Fitz-Hugh−CurtisSyndrome(フィッツ・ヒュー・カーティス症候群と呼びます)は、女性生殖器から進入した病原体により、骨盤内腔炎から上行性に肝周囲炎に至った感染症を指します。 この疾患は性行動を伴う若い女性に多く、主症状はかなり強い右季肋部痛が起こります。血液検査では炎症所見に乏しく、肝障害も軽症で診断に苦渋することが多い。 症状等より胃腸炎などの消化器疾患と間違われることが多い。Fitz – Hugh – Curtis症候群を想起できれば、 造影CTの動脈相で、肝表面の肝被膜の造影されて白く見えるのが比較的高頻度に認めらる。 確定診断は腹腔鏡による肝表面と周辺臓器との繊維性癒着の観察や肝被膜からのクラミジア分離が行われてきたが、若年女性に多い疾患であることことから非侵襲的な方法が望まれ、最近では臨床所見や頸管スワブや尿のPCR、血清学的クラミジア抗体価の上昇などから総合的に診断されています。

 

Fitz-Hugh-Curtis症候群は,骨盤内感染症に肝周囲炎を合併する症候群である。骨盤内炎症性疾患(PID)の10%に見られ、原因菌はクラミジア・トラコマティス>淋菌です。現在,我が国でのクラミジア感染症は 性感染症の中で最も多く、FHCSは若年女性の急性腹症の一 因として注目されている。一般的に性行為によるクラミジア感染による症状は非特異的で、帯下増量、不正出血、下腹痛、性交痛などです。 最初の感染部位である子宮頸管炎は、感染しても約半数が無症状です。 無症状とはいえ、放置すると、将来、卵管炎、腹腔内感染へと進展する可能性があるので、分泌物検査で診断された場合は、無症状でも即座に治療を行う必要があります。経過として痛みが下腹部から右季肋部に移動するのが典型的だが、3〜5割の患者さんは下腹部痛がなく、最初から右季肋部痛のみのことがあります。痛みの特徴は、咳嗽、深呼吸、体動で痛みが増強、Murphy徴候20%に認めます。検査では白血球は正常もしくは軽度上昇、CRP上昇、肝機能も正常から軽度上昇を認めます。

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骨盤内炎症性疾患(PID)

PIDはPelvic Inflammatory Diseasesの略です。PIDは性感染症なので、性行為がある女性全てに罹患するリスクがあります。そして診断や治療が遅れると、不妊や子宮外妊娠などのリスクが高くなる病気だということです。また、慢性的に骨盤痛が残ることもあります。PIDとは上部生殖管(子宮内膜、卵管、卵巣)感染症±骨盤腹膜炎です。(膣や子宮頸部の感染症はPIDには入らない)子宮頸管炎の主な症状は、「帯下の増加」と「不正性器出血」です。子宮頸管粘膜の炎症により分泌物が増え、出血しやすくなるというわけです。「性交時の痛み」がでる人もいます。この後、子宮頸部より子宮内に菌が侵入し、子宮内膜に感染が起きる(子宮内膜炎)とPIDになります。子宮内にも炎症が起こると「下腹部痛」「発熱」がみられるようになります。また、が出る場合もあります。次は子宮を通過して卵管に侵入します。さらに、卵管に侵入すると、卵管炎を起こすと痛みに左右差がある場合も出てきます。卵管を過ぎると、そこはお腹の中、お腹の中は腹膜という膜に包まれているので、菌が侵入すると、骨盤腹膜炎を起こし「発熱」や「強い腹痛」がメインです。そして、なんとさらに奥に菌が侵入していくと、肝臓の表面に菌が到達することもあります。これが、肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)です。

 

FHCSが発症初期に診断されることは少なく、他の腹痛を来す疾患の鑑別のため 臨床各科を複数受診することも多い。腹痛を主訴に来院した30歳未満の女性患者155名を対象とした後ろ向き研究では、9名(5.8%)がFHCSと診断されました。10代から20歳代前半までの若年層がFHCS症例の大半を占めています。FHCS9例全例が右季肋部圧痛を認めました(右季肋部圧痛所見のFHCS診断に対する感度は100%,特異度は 99.4%)また下腹部から右季肋部へ痛みの移動を9例中8例で認めた。鑑別が問題となりうる急性胆嚢炎とFHCSとの疼痛発生機転の違いを考えると胆石発作から胆嚢炎を併発した場合、自覚痛は初期の内臓痛である心窩部から体性痛へと進展した右季肋部への移動であり、FHCSの子宮および付属器炎による下腹部痛が肝周囲炎としての右季肋部痛へと移動する点で臨床的に異なる。さらに30歳以下という若年者では胆石の頻度は低く、特に下腹部から上腹部へ自覚痛が移動した患者には FHCSを鑑別の第一にあげるべきと考えられた。随伴症候として帯下増加や不正性器出血などの症候は9例中6例にみられた。白血球数増加は4例に認め、CRPは全例で陽性であった。腹痛を主訴に一般内科外来を受診した 若年女性において,右季肋部圧痛を呈した場合は 常にFHCSを考慮し、 婦人科的な問診を加えるこ とが診断に有用であると考えられます。全症例において血清のIgAクラミジア抗体価が高値であった。クラミジア・トラコマティスIgA抗体(活動性)陽性、クラミジア・トラコマティスIgG抗体(既往)陽性、クラミジア・トラコマティスPCR(膣分泌物)陽性治療には7例にミノマイシン、2例にクラリスロマイシンを用いて治療開始後3日から12日で全例症状の改善を認めた。