこともない人がうまく使いこなせるものではありません。その人が助かるかどうかはあなたの勇気にかかっています。その一歩踏み出すためには、心肺蘇生、AEDの講習会に参加して、一度触ってみることから始めましょう。

心肺蘇生法(CPR:CardioPulmonary Resuscitation)の一番の目的は、脳への酸素供給維持です。脳は、呼吸が止まってから4~6分で低酸素による不可逆的な状態に陥います。そのため一刻も早く脳に酸素を送る必要があり、救急隊到着までの数分間(5~6分)に現場に居合わせた人(バイスタンダーである一般市民救助者)によって心肺蘇生が行われるかどうかが救命率に大きく左右するのです。ここでは、特殊な器具や医薬品を用いずに行う一次救命処置(BLS: Basic Life Support )について説明します。

注)BLSのみでは心拍が再開しない場合に、救急車内や病院などで救急救命士や医師が気管挿入や高濃度酸素、薬剤も用いて行う二次救命処置(Advanced Life Support; ALS)があります。

(1)意識の確認
あなたの目の前で突然人が倒れたら、肩を叩きながら相手の耳元で「大丈夫ですか」と呼びかけます。まずは、意識の有無を確認です。意識がなかったら、ここからが本番です。

さて、思い出してください。目の前の人を助けるために、一番最初にしなければならない事、この項目の一番最初に出てきましたよね。そう、人を呼ぶことです。

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人を呼んで、「119番に通報して、救急車を呼んで下さい」「AEDを探して持ってきて下さい」と頼みます。とにかく応援を呼んで、極力まわりの人を巻き込みましょう。これには、いろいろな意味が含まれています。前述したように救急車も呼ばずに、ひとりで心臓マッサージだけしていても、AEDをなるべくはやくかけないと救命は難しい事、心臓マッサージは、100回/分、5分間、ひとりでするの大変、3人寄れば文殊の知恵ということもあります。

倒れた人が若い女性だったらどうでしょう。心肺蘇生をするためには、相手の口にマウスtoマウスで息を吹き込んだり、相手に覆い被さって心臓マッサージしたり、胸をはだけてAEDを装着したりしなければなりません。ただの貧血で倒れたた人を間違って、ひとりでこそこそ心肺蘇生を始めてしまうと周りの人も遠目にチラチラ見るだけになってしまい、善意で行ったことが、えらい誤解をうけるはめになるかもしれません。まず、人が倒れているのを見つけたら、周りの人に自分は心肺蘇生をしているというアピールして、手伝ってもらうことが大切なのです。

もし周りに誰もいなければ、その場で自分で携帯から119番通報しましょう。自分だけではどうしたらいいかわからない場合でも、119番に電話をしたら何をしたらいいかアドバイスがもらえます。


さて、この後に続く、呼吸の確認、気道確保、人工呼吸、心臓マッサージについては、2012年度から心肺蘇生法のガイドラインが変更になっています。ガイドラインというと、高血圧にしろ糖尿病にしろ、実際には患者をあまり診てもいないで、ネズミの実験や文献ばかり呼んでいるその道のお偉い方々が、ああでもないこうでもないと細かく分類して、その学会の自己満足でできあがるもので(特に日本のガイドラインはその傾向が強い)実地臨床にはあまり役に立たないものが多い中、心肺蘇生のガイドラインは、現場での実利が優先され、この日本でもその効果が現れてきています。

新しいガイドライン2010

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今回のガイドラインでの変更点は、
 ◎呼吸確認の「見て・聞いて・感じて」が削除。
 ◎気道確保は不要。
 ◎人工呼吸は不要。
 ◎胸骨圧迫の位置の「両乳首の真ん中」は削除。
 ◎乳児にも大人用のAED使用可能。

「あっ」見て、呼吸してないと感じたら、誰にでも(乳児から大人まで)胸骨圧迫をして、AEDが来たらかけるだけになりました。つまり、今までの救急のABCというのが、最後のCだけになったわけです。
わかりやすいですよね。 

なぜ、このような変更が行われたのでしょうか?ちょっと考えればわかると思いますが、実利をとったわけです。机上の理論は別として、難しい事を言ったり、書いたりしてもしても実際の現場で心肺蘇生の行動に結びつかなければ、なんの意味もありませんよね。わかりにくい文言は削
除し、ハードルとなる処置はあえて不要としたわけです。すごい英断!! 拍手。

