高がかぜ、然れどかぜ

風神雷神プライマリ・ケアを担う診療所に来る患者さんは、なにを訴えて受診されるのが多いのでしょうか? 一番多いのはやはり、かぜ症状です。個人的にかぜが好きが嫌いかは別問題として、かぜを上手に診なければ、よろず診療所は始まりません。上気道炎の症状である「咳」「くしゃみ」「鼻づまり」「鼻汁」「喉がいがらっぽい」などの症状で受診される患者さんが上位を占めています。勤務医時代は、かぜと言えば、PL顆粒と鎮痛解熱剤を処方することしか知りませんでした。放っておいても勝手に治る病気だし、上手に治す必要性も感じておりませんでした。所詮は、対症療法なので(咳には咳止め、鼻水には抗ヒスタミン剤、痛み、熱には消炎鎮痛剤)わざわざ、病院に行く必要はないのです。薬局で、市販薬を買って飲んでもほとんどの場合は大差がないのだ・・・と不遜にも考えておりました。

よろず診療所の初診時の愁訴は、

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1位 咳
2位 発熱
3位 くしゃみ・鼻水
4位 喉の痛み
5位 頭痛
6位 膝痛
7位 腰背部痛
8位 発疹・湿疹
9位 全身倦怠感
10位 胃の痛み

しかし、「高がかぜ、然れどかぜ」なのです。慢性疾患でかかっている人は、ついでという感じが多いでしょうが、いつもなら様子をみる、薬局で薬を買うという人が「咳」「鼻汁」「喉が痛い」などのかぜ症状で、仕事を休んでまで、医療機関を受診したとういう場合は、それなりにいつもと違うなにかあるかもしれません。かぜ症状で受診された初診の患者さんのうち、風邪症候群が50.7%。風邪と思っても風邪ではなく、31.4%が呼吸器感染症、6.4%がその他の感染症、11.4%が不明とされています。実は、かぜの診療というのは、風邪薬を出すことではありません。患者さんが風邪?って思っていても(僕も風邪だと思って、実は・・・と冷や汗をかいたことも)たけしの本当は怖い家庭の医学ではないですが、心筋炎?心内膜炎?急性肝炎?急性糸球体腎炎?キランバレー?等々、普通のかぜとして治療をして本当に問題はないかなあ?っとちょっと考える、実は怖い病気がかくれていないかを見落とさないようにすることが本当の仕事なのです。

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さて、頭の中でサーと除外してから、風邪と診断しても、判子で押したような処方をしたのでは、毎日がおもしろくありません。当院では、風邪症候群に対しては、基本的には、漢方薬を処方しています。そうすると、証を決めるために、一通りの問診、診察の上、脈を診て、舌を診て、お腹まで診ることもあります。患者さんも高が風邪でよく診てもらったと喜んでくれ、僕の方も然れどかぜで両方にハッピーな時間となるのです。そんなことをしながら、風邪診療のモチベーションを保つようにしております。そうは言っても漢方の嫌いな人には錠剤を出しますので心配ご無用。当然、咽頭・扁桃炎、肺炎には抗生剤も考慮します・・・。


ごちゃまぜ、かぜ症候群

かぜは、正式?には「風邪症候群」といい、上気道(鼻腔・咽頭・喉頭)に炎症を起こす病気の総称です。そのほとんどがアデノウイルス・ライノウイルス・インフルエンザウイルスなどのウイルス感染によるものですが、溶連菌などの細菌やクラミジア、マイコプラズマなどによって起こされるものも含み、アレルギー・寒冷など非感染性のものもあります。

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かぜの原因の多く(80~90%)はウイルスですが、なんと200種類以上もあり、ウイルスの培養検査をして、ウイルスを同定してもかぜを起こすウイルス(ライノウイルス・アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルスなど)に直接効く薬はなく、また結果がわかる頃には病気も治ってしまうため、日常臨床の場で原因を特定することは、一般的には行われていません。

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最もポピュラーな普通感冒
一般的には、成人で 1~2回 、 学童3~4回 、 幼児5~6回 、乳児で7回、1年間でかぜにかかると言われています。かぜをひいてしまったら、安静、保温、栄養の3原則を守ってなるべく早く治るよう心がけることがもっともよい対応といえます。冬なら、部屋全体を適温に保ち、汗が出たときには、体が冷えないように、肌着を取り換えることも必要です。食事内容は、栄養価の高いものにこしたことはありませんが、何も無理して食べる必要はありません。食欲と嗜好に応じて、食べればよいでしょう。ただ、発汗のため、からだの中の水分が不足がちになるので水分を十分にとるよう心がけることが大事です。

