バイタルサイン(Vital signs)

日本語では生命徴候=生きている証という意味です。
最も基本的な情報です。脈拍、呼吸、血圧、体温(意識レベル)の4(5)項目をいいます。

脈拍(心拍数) 

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脈拍数の正常値は、60回前後で(50〜100回/分)で50以下を徐脈、100以上を頻脈といいます。ちなみに漢方の診察では、脈診と言って、脈の元気さ?で患者さんの「証」を診ます。

安静にしていて、脈が非常に速い(140回/分以上)、脈が非常に遅い(40回/分以下)などの場合は、明らかに異常です。体温が1℃上がったら、 心拍数は分時20回上昇します。患者さんを診るときは、不整脈があるかどうかや脈の数が正常範囲でも、体温が高い割には脈が少ないとかいう感覚が大事です。脈拍数が増える病態は、心不全か呼吸不全ですが、呼吸不全だけで脈拍数が130を越えることは稀です。脈拍数が130以上であれば、心不全の可能性が高いと考えましょう。

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呼吸

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呼吸回数

呼吸数の正常値は、12〜18回/分です。(年齢差あり、小児は多い)呼吸数が、20回以上はなにか異常があります。30回/分以上は、なんらかの処置が必要です。(熱などがあれば、敗血症も疑う)呼吸数が、8回/分以下になるともう危ないですよね。

原因としては、換気不全(喘息、COPD、肺線維症など)呼吸不全(SpO2 90%以下)敗血症などです。

呼吸パターン

呼吸しているかどうかは、一見、見えないのが正常です。呼吸しているのが見えたら異常と考えましょう。

  • チェーンストーク呼吸

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弱い呼吸が次第に強く大きな呼吸となり、また次第に弱くなり、無呼吸(数秒〜数分間)となるサイクルを繰り返すもので、大脳が広範囲に障害された時や脳幹機能障害、心不全、睡眠時無呼吸症候群でみられるものです。

  • クスマウル呼吸

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深く大きな呼吸です。アシドーシスの時に見られます(代謝性アシドーシス、尿毒症性アシドーシス、糖尿病性ケトアシドーシス、アルコール性ケトアシドーシス、乳酸アシドースなど)

もっと状態が悪くなって、死期が近づくと、失調性呼吸(不規則な呼吸)下顎呼吸(下顎だけを動かして努力性呼吸)などが見られるようになります。

パルスオキシメーター

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最近は、便利なものが出来ました。SpO2(saturation of pulse oximetory oxygen)は、パルスオキシメーターによって、非侵襲的に得られる呼吸のバイタルサインです。SpO2ってなんでしょうか?SpO2とは、動脈血中の酸素の割合(酸素飽和度)を表したものです。

SpO2が90%以下の場合は、呼吸不全と言います。呼吸不全と診断した時には、その呼吸不全がⅠ型なのかⅡ型なのかを鑑別しなくてはいけません。Ⅰ型は酸素が低いだけですが、Ⅱ型は二酸化炭素も溜まっています。Ⅰ型なら酸素投与だけでいいですが、Ⅱ型は酸素投与と換気補助が必要です。Ⅰ型かⅡ型かを見分けるためには、動脈血ガス分析が必要ですが、簡易的には意識をみます。興奮、不穏になります。二酸化炭素が溜まると手が温かくなって、傾眠になります。

低酸素血症


呼吸によって取り込まれた空気は(酸素は約20%)鼻から喉を通って、気管、気管支、細気管支と約23回分岐して、最終的には肺胞という約0.1mmの小さな袋状の空洞になっています。

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肺胞はの周りには、無数の静脈と動脈が取り巻いています。

 

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この血管と肺胞の間で、静脈(酸素が使われてしまった青い血液)から二酸化炭素が肺胞に掃き出され、肺胞から酸素が赤血球(ヘモグロビン)に取り込まれて、動脈血(酸素をたくさん含んだ赤い血液)となって、心臓から全身に回っていきます。この酸素と二酸化炭素の交換を呼吸と言います。

 

