セララ
降圧剤/アルドステロン阻害薬/選択的アルドステロンブロッカー
【組成・性状】エプレレノン
錠25mg 50mg 100mg
【効能・効果】高血圧症
心不全または心筋梗塞後、そして治療抵抗性の高血圧に追加する形で使用することにより、新たな心血管保護による降圧療法が達成できると考えられます。
【用法・用量】1日1回50mgから服用を開始し、効果不十分な場合は100mgまで増量することができる。
【使用上の注意】
◎本剤の投与中に、カリウムが5mEq/Lを超えた場合には減量を考慮し5.5mEq/Lを超えた場合は減量ないしは中止とし、6mEq/L以上の場合は直ちに中止することが明記されています。
◎投与前のカリウム値が、5.0mEq/l 以上の場合には投与は禁忌です。
◎微量アルブミン尿、または蛋白尿を伴う糖尿病患者の場合は、適用を禁忌となっております。
◎中等度以上の腎障害(クレアチニンクリアランスで50mL/min未満)でもカリウムが上がる可能性がありますから投与禁忌ということになります。
◎イトラコナゾールなどを投与中の人は相互作用があることが報告されておりますから投与しないことが重要になってきます。
【薀蓄等】
アルドステロンは、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の最終産物として産生され、腎臓に存在するアルドステロン受容体を介して、ナトリウムや水分を体内に保持し、昇圧作用を示します。セララは、アルドステロンの作用を抑制することにより、水分を排出し浮腫を解消するとともに血圧を下げます。また、カリウム保持性利尿剤とも言われナトリウムのみ排泄しカリウムの排泄を抑えるので、サイアザイド系利尿剤やループ利尿剤などの使用によって生じる低カリウム血症を予防する併用剤として用いられたりもします。
アルダクトンAとセララの違いは、スピロノラクトンに比べてエプレレノンは、約8倍も高いミネラロコルチコイド受容体に対する選択性を有しております。アルダクトンAはアルドステロン受容体への選択性が低く、プロゲステロンなどの性ホルモン受容体も阻害するため、長期に服用すると女性化乳房や乳房痛、不正性器出血等の副作用が生じる場合があります。しかし、セララはアルダクトンAと比較してプロゲステロン受容体やアンドロゲン受容体には100分の1から1000分の1の親和性しかなく、性ホルモン関連の副作用の報告は少ないとされています。したがって、副作用、特に男性における女性化乳房の発現頻度は、エプレレノンの場合は約0.5%と非常に少ない頻度になっており、これはプラセボとほとんど優位差はついておりません。一方、スピロノラクトンは、約9%近くが女性化乳房を男性において生じてくることが知られています。
近年の研究で、抗アルドステロン性利尿剤(アルダクトンAはRALES試験、セララはEPHESUS試験)が重症心不全患者(NYHAⅢ度(日常動作で息切れなどが生じるレベルの患者さん)以上)に対して追加投与することにより、全死亡、心臓突然死、心不全による入院などを抑制するという報告されました。心不全の患者さんでは、アルドステロンの受容体の数が増え、その働きが異常に亢進した状態にあることは事実です。動物実験のレベルでは、この受容体の増加は、心臓の繊維化を進め、心臓の働きを弱めるとされています。従って、アルドステロンの受容体を抑えることで、そうした心臓の繊維化が抑えられ、心臓の機能低下が進行しないために、心臓死が減少したのではないかと推測されています。アルドステロンは、血圧の上昇に加えて心、血管、腎臓、脳などに対して障害を直接引き起こすことが明らかにされてきております。したがって、高血圧やその臓器障害の抑制において、アルドステロンを直接ブロックすることが極めて重要になってまいります。エプレレノンはミネラロコルチコイド受容体に選択的に結合して、アルドステロンの作用を直接ブロックします。
