セレコックス
セレコックス COX-2選択的阻害薬
変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、腱・腱鞘炎
1回100mg 1日2回、朝・夕食後
セレコックス(セレコキシブ)は、選択的なCOX-2阻害するNSAIDsであり、臨床試験では、従来のNSAIDsに比べて胃腸障害を明らかに減少させることが確認されている。痛み止めとしての効果で言うと、ロキソニンとまあ同じくらいで、ボルタレンよりは少し弱い、というのが一般的な評価だと思います。つまりちょっとマイルドな痛み止めです。以前にも、エトドラク(商品名ハイペン)とメロキシカム(モービック)などCOX-2 選択性を謳った薬剤がありますが、COX-1 も阻害します。
1991年、このCOXに「COX-1」と「COX-2」という2つのアイソザイムが存在することが明らかになりました。これは従来考えられていたCOX以外に、炎症を起こした場所で、白血球のような炎症細胞から、誘導されるタイプのCOX があることが分かったもので、これをCOX2と呼ぶようになりました。COX-1は、細胞に恒常的に存在し、胃粘膜保護、腎機能維持、血小板凝集に関連するPGを産生し、主に生体を守る機能を有しています。これに対してCOX-2は、炎症部位において各種サイトカインなどの刺激によって誘導され、主に炎症や疼痛に関与するPGを産生します。アスピリンのような消炎鎮痛剤は、COX1 とCOX2 を両方とも抑えてしまうので、抗炎症作用を目的としてNSAIDs使用する場合には、COX-2のみを選択性に阻害すれば、痛みや熱は抑えるけれど、胃や腎臓の保護作用は妨害しないという薬が理想的と考えられる。
また、腎血流は、腎臓から分泌されるプロスタグランジンによって、その働きが調節されています。特に腎臓の働きが低下していたり、身体が脱水の状態にあると、腎臓に入る血液の量を維持するために、プロスタグランジンの分泌は増加します。これが痛み止めでCOX が阻害されると、腎臓に負担がかかり、特に腎臓に入る血液の量が、少ない状態にあると、そのダメージはより大きなものになります。痛み止めで腎臓の悪くなるのはこのためで、たとえば高熱で脱水が強い時に、水分の補給をしないで痛み止めを使うと、腎臓の悪くなる危険性はそれだけ高いものになるのです。
痛み止めの使用は、胃潰瘍を繰り返している方や腎臓の悪い方では、慎重にその適応が考えなければなりません。
痛み止めの副作用であった、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の発生率で見ると、国内の臨床試験の成績では、ロキソニンで1190人中8例の潰瘍が認められたのに対し、セレコキシブでは1184人中、潰瘍の発生は1例のみでした。つまり、胃の弱い方の痛み止めは、間違いなくセレコキシブを使うべきです。
腎機能に与える影響については、浮腫みの発生を見ると、ロキソニンの3分の1程度に抑えられている、という結果が出ています。
痛み止めで癌が減る?
1995年のNEJM誌に載った「Aspirin and the risk of colorectal cancer in women 」という論文です。これはアスピリンを長期間飲んでいるリウマチなどの患者さんは、大腸癌の死亡率が40~50%低かったという報告です。そのメカニズムとして注目されているのが、COX-2です。癌と炎症との関連はいうまでもありません。その炎症が起こった場所では、COX-2 という酵素が誘導されます。全ての癌がそうだという訳ではありませんが、最もCOX-2との関わりが深いとされているのが大腸癌です。(胃酸の逆流に伴う食道癌、スキルス胃癌、膵臓癌などでも、COX-2が発現している)従って、COX-2 を抑えることによる発癌の予防効果を期待して、敢えて癌の患者さんや癌のリスクの高い患者さんに、痛み止めとしてセレコキシブを使用するのもありかなと思われます。一方で、COX-2 選択的阻害剤で、心筋梗塞が増えるという報告があります。そのメカニズムは必ずしも明らかではありませんが、COX-2 を強力に抑えると、血栓症が起こり易くなるのかもしれません。現時点では、心筋梗塞や狭心症の既往のある方は、原則は使用を控える対応が、賢明ではないかと思われます。
NSAIDs(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)非ステロイド系抗炎症薬はアラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで、プロスタグランジン類の合成を抑制する。特にプロスタグランジンE2(PGE2)は起炎物質・発痛増強物質であり、NSAIDsは主にPGE2の合成抑制により、鎮痛・解熱・抗炎症作用を発揮する。
アセトアミノフェンは、抗炎症作用はほとんどなく、作用機序は中枢神経におけるCOX阻害作用と考えられているが。詳細な機序は不明である。
細胞膜リン脂質から合成されたアラキドン酸は、下図の3経路で主に代謝される。
COXにはCOX-1とCOX-2のサブタイプがあり、COX-1は血小板、消化管、腎臓などに常時発現しており、臓器の恒常性維持に必要である。COX-2は炎症などで誘導され、血管拡張作用直を有し炎症を促進するPGE2などを合成する。
COX2阻害による心血管イベント増加についての検討を見てみると、CelecoxibとNaproxen、Ibuprofenの使用群間に有意さはなかった。
N Engl J Med 2016; :2519-2529
NSAIDsとアセトアミノフェンを比較すると下図のようになる。
2011年1月よりアセトアミノフェンの投与量が世界並みになった。