流行性胸痛症(ボルンホルム病:Bornholm病)は、筋肉痛をきたすウイルス感染症です。ボルンホルム病はバルト海のデンマーク領ボルンホルム島での流行から「Bornholm病」と名付けられた。原因となる病原体は、大半が子供の夏風邪の原因病原体のひとつエンテロウイルス属に属するコクサッキーウイルスB群>エコーウイルスなどによって引き起こされる熱性疾患で、夏から秋に流行し、あらゆる年齢で起こりうるが、小児で最も多い。

症状は 非常に特徴的で、突然の胸骨下の突き刺すような強い痛みで始まります。痛みは 前胸部や上腹部、背部が多く、激痛であるため内臓や 心筋梗塞などを考えてしまいがちですが、体動や咳、深吸気により痛みが増強することが特徴で、あくまでも筋肉の痛み(カーネット徴候陽性で、障害された体幹の筋は腫脹し痛い部分を握ると痛みが増大する)であり、発熱(40℃以上のことも)ならびにしばしば頭痛,咽頭痛,および倦怠感を伴います。

流行性胸痛症の潜伏期は7日、症状は通常2~4日で治まるが、1/4の症例で数日以内に再発して、数週間にわたり持続または再発を繰り返す。

診断は、咽頭拭い液または便検体からウイルスを検出するか血清抗体価の上昇を認める。

コクサッキーウイルスはピコルナウイルスに属する一本鎖のRNAウイルスである。主な感染経路は経口感染で、ウイルスは咽頭、小腸で増殖して糞便中に排出される。A群(1~22、24型)はヘルパンギーナ、上気道炎、無菌性髄膜炎、手足口病などを起こす。B群(1~6型)は流行性髄膜炎、心筋炎、心膜炎、筋痛症(ボルンホルム病)などを起こす。潜伏期は2~10日で多くは3~5日とされる。血清学的検査は、急性期と回復期のペア血清で行う必要がある。CF法は群特異性が高いが、異型ウイルスに対する交差反応があり、型特異性の検出には不向きである。 NT法は型特異性が高く、中和抗体はかなり長期間持続する。コクサッキーウイルスの診断に有効な抗体検査方法である。ウイルス抗体価のご依頼・ご提出にあたっては、急性期(発病2~7日)と回復期(2~3週)の検体を同時測定し、回復期の抗体価が急性期の結果の4倍(2管差)以上に上昇したとき、血清学的に有意とみなします。(急性期の検体は凍結で提出)

治療は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)による対症療法となる。予後は、良好で4~6日で軽快する