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ヘモグロビンは、血液中の成分のひとつで、呼吸で取り入れた酸素を体中に運ぶ役割を担っています。1つのヘモグロビンは酸素を運ぶために4つの席を持っています。ここに酸素を積んで各組織に運ばれていきます。しかし、呼吸状態が悪くなり、酸素が少ししかなければ、席は空いたまま出発することになります。このヘモグロビンが持つ席がどれくらい埋まっているかを表す指標が酸素飽和度です。

しかし、患者さんも診ずに、数値だけに囚われてはいけません。測定したSpO2の値が、臨床症状とかけ離れている場合は、その数値が妥当がどうか評価する必要があります。呼吸の問題以外にも、末梢循環不全(心不全や出血性ショックなど)でも低下します。その他のSpO2に影響を与える因子としては、マネキュアをしていたり、体動や外光の影響、圧迫などがあります。

健康な人のSpO2の値は、通常96〜99%と言われています。93%以下は黄色信号で、90%以下になると呼吸不全に陥っている場合があり、適切な対応が必要です。
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血圧

血圧の正常値は120/60mmHg前後です。
さすがに、血圧が70mmHgを切ってくると、早いですよね。後、数時間って感じですかね。遠い人は、間に合いません。

体温

体温の基準値は、一般的には腋窩温で36.0〜37.0℃ですが、生理的な個人差があるので、個人の平熱について測っておく必要があります。体温は寝ているときが最低で、午後3時〜10時頃は高くなります。乳幼児は、外界の温度に左右されやすく、高齢者は皮膚の熱の伝導度が低いため、低くなりがちです。閉経前の女性の体温は、一般的に排卵日を境に前2週間は低値、後2週間は高値の二相性を示します。

悪寒戦慄(毛布を何枚かけても、歯がガチガチして体の震えが止まらない)を伴えば、本物です。なんらかの感染源があります。

では、、血圧、心拍数、SpO2、呼吸数、意識レベル、体温、いわゆるバイタルサインからなにがわかるでしょうか?

重要なのは、生命が危機にさらされるとカテコールアミンがリリースされて、血圧上昇、心拍数増加、尿量減少、末梢冷感と冷や汗がでます。(入江先生)

ショック

quick SOFA


身体所見

 

浮腫

患者さんが、むくんでいるかもと言われた時に、最も客観的な指標は体重です。足がはっきりとむくんでいる場合、体重は3〜4kgぐらい増えているはずです。(正常な体重の増減は1日でせいぜい1.0〜1.5kgまで)

前頸骨部の浮腫を指で押さえつけて離した時に、圧痕が元に戻るまでの時間によって浮腫の原因が推測できます。10秒以内に戻るものをfast edemaといい、皮膚がテカテカ光っている低アルブミン血症(Alb<2.2g/dl)で見られる所見で、10秒以上かかるものをslow edemaといい、心不全、腎不全などで見られる所見です。

原因を調べるためには、両側性か片側性かは重要なポイントです。片惻性でしかも麻痺側(脳梗塞など)となるとリンパ浮腫がまず考えられます。麻痺があるとその足の筋肉の収縮がなくなりリンパ管の流れが悪くなり浮腫が起こりやすくなります。車椅子などにずっと乗っていると股間節が屈曲した状態になり、静脈やリンパ管の流れが遮断されてしまいます。深部静脈血栓症も麻痺側に起こりやすい重要な鑑別疾患の病気です。また骨盤内にリンパ管の流れを悪くする病気(婦人科疾患、泌尿器科疾患、リンパ腫など)がないかどうか腹部CT検査が必要な場合もあります。治療法は、リハビリで関節や筋肉を動かしたり、マッサージや弾性ストッキングがあります。

 


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general appearance

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適切な日本語が浮かびませんが、見た目が元気かどうかです。小児科の所でも書きましたが、赤ちゃんはしゃべってくれない分、難しいのですが、体の調子が悪ければ、機嫌も悪いし、食欲もありません。熱が39度あろうと、ニコニコしていて、お母さんのおっぱいに吸い付いているようなら大きな問題はないわけです。最も重要なことは、 見た目で患者さんのだいたいの重症度を感じ取れるかです。大人の場合、確かに大げさな患者さんもいれば、我慢強い患者さんもいます。しかし、インフルエンザにしろ、心筋梗塞にしろ、症例を重ねれば、これは本物(やばい?)ってわかるようになってくるものです。(第六感というともともこもないんですが・・・)