自信をもって「かぜ」と診断(典型例)

急性の経過で何となく調子が悪いという訴えの場合「風邪ですね」ととりあえず言ってしまうことがあります。実はこれは大変危ないことなんですね。勤務医時代は、普段は専門外来(循環器)をしていて、風邪の患者さんを診ることがなかったわけで、救急当直の時もとりあえず、対象療法をしておいて、「明日、かかりつけ医に言って下さいね」って逃げていると、疾患の診断をしなくても良かったわけです。(小児のいろいろな病気も診断をしなくて送りバントだけOK)しかし、開業すると風邪の患者さんがたくさんくるわけで、この「風邪と思っていたら」という疾患を上手に診断することが、昔で言う”見立ての言いお医者さん”というわけです。患者さんが「風邪引いたみたいなので、風邪薬下さい」と言ったとたんに父の機嫌が悪くなりました。診断がついとんならここへ来んでもええ。家で寝とったら治る。風邪がどうかはこっちで判断する。だまっとけって感じ。しかし、実は開業医にとって風邪を真剣に診る姿勢はたいへん大切なことなんですね。昔はあたりまえの光景なんでしょうが、今は医者がえらかった時代は終わりました。患者さんの面接態度のことはさておいて「common cold=放っておいても治る」は正しいですが、本当に風邪かどうかが問題なんですね。自分の中に風邪の定義をしっかり持ってないとよくわからない不定愁訴を風邪ですねと安易に言いかねません。普通感冒と言われるいわゆる最もポピュラーな風邪は、鼻炎症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)咽頭炎症状(咽頭痛、イガイガ感)下気道症状(咳、痰)の主三大症状が同時に同程度存在する病態で発熱については、あってもなくてもよいとされています。この3領域にわたる症状の多彩性はウイルス性感染を示唆し抗菌薬不要の病態と言えます。(細菌感染は、原則として単一の臓器に1種類の菌が感染するため、同時に副鼻腔炎、扁桃炎、肺炎を起こす可能性はほぼない

 

症例case study 7歳 男児

昨日の朝から少し咽頭痛あり、昼頃には咽頭痛は少しましになったが、咳、鼻水も出てきたため、夕方に受診。熱は37.4℃ 咽頭軽度発赤、頚部リンパ節触知せず。心肺異常なし。

 

この症例のように、受診時におおむね数日ぐらいの時間経過の中で、鼻症状、咽頭症状、下気道症状の3領域の症状が同程度になっている。このような経過がかぜの典型とされています。Diehrの肺炎予測ルールでも鼻水、咳、咽頭痛があって、他の症状がなければ、肺炎の可能性は0%であり、自信をもって「かぜ」と診断していいのではないかと思っています。

注1)咽頭症状である「喉が痛い」は、原則「嚥下時痛」です。「唾を飲んだ時、食べ物を食べた時に痛いですか」「はい」というのがあるという所見です。咳をした時に痛いという場合は、激しい咳で痛くなっている=咳、痰の下気道の症状の一部と考える方が無難です。

注2)痰が出るとの訴えのある場合、後鼻漏がないかを確認します。咽頭後壁に鼻汁が付着していないか飲み込みたくなる感じで喉にひっかかる場合は、下気道ではなく、鼻の症状と考えましょう。

経過

日本では、すぐ来る場合は、ちょっとしんどい、喉が痛いぐらいでくるので

かぜ

反対に言えば、風邪の定義と異なる病態の時は「現時点では、この症状を風邪とは言えず、はっきりしないので、注意して今後の経過をみましょう」と言えるようになりましょう。

 

CMでもよくあるフレーズですが「風邪」には、鼻のかぜ、喉のかぜ、咳のかぜって言われますよね。この考え方は非常に危険です。「風邪と思っていたら」で失敗するのは、「鼻のかぜ」「喉のかぜ」「咳のかぜ」パターンと鼻、喉、下気道の症状もないのに、熱だけで安易に「かぜ」としないことが重要です。
「鼻のかぜ」パターンです。

副鼻腔炎

 

