B型肝炎

予防接種 Hepatitis-B vaccine
本ワクチンは不活化ワクチンであり、接種に伴う局所の疼痛、腫脹や接種後の発熱などワクチンに共通の副反応はあるものの、本ワクチン特有の副反応は知られていない。 比較的安全なワクチンの一つである 。本ワクチンは沈降型ワクチンであるため、ワクチンを注射器に充填する前に十分攪拌し、沈殿している有効成分がきちんと接種されるようにしなければならない。
区分 任意
B型肝炎母子感染予防事業(保険適応)
種別 不活化
投与経路 10歳未満:皮下注
10歳以上:皮下注もしくは筋注
1回投与量 10歳未満:0.25ml
10歳以上:0.5ml
合計接種回数 3回目
標準スケジュール 1回目:生下直後〜生後2ヶ月
2回目:1回目の4週間後
3回目:1回目の5〜6ヶ月後
Catchupスケジュール 1回目:年齢を問わず同定し次第直ぐに、乳幼児〜思春期は特に必須
2回目:1回目の4週間後
3回目:1回目の5〜6ヶ月後

 

B型肝炎ワクチンの接種パターンは3種類あります。

B型肝炎ワクチン

(1)定期接種

2016年10月1日からB型肝炎ワクチン(HBワクチン)は定期接種化されました。推奨の定期接種は生後2,3,7~8カ月に行う。

B型肝炎の接種間隔は実施要領では、1回目から2回目は27日以上、3回目は1回目から139日以上、2回目と3回目は6日以上の間隔をあけるとなっています。これでは 最短20週で接種が完了してしまい、アメリカを含め国際的な接種間隔から外れる場合が出てきて、お勧めできる接種間隔ではありません。任意接種で行う場合はこのような接種間隔で予定を建てることはありません。

厚生労働省では、2回目と3回目の間隔は2ヶ月程度(できれば、4〜5ヶ月)の間を開けた方がより免疫効果が良いとされています。赤ちゃんによっては3回目は公費の定期接種になりませんが、免疫効果を考えれば、有料で接種するということも勧められます。3回目は2回目からの接種間隔をあけることが望ましいので、2回目と3回目の間隔として4-5か月を提案しています。

 

B型肝炎ワクチンは「肝臓がん」と「STD(性感染症)」の予防ワクチン

最近、子宮頸がんワクチンというのが登場し、たつの市でも中学校1年生に公費接種が行われています。ヒトパピローマウイルスの感染を予防して、子宮頸がん(実は、前癌状態の子宮頚部上皮内腫瘍CIN2,3を減らす)を予防するワクチンです。そう考えると、B型肝炎ワクチンも、肝臓がんを予防するワクチンなんですよね。B型肝炎ウイルスに感染しても、誰もがキャリア(持続感染:ウイルスを体内に保有した状態)になるわけではありません。しかし、赤ちゃん、とくに3歳以下の乳幼児が感染すると、キャリアになる危険性がずっと高くなります。キャリアのうち約10%の人は慢性肝炎を発症し、肝硬変へと進行し、肝硬変になると3人に1人が肝臓がんを発症しています。また、急性肝炎から劇症肝炎を起こし、死に至るケールもあります。日本では、B型肝炎ウイルスのキャリアは、人口の1%で約100万人と推定されています。

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母親がキャリアでない場合は(任意接種)必ずしも生後すぐに接種する必要はありませんが、3才未満で感染すると慢性化しやすくなるので(できるだけ早く接種すれば免疫もでき易い)生後2か月からヒブ、小児用肺炎球菌ワクチンなどとの同時接種がお勧めです。また、ワクチンの効果は10~20年前後とされています。10~15歳頃に追加接種をすることが望まれます。女児は11歳頃に、HPVワクチンとの同時接種も勧められます。

B型肝炎は母子感染(垂直感染)や輸血だけでなく、知らない間にかかることも多いVPDです。近年、父子感染や感染経路不明で乳幼児がB型肝炎ウイルスに感染する例が増えており、母子感染予防だけでは、対策が不十分といえます。B型肝炎は、キャリアとよばれる感染者の体液(汗・涙・唾液・血液・粘液・精液)から感染します。HBVは、汗や涙でも感染するので、通常の日常生活の中で感染が起こるので、幼稚園/保育園や学校など、子供同士が触れあう場所では、キャリアからの感染は防ぐことはできません。さらに、感染した場合も、症状がないか感冒のような症状が数カ月続くだけなので、本人も気づかないまま感染源になってしまい、家族内や幼稚園/保育園・学校・職場内での集団発生の報告もあります。しかし、キャリア児を特別扱いすること・・・されることは、きわめて問題の多い対応です。そういった子供たちを作らないためにも、ユニバーサルワクチネーション、生まれた子ども全員にB型肝炎ワクチン接種をすることが大切なのです。

