帯状疱疹  

「ヘルペスウイルス」による感染症で、人間に感染するヘルペスウイルスは8種類が知られています。

卒煙証書 2

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ヘルペス属は、人に対しておもしろい生活環を持っています。最初の感染では、感染する時期により臨床症状も異なりますが、一度感染すると一生涯その宿主の神経細胞に潜んでおとなしくしておりますが、抵抗力が低下した時に再活性化し、再発するという性格があります。

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またヘルペスウイルスは、皮膚についたところ感染すると、表皮細胞同士をくっつけているデスモゾームを作らせなくすることで、表皮細胞に隙間を作り、そこに水疱が出来てきます。ヘルペスウイルスによる発疹は、同大same size 同相same phazeで、中心臍窩のある小水疱が特徴です。(湿疹の漿液性丘疹、水疱に比べて大きい。)

代表的なものとして、単純ヘルペスウイルス1型2型、水痘・帯状疱疹ウイルスについて解説しましょう。

単純疱疹(単純ヘルペスウイルス)  Edit

単純ヘルペスウイルスには1型と2型の2種類があります。1型は口の周りや顔面など上半身に発症することが多く「口唇ヘルペス」、2型は性器や下肢などに症状が出るものを「性器ヘルペス」と呼んでいますが、皮膚についたところに接種性にどこにでも起こります。

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単純ヘルペス1型ウイルスは、接触や飛沫による感染が一般的です。ほぼ半数程度の人は幼児期にこのウイルスに感染し(初感染で症状が出ることは少ない。大人になってから初感染すると重症化しやすい)三叉神経節に潜伏しています。 潜伏したウイルスは、かぜ、発熱、ストレス、疲労、紫外線などがきっかけとなり再活性化し、再発を繰り返します。特に、風邪などが治った後の口唇ヘルペスは「熱の華」とも言われています。


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唇や口の周りにピリピリした不快感や痛がゆさがあり、数時間から数日で皮膚の赤みや水ぶくれができ(帯状疱疹とは異なり、ある程度の限局した部位にできる)やがて水ぶくれは破れてかさぶたとなり、2週間程度で治ります。漿液性水疱(湿疹)と迷ったら感染(ヘルベス)の治療を優先しましょう。(ステロド軟膏を塗ったら悪くなる)

帯状疱疹(おびくさ)  Edit

画像の説明水ぼうそうは、患者さんのくしゃみやせきによって飛沫感染しますが、感染力が強いので同じ部屋にいるだけでも、部屋の空気中に漂っているウイルスから感染することがあります。だから、予防接種をしていなければ、幼少期に集団生活をしていれば、どこかでもらう病気です。帯状疱疹は、水ぼうそうを起こす原因ウイルスと同じ水痘・帯状疱疹ウイルスによって起こる病気です。子供の頃に水ぼうそうにかかりますが、治った後もウイルスは、体の脊髄後根神経節に隠れて長い場合は何十年も潜伏し続けます。そして免疫力が低下(過労やケガ、大きなストレス、病気、手術、免疫抑制薬の使用、高齢化など)したときにウイルスが復活し、神経節から出て活動を再開し、皮膚に帯状の水ぶくれをつくります。この帯状の症状から「帯状疱疹」といわれます。帯状疱疹は、50歳以上の高齢者に多い病気ですが(80歳以上では少なくなる)最近では若い年代にも増加しており、小児の帯状疱疹も決して珍しくありません。また、帯状疱疹は一生に一度しかかからないと言われてきましたが、免疫力がひどく弱くなったときなど、再発する人もごくわずかですがいます。

日本人成人の90%以上は、このウイルスが体内に潜伏していて帯状疱疹を発症する可能性があります。

加齢などによる免疫力の低下が発症の原因です。特に50歳台から発症率が高くなり、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれています。疲労やストレスなども発症のきっかけになります。また、糖尿病やがんなどの免疫力が低下する病気が原因になることもあります。

