ARONJ? BRONJ? MRONJ?

みなさんは顎骨壊死という言葉を聞いたことがあるでしょうか? ビスフォスフォネート(BP製剤)は、骨吸収を阻害する薬剤で、骨粗鬆症や悪性腫瘍の骨転移に対して広く用いられている薬剤ですが、このような 薬を用いた治療中に、抜歯等の歯科処置や歯周病、口腔内の不衛生、不適合な義歯などが誘因となり顎の骨に炎症を生じ、さらには顎の骨が壊死 する顎骨壊死を生じることがあります。この合併症のことをビスフォスフォネート系薬剤による顎骨壊死(Bisphosphonate-Related Osteonecrosis of the Jaw:BRONJ)と言います。2003年に米国のMarxが多発性骨髄腫、転移性乳癌に伴う高カルシウム血症, 骨粗鬆症に 対して静注パミドロン酸(アレディアR)あるいはゾレド ロン酸(ゾメタR)を投与して発症した 36 例を初めて報告した新しい病気です。翌年にはRuggieroらが低用量BP製剤使用骨粗鬆症患者においても顎骨壊死が起こることを報告しました。2006年に,日本で初めて行われた全国調査では30例ほど報告されており、高齢化が進むわが国でもその罹患数は増加傾向にあります。近年では、骨粗鬆症やがんの骨転移に対する新たな治療薬としてデノスマブ(ランマーク、プラリア )という薬が使用されるようになり、この薬でもBP製剤と同様に顎骨壊死が発症したため、骨吸収抑制薬剤に関連して生じる顎骨壊死(Anti-resorptive agent-related Osteonecrosis of the Jaw:ARONJ)と呼ばれるようになりました。さらに、米国では抗がん剤である血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に対するモノクローナル抗体で血管新生を抑制するベバシズマブ(アバスチン)でも顎骨壊死が生じることが報告されたため、薬剤関連性顎骨壊死(Medication-related Osteonecrosis of the Jaw:MRONJ)と呼ばれるようになっています。

最近、歯科医院の待合室には顎骨壊死のポスターが貼ってあって「骨粗鬆症のお薬を飲んでいませんか」と質問されることが多くなったと思います。その理由として骨粗鬆症の治療に使用される一部の薬剤,特にビスフォスフォネートというお薬の副作用で顎の骨が腐ってしまう「顎骨壊死」という副作用が報告されているためです。ビスフォスフォネートは、元来癌の骨転移に使われていたお薬ですが、最近は骨粗鬆症(およそ1300万人)でよく使われています。ビスフォスフォネート製剤を服用しても必ず顎骨壊死を発症する訳ではありません.いくつかの報告があるのですが,ビスフォスフォネート製剤の飲み薬であれば1万人に1人、注射薬で100人に1人といわれています。ビスフォスフォネートやデノスマブは全身の骨に分布するのになぜ顎骨だけに壊死が起こるのでしょうか?その理由として顎の骨は他の部位の骨と比較して極めて感染しやすい環境下にあることの他にも色々な原因が考えられています。
(1)顎の骨は歯が直接植えられていて、抜歯すると直接口腔内に露出する。
(2)顎の骨を包む口腔粘膜は非常に薄く、食事や日常生活で容易に傷が付く。
(3)口腔内には感染源として歯垢中に 800種類以上、千億~ 1兆個/m³もの細菌が存在 する。
(4)虫歯や歯槽膿漏などを介して顎の骨に炎症が広 がりやすい。
(5)顎骨にかかる咬合力は成人男子では平均で60kgもの力が毎日繰り返し顎骨にかかる。
(6)顎骨は全身の骨なかで新陳代謝がもっとも速い組織であるために服用したビスフォスフォネートが顎骨に高濃度に沈着しやすいこと

骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)の定義としては
①BP製剤、デノスマブによる治療歴(服用薬、注射薬)があり、
②放射線治療はしていない、がん転移でもない、
③8週間以上持続して骨が露出している、
以上の3つにあてはまるものを「ARONJ」としています。