頸静脈怒張

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臥位で頸静脈の怒張を見たら、座らせて確認してみましょう。座位でも見えたら明らかに異常です(教科書的には、30°ぐらいにギャッジアップ)右の内頸静脈(胸鎖乳突筋が鎖骨への付着部の外側)と書いてありますが、ペンライトを斜めに当てないと、ただ見るだけではなかなか見えません。(太っている人はまず見えません)ただ実際の臨床では、外頸静脈で十分だと思います。(外頸静脈は、2回屈曲しており、弁もあるので、脈波形はあてにならないと書いてありますが、圧を見るには十分との文献もあります)

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頸静脈波をみつけるには、まず頸動脈を触れて拍動に合わせて立ち上がったa波が急速に下降(収縮期に落ちる=正常なx谷)していたら正常な頸静脈波です。確かめるには、呼吸や体位で変化します。三尖弁逆流が顕著になれば、心臓に血液が戻りにくくなって、拍動に遅れてv波が目立つようになり、静脈特有の落ちるという感じが消失します。さらに重症になると頸静脈怒張(頸静脈がぱんぱんに張って、拍動していない)という状態になり、緊急事態発生です。緊張性気胸心タンポナーデ肺塞栓、上大静脈症候群のうちどれかということです。

呼気 尿臭 尿毒症(腎不全)肝硬変
腐ったリンゴ臭(アセトン臭) DKA
かび臭い刺激臭 肝性脳症(肝不全)
嫌気性臭(いわゆる臭い)

羽ばたき振戦 肝性脳症 尿毒症 CO2ナルコーシス
呼吸>30回/分以上は、頻呼吸
ばち状指は、呼吸器疾患(膿胸など)の1ヶ月ぐらいから出てきます。手よりも足に早く出るといわれています。
その他、気管支拡張症、肺線維症、間質性肺炎、肺がん、先天性心疾患、肝硬変(体内にシャントがある疾患)

 

ばち指(clubbing)

原因疾患は、肺がん、肺線維症、チアノーゼを有する先天性心疾患、肝硬変、細菌性心内膜炎、炎症性腸疾患である。通常、骨髄で作られた血小板由来増殖因子を含む大型血小板は、右心系循環に入り、肺にひっかかって不活化される。右−左シャント、肺での動静脈瘻、心臓弁における血小板付着があると、指先の毛細血管に大型血小板が凝集し、そこから放出される増殖因子により、指でコラーゲン、平滑筋の増殖がおこり、ばち指を形成する。

 

チアノーゼ

プールから上がってきたら、口唇が紫色になっていた・・・という経験、どなたもお持ちだと思います。このように、皮膚や粘膜が青みがかった紫色になる状態を、チアノーゼといいます。

 

チアノーゼは、血液中の酸素の不足が原因で、皮膚が青っぽく変色することです。酸素が枯渇した血液(脱酸素化血液)は、赤色というより青みがかっており、これが皮膚を循環している場合にチアノーゼがみられます。肺または心臓の重い病気の多くは、血液中の酸素レベルを低下させるため、チアノーゼの原因となります。また、血管や心臓にある種の奇形があると、血液が空気中から酸素を取り込む場所である肺胞(肺にある小さな空気の袋)を通らず、直接心臓に流れるために、チアノーゼが生じます。この異常な血液の流れを短絡(シャント)と呼びます。短絡があると、酸素が欠乏している体中の静脈からの血液が、肺から心臓の左側に血液を戻す血管に直接流れたり、心臓の左側に直接流れたりすることがあります。そして、酸素が欠乏している血液がそのまま全身に押し出され、皮膚や他の組織へ循環します。血液中の酸素レベルは、パルスオキシメーター(指や耳たぶに取り付けるセンサー)によって推定できるほか、動脈血ガス分析で直接測定することもできます。血液中の酸素減少とその結果発生するチアノーゼの原因を特定するには、胸部X線検査、心エコー検査心臓カテーテル検査肺機能検査が必要であり、ときに別の検査が必要になることもあります。しばしば最初に酸素療法が行われますが、これは血液中の酸素レベルが低下する他の病態に対する治療でも同じです。シャントを生じる多くの奇形は、手術やその他の方法で治療できる可能性があります。