 

帯状疱疹は、50歳を過ぎると増加し、70歳代がピーク、80歳以上で減少します。若い年代にも増加しており、小児の帯状疱疹も決して珍しくありません。

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帯状疱疹患者数は、2月が一番少なく、8月をピークに夏季に増加し、冬季に減少している。それとは逆に、水痘の発症率は夏に少なく冬に多いという、逆の関係がみられた。水痘が夏に減少するのは、夏は紫外線が強く温度が高いため、水痘・帯状疱疹ウイルスの感染力が低下し、その結果、水痘流行によるブースター効果が期待できず、帯状疱疹が夏に増加すると考えられています。

 

帯状疱疹で一番よく見られるのが、胸椎領域です。その他の好発部位としては、三叉神経第Ⅰ枝領域、頸椎領域、腰椎領域などです。

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三叉神経の第Ⅰ枝、小岩さん領域の帯状疱疹は、目が腫れてくると、結膜炎や動眼神経麻痺も合併することが多く、眼科に紹介しましょう。

 

 

症状は、皮膚にチクチクするような痛み(衣類と触れるようなわずかな刺激にも、ピリピリと痛みを感じる)から始まります。次に、痛みを感じた場所にブツブツとした赤い発疹ができ、小さな水ぶくれとなって帯状に広がります。(水疱が現れる前には、診断するのは難しい)痛みは急激に強くなり、1~2週間続きます。10~14日くらいになると、水ぶくれがかさぶたになって、治っていきますが、ひどい時は潰瘍になることもあります。通常、紅斑がはじまってかさぶたがとれるまで、約3週間から1ヶ月くらいです。この症状が現れるのは体の左右どちらか片側だけであり、一度に2ヵ所以上の場所に現れることはほとんどありません。

 

汎発性帯状疱疹

通常の帯状疱疹では、神経領域に従い、有痛性の紅斑や水疱を伴う。しかし、典型的な帯状疱疹が発症後、遅れること数日してから全身に水痘に似た紅色丘疹や小水泡などの皮疹が全身に汎発的に出現する状態を汎発性帯状疱疹と言います。帯状疱疹の病変部位で増殖した水痘帯状疱疹ウイルスがウイルス血症を起こし、血行性に全身に散布されて、発熱しやすいことも特徴です。通常の帯状疱疹は、飛沫感染を起こさないが、汎発疹のある患者では、水痘として感染を起こす可能性がある。汎発性帯状疱疹は、基礎疾患のある患者、高齢者など免疫状態が低下した帯状疱疹患者さんに生じやすい。

 

複発性帯状疱疹

帯状疱疹は、通常1ヶ所ないしは、隣接する2〜3ヶ所の神経支配領域の皮膚に疼痛を伴った水疱や紅斑が集簇ないしは帯状に配列する。しかし、稀な例として隣接しない複数の異なった神経支配領域に同時に帯状疱疹が生じることがあり、複発性帯状疱疹と呼ばれており、全体の帯状疱疹の0.1%前後と極めて珍しい。

 

ラムゼー・ハント症候群(Ramsay Hunt syndrome)