顎骨壊死は、疼痛と感染を伴う持続性の骨露出、顎が重い感じやしびれ、歯肉腫脹、排膿、歯の動揺が一般的な症状であるが、疼 痛を伴わず無症状のこともあります。 下顎骨に 2/3, 上顎骨 に 1/3 の割合で発生します。顎骨壊死が進行すると病的骨折をおこしたり皮膚瘻孔を形成す ることがあります。病理組織像としては骨髄炎であり、細菌コロニーや炎症性肉芽で覆われた壊死骨を認めます。発生機序は、明らかではないが、体内に入ったBPが骨組織に吸収され、それを貪食した破骨細胞の機能が阻害され骨リモデリングが抑制されること、また血管新生や上皮細胞遊走が抑制されたり、抜歯や外科的侵襲が加わることにより創傷治癒不全がおこり、口腔には口 腔常在菌等の感染源が多くしばしば感染を伴うことにより顎骨壊死が生じると考えられている.。さらに癌化学療法、ステロイド、糖尿病などで免疫抑制が加わると,細菌感染や創傷治癒不全が助長されます。

 

整形外科でステロイドによる大腿骨の骨頭壊死が有名ですが、骨壊死はそもそも無菌性、無血管性に起こるものであって、歯科の先生方が言う顎骨壊死は感染しているので、骨壊死ではなくて骨髄炎でしょという議論は以前からあり、ビスフォスフォネートの添付文書、重篤副作用疾患対応マニュアル(薬の副作用に対する厚労省が患者さん向け)にも骨壊死と骨髄炎とが併記されています。実際は、骨髄炎(ステージ2)から顎骨壊死になっている症例がほとんどで、ビスフォスフォネートはその修飾因子に過ぎないことが多いのかもしれませんが、ビスフォスフォネートによる一次的な骨壊死(ステージ1)もあることも事実なようです。

骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)が起こる背景にはどういった因子が影響しているか?原因とまではわかりませんが、顎骨壊死の症例報告から顎骨壊死を起こす前に何かのトリガーとなったイベントはないかを調べてみると抜歯が断トツで62%でトップ、インプラント、その他の外科処置で7割を占めることがわかりました。自然に発生したり、歯周病、入れ歯の不適合など通常の歯科治療でも起きることもありますが、とりあえずは、抜歯はダメということになったのではないでしょうか。

 

抜歯はしてはいけない?休薬が必要?

さて、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)が一人歩きした結果、皆さんはビスフォスフォネートを内服している人は、抜歯をしてはいけないと思っていませんか?どうしても抜歯が必要な時でもビスフォスフォネートを3ヶ月間、休薬しないと抜歯できないと思ってませんか?

(1)骨粗鬆症の薬でも顎骨壊死とは関係ないものもたくさんあります。
骨粗鬆症に適応のあるBP経口剤では、ボナロン、ダイドロネル、フォサマック、ベネット、アクトネル、ボノテオといった薬剤があります。骨粗鬆症に適応のあるBP注射剤では、ボナロンとボンヒバ、悪性腫瘍に適応のあるBP注射剤では、ゾメタ、アレディア、ビスフォナールなどの薬剤があります。また、BP以外で顎骨壊死の副作用があるお薬として,デノスマブ(ランマーク,プラリア)というお薬もあります。これらの薬剤を使用している患者さんにおいて、顎の骨に炎症をおこし、さらに壊死すると治るまでかなりの日数を要するため大きな問題となっています。ただし、同じ骨粗鬆症の薬剤でもカルシウム製剤やビタミンD製剤(アルファロール,エディロールなど)エストロゲン製剤(エビスタ、ビビアントなど)テリパラチド(テリボン・フォルテオ)を使用しても顎骨壊死は起こりません。たまに間違っておられる歯医者さんもおられるので注意が必要です。