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 古いガイドライン2005

第一製薬発行-心肺蘇生法abc-d-カード

 しかし、ここで誤解してもらっては困るのは、今までのガイドラインが間違っているということではありません。出来ればやった方がいいんですが、なるべくたくさんの一般市民のみなさんに、バイスタンダーとして心肺蘇生に参加して頂くためには、必要最低限の処置にするほうが、より多くの心肺停止の患者さんを救命できると判断しているためです。たとえば、Bの「人工呼吸」どうでしょうか? きれいなお姉さんなら喜んで・・・冗談ですが、あまり清潔そうでない中年男性に対して人工呼吸できますか?なにか病気を持ってるかもしれません。血を吐くかもしれません?いろいろ考えてしまうと、危険を冒してまで見知らぬ人を助けなければならないか?と思ってしまうかもしれません。つまり、ABCの順番でやりなさいというガイドラインでは、Bの「人工呼吸」がハードルとなって、Cの心臓マッサージまで行き着かない現場がたくさんできてしまうわけです。だから、もし自分の両親や配偶者、子供などが心肺停止状態になって、人工呼吸をする技能を持ってられる方は、是非やってください。


注)気道確保と人工呼吸は、必ずしもしなくても構いません。AED、救急隊がくるまでは、心臓マッサージだけ行ってください。


(2)呼吸の確認
呼吸をしているかどうかの確認、僕らでもすぐには結構難しいですよね。もう一つ前のガイドライン2000の時に、頸動脈を触知して、循環を確認する項目が削除されたことがありました。これも僕らでも心肺停止の状態の患者さんを目の前にして、焦ってドキドキしていると、患者さんの脈なのか、自分の脈を感じているのかわからなくなってしまうというのが理由でした。「見て、聞いて、感じて」と言われてどうしょうか? 何言ってんの、わけわかりません。というのが正直な感想ではないでしょうか? 見て:胸が上下しているを見て 聞いて:患者さんの呼吸音を聞いて 感じて:患者さんの口元に顔を近づけて、息を吐くのを自分の頬で感じて こんな悠長なことを救急現場で冷静にはなかなか出来ません。講習会でこういった指導をすると、こういった確認をしないとダメということになり、なかなか前に進みません。実際には、自分の五感で、目視による胸郭運動の確認したり、呼吸を感じたりして呼吸の有無を判断すれば十分なわけです。専門的なお話になりますが「死戦期呼吸」心停止直後に生きようとする本能があごをしゃくりあげるような動作をしたり、いびきのような音が聞こえて「呼吸あり」と判断されてしまうことがあります。


(3)心臓マッサージ(胸骨圧迫)(C:Circulation)

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今回のガイドラインで、胸骨圧迫の位置の「両乳首の真ん中」という文言が削除され、「胸の真ん中」という表現になりました。こういった記載があるために、服を脱がさないとできないと思われないように配慮されたのではないでしょうか。服の上からでOKなので、より即座に対応でき、胸骨圧迫開始が早くなります。胸の真ん中に手の付け根を置き両手を重ねて、肘を真っ直ぐ伸ばし、少なくとも100回/分以上の速さで継続出来る範囲で強く圧迫を繰り返す。推奨は「少なくとも5cm以上沈むように」であるが、その場で測れる訳ではないので、継続出来る範囲で「強く」で良いでしょう。AED、救急隊が到着まで胸骨圧迫だけを続けます。早く、強くを維持するためには、交代要因は必須です。

ちなみに、胸骨圧迫100回/分のテンポ「早く」については、ステイン・アライヴ(ビージーズ)が推奨されています。1977年の公開されたサタデー・ナイト・フィーバーのサウンドトラックで、世界的な「ディスコ・ブーム」を巻き起こし、ジョン・トラボルタの代名詞的傑作です。



気道確保(A:Airway)

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気道確保が不要をされたのは、やはり講習会で習ったぐらいでは、普段、医療現場で働いていない限り、いざそういう現場に遭遇した時に、とっさに気道確保、人工呼吸と言われても、なかなか難しいわけです。吐物や血が顔についていても躊躇するでしょうし、気道確保しないと呼吸をしないぐらいに舌根沈下しているような患者さんも、とりあえずは心臓マッサージすれば、すぐ咳などするだろうし、訓練を受けていれば、やって頂いて全く差し支えないのですが、あえて行わなくてよいとしているわけです。