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帯状疱疹における神経の傷害は、感覚に関わる神経の傷害が主ですが、筋肉の運動麻痺なども見られることがあります。外耳道の感覚や表情筋の動きにも関わる顔面神経(第7脳神経)の神経節である膝神経節に潜在するVZVが、ストレスや発熱などに伴う免疫低下で再活性化して顔面神経麻痺を起こすと考えられています。一側性末梢性顔面神経麻痺の中では、ベル麻痺(Bell’s palsy)多くは単純ヘルペスウイルスに次いで頻度が高い。典型例では、耳介周囲から後頭部にかけて違和感や痛みを自覚し、数日後に耳介や外耳道入孔部に紅斑を伴った水疱が出現し、数時間後に同側の顔面の表情筋の麻痺が出現する。涙の分泌低下、聴覚過敏(音が大きく響く)味覚低下を伴うこともある。顔面神経と近接して走行する内耳神経もしばしば同時に障害され、回転性めまいや感音難聴および、耳鳴りなどの症状を合併したり、三叉神経や舌咽神経の障害により、顔面の激しい痛み、喉の奥の違和感、嚥下痛を併発するなど、症状は多彩である。治療は、ステロイド剤が有効で、バラシクロビルなど抗ウイルス薬も併用される。比較的予後良好なベル麻痺と比較して、難治例、不全麻痺等の後遺症を残す症例が多く、自然治癒は30%(ベル麻痺は70%)初期から十分な治療を行っても60%(ベル麻痺は90%)程度である。また、ベル麻痺の回復過程において、傷害された顔面神経の神経線維の再生に誤りを生じ、病的共同運動(眼瞼と口がいっしょに動く、食事をするときに涙が出る)や顔面筋の拘縮が後遺症として残る症例もある。

 

帯状疱疹が他人にうつることは、あまりありませんが、水疱の中にはウイルスがいて、水ぼうそうにかかったことがない人にはうつる可能性もあります。この場合、帯状疱疹の症状ではなく、水ぼうそうの症状が出ます。水疱が治るまでは、水ぼうそうにかかったことのない赤ちゃんや子供、妊婦には接触しないほうがいいでしょう。

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帯状疱疹後神経痛(PHN:postherpetic neuralgia)

皮膚症状が回復しても痛みだけが残り、いつまでも続く場合があります。これを「帯状疱疹後神経痛」といいます。帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹にかかった人の5%~20%に合併するとされています。若い人の場合は、ウイルスによって破壊された神経の回復は良好(5%)ですが、また、加齢とともに発症する確率が上昇することもわかっており、特に50歳以上の方では20%、80歳以上の方では30%以上に発症するとされ、年齢が高くなると罹りやすくなります。皮疹とともに皮膚や神経に影響が現れ、皮疹が治癒した後に遷延する、焼けるような痛みが特徴です。

帯状疱疹後神経痛のリスクファクター
(1)高齢(60歳以上)
(2)皮膚病変が重症
(3)急性期の疼痛が重症
(4)前駆痛(皮疹が出る前の疼痛)がある
(5)神経因性疼痛の症状の存在(アロディニア、知覚異常など)
(6)免疫不全状態の存在

帯状疱疹の発疹が生じた際に、72時間(3日)以内に抗ウイルス薬の治療を開始すると帯状疱疹後神経痛になりにくいことが知られています。帯状疱疹後神経痛になりやすいリスク因子としては、50歳以上、発症当時の帯状疱疹の症状(痛みや皮疹)が重度、糖尿病などの他の合併症、体幹部や顔面に皮疹ができた、帯状疱疹の発症から抗ウイルス薬の投与までに72時間以上経過したなどが挙げられます。

 

帯状疱疹後神経痛にかかった人のうち、時間とともに症状が改善され、1〜2か月で症状が落ち着く人が多いと報告されています。帯状疱疹治療後1年間疼痛の残存を調査したFAMILIAR studyでは3分の1の人は1か月以上づくとされ、90日後の疼痛残存率は12.4%、360日後の疼痛残存率は4.0%でした。

 

帯状疱疹が起きた際に、皮膚や神経がダメージを受け、炎症が起きると考えられています。炎症が起きた神経は、正常の活動ができなくなり、異常な興奮伝達が生じてしまうことで、強い痛みが生じるのが帯状疱疹後神経痛の病態と考えられています。ただし、帯状疱疹になってもその後に神経痛に至らないことも多いため、なぜ帯状疱疹後神経痛になる人とならない人がいるのかは解明されていません。焼けるような痛み、刺すような痛みなどと感じることが多いです。また、感覚が鈍くなる「感覚鈍麻」と言われる症状や通常は疼痛刺激とならないような触る・撫でるといったわずかな刺激だけでも痛みを感じる状態「アロディニア」と呼ばれる症状が発症するケースも報告されています。急性期の痛みは、皮膚の炎症による侵害受容性疼痛ですが、その後帯状疱疹の神経の損傷による神経障害性疼痛が残るとされています。帯状疱疹後神経痛に移行しやすい場所があります。片側のあばらや脇腹などの体幹部(胸髄神経由来)が最も多く、次いで顔(三叉神経由来)が帯状疱疹後神経痛に移行しやすい部位です。