(2)顎骨壊死のほとんどの原因は、骨髄炎を起こしている歯を放置していること
顎骨壊死の頻度は、2006〜2008年の全国調査では、ビスフォスフォネート製剤の飲み薬であれば1万人に1人、注射薬で100人に1人と言われていましたが、2011〜2013年の報告では、ビスフォスフォネート製剤の飲み薬であれば1万人に20人に増えていました。(注射薬も同等)2010年にポジションペーパー(ガイドライン指針とまでは言えないがいろいろな学会の専門家が集まって出した一定の見解)を出して注意喚起したにもかかわらず、なぜ増えたのか?その考察として、顎骨壊死という疾患の認知度が上がり診断されるようになったこととビスフォスフォネートを長く内服している人が増えたからと言われていますが、それ以上に、抜歯しなくなったことが原因と思われます。本来は、慢性の感染症である骨髄炎があれば、抜歯しなければ治らないとされていましたが、ビスフォスフォネートを内服していることで抜歯をためらったがために顎骨壊死まで進行させてしまっているのではないでしょうか。また、抜歯したから顎骨壊死になったわけではなく、骨髄炎が進行して抜歯した時には既に顎骨壊死になっていた症例も少なからずあるのではないでしょうか。

(3)抜歯と BP 製剤の一時的休薬・再開
これまでは歯科治療をする場合には休薬をして治療をすべきであるという見解がありましたが、2016年のポジションペーパーでは若干雲行きが変わってきています。BP 製剤投与中の患者に対して抜歯を行う場合のBP 製剤の休薬のフローチャートでは、注射用 BP 製剤投与中の患者に対しては、BP 製剤のリスクと治療効果を勘案して、原則的に BP 製剤投与は中止しない。また、経口のBP製剤についても、BP 製剤の休薬が BRONJ 発生を予防するという明らかな臨床的エビデンスも ないため、BP 製剤の投与期間が3年未満で、 他にリスクファクターがない場合は BP製剤の休薬は不要であり、そのまま歯科治療を受けても問題ありません。リスクファクターとして、口腔衛生状態の不良、がん、糖尿病、ステロイ ド使用などが挙げられます。しかし、投与期間が3年以上、あるいは3年未満でもリスクファクターがある場合、骨折のリスクが高くないという条件で休薬が望ましいとなっていますが、そもそも骨折のリスクが高いので BP製剤を処方されているわけで、この問いがフローチャートに入っていること自体がナンセンスですね。骨粗鬆症による脊椎椎体と大腿骨近位部の骨折は、健康寿命を縮める要因となるばかりでなく死亡率を高め ることが知られており、骨粗鬆症患者においてBP製剤はこれらの骨折を抑制し、Quality of Life(QOL)を維持・改善させ、死亡率をも減少させるなど、リスクとしての顎骨壊死と非定型的大腿骨骨折の発生率を比べるとBP製剤による治療継続のベネフィットはリスクをはるかに上回ると考えています。高齢化が進むわが国では脊椎椎体骨折の発生率が高 く、大腿骨近位部骨折の発生率が増加して、BP製剤による治療が必 要な患者数は増加の一途をたどっ ている。

 

 



画像の説明

ビスフォスフォネートは骨に年の単位で沈着するので服用が4年以上の長期に及べば顎骨壊死のリスクは徐々に上昇します。ただ、ビスフォスフォネートを4年以上投与しても骨折のリスクはそれ以上低下しないとの報告もあり、処方医と歯科医で主疾患の状況と侵襲的歯科治療の必要性を踏まえた対応を検討し休薬することになった場合、医師と患者さんを交えた十分な話し合いにより、インフォームドコンセントを得ておくことも大切です。

休薬を選択した場合は骨折リスクを増加 させる可能性があるため、患者に 対して十分なインフォームドコン セントを行う必要がある。ただし、 骨折リスクが高いと判断された患者では休薬しないことになるた め、口腔内管理を徹底することが 重要となる。BP製剤で治療を受 ける(あるいは受けている)患者 において、顎骨壊死を予防するた めには医師・歯科医師が協力して 歯科健診や口腔内管理を徹底する ことが建設的な対策である。ビスフォスフォネート製剤は、骨粗鬆症患者の骨折や癌患者の骨転移を抑制するために日 常診療で使用されている。また、癌の骨転移に伴って起こる骨折、放射線治療、手術、脊髄圧迫は日常生活動作やQOLを著しく低下させる要因となることが知られており、乳癌や前立腺癌 の骨転移の患者においてBP製剤(とくにゾレドロン酸)は、疼痛 を改善し、脊髄圧迫、死亡のリスクを減少させることが報告されている。このように、