症例case study 28歳 女性 鼻づまり 発熱 頭痛

7日前から咳、鼻水 咽頭痛あり。数日で軽快していたが、鼻水が続いていた。今朝から38.4℃ うつむいた時に頭痛あり(左頬部)痰がのどにひっかかって咳が出る。膿性の鼻水が左の鼻からだけ出ている。上の歯が痛い。

 

鑑別疾患として挙げられるのは、アレルギー性鼻炎と急性細菌性副鼻腔炎がある。アレルギー性鼻炎の特徴としては、視診で鼻粘膜が蒼白であること、朝方クシャミ鼻水があるけれど日中は減少することが多く、季節性がある。可能であれば鼻汁中の好酸球数などのチェックが有用である。細菌性副鼻腔炎に特徴的な症状は、症状が二峰性、片側性の頬部痛、うつむいたときに前頭部もしくは頬部の重い感じ、上歯痛、膿性鼻汁の病歴(ある程度の期間の膿性鼻汁)、身体所見で膿性鼻汁の確認、 血管収縮剤や抗ヒスタミン薬に対する反応が悪い、後鼻漏などがあるが、尤度比は2前後と低く、決め手にはならない。検査としてもレントゲンは感度が悪く、CTやMRIでは感度が高く特異度が低すぎて偽陽性所見が多い。膿性鼻汁があっても細菌感染とは限らないことが重要である。というのも鼻汁は、水様透明⇒粘っこい粘液性⇒黄色と経過して軽快することが多く、鼻汁や鼻汁がのどに来て痰として出す喀痰の黄色化のみでは、抗生剤の使用の適応とはならないからである。この細菌性副鼻腔炎のうち抗生剤の治療が必要なケースは①非常に強い片側性の頬部の痛み・腫脹、発熱がある場合と鼻炎症状が10日以上持続しかつ胸部の片側性の痛み・圧痛と膿性鼻汁が見られる場合とされています。原因菌としは、肺炎球菌(33%)インフルエンザ桿菌(32%)モラキセラ(9%)が多く、治療としては肺炎と同じで、第一選択薬はアモキシリンでOKです。ただし、細菌感染があってもすべての症例において抗生剤の治療が必要であるわけではない。というのも、副鼻腔はもともと無菌状態ではなく多種雑多な菌が存在しており、耐性菌がいても、ある程度の菌数が減少すれば、自然と時間経過の中で感染を起こしている菌が耐性菌であって排除できるからである。しかも、感冒後の副鼻腔炎で細菌性は0.5~2.5%とと言われており、ほとんどが抗菌薬は不要です。

二峰性

 

「喉のかぜ」のパターンです。

咽頭炎/扁桃炎

(1)A群β溶血性連鎖球菌

溶血性連鎖球菌は、α溶血とβ溶血を呈する2種類があり、β溶血でヒトに病原性を有するものは、A群、B群、C群、G群などで、溶連菌感染症の90%以上がA群によるものです。したがって、一般にはA群β溶血性連鎖球菌による感染症を溶連菌感染症としています。咽頭痛(唾を飲み込む時に痛い)が主症状で、発熱の有無は問いません。咽頭後壁のリンパ濾胞の腫脹が見られ、扁桃炎の併発も含めた病型です。大半がウイルス性で自然治癒しますが、咽頭炎/扁桃炎の1割がA群β溶血性連鎖球菌(以下、溶連菌)で、抗菌薬の適応になります。

症例case study 6歳 女児 発熱

昨日から39℃の発熱があり、喉が痛くて食事が摂りにくい。咳、鼻水はない。

イチゴ舌

熱が高く(3歳未満ではあまり熱があがらないこともある)激しい咽頭痛があり、舌にイチゴのようなツブツブができたりします。喉を見ると扁桃腺の白苔の所見での鑑別はなかなか難しいのですが、軟口蓋が赤く(口蓋垂が赤い)ブツブツしていて点状出血が見られる場合は、溶連菌が疑われます。