 

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帯状疱疹の症状として疼痛があるが、皮疹が出現する前に出現する前駆痛、皮疹が出現しているときにのみ見られる帯状疱疹痛、2割程度の患者にみられる皮疹が消えた後に残存する帯状疱疹後神経痛(PHN)があり、痛みとして自覚されるものは、これらの混合したものである。

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治療

治療の目標は、帯状疱疹後神経痛を残さないことです。発症したらすぐに治療を受けることが大事です。帯状疱疹の治療は、抗ウイルス薬と消炎鎮痛薬を用います。抗ウイルス薬は、早ければ早いほどよく効くとされていて(ウイルスの増殖は、発疹が出て72時間でピークに達する)ウイルスの増殖を抑制し、皮膚や神経のダメージを軽くし、皮膚病変と疼痛を早期に軽減でき、病気の期間を短縮することが期待できます。抗ウイルス薬は、1週間でおよそ6000円と高価ですが、帯状疱疹後神経痛の発症率を低下させるためにも、理想は3日以内に服薬開始、服薬してもすぐに症状が治まるというわけではありませんが、ちゃんと1週間飲みきることが大切です。また、痛みを冷やすとかえって強くなるので、できるだけ温めるようにします。入浴39〜40℃程度の湯に10分前後も効果的です

帯状疱疹後神経痛への確立された治療薬はありません。治療としては、単一の治療だけを受けるのでなく、複数の治療を組み合わせることが一般的です。衣服がすれただけでも痛みが増すことがあります。サラシや包帯を巻いた後に、衣服を着るなどの工夫をしなければ、生活も大変です。皮膚への刺激が比較的少ない、綿や絹でできた衣類を着用することで、皮膚刺激が少なくなり症状がやわらげられます。また、冷却剤(アイスパック)を使うことで症状が和らぐと感じる人もおられます。

(1)NSAIDs
COX2阻害薬などを使用します。

(2)抗うつ薬
人間の脳には痛みの信号を抑える働きがあるセロトニンという物質があり、この物質が脳で増えると、脳で感じる痛みの信号が弱まります。うつ病もセロトニンが減ってしまう病気のため、うつ病のお薬は痛みにも効果的です。サインバルタといったお薬が挙げられます。

(3)抗てんかん薬
てんかんの治療薬は、てんかん発作を抑えるだけでなく、神経の異常な興奮全般を抑制する作用があるため、帯状疱疹後神経痛にも一定の効果が期待できます。推奨されているのは、リリカやガバペンといった神経の異常興奮を抑制するための薬剤が挙げられます。

(4)オピオイド
オピオイドとはいわゆる医療用の麻薬の一種で、一般的なものとしてはトラマールあるいはトラムセットと呼ばれる薬剤があります。

(5)漢方薬
桂枝加市附湯、補中益気湯や抑肝散などである程度の鎮痛効果が得られたとする報告があります。

(6)局所麻酔剤
リドカイン軟膏や、キシロ軟膏などの処方がなされています。またサロンパスのように冷感を感じるような湿布が用いられることもあります。

(7)神経ブロック
急性期の帯状疱疹に伴う痛みに対する神経ブロックとは異なり帯状疱疹後神経痛に対する神経ブロックの効果を示す報告は少ないです。このため繰り返してもどんどんと治癒していくというものではなく、一時的な効果しか期待できない可能性があります。患者さんの希望に応じて施行されているのが現状だと思われますが、副作用の可能性もあるため、期間にして1,2か月、回数としては4回ほど試してみて効果が持続しないなら、むやみに反復しないほうが望ましいです。