そもそも3ヶ月そこら中止しても吸着したBP製剤が抜けるわけではありません。

3ヶ月も待っているうちに骨髄炎が悪くなってはなんのための休薬か意味がありません。

顎骨壊死を起こて治療をしている段階では、テリパラチドに変更可能ならば

骨の代謝を遅くする

生物学的製剤も易感染性という面から言うと飲んでないに越したことはないのですが、

壊死したところは手術して切除しないと治りません。

感染を制御しながら上皮化してくる

骨壊死型は境界がはっきりしないために難しい

骨を作る薬(マックス2年使用)その後はビスフォスホスホネートかべねち

休薬しても顎骨壊死が減るというエビデンスはありません。休薬については協議検討する

 

予防が大事

顎骨壊死の一番の予防方法は口の中を清潔に保つことです。これらの薬剤を使用してからは、可能な限り顎の骨に傷をつ けたり炎症が広がるような歯科治療を避けることが大 切です。そのため薬が開始になる2週間前にはすべての歯科治療を終えておくのが望ましいとされています。しかし実際にはがんの治療のため薬の使用が遅らせられ ない場合、骨粗鬆症のため骨折のリスクが高い場合などはBP薬の内服を継続しながら歯科治療を並行して進めなくてはな りません。 薬を使用してからも虫歯の治療や歯石の除去、入れ歯の作成など大半の歯科治療は通常の患者さんと同様に受 けることが可能です。抜歯も基本的には薬を休薬することなく、抜歯前に抗菌薬を使用し十分な感染予防を行ったうえで抜歯を行います。

常日頃 から口の中の衛生状態に気を付け、悪いところがなくて も定期的に歯科医院を受診することが大切です。

予防が一番大事です。普段から口腔内の清潔を心がけることが大切です。日々の歯ブラシや定期的な歯石の除去、虫歯治療などのメンテナンスが必要です。

現在,顎骨壊死に対する特異的な治療法はありません.できるだけ,抜歯や切開などをしないですむように,投与開始前に歯科治療を終わらせておく,日常的な口腔清掃を心がけるなど予防が最善の方策と考えられています.抜歯や切開などの外科処置,口腔清掃不良,喫煙,飲酒,糖尿病,肥満,腎透析,がん,ステロイドやシクロフォスファミドなどの薬剤がリスクファクターとして報告されています.日頃から積極的な口腔ケアをおこなうことが重要になります.

歯および口腔内清掃を励行し, 抜歯, 下顎 埋伏智歯抜歯, 歯周外科, インプラントなど顎骨に侵襲が 及ぶ口腔外科処置は極力避ける.

BP処方医と相談の上、少なくとも治療前の 3 か月間は服用を中止し, 処置後も骨の治癒傾向が認められるまでは BP 投与を中止 する. 服用期間が 3 年未満でステロイド投与や糖尿病など のリスク因子がないならば, 休薬せずに通常の処置を行う が, BRONJ 発症の可能性について十分に患者に説明する

2. 3年以上服用している場合は、歯科治療の3ヶ月前までに服用を中止します。注射のビスホスホネート製剤を使用している場合も歯科治療が終わるまでは使用を休んだ方が良いと考えられます。

高齢者の歯周病は肺炎など様々な病気の原因になるので、骨粗鬆症の治療薬を服用するしないに関わらず、普段から歯科医院で歯のメンテナンス治療を受けておくことが重要です。

理想的にはビスホスホネート製剤の服用前に歯科を受診し、口の中の衛生状態を改善し、抜歯などの歯科治療を投薬開始2週間前までに終えることが望ましいとされています。すでに薬を服用している人でも歯が悪ければ歯科を受診するべきであり、休薬しても症状が改善するとは限らない。