肌は、普通ピンクや赤みがかっていますね。皮膚の色は、皮膚の中の色素と皮膚の下を流れる赤血球の量によって決まります。赤みがかって見えるのは、この赤血球中にあるヘモグロビンの色によるものです。このヘモグロビンは、酸素と結合しやすい性質を持っています。酸素と結合したヘモグロビンの割合が高いと血液は赤く見え、逆に低いと暗く青みがかった色に見えます。ですから、酸素と結合していないヘモグロビンを多く含む血液が皮膚の下を流れると、皮膚が紫色に見えるのです。

ヘモグロビンは、鉄を含む「ヘム」という物質と、「グロビン」という蛋白質が結合してできていて、ヘムの部分が酸素と結合します。全身の組織に酸素を運ぶという赤血球の働きは、主にこのヘモグロビンによって行われます。

ヘモグロビンが肺で酸素に触れると、これと結合して酸化ヘモグロビンになります。赤血球が血液に乗って酸素の少ない組織に行くと、ヘモグロビンから酸素が放出されます。この酸素を放出したヘモグロビンのことを、還元型ヘモグロビンといいます。

酸化ヘモグロビンと還元型ヘモグロビン

酸化ヘモグロビンと還元型ヘモグロビン

 

肺で酸素を取り込んだ動脈血が鮮明な赤色をしているのに、体内を回って酸素を放出した静脈血は暗赤色をしているのは、静脈血中では還元型ヘモグロビンが増加し、酸素と結合した酸化ヘモグロビンが減少しているためです。

酸素と結合していない還元型ヘモグロビンの量が、3〜5g/dL以上になると、チアノーゼが現れます。

チアノーゼが現れる場所は、口唇、耳たぶ、爪、指先など、血管が皮膚のすぐ下にあるところです。

チアノーゼには、静脈血の酸素欠乏による末梢性チアノーゼと、動脈血の酸素欠乏による中枢性チアノーゼがあります。

末梢性チアノーゼについて、わかりやすいケースで説明しましょう。プールに長くつかっていた時や、冬の寒い日などに手指や足先、口唇が青紫色になることがありますね。寒冷にさらされると、熱の放散をできるだけ少なくするために身体表面の血管が収縮し、血液の循環が悪くなります。その結果として、血液が末梢組織に長く留まることになります。この間にヘモグロビンが酸素を放出してしまい、結果的に還元型ヘモグロビンが増え、チアノーゼが現れます。ただし、これは一時的なもので、循環さえ回復すればすぐに元に戻ります。

中枢性チアノーゼは、大きく分けて、呼吸器疾患によるものと心疾患によるもの、そのほか、異常ヘモグロビンによるチアノーゼがあります。

呼吸器疾患意によるチアノーゼとしては、肺でのガス交換に問題がある、肺胞換気障害があげられます。その1つとして是非覚えてもらいたいのが、高齢者を中心に増加している慢性閉塞性肺疾患(COPD)で、肺気腫や慢性気管支炎などがこれに含まれます。肺気腫では、肺胞がの弾力が減少して収縮が悪くなり、吸った息を完全に吐き出せなくなるために二酸化酸素が溜まり、酸素を取り込みにくくなります。また、慢性気管支炎では、空気の通り道である気道に痰などが詰まり、同じように吸った息を吐き出しにくくなります。いずれのケースも、肺でヘモグロビンが十分に酸素と結合できなくなり、動脈血中の酸素が不足してチアノーゼが起きてきます。

心疾患のなかでチアノーゼが問題になるのは、先天性心疾患です。右房や右室の静脈血が左房や左室の動脈血に混入することが、チアノーゼの原因になります。また、いろいろな疾患によって心不全になると、心拍出量が低下するために酸化ヘモグロビンを十分に末梢まで供給できなくなり、チアノーゼが起きます。