帯状疱疹後神経痛では内服薬で完全に治るわけではありませんが、痛みを緩和することにより、症状が軽減されることで、痛みへの過敏さが和らぎ、それにより痛み刺激自体も少なくなっていくことが知られています。

神経障害性疼痛の薬物療法
Ca2+チャネルα2δリガンド
3環系抗うつ薬
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬(SNRI)
ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液
オピオイド(軽度):トラマドール
オピオイド(中等度):ブプレノルフィン
オピオイド(強度):フェンタニールなど
その他の抗うつ薬
抗てんかん薬
NMDA(N-methyi-D-aspartate)受容体拮抗薬
抗不整脈薬
漢方薬
神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版

Number Needed to Treat:NNT 治療必要数で帯状疱疹後痛と糖尿病性神経症で各薬剤を比較している研究がある。糖尿病性神経症などで5近いNNTがあるSNRIはPHNにはほとんど効果がなく、トラマドール、ガパペンチン、プレガバリンで4を超える値になっている。

Pain 150:573-581 2010
https://journals.lww.com/pain/Abstract/2010/09000/The_evidence_for_pharmacological_treatment_of.31.aspx

3環系抗うつ薬(TCA)
アミトリプチンやノルトリプチンはPHNに対して有効性が高いことが示されている。1日1回10㎎から開始し、週に10㎎ずつ増量し30㎎でも効果が無ければ変更する。口渇や傾眠、排尿困難などの抗コリン作用があり、ノルトリプチンの方が効果はやや弱いが副作用も少ない。

Ca2+チャネルα2δリガンド
プレガバリンは、興奮性神経伝達物質の遊離を抑制する。PHNでのプレガバリンの薬効量は人によって異なる。25㎎で投与開始し、3〜4日で問題なければ増量とし、1週間ごとに容量を調節していき600㎎を最大量、150~300㎎を維持量と考え、4週間で効果判定する。PHNの第一選択薬であり、急性期でも効果あるが、150㎎で効果ない時には変更する。万能薬ではなく、副作用出現時には馴化しないので、経過を観ずに中止を考慮する。120例のプレガバリン投与CKD患者で有害事象発生者の検討を見てみると、有害発症群は、非発生群に比し、高齢、低体重、血清Cr高値、eGFR低下した症例における初期投与量、維持量に注意が必要である。

 

トラマドール
μオピオイド受容体作動薬としての作用とSNRIとしての作用を持つ。μ、δ、κオピオイド受容体に対する親和性はモルヒネに比して非常に弱くμオピオイド受容体拮抗薬であるナロキソン投与でもトラマドールの鎮痛効果は完全に抑制されない。オピオイド鎮痛薬の中では精神異存の発現が非常に少ないとされているが長期使用時には注意が必要である。高用量での痙攣の報告があり、30%で呕気・呕吐(1~2週間で軽減)、15~50%で便秘、ホルモン異常、呼吸抑制などの副作用がある。経口薬はアセトアミノフェン配合錠、口腔内崩壊錠、徐放剤の3種類あるが、徐放剤は効果が弱い感じがある。PHNの強い人は、効果・副作用の面を考えると昼トラマドールを使い夜プレガバリンの併用投与が薦められる。

タリージェ
作用機序 ①神経が損傷を受けると、シナプス前終末でα2δ-1サブユニットおよび電位依存性カルシウムチャネルが増加する。
②活動の上昇した電位依存性カルシウムチャネルを通してカルシウムイオンの流入が増大する。
③シナプス小胞から興奮性神経伝達物質が過剰に放出される。
④興奮性神経伝達物質がシナプス後膜の受容体に結合し痛覚刺激が伝達される。