全世界では、約3億人がB型肝炎ウイルスに感染し、それに関わる病気で、毎年約60万人が死亡しています。B型肝炎は、世界では、一般的な性感染症のひとつです。WHO(世界保健機関)は、1992年、世界中の子どもたちに対して、生まれたらすぐにこのワクチンを国の定期接種として接種するように指示しており、ほとんどの国で定期接種が常識となっています。これは、ユニバーサルワクチネーション(全員接種)といい、母子感染(垂直感染)、父子などからの乳児期の水平感染、性交渉での成人の水平感染をすべて解決できます。B型肝炎ワクチン接種率ごとに色分けしています。日本では、せいぜい海外出張・赴任時や海外渡航時にB型肝炎ワクチン接種が推奨されるぐらいで、ほとんど知られていませんが(接種率は1%以下)、このB型肝炎を軽く見ている日本の現状が一番の問題なのです。

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全世界で、全人口の6%に相当する3億5千万人がB型肝炎ウイルスに持続感染しています。B型肝炎ウイルスに、いろいろな種類があることがわかってきて、ゲノタイプ(遺伝子型)を呼ばれています。現在、A〜Gまで7種類の遺伝子型が知られていますが、日本では、B型遺伝子と、C型遺伝子が主です。

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成人が HBV に感染した場合(性交渉と医療従事者の針事故)6週〜6ヵ月の潜伏期の後に 30〜50%の患者で急性肝炎を発症し、そのうち 1%弱が劇症肝炎となり、その70%が致死的転帰をとるとされています。従来は、急性肝炎の 1%程度しか慢性肝炎に移行しないとされていましたが、近年海外から持ち込まれたと考えられる遺伝子型 A による急性肝炎が増加しております。

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最近は、A型遺伝子の割合が30%近くになっています。A型遺伝子の場合は、20〜30%で慢性化し、肝硬変、肝がんへと進んでいきます。主に性交渉が感染の原因になっています。針事故においても、B型肝炎ウイルス(HBe抗原陽性)は、感染する率は約30%と高く(C型肝炎ウイルスは3%、エイズウイルスは0.3%)今後、どんどん増えていと考えられます。この問題を解決するためには、日本においてもB型肝炎に対するワクチン接種を積極的に進めていくことが重要です。

 

(2)母子感染予防

一方,HBキャリアの母親から生まれた児に対しては生後0,1,6カ月で接種するので注意が必要である。出生直後にHBIG(乾燥抗人免疫グロブリン)を注射する理由は、ワクチン接種で新生児に免疫ができるのには時間がかかりますから、免疫ができるまでの期間をHBIGでカバーしておくためです。HBIGの接種を1回、HBワクチン接種を3回行うと、90%以上の赤ちゃんでB型肝炎の感染は防止できます。母子感染予防ができたかどうかは生後9-12ヶ月に血液検査でHBs抗原の有無を確認して判定する必要があります。

我が国のB型肝炎対策は、キャリア(ウイルスを体内に保有した状態)の母親からの感染予防であり、母親が妊娠中に検査を行ってB型肝炎キャリアであることがわかった場合は、母子感染(垂直感染)予防として、出産したかかりつけの医療機関で、生後2日以内に抗HBs人免疫グロブリン(HBIG)を投与し、その後B型肝炎ワクチンを健康保険で接種できます。(1986年から開始)

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(3)成人への接種

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医療機関では、患者や患者の血液・体液に接する可能性のある場合は、B 型肝炎に対して感受性のあるすべての医療関係者に対して B 型肝炎ワクチン接種を実施しなければならない。未接種の医療従事者や接種既往を証明できない医療従事者には「0-1-6ヶ月」の3回接種をすべきである。既感染者(HBs抗体陽性)では接種の必要がなく、HBV感染者(HBs 抗原陽性)では接種の効果が得られない。これらに該当する医療関係者では B 型肝炎ワクチン接種は不要で ある。これらの者に B型肝炎ワクチンを接種することによる特別の悪影響はなく、一般の接種者と同様である。職員の HBs 抗原・抗体検査を行ってこれらの者を除外して B 型肝炎ワクチンを接種するか、検査を行わずに一律に接種するかは、各医療機関の判断に任される。