 

centor

喉の所見としては、咽頭の発赤、咽頭後壁のリンパ濾胞の腫脹があり、原因の大半がウイルス性であり、自然治癒します。この症状で、抗生剤の適応となるのは、A群β溶血性連鎖球菌(急性咽頭炎の約10%以下を占める)による咽頭炎です。連菌性咽頭炎の診断基準としてCentorの診断基準:①38℃以上の発熱、②圧痛を伴う前頚部のリンパ節腫脹、③白苔を伴う扁桃発赤、④咳嗽なし(陰性所見)がある。年齢を考慮する(Melsaac modification)と 15歳未満で+1、45歳以上で-1ポイントするのが現実的である。4点以上ならすべてに抗菌薬治療を開始し、1点以下ならば簡易キットによる検査もせず、抗生剤の治療もせず、2~3点ならば、簡易キットによる検査をして、陽性なら抗菌薬の治療を開始することが推奨されている。簡易キットを使用した上記診断基準では10~20%は治療不十分となりますが、大人でこの程度であれば無害と考えられている。ただ、前頚部のリンパ節の触知は困難であり圧痛として認められることが多いこと、38℃を超える前の早期受診も多いこと、白苔を認めるケースは半分にも満たないことが問題点であり、4~5点でも簡易検査では半数にしか陽性とならない。見落としを少なくするためのコツとしては、「鼻汁がない」というのも1点と考えてみること、ウイルス性疾患に比べ、溶連菌性咽頭炎は咽頭痛が強く片側性であることが多く、嚥下時の強い痛みで食事で改善しない場合は細菌性を疑う。また、咳嗽時に増強する咽頭~喉頭部の痛み、起床時に強い痛みや、食事後に軽快する咽頭痛はウイルス性を疑うなどを参考にすると少し診断率を上げることができるかもしれない。

クイックビュー( A群β溶連菌の迅速検査)は、感度はちょっと低いのですが、陽性にでれば、自信を持って抗生剤を出せますよね。治療の目的は、症状の緩和(1〜2 日間罹病期間が短縮)扁桃周囲膿瘍のような化膿性合併症の予防(NNT27)周囲への飛沫感染予防(投与後 24 時間で感染性が減少)リウマチ熱(将来に心臓弁膜症の原因になる)の予防(NNT3000 〜4000)である。ベンジルペニシリン(バイシリンG)が第一選択であったが、現在国内で流通していないため、現在は、アモキシシリンを第 1 選択とする。ただし、溶連菌とEB ウイルスによる咽頭炎の症状・所見が似ており、EB ウイルスによる咽頭炎にアモキシシリンを投与すると高率に皮疹を起こすので注意しなければならない。ペニシリンア レルギーがある場合にはクリンダマイシンを使用するが、即時型反応でなければセファレキシンを 検討してもよい。日本ではマクロライド耐性溶連菌が増加しているのでクラリスロマイシンやアジ スロマイシンは使わない。咽頭炎にレボフロキサシンや広域セファロスポリンを用いる意義はない。 早期の抗菌薬投与が、溶連菌感染後糸球体賢炎(PSGN)の発症の危険性を少なくするという明らかな根拠はありません。

 

溶連菌が起こす病気には、粘膜(咽頭炎、扁桃炎、猩紅熱、中耳炎、副鼻腔炎など)皮膚・軟部組織(伝染性膿痂疹、蜂窩織炎、丹毒など)があります。溶連菌は発赤毒素をもっていて、感染すると全身に粟粒大の赤い発疹ができ、全体が赤くみえるので、その場合は「猩紅熱」といいます。1~2日すると、赤く小さなかゆみのある発疹が、首・胸・手首・足首に出て、しだいに全身に広がります。一方,最近では典型的な猩紅熱様の発疹は少なく,淡紅色の紅斑性丘疹が一過性に出現するものが多くあります。3~4日すると、いちご舌ができ、唇のはし(口角)が荒れてきます。治療すると2~3日で、熱が下がり、発疹も薄くなってきます。2週間くらいして、手足の皮膚がむけることもありますが、跡は残りません。溶連菌の好発年齢は、3歳以上の小児で、突然の発熱を認め、無治療でも3〜5日で自然軽快します。家庭の中で感染を防ぐのはなかなか難しく、特に兄弟間での感染率は25%とされる。

 溶連菌

 