タリージェが投与されると、
①電位依存性カルシウムチャネルα2δ-1サブユニットにタリージェが結合する。
②電位依存性カルシウムチャネルが遮断され、カルシウムイオンの流入が抑制される。
③シナプス小胞から興奮性神経伝達物質の過剰放出が抑制される。
④シナプス後膜へ痛覚刺激が伝達されず、鎮痛効果を発揮する。

腎機能低下例においては、血中濃度が上昇し副作用が発現しやすいためクレアチニンクリアランス値に応じて投与量を調節する必要がある。

帯状疱疹の再発

帯状疱疹は1度発症すると、水痘ウイルスに対する強い抗体ができますので、再発することはほとんどなく、一生に一度しかかからないと言われてきましたが、その後免疫力が低下すると、ウイルスが活動をはじめ、再び帯状疱疹が再発することがあります。2回目の帯状疱疹の発症は、女性および50歳以上に多く、初めて発症した部位と大半が異なるといわれていますしかし、帯状疱疹を発症した時は、体の中でしっかりと抗体が作られるため、1年以内に再発するのは極めてまれといわれており、免疫機能が正常な人が帯状疱疹を再発する割合は数%といわれています。ただし、数年が経過して加齢や疲労、ストレスなどによって免疫力が低下すると、100人から200人に1人ぐらいの患者さんで再発があると報告されています。また生涯で一度しか発症しないわけではなく、2~4%くらいの確率で再発するとも言われています。ただ、体の中には水痘ウイルスに対する抗体を作る仕組みが残っていますので、再発しても軽症で済むことがほとんどです。中には二度、三度とかかる場合もありようですが、症状の強さはだんだんと弱くなっていきます。宮崎スタディに参加した43施設のうち再調査を行なえた10施設で試験期間中に帯状疱疹と診断された患者総数は16784人で、このうち1076人(6.41%:男性4.73%、女性7.63%)が帯状疱疹の再発がみられた。

 

偽性腹壁ヘルニア

帯状疱疹後に見られるデルマトームに一致した欠損のない腹壁の膨隆を言います。後根神経節の炎症が前角、前根に波及することで運動神経障害を生じ、腹壁筋の筋力が低下することで起こります。全帯状疱疹の3〜5%に見られる。皮疹が出現して2〜6週間以内に出現(平均3.5週)男性に多い(4倍)Th11領域で最も多く見られる。立位や息みで腹部が膨隆します。腹圧の低下、自律神経障害による腸管蠕動運動低下により便秘や偽性腸閉塞(約20%)を起こします。予後は約80%の症例が2〜18ヶ月以内に完全に治癒します。(平均5ヶ月)

 

帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹そのものの発症を予防するために、帯状疱疹ウイルスのワクチン接種が50歳以上の方に行われています。ワクチンを接種することで帯状疱疹ウイルスに対する免疫力を高めて、帯状疱疹の発症を予防する、もしくはかかったとしても軽症で済ませることができると報告されています。

予防接種は、50歳以上が対象です。70歳ぐらいまでに打つようにしましょう。80歳を超えると帯状疱疹の予防効果は低下しています。

 

軽い水疱瘡に50年後の帯状疱疹のことも考えて抗ウイルス薬を投与するかは

水痘に対する抗ウイルス薬の治療が、50年後の帯状疱疹に対して効果があるかというエビデンスはないようですが、理論的には、神経節に残る水痘帯状疱疹ウイルスの量を少しでも減らしておくほうがいいとされているので、水痘の患者さんには、なるべく早く抗ウイルス薬を投与するのがいいのではないかと思われる。しかし、乳幼児の間は水痘自体は結構軽いし、お金の問題もある(小児は無料)なるべく処方したほうがいいのでは。

帯状疱疹予防ワクチン「シングリックス」は水痘の一次感染(みずぼうそう)の予防効能は有していません。