定期接種以外(1歳以上いつでも)通常、HBワクチンは1コース3回接種を行います。

ワクチン接種は HBs 抗原 10 μg(0.5mL)を皮下または筋肉内に投与する。(10 歳 未満の小児では 5 μg(0.25mL)を皮下に投与する)接種は初回投与に引き続き、1 か 月後、6 か月後の 3 回投与するのを 1 シリーズとする。1 シリーズの 3 回目のワクチン接種終了後、1〜2 ヶ月後に HBs 抗体を測定し、EIA または CLIA、RIA 法で 10 mIU/mL 以上に上昇している場合は 免疫獲得と考えてよい。HBs抗体価が10mIU/mL未満の人は無反応者とされ、もう 1 シリー ズの再接種が推奨される。追加の 1 シリーズで、再接種者の 30〜50%で抗体を獲得すると報告されている。2 シリーズでも抗体陽性化が見られなかった場合は(6回の接種後にHBs抗体が10mIU/mL未満)「ワクチン不応者(non-responder)」として血液曝露に際しては厳重な対応と経過観察を行う。B型肝炎ワクチンは現在2種類の製品が流通している。1 回のシリーズで抗体陽性とならなかった場合は、種類の異なるワクチンを接種することも方法の一つである。

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ワクチン接種歴はあるが、抗体が上昇したかどうかが不明の場合は、抗体検査を行う。 陰性であれば 1 シリーズのワクチン接種をおこなう。10mIU/mL 未満の低値の場合は 1 回の追加接種を行い、その後に抗体価の確認を行う。10mIU/mL 以上であれば免疫獲得 として終了、10mIU/mL 未満であればあと 2 回のワクチン接種(=初回と併せると 1 シリ ーズ)後に再度抗体価の確認をおこなう。

ワクチン不応者が HBV 陽性血への曝露があった場合、米国ガイドラインでは抗 HBs 人免疫グロブリンを、直後と 1 ヵ月後の 2 回接種を推奨している。

B型肝炎の予防にビームゲンを使用する場合、第0週、第4週、第24週の3回接種を予定しますが、抗体陽転率は、1回接種後が約13%と低い値です。2回接種後の獲得中和抗体(平均抗体価)は、6.6~9.5mIUですが、3回目後は、皮下接種の場合は 473.4~917.9 mIUまで上昇します。2回後が72%、3回後が約96%です。既定の3回接種を完了しないと充分な免疫は得られません。B型肝炎ワクチンに対する低応答群は、約5%程度認められております。

乳幼児ではほぼすべての人に免疫ができるのに対し、成人の1~2割くらいにB型肝炎ワクチンが効かない不応者がいるとされています。加齢に伴いワクチン不応者が増えることもわかっています。1 シリーズのワクチン接種で 40 歳未満の医療従事者では約 92%で、40 歳以上では約84%で、60歳では75%で抗体を獲得したとの報告がある。年齢に加えて、その他の宿主要因(肥満、喫煙、遺伝的要因、免疫抑制など)もワクチンの効果を減弱させている。抗体を獲得した場合、以後 HBV 陽性血に曝露されても顕性の急性 B 型肝炎の発症はないことが報告されている。HBワクチンで産生された抗体は時間の経過とともに次第に減弱し3~5年で陰性化してしまうことがあります。接種後8年以上経過すると約60%の人において検出されなくなります。免疫獲得者では 22 年以上にわたって急性肝炎や慢性 B 型肝炎の発症予防効果が認められている。ワクチンにより抗体を獲得した場合、ウイルスが体内に侵入後数週間で抗体が作られ、仮に感染が起きても肝炎の発症は防げることが証明されています。したがって、抗体が陰性化しても追加接種の必要はないとされています。経年による抗体価低下にかかわらずこの効果は持続するため、米国や欧州からは追加のワクチン接種は不要であるとの勧告が出されている。日本環境感染学会の医療関係者のためのワクチンガイドラインでは、免疫獲得(10mIU/mL 以上)と確認された場合は、その後の抗体検査や追加のワクチン接種は必要ない」とされています。しかし、抗体低下後のB型急性肝炎発症の報告例もあることから、個人免疫の観点からは「血液や体液に接する可能性の高い人」は、抗体低下(10mIU/mL未満)した場合は、追加接種を選択肢の一つとして考慮されてもよいでしょう。WHOの勧告では、HBs抗体価が10mIU/mL未満になったとき、追加のワクチン接種をして抗体価を高めることになっています。