疥癬

ヒゼンダニ

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非常に小さいダニで、肉眼では見えません。(居るところをピンポイントに捜すと老眼でなければ見えます)短い8本の脚があるので、昆虫ではなく、蜘やサソリの仲間だそうです。人の体温が最も生活しやすい温度で、人体から離れると動きが鈍くなり、 16℃以下では動けなくなります。雌成虫は、体長0.4mm。角層に横穴を掘り進み(疥癬トンネル)、卵を産みつけます。雄成虫は、体長は雌(0.4mm)の約2/3。皮膚の表面を歩き回って、雌を探して交尾します。


ライフサイクル

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卵から幼虫、若虫を経て成虫(雄、雌)となります。卵は3~4日で孵化して幼虫になり、トンネルから出て歩き回るようになります。幼虫は脱皮を繰り返し、若虫を経て成虫となります。卵から孵化し、幼虫、さらに成虫となり卵を産むまでの一世代の長さ(ライフサイクル)は10~14日です。


病型と症状
疥癬の病型には通常疥癬と角化型疥癬があります。寄生するダニの種類はどちらも同じヒゼンダニですが、寄生数に違いがあります。通常疥癬では重症の場合でも1人の患者さんに1000匹程度ですが、角化型疥癬では100万~200万匹(時に500万~1000万匹)ともいわれる程の多数のヒゼンダニが寄生します。宿主が健康体であれば通常疥癬になりますが、免疫力が低下している場合には角化型疥癬になります。また、通常疥癬では寄生数が少ないため感染力はそれほど強くないですが、角化型疥癬では寄生数が多くきわめて強い感染力を有します。そのため、角化型疥癬では個室隔離などが必要になります。なお、発症頻度は通常疥癬が大多数で、角化型疥癬はまれです。

通常疥癬と角化型疥癬では感染力の強さが異なります。通常疥癬であれば、同室で布団を並べて寝ない、長時間肌と肌を接触させない、寝具や衣類など肌に触れるものの共用を避けるぐらいで特別な注意は必要ありません。しかし、角化型疥癬では角層内に多数のダニを含んでおり、皮膚から剥がれ落ちた角層に接触するだけでも感染します。

角化型疥癬の場合の対応としては、個室に隔離し、入浴は毎日し、居室は掃除機で丁寧に掃除してください。衣類、シーツは毎日交換。50℃以上のお湯に10分以上浸す。寝具(マット)などは掃除機で表面を丁寧に掃除。家族の方が疥癬と診断されたら、同居の方は皮膚科を受診してください。

感染後、約1~2ヵ月の潜伏期間をおいてきわめて強いかゆみを伴い、発症します。(角化型疥癬の場合は、4~5日で発症することも)

皮膚症状の特徴は、(1)丘疹、(2)結節、(3)疥癬トンネルです。

(1)丘疹

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丘疹はへそを中心とした腹部、胸部、腋の下、太腿の内側、腕の内側などに、結節は外陰部や腋の下、肘、臀部にみられ、いずれもかゆみが生じます。これらは幼虫や若虫が一時的に潜って脱皮したあとの穴で、中に残していった糞や脱皮したぬけ殻に対するアレルギー反応のために赤くかゆくなります。この部位からはヒゼンダニが見つからないことがほとんどです。

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(2)結節

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(3)疥癬トンネル

ヒゼンダニは、主に手首、手のひら、指間、指の側面などの角層内に体を潜り込ませた後、水平に掘り進みながら前進し、後方に卵や糞を残します。これは細い曲がりくねった1本の線状のあととして認められ、疥癬トンネルと呼ばれます。幅は約0.4mm、長さは掘り始めてからの時間にもよりますが、多くは長くて5mm程度といわれています。トンネルの天井にあたる部位には等間隔に約0.2mmの穴があいています。(皮膚は、古い方から落屑しますから、皮膚がボロッとしている方が入り口です)疥癬トンネルと言っても、よーくみないとトンネル自体見つかりません。トンネル自体、指紋と同じくらいの大きさです。特に小指側の指間、手相の線に沿ったところや、手首の内側の筋のあたりを、ルーペ等でよく見るとチョロット白い線が見つけられます。トンネルの先端部には産卵中の雌成虫が潜んでいます。なので、入り口からたどってトンネルの先端を見て、皮膚を透かしてものすごーく小さい黒い点があれば、それがダニの頭ということになります。ヒゼンダニのお腹は白っぽく半透明で丸いのですが、頭と前足は黒いのでそれを目印に見つけることができるのです。

Symptom of mange3
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ヒゼンダニの分布
ヒゼンダニ(雌成虫)の部位別分布です。63.1%が手や手首、10.9%が肘、9.2%が足から見つかりました。通常疥癬では頸部から上には寄生しませんが、角化型疥癬では頭部や頸部、耳介(耳たぶ)にも症状が出ます。

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治療によってヒゼンダニ死滅後にかゆみが残ることがあるのも、このようなヒゼンダニが残したものに対するアレルギー反応が続くためです。特に結節は6ヵ月以上続くこともあります。

疥癬を疑う動機として、ステロイドが効かない、難治性の湿疹に出あったら、その背景を確かめた方がいいですね。強いかゆみが主体で、疥癬患者との接触があれば、やばい。ステロイド外用剤を漫然と使用していると、通常疥癬から角化型疥癬に移行することもあるので気をつけましょう。

角化型疥癬の中には、症状が爪のみに限局された爪疥癬もあります。爪白癬と似た症状を呈し、診断が難しいため、治療が遅れることが多く、集団発生の原因となることがありますので注意が必要です。


治療

日本ではイメルベクチンの内服が主流です。まず、診断したらすぐ1回目の投与、1週間後に2回目の投与を行います。その後は継時的に皮膚の確認をしながら繰り返し診察をすることが重要です。また、外用としては硫黄製剤、オイラックス、安息香酸ベンジルを使用します。なるべく早く治療を行い拡大を抑えることです。