(2)アデノウイルス感染症

新宮422

2歳 女児
喉を見ると扁桃腺に膿がついています。熱は38.5℃。さて、なんでしょうか?いろいろと考えられるんですよね。A群β溶連菌?アデノ?はたまたEBウイルス?・・・とりあえずは、主な3つぐらいは考えるんですが。他にも、インフルエンザ?コクサッキー?エコー?突発性発疹?ヘルペス?ヘルパンギーナ?手足口病?・・・。小児科の教科書を読むとプロ?は見分けられるというようなニュアンスの著者もいます。咽頭所見の「アトラスさくま」というバイブルもあるようです。しかし、僕ら内科医にはなかなか難しい芸当で、とりあえずは、市場調査?お母さんに、通われている保育園や幼稚園でなにが流行っているかを聞いてみます。地域の人口割合に応じて指定された定点医療機関が、インフルエンザや水痘、手足口病などの流行する感染症については、毎週、何人の患者が来院したかを報告しているものを参考にしたりします。

感染症発生動向調査週報(テレビの視聴率調査のようなもので、兵庫県西播磨地区として公表されています)

A群溶連菌

典型的には、線状の白苔と言われているようですが、この症例は、べたーとした感じの白苔ですよね。(べたーとした白苔はEBが多い)やはり、ウイルスの扁桃腺の白苔のパターンの鑑別は困難です。チェックAd(感度の高いアデノの迅速検査)で診断がつきますが、治療は変わらないので原則行っていません。アデノの好発年齢は乳幼児で、高熱が続くことが多いので、保護者が心配されて診断を希望されるときに検査しています。いまでも、通称「プール熱」と呼ばれていますが、今の時代、プールで広がるなんて誰も思ってもいないのに、この紛らわしい名前で、何時まで呼び続けられるんですかね。

(3)EBウイルス感染症(伝染性単核症)

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典型的には、伝染性単核球症の白苔は細菌性と異なり、べろっと一枚の布のような感じの白苔が多い。EBウイルス感染症にアモキシシリンを投与すると、発疹が出ることがあるので(30歳以上では稀)気をつけなければなりません。咽頭所見だけで鑑別は困難ですが、EBウイルス感染症は、EBウイルスは、幼少時に感染するとほとんどが、不顕性感染(症状が表に出ない)か軽い風邪、扁桃炎の症状で終わってしまいますが、大人になってから感染すると発症は緩徐で2〜3日で発症し(溶連菌は突然の発熱)2〜4週間の有症(溶連菌は3〜5日で解熱)未婚の若年青年に好発し(アデノは乳幼児、溶連菌は3歳以上の小児)両側性限局性の上眼瞼浮腫が見られることもあります。前頚部のリンパ節だけでなく、他の部分も腫れていれば、EBウイルスの可能性も高くなります。抗生剤が効かない場合は、他のウイルス(ヘルペスなど)以外にも、クラミジア、淋菌なども考えられるかも知れません。なかなか奥が深い、悩める咽頭炎、扁桃炎なんです。血液検査でもそれらしい所見(肝機能異常)が見られるかもしれません。

診断には、 VCA-IgGEBNAの測定が有用です。既感染となると幼少時に感染していることになり、終生免疫として今後もEBウイルスにかかることはないわけですが、未感染となると、今後も扁桃炎になる度に、EBウイルスも鑑別にいれないといけなくなりますよね。

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VCA-IgM(viral capsid antigen)は、感度が低い。
VCA-IgGは、有症期までには100%陽性になる。

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慢性扁桃炎

急性扁桃炎を年に3〜4回繰り返すようになると、習慣性扁桃炎または反復性扁桃炎と呼びます。小児期に多く、小学校入学前にピークとなります。急性扁桃炎と同じ症状で、咽頭痛、嚥下痛、発熱、全身倦怠感、耳への放散痛などが見られます。口蓋扁桃は赤くはれ、白い塊(膿栓)が付着します。頸部のリンパ節が腫大して痛みを伴うことがあります。扁桃は免疫器官であるので、むやみに摘出するものではありませんが、繰り返す扁桃炎(概ね年間、5〜6回以上の罹患)で、学校生活の質に影響するようであれば、免疫の成熟の10歳以上を目処に積極的に扁桃摘出術を考慮したほうがよいでしょう。