いろいろな先天性心疾患の中で、発生頻度が比較的高いものとして、心室中隔欠損とファロー四徴症をあげることができます。生後すぐにチアノーゼがみられるものと、ある程度成長してからみられる場合があります。

細胞が活動するためには、酸素が必要です。その酸素が届かないとなると、それぞれの臓器や細胞の機能は低下します。脳は酸素不足に最も弱い臓器で、窒息などによる急性チアノーゼの場合は、致命的なダメージを受けてしまいます。また、中枢性チアノーゼによって慢性的な酸素不足が続いた場合には、特に心臓から遠い指先で、結合組織が増加して指先が太鼓のバチのように膨らんでしまう、バチ状指という症状がみられます。

バチ状指

チアノーゼは最初に口唇や爪に出るので、その程度を観察します。黒っぽい紫色をしていたら重症です。チアノーゼの症状が強い時は、意識レベルを確認します。子どもや高齢者では、前後の状況から窒息の可能性を考え、誤って飲み込んだ物が気管に詰まっていないかを確認しましょう。末梢性チアノーゼか中枢性チアノーゼかを見極めることも大切です。末梢性であれば、身体を温めたり、マッサージをしたりして血液循環をよくすれば、回復します。また、ほかの症状もチェックします。発熱、咳、喀血(かっけつ)を伴って呼吸困難を起こしている時は、肺炎などの炎症性疾患を疑います。「ゼーゼー」と喘鳴を伴う時は、気管支喘息など、気道の狭窄を起こす疾患が考えられます。パルスオキシメータを用いると、採血することなく、血液中の酸素と結びついたヘモグロビンの割合を瞬時に測定でき、酸素不足の程度が客観的にわかります。

パルスオキシメーター

 

酸素と結合した酸化ヘモグロビンは、酸素と結合していない還元型ヘモグロビンに比べ、赤い光を吸収しません。パルスオキシメータは、この原理を利用して酸化ヘモグロビンの割合(これを動脈血酸素飽和度:SpO2 といいます)を測定する装置です。動脈血中の酸素の量を正確に知るためには、直接動脈血を採取して、酸素分圧を測定することが必要です。しかし、酸素飽和度と動脈血の酸素分圧の間には図のような関係があるため、酸素飽和度を動脈血の酸素量の指標にすることができます。

 

図5酸素飽和度と動脈血の酸素分圧の関係

酸素飽和度と動脈血の酸素分圧の関係

 

酸素飽和度は、健康な人では95%以上を示します。これに満たない場合は呼吸不全が疑われます。酸素飽和度が90%を下まわると、酸素療法の適用になります。最近は、センサーと測定部が一体化したコンパクトで安価なパルスオキシメータも市販されており、在宅でも簡単に酸素飽和度を測定できるようになっています。

チアノーゼのケアにあたっては、全身を保温し、軽いマッサージを中枢に向かって行い、血液循環の改善を図ります。また、気道の異物を除く、O2吸入を行うなど、血液への酸素の取り込みを促します。心身の安静を保ち、酸素消費量を減らすことも重要です。酸素吸入を行う時は、患者の不安を軽減するように努めましょう。窒息による場合は、すぐに救急車を呼ぶ、あるいは医師に連絡するとともに気道の異物の除去を試みます。なお、COPDの患者に高濃度の酸素をむやみに吸入すると、肺胞に二酸化炭素が溜まる障害(CO2ナルコーシス)を起こす危険があるので、注意が必要です。チアノーゼとは、血液中の酸素が不足することをきっかけとし、くちびるや指先などの皮膚や粘膜が青紫色に変化した状態を指します。血液中の酸素が足りなくなると、血液中には酸素と結合していない還元ヘモグロビンが増加します。チアノーゼは、血液中のヘモグロビンのうち、還元ヘモグロビンの割合が増えることで現れます。具体的には、毛細血管を流れる血液中の還元ヘモグロビン濃度が5g/dl以上になると現れるとされます。ヘモグロビンの絶対数が少ない貧血の患者さんは、還元ヘモグロビン濃度が5g/dl以上になりにくいため、チアノーゼは起こりにくい傾向があります。一方、新生児は成人に比べてヘモグロビンが多い状態(生理的な多血症)にあるため、チアノーゼが現れやすくなっています。