治療抵抗性の高血圧治療を、これまでの通常の降圧薬治療を行った後に試してみるのは非常に有効な選択肢であろうと考えられます。 ここでもう一つ、エプレレノンを投与して例えば血圧が下がったという患者は逆に言えば、その人の高血圧がアルドステロンに依存してもたらされているということになりますから、その場合は必ず原発性アルドステロンがその背景にないかということを除外しておく必要があります。もちろん原発性アルドステロンがなくても、治療抵抗性の高血圧の人にはこのエプレレノンは有効であるとされてはいますが、非常によく効いた場合には副腎のCT撮影や腹部エコーにより、副腎に腫瘍がないかどうか、原発性アルドステロンがないかを除外しておくことは必要ではないかと考えられます。
EPHESUS試験は、心筋梗塞後の左室機能が低下した人、すなわち左室の駆出分画が40%以下の人および心不全の患者約6,600名を対象とした臨床試験です。ARBやACE阻害薬、利尿薬、β遮断薬などの標準的な治療に加えてプラセボもしくはエプレレノンを25~50mg/dayを併用し、その予後を追跡(平均追跡期間は16ヵ月)しております。1次エンドポイント、総死亡と心血管死亡また心血管イベンとの発生で相対リスクが約15%低下したということです。エプレレノンは心不全を合併した高血圧患者にまず使用するというコンセンサスが得られております。全症例においてエプレレノンの追加投与により総死亡、心血管死亡、そして心臓突然死の相対リスクが低下しましたけども、それに高血圧の既往例約4,000名に限定して解析をしますと、総死亡、心血管死亡、心臓突然死の相対リスクは、それぞれ23%、16%、26%とさらに著明に減少しております。これらの成績からエプレレノンは、心疾患のみならず心保護を考慮した高圧治療にも適しているという判断がなされております。
ミネブロ
【禁忌】本剤は、高カリウム血症の患者もしくは本剤投与開始時に血清カリウム値が5.0mEq/Lを超えている患者や重度の腎機能障害(eGFR30未満)のある患者、カリウム保持性利尿剤やカリウム製剤などを投与中の患者には禁忌となっています。
【使用上の注意】血中のカリウム値が上昇することがあります。手や唇がしびれる、手足に力が入らない、吐き気などの症状が現れた場合は相談してください。
【薀蓄等】高血圧症治療のミネラルコルチコイドが関与する低レニン性高血圧症にとくに効果が期待でき、治療抵抗性高血圧症に対しても有用であるとされています。ARBやCa拮抗薬を用いても降圧目標を達成できず、あと10mmHg程度を下げたいケースに追加する薬剤となる。これまでのMR拮抗薬では禁忌であった中等度の腎機能障害およびアルブミン尿を有する2型糖尿病を合併する高血圧症患者にも投与することができる。
既存のMR拮抗薬としては、スピロノラクトン(アルダクトンA)とエプレレノン(セララ)が発売されています。スピロノラクトンのMR拮抗作用は強力ですが、女性化乳房や月経異常などの性ホルモンに関連した副作用を発現しやすい。MRへの選択性が高いエプレレノンは、性ホルモン関連副作用は軽減されていますが、中等度以上の腎機能障害患者や、微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病患者への投与は禁忌となっています。エサキセレノンはMR選択性を有し、本態性高血圧症患者を対象とした臨床試験においてエプレレノンに劣らない降圧作用が認められています。また、中等度の腎機能障害患者、および微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病患者に対しても、血清カリウム値の定期的な測定は必要ですが投与可能です。
【作用機序】体液量の恒常性の維持に寄与するアルドステロンが作用するMR受容体の活性化を抑制することで降圧作用を示します。尿細管に存在するMRへ、アルドステロンが過剰に結合し続けると、尿中のナトリウム再吸収とカリウム排泄を促進させ、循環血量の増加により、血圧が上昇する。ミネブロ錠はMRをブロックし、ナトリウム排泄を促進することで血圧低下効果を発揮する。このMRをブロックするという作用機序から、食塩感受性高血圧の患者さんや原発性アルドステロン症の患者さんで有効性を示すことが期待されている。