BP製剤投薬中の患者さんの休薬についてまた、抜歯など侵襲的歯科治療後のBP製剤の投与再開までの期間は、術創再生粘膜上皮で完全に覆われる2~3週間後、または十分な骨性治癒が期待できる2~3ヶ月後が望ましいでしょう。
BP製剤を休薬するかどうかを決めるときは、
つまり、外科処置の前後3ヶ月が休薬の目安となります。
BP製剤の休薬が可能な場合は、休薬期間が長いほど顎骨壊死(BRONJ)の発生頻度は低くなります。
そのため、骨の再構築を考えると休薬期間は3ヶ月程度が望ましいでしょう。

 

癌の骨転移に対しゾ レドロン酸で治療された患者に対して口腔内清掃を行うことによっ て、顎骨壊死の発生率が70%減少したとする報告があることから、 顎骨壊死の予防には感染予防が有効であると考えられる。

 

テリパラチド(連日製剤)によ り、顎骨壊死や非定型大腿骨骨折 が治癒したとする報告もあること から、骨折リスクが高い患者(テ リパラチドの保険適用は重症骨粗 鬆症)にはテリパラチド投与も検 討する意義はあると考えられる。

 

BP製剤の休薬が可能な場合、その期間が長いほど、BRONJ の発生頻度は低くなるとの報告があり、 骨のリモデリングを考慮すると休薬期間は3ヶ月程度が望ましい。抜歯など侵襲的歯科治療後のBP製剤の投与再開までの期間は、術創が再生粘膜上皮で完全に覆われる2~3週間後か、十分な骨性治癒が期待できる2〜3ヶ月後が望ましい。また、BP 製剤の休薬か否かを決定する際には、医 師・歯科医師と患者との十分な話し合いによりインフォームドコンセントを得ておくことが肝要である。

薬剤関連顎骨壊死は、特に歯を抜いたり、口の中に 傷を作らなくても発症したりと不明な点も多々ありま す。歯がなくても入れ歯による傷から感染が起こり、発 症する方もいます。しかし、そもそも発症率が低く、適 切な口の中の管理を行えば発症を予防することができ ます。BP製剤やデノスマブは非常に大切にお薬です。そ のため、薬を使用するからあわてて歯科医院を受診す る、たくさん口の中を治療しなくはいけないから薬の使 用が遅れてしまうなどということがないように、抜歯がONJのリスク因子の1つと考えられたことから,抜歯前後の休薬が,特に骨粗鬆症患者における予防策の1つとして推奨された。しかしながらONJは休薬を行っても起こり,休薬により骨関連有害事象が増加した。ONJの一番の予防策としては,可能ならばBP処方前に口腔感染源を除去することである。またBP処方前あるいは処方中でも,良好な口腔衛生状態の維持は重要な予防策の1つである。これらを円滑に行うためには医師,歯科医師および患者間での密な情報の共有が必要である。

 

2016年に出された骨吸収薬関連顎骨壊死に関するポジションペーパー1)では,原則的に歯科治療の前にビスフォスフォネートを休薬する必要はないとしています.その理由として,半減期が2年のビスフォスフォネートを歯科治療前に3カ月休薬しても顎骨壊死の予防に効果があるかは疑問であり,休薬を積極的に支持する根拠には欠けるからです.

ただし,ビスフォスフォネートの投与期間が長期に及んでいたり,ステロイド投与などのリスク因子がある場合でかつ,歯科処置に時間的猶予がある場合には,治療前に2か月間の休薬をすることもあります.この場合,創傷治癒が完成した時点でビスフォスフォネートを再開します.
2)この場合の「半減期が2年」とは「ひとたび骨に沈着したビスフォスフォネートが半分に減少するまで2年かかる」という意味です.

近年、骨粗鬆症の治療、悪性腫瘍の骨転移の抑制、ステロイド療法の副作用防止目的で、ビスホスホネート製剤(BP製剤)という薬剤が頻繁に使用されています。