化学療法
抗がん剤は、当院で処方することはほとんどありません。聞きかじりに知識しかありませんので、詳しくは、専門医にお尋ね下さい。
抗がん剤は癌細胞を攻撃し死滅させますが、攻撃の方法が大きく4種類あります。
代謝拮抗薬は、癌細胞のDNA合成を阻害します。
メトトレキセート(メトトレキサート)
葉酸代謝拮抗薬
5-FU(フルオロウラシル)
ユーエフティー(テガフール・ウラシル)
TS-1(テガフール・ギメラシル・オテラシル)
ピリミジン拮抗薬
アルキル化薬は、癌細胞のDNA合成を阻害します。
エンドキサン(シクロホスファミド)
プラチナ(白金)製剤
アンスラサイクリン系薬は、癌細胞のDNAと結合しDNAの合成を阻害します。
アドリアシン(ドキソルビシン/アドリアマイシン)
抗生物質
タキサン系薬剤は、癌細胞の細胞分裂を防ぎます。
タキソール(パクリタキセル)
微小管阻害薬
抗がん剤は、異なる抗がん剤を組み合わせて行う「多剤併用療法」が原則です。1種類の抗がん剤を大量に使用すると副作用がより現れる可能性が高くなりますし、がん細胞に対する効き方や性質の異なる何種類かの抗がん剤を組み合わせて投与することで、抗がん剤の作用をより強力にするためです。抗がん剤は、薬を投与した後3~4週間の期間を空けてから次の投与を行います。正常な細胞はこの空いた時間に回復させ、回復力の弱い癌細胞は十分に回復出来ませんので更に抗がん剤を投与して効率よく癌細胞を死滅させていきます。1回の投与から空ける日数を併せて、1サイクルや1クールと言い、3~8サイクル9~32週間の治療を行います。化学療法(抗がん剤)は基本的に外来で行う為、患者さん自身での体調管理が非常に大切になります。
抗がん剤の副作用
悪心、嘔吐は、抗がん剤が血流を通して脳の吐き気の引き金部を刺激し、その信号が脊髄中の嘔吐中枢を刺激しておこります。抗がん剤点滴の前に制吐剤を点滴します。吐き気の引き金となる特定の受容体をブロックするセロトニン受容体拮抗剤(カイトリル、ゾフラン、ナゼアなど)とステロイド剤(デカドロン)が有効です。投与後数日間起きる遅発性嘔吐に対しては、デカドロン、ゾフランなどの錠剤を内服します。吐き気がひどく、飲み薬も吐いてしまうようなときは、座薬を処方します。””
アレルギー反応は、体内に入った薬を、身体が異物として取り除こうとする反応が非常に強く出たときに出る、蕁麻疹などの発疹などの症状です。抗ヒスタミン剤(アレルギー剤)かゆみ止めのローションやクリーム、冷たいタオルで少しずつ手足を冷やすと軽減されるときがあります。
発熱は、通常は抗がん剤を投与から数時間後に発熱し、投与期間中継続しますが、時間の経過とともに程度は軽くなります。抗がん剤点滴の前に、アセトアミノフェン(ピリナジン)を服用し、予防します。アスピリンは、白血球が減少しているときに出血を起こす危険性がありますので、処方されません。熱が続いている間、アセトアミノフェンを24時間の間4時間おきに服用します。
食欲不振は一時的なものです。通常吐き気などにより数日は食欲が出ませんが、次の投与までには回復します。投与が続くと、異常に疲れたり、物事に集中できないなど倦怠感が増してくる場合があります。この症状も投与による一時的なものですので、化学療法の治療終了後回復します。倦怠感については、貧血症状などがない以外は特に薬は処方されません。活動のペースを落とし、休息を十分にとるようにします。
下痢は、抗がん剤が腸の粘膜を損傷することにより起きます。程度には個人差があり、単に軟便になる人もいれば、水様の状態で脱水症状を起こす人もいます。また、腹痛を伴う場合もあります。特に、5-FU(錠剤)は下痢しやすい抗がん剤です。
便秘は、腸への排便のための神経伝達が遅れ、便が腸を通過しにくくなるため起きます。制吐剤(カイトリル等)は腸管運動を抑制しますので、便秘がひどくなる場合があります。可能であれば水分を多く摂取して便をやわらかくします。制吐剤を点滴後および服用している間は、下剤を続けて服用していたほうが症状は緩和されます。
脱毛については、残念ながら現在のところ、かつら以外の対応はありません。
口内炎は、口の粘膜の再生力が回復するのを待つ以外に治療はできず、治るまでに2~10日間を要します。口内炎を予防するうがい薬、症状を緩和するうがい薬など、症状に即した薬が処方されます。
抗がん剤により白血球が減少すると、感染症を起こしやすくなります。白血球の減少については、治療期間中の血液検査で把握されていますので、日常生活に支障をきたすほどに白血球が減少した場合は、入院治療になります。急激に低下した白血球を回復させるため、G-CSF製剤(グラン、ノイトロジン)やM-CSF製剤(ロイコプロール)が処方される場合もあります。入院するほどに白血球が減少していない場合でも、抗がん剤の治療中は、手洗い、うがいを励行しましょう。
神経系が抗がん剤により損傷を受けたときは、手や足の末梢神経が影響を受け、手や足がしびれたり麻痺している感覚があったり、動きがぎごちなくなったりします。末梢神経障害による不快感を和らげる薬もあります。
抗がん剤に含まれる薬品が、皮膚の中で色素を産生するメラニン細胞に作用して、手や爪が黒ずんでくることがあります。手や足が直接日光に当たらないような服装を着用し、日焼けを防ぎましょう。ひどい症状のときは、ビタミンCが処方されます。
血液中の赤血球が減少して貧血を起こしやすくなります。立ちくらみ、めまいなどが起こります。鉄剤が処方されますので、鉄剤の吸収を良くするオレンジジュース等のビタミンC源と一緒に摂取します。著しい低下の場合は、輸血が必要になります。
抗がん剤が、膀胱への排尿を促す神経に影響を及ぼして、尿意が低下し、尿が膀胱に貯まります。利尿剤が処方されますが、10時間以上排尿がない場合は、抗がん剤の投与量を減らします。
長期の抗がん剤治療は、腎臓、肝臓、心臓などの臓器に影響を及ぼすことがありますが、これらの他臓器への機能障害を引き起こす可能性のある薬剤には、総投与量を制限したり、1回の投与の「安全な量」が医学的に決められています。抗がん剤の投与はその安全な範囲内で使われますので、重篤な副作用の心配はほとんどありません。