チアノーゼには中枢性チアノーゼ、末梢性チアノーゼ、血液性チアノーゼの3種類があり、それぞれ次のような原因で起こります。

中枢性チアノーゼ

顔の中央部分や体幹など、全身の皮膚や粘膜にチアノーゼが現れます。原因としては、呼吸機能の障害や生まれつきの心臓病などが挙げられます。

呼吸機能障害の例

  • 泣き入りひきつけ(乳幼児が激しく泣いて無呼吸となること)
  • クループ
  • 気道に異物が詰まる
  • 間質性肺炎
  • 呼吸窮迫きゅうはく症候群
  • 新生児一過性多呼吸

生まれつきの心臓病の例

  • ファロー四徴症
  • 三尖弁閉鎖
  • 肺動脈閉鎖

その他

登山中など、標高が高く酸素が少ない環境にいるときに中枢性チアノーゼが現れることもあります。

末梢性チアノーゼ

動脈や静脈がふさがって毛細血管の血流速度が低下したり、末端への血液循環量が減ったりすることで、指や爪、鼻先などの末端部のみにチアノーゼが現れます。

末梢性チアノーゼは、以下のような原因により現れることがあります。

  • 寒い環境や冷たい水などにさらされること(寒冷暴露)
  • 低血糖
  • 赤血球増多症
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 静脈瘤じょうみゃくりゅう

血液性チアノーゼ

ヘモグロビンの異常により、チアノーゼが現れるものを血液性チアノーゼといいます。多くの場合、血液中に酸素を運搬することができないメトヘモグロビンが増える、メトヘモグロビン血症が原因となって起こるといわれています。

チアノーゼは、全身の中でもくちびる、口の中の粘膜、鼻先、耳たぶ、指先、爪の下(爪床)などにみられることが多いといわれています。これらの部位は毛細血管が豊富に張り巡らされており、皮膚の表皮が薄く、メラニン色素が少ないという特徴があります。

そのため、毛細血管内を流れる血液の色が透けやすく、皮膚や粘膜が青紫色にみえる状態が生まれやすい傾向があります。また、重いチアノーゼでは皮膚そのものも変色します。酸素と結合していない還元ヘモグロビンを多く含む血液は、鮮やかな赤色ではなく暗赤色をしています。チアノーゼはさまざまな原因、環境により引き起こされる状態であり、全ての場合で治療が必要というわけではありません。ただし、急激にチアノーゼが進行している場合は、何らかの原因により全身状態が悪化している可能性もあります。このような場合は、ただちに医療機関を受診しましょう。

血液検査により、血液中の酸素濃度や貧血の有無などを調べます。また、なぜチアノーゼが現れているのか、原因となっている病気を特定するための検査も行われます。

チアノーゼの代表的な原因疾患には心臓や肺の病気などがあるため、状況に応じて胸部のレントゲン検査やCT検査、超音波検査、心電図検査などが選択されます。

問診の際に、チアノーゼが現れたときの状況(どこにいた、何をしていた、など)を、医師に詳しく伝えることも迅速な診断のために役立ちます。

チアノーゼが現れている場合は、原因疾患に対する治療や管理が行われます。たとえば、呼吸がスムーズに行えない呼吸窮迫症候群や、気道が狭くなる気道狭窄が原因となっている場合は、気道確保や酸素投与などの処置が行われます。

また、生まれつきの心臓病の場合、生まれる前の出生前検査で診断がつくこともあります。この場合は、生まれてくる赤ちゃんの血液循環を保つために、動脈管を開存させる薬剤などを用意したうえで分娩に臨むこともあります。

上記は治療が必要な中枢性チアノーゼの原因疾患の一例ですが、指先などに限局して現れる末梢性チアノーゼの場合は、特別な治療を必要としない場合も多くあります。