人工呼吸(B:Breathing)

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人工呼吸も気道確保と同じ理由で不要をされています。科学に基づいた蘇生技術の向上だけでは、蘇生率は上がりません。一般市民の蘇生実施を阻む心理的・環境的要因の除去を優先して、必要な人に必要なCPR(心臓マッサージ)が着実に実施される可能性を高めるためです。よって、不要とはされていますが、訓練をうけ、自信のある市民救助者は、是非やってください。

鼻を押さえ胸部がふくらむよう息を約1秒吹き込む。この際、感染病防止の観点から専用のポケットマスク等を患者の口に取り付けることが望ましい[4]。人工呼吸を行う間隔は胸骨圧迫30回毎に2回が目安で、ただしこのための胸骨圧迫の中断は10秒以内とします。(人工呼吸の為の胸骨圧迫中断は最小にすべき



(4)AEDによる除細動(D:Defibrillation)

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AEDが到着したら、すぐに使用します。AEDには大きく分けて2種類あります。蓋(ふた)をあけると自動的に電源が入るタイプと電源のスイッチを押すタイプに区別できます。しかし、どちらも次に行うことを機械が指示してくれますので、音声メッセージに従い、落ち着いて処置して下さい。電気ショックが必要であるかどうかもAEDが自動的に判断して指示してくれます。



今回は、自院に設置してあるフィリップスのハートスタートで説明します。

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まず、蓋を開けて、スイッチを押すと、音声ガイダンスが始まります。


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患者さんにパッドを貼ります。着衣を脱がせて、上半身を開けます。パッドをぴったりと装着するので、体が濡れていれば拭き取って下さい。パットの貼る場所は、パットに絵で書いてあるので、書いてある通りに右胸の上と左の横脇の下に心臓を挟み込むように貼ります。


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音声に従い、ソケットにパッドのコネクターを接続します。


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心電図が自動解析され、心室細動と判定されれば、除細動のするため、ボタンを押すようにアナウンスされます。患者さんに触れていると、自分にも電気が流れますので、離れてください。
ボタンを押します。


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お笑いタレントの松村邦洋さんは2009年3月22日にテレビの企画で東京マラソンに参加し、その際にスタートから約15kmの地点で急性心筋梗塞による心室細動で倒れ、心肺停止となりました。伴走していた救護班が速やかにAEDや蘇生処置を行なわれ、助かりました。最近では、こういった報告は、いろいろなスポーツイベントで報告されるようになりました。


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2008年(平成20年)6月、秋葉原無差別殺傷事件であるが、7人が死亡、10人が負傷した惨事ですが、この凶行に対して、犯行現場にいた一般の通行人は、迅速かつ積極的に被害者たちに対する一次救命処置を行い、携帯電話での通報がなされました。見るにしのびない画像ですが、日本においても、心肺蘇生が根付いてきていると感じられる現場です。


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AEDの導入は、心筋梗塞による心臓発作の治療を想定したものですが、心肺停止は、心臓に病気がなくても起こり得ます。子供たちの突然死の原因として心臓震盪(しんとう)があります。(脳震盪は聞いたことがあると思います)多くはスポーツ中に、健康な子供や若い人の胸部に衝撃が加わったことにより心臓が停止してしまう状態です。アメリカでの報告(128例)では、競技スポーツ中(62%)特に野球のボールが当たったものが最も多く、他レクレーションスポーツや日常生活の中で発生しています。子供は、まだ胸郭が軟らかいので、前胸部へ加わった衝撃が心臓へ伝わりやすいと考えられています。こういった突然死から子供を救うためには現場での救命処置とAEDの設置が必要です。是非、スポーツ施設、学校、公園など人が多く集まるところに設置していただき、現場でしか救うことができない命があるのです。

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「心臓で倒れるならシアトルで」と言われるまでしたアメリカでの心肺蘇生普及啓発の先駆者レオナルド・A・コブ教授も「啓発活動が実を結ぶまで25年はかかる」と言われたそうで、河村先生の継続してやってこられたことが、やっと日本でも実を結んできています。