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慢性扁桃炎のもうひとつの病型として、扁桃病巣感染症があります。扁桃自体の症状はほとんどないか、または軽度の咽頭痛、異物感程度にすぎないにもかかわらず、皮膚、腎臓、関節などにさまざまな障害を起こす病態です。 掌蹠膿胞症では、主に手のひらと、足底部にだけ小さな膿疱が多数現れ、赤くなり、皮膚がむけることを繰り返すものです。女性に多くみられます。原因としては、免疫異常、金属アレルギーなどがいわれていますが、IgA腎症は、初期には血尿と浮腫程度しか自覚症状がありません。しかし、長期にみると進行性の病気で20〜40%が腎不全になります。IgA腎症の20〜30%は、扁桃炎に代表される上気道炎を契機に発症し、尿症状の悪化を繰り返します。胸肋鎖骨過形成症では、鎖骨、胸骨、肋骨関節が腫脹し、痛みを伴います。これも女性に多い疾患です。そのほか乾癬、関節リウマチ、微熱も扁桃病巣感染症に含まれます。治療は、病巣感染の原因となっている口蓋扁桃摘出術を行います。手術により、掌蹠膿胞症では皮診の改善、消失が80%以上、胸肋鎖骨過形成症では疼痛改善が81%、IgA腎症では尿蛋白の改善が50%以上にみられます。

 

亜急性甲状腺炎では、甲状腺に圧痛があります。また、数は少ないが、必ず鑑別診断しておかなければならないkiller sore throatとして、急性喉頭蓋炎扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍があります。
急性喉頭蓋炎は緊急疾患であり、嗄声・喘鳴・呼吸困難を伴ったり、横になれなかったり、Sniffing position(嗅ぐ姿勢)を取っていたり、見た目でとても重症感があり、つばも飲み込めなくて、涎を垂らす状況である。扁桃周囲膿瘍では、激しい片側性の咽頭痛・嚥下痛があり、食事で改善せず、開口障害も認められる。「喉が痛い」からの最悪のシナリオは、大動脈解離、心筋梗塞です。こちらの体調がかなりよくないと診断は難しいと思いますが、sudden onsetの病歴に違和感を感じられるかがカギですが、心筋梗塞の場合は、顎の痛み、歯が浮く感じなどと表現されることもあります。

「咳のかぜ」のパターンです。

気管支炎

咳嗽が主症状で、喀痰や発熱の有無は問わず、90%以上が非細菌性のものであり、5~10%にマイコプラズマ、クラミジア、百日咳といった疾患が見られる。ウイルス性気管支炎との鑑別で大切な疾患としては、①肺炎、②抗菌薬治療が必要な細菌性気管支炎、③慢性咳嗽症候群がある。基本的な考えとしては、肺に基礎疾患がなければ、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラクセラ・カタラーリスが急性気管支炎を起こすというエビデンスはない。

肺炎を鑑別するためのレントゲン検査の適応としては、基礎疾患のない非高齢者においては、バイタルサインによる診断(Ann Intern Med. 2001 Mar 20;134(6):521-9.)としては、バイタルサインの異常(脈拍数≧100/分、呼吸数≧20/分、体温≧37.8℃全て満たせば)や呼吸音の左右差がなければ、通常は肺炎の検査は不要であるとされています。

肺炎

気管支肺炎と肺炎の鑑別のツールとしてDiehr診断ルールというのがある。のどの痛みが―1となっているのは細菌感染が原則として一つの臓器に一種類の菌の感染があるからであるが、喉の痛みとして咳嗽時の痛みであれば、咽頭炎ではなく肺炎を疑う必要があるし、悪寒、寝汗も肺炎を疑う兆候の一つである。

 

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熱だけのパターンは最も危険です

熱があって、患者さんが「風邪をひいたみたい」と言ったとしても、鼻水もない、喉も痛くない、咳もないとなると風邪ではありませんよね。上・下気道症状がないのに風邪と軽々しく言わないことが大切です。熱だけのパターンは、最も危険です。風邪をいかに楽しく診るか?この命題を見つけたからこそ今の自分があるわけです。漢方薬もその一如として役にたっておりますが、風邪の診断学があってこそ、風邪のように見える風邪でない疾患を見逃さないことが、かかりつけ医の風邪診療の肝です。「いつもの風邪と比べてどうですか?」と聞けば、自ずとちょっと違うかなと本人も自覚できます。突然の発熱が主症状、熱源を特定せずに抗菌薬を処方しないことが大事です。急性腎盂腎炎、急性胆管炎、胆嚢炎、肝膿瘍、急性前立腺炎、高齢者の肺炎、非特異的なウイルス性感染症(EB CMV 麻疹 風疹など)感染性心内膜炎、急性肝炎、結核、敗血症、膠原病、悪性疾患などなど鑑別疾患は山ほどあります。安易にかぜとしないで、丁寧な診察が大切です。