バフセオ

【組成・性状】バダデュスタット(一般名)
錠150mg 300mg

【効能・効果】腎性貧血

【用法・用量】1日1回300mg

300mgから開始して、増量の幅は150mg、増量の間隔は4週間

休薬した場合は、1段階低い用量で投与を再開します。

 

HIF-PH阻害薬。低酸素誘導因子ープロリン水酸化酵素阻害薬のことです。一般名が〜デュスタットとあれば、HIF-PHの仲間となります。細胞に酸素がこない、これは大変と言うことで産生されるタンパク質がHIFです。HIFは転写因子として働きます。酸素が足りない状況でエリスロポエチンを合成に関わる遺伝子にくっついてエリスロポエチンの合成を促進します。ただ腎臓が悪い人はこのシステムがうまく働かなくて、酸素が低い状況になってもエリスロポエチンができなくて貧血になってしまいます。HIFαは酸素がある状況では、HIF-PH(低酸素誘導因子ープロリン水酸化酵素)によって分解されてしまいます。では、この分解酵素(HIF-PH)を阻害することでHIF-PHが安定化させて腎臓が悪い人でもエリスロポエチンが産生できるようにするわけです。HIFを見つけたグレッグ・セメンザ先生、酸素濃度に応じてオンオフする仕組みを解明したピーター・ラトクリフ先生とウイリアム・ケーリン先生が2019年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

【副作用】
鉄欠乏が現れることあり。高血圧、脳梗塞、心筋梗塞にも注意が必要です。HIF-PHのターゲットになる遺伝子はエリスロポエチンだけでなくVEGF(血管内皮増殖因子)を生成を促進すると言われており、血管新生亢進作用により、網膜出血などが現れる可能性があり、網膜症や加齢黄斑変性症(黄斑部の下で血管新生がある)のある人には注意が必要です。

【併用薬】
有名どころは多価陽イオンを含有する経口薬剤、カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウム等があります。これらを併用することでバダデュスタットの作用が減弱する可能性があり、バダデュスタットの服用前後2時間以上あけて投与することになっています。

特に造血には鉄が必要であることから、鉄欠乏時には鉄剤の投与を行うことが大切です。鉄剤は腎性貧血で必要なお薬です。実際の併用でどれくらい影響があるかですが、経口鉄剤で、クエン酸第一鉄200mg服用した場合AUCが約50%、さらに硫酸鉄徐放剤210mgに至っては約10%になってしまいます。酸化マグネシウムなどもよく使われますが、併用時のデータはありませんが注意が必要です。

HMGCoA阻害薬と併用するとHMGCoA阻害薬の血中濃度が上昇する恐れがあります。スタチンの副作用である横紋筋融解症などに注意して下さい。サラゾスルファピリジン、フロセミド、メトトレキサートなどの血中濃度をあげる恐れもあります。プロベネシドと併用した場合はバフセオの血中濃度が上がる恐れがあります。

【薀蓄等】
他のHIF-PH阻害薬との比較です。エベレンゾは週3回、ダーブロックは相互作用が一番少なく、鉄剤とも併用が問題ありません。(クロピドグレルは注意が必要)バフセオは、用量の増減が4段階でシンプルです。エロナイは食前または寝る前の服用となっています。

2015年に日本透析医学会の慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドラインでは、成人保存期慢性腎臓病患者の場合、維持すべき目標Hb値は11g/dl以上13g/dl未満とし、複数回の検査でHb値11g/dl未満となった時点で腎性貧血治療を開始することを提案するとしています。大阪府内科医会724名の調査では、腎性貧血のガイドラインよりは貧血の治療開始が遅れているようです。僕もHb10g/dlを切ったら治療開始し、11g/dlを目指して治療しています。飲む薬になったのでもう少し早く治療開始しましょうか。

 

ダーブロック

【組成・性状】ダプロデュスタット(一般名)
錠 1mg、2mg、4mg、6mg (4剤型)

【効能・効果】腎性貧血

【用法・用量】通常、成人にはダプロデュスタットとして、赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合 通常、成人にはダプロデュスタットとして1回2mg又は4mgを開 始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて 投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。 造血には鉄が必要であることから、鉄欠乏時には鉄剤の投与を行うこと。

【併用薬】