【組成・性状】シロドシン(一般名)
       錠4mg(剤形)

【効能・効果】前立腺肥大症による排尿障害

【用法・用量】1回4mg 1日2回朝夕食後

ユリーフ

 

【禁忌】

【使用上の注意】

前立腺前立腺肥大症とα受容体
年を取ると、トイレの前に立っても尿が出にくくなることがあります。この症状を排尿障害と表現しますが、特に男性では前立腺の異常によってこの排尿障害が起こります。前立腺は男性にのみ存在する器官であり、人によっては年と共に前立腺が肥大していきます。尿道の周りを取り囲むように前立腺が位置しているため、前立腺が肥大化すると尿が出にくくなってしまいます。これが、前立腺肥大症の主な症状です。私たちが激しい運動をしているとき、心臓の拍動数は上がります。また、力を出すために血管が収縮し、血圧が上がります。そして、トイレに行っている暇もないため、排尿は抑制されます。「血管収縮による血圧上昇」や「排尿の抑制」などに関与している受容体としてα受容体があります。このα受容体が刺激されることによって、運動時のような血圧上昇や排尿抑制などの作用を得ることができます。α受容体が刺激される事によって、尿道が縮んで膀胱が拡がるようになります。その結果、排尿が抑制されるように働きます。それでは、α受容体を阻害すればこの逆の働きとして「排尿促進の作用を得られる」ことが分かります。同類の薬にハルナール(一般名:タムスロシン)フリバス(一般名:ナフトピジル)があります。いずれも前立腺・尿道のアドレナリンα1受容体をブロックすることで尿道周囲の平滑筋を弛緩させ、尿道の圧迫を和らげて排尿障害を解消する効果があります。

 

 『ハルナール』は、α1受容体全体をブロックします。
 『ユリーフ』は、α1受容体のうち、α1A受容体を選択的にブロックします。
 『フリバス』は、α1受容体のうち、α1D受容体を選択的にブロックします。

ハルナール、ユリーフ、フリバス

 この「α1A受容体」と「α1D受容体」の分布には体質や臓器によって差があるため、症状や副作用のリスクからその人に最も合った薬を選びます。

 排尿に関わる前立腺と膀胱の「α1受容体」には、「α1A受容体」と「α1D受容体」という2つのサブタイプがあります。
 『ハルナール』・『ユリーフ』・『フリバス』は、それぞれこのサブタイプに対する親和性(作用の強さ)が異なります。

各薬の受容体への親和性の差
ハルナール・・・「α1A:α1D」=  3:1
ユリーフ・・・・「α1A:α1D」=55:1
フリバス・・・・「α1A:α1D」=  1:3

そのため、前立腺や膀胱などに分布する受容体の差によって、効き目や副作用に違いが生じます。

 「前立腺」での「α1受容体」の分布には個人差があり、以下の3パターンに分類することができます2,3)。

前立腺での「α1受容体」の分布
① α1A受容体とα1D受容体が均等に分布する人
② α1A受容体が多い人
③ α1D受容体が多い人

 そのため、それぞれ最も多い受容体をブロックすることによって、最大の治療効果を得ることができます。

ハルナール、ユリーフ、フリバスと前立腺の個人差

実際にどれか一つの薬を飲んでみて効果がイマイチだった場合でも、別の薬に変更することで大きな効果を得られる可能性もあります。

「膀胱」では、「α1D受容体」が多く存在しています。これは個人差ではなく、全ての人に共通する特徴です。

α受容体でのサブタイプ選択性
α受容体のサブタイプとしてはα1A受容体、α1B受容体、α1D受容体が存在します。この中でも、それぞれの受容体が存在している場所に違いがあります。

 α1A受容体:前立腺に多く存在している
 α1B受容体:血管に多く存在している
 α1D受容体:膀胱に多く存在している

α受容体が刺激されることによって血管に多く存在するα1B受容体が刺激されるため血管が収縮し、血圧が上昇します。α1A受容体は前立腺に多く存在していることから、この受容体を阻害することによって尿道を拡げることができます。つまり、排尿困難な状態を改善することができます。それに対して、α1D受容体は膀胱に多く存在しているため、この受容体の阻害によって膀胱を拡張できます。膀胱が広がるため、より多くの尿を溜めることができます。このような違いから同じ前立腺肥大症の治療薬であっても、α1A受容体阻害薬は「排尿困難時」に使用され、α1D受容体阻害薬は「蓄尿障害時」に使用されます。フリバスはα1D受容体に対して選択的に阻害作用を示します。つまり、フリバスは前立腺肥大症に伴う蓄尿障害の治療に利用される薬となります。前立腺肥大症では、なかなか尿が出ないために膀胱に尿が溜まりやすくなります。そのため、何回もトイレに行きたくなる「夜間頻尿」や急にトイレに行きたくなる「尿意切迫感」などの問題が起こるようになります。そこで、膀胱に溜めることのできる容量を増やしてやります。このような作用を行う薬がフリバスです。排尿障害の中でも蓄尿障害を改善するという事です。

フリバス~膀胱刺激症状への効果

 そのため、夜間頻尿などの膀胱刺激症状が主であれば、「α1D受容体」を遮断するフリバスが適しています

 「精嚢」にも「α1A受容体」があります。そのため「α1A受容体」を遮断すると、射精障害などの副作用を起こしやすくなります。

ユリーフ~射精障害

 そのため射精障害の副作用は、「α1A受容体」への作用が強いユリーフで多い傾向があります。

 前立腺肥大の人が「抗コリン作用」を持つ薬を使うと、症状が悪化することがあります。この「抗コリン作用」を持つ薬というのは、世の中に非常にたくさんあります。特に、古いタイプのアレルギーの薬は市販の風邪薬などにもよく入っているため、安易に薬を選ぶと思わぬ副作用が出る恐れがあります。

◆用法
ハルナール:1日1回、食後
ユリーフ:1日2回、朝夕食後
フリバス:1日1回、食後

◆発生頻度の高い副作用
ハルナール:起立性低血圧によるめまい(2.2%)
ユリーフ :射精障害(17.2%)
フリバス :起立性低血圧によるめまい・ふらつき・立ちくらみ(1.57%)

症状が軽症であれば、副作用の少ない『エビプロスタット』という薬を使うこともあります。この薬は植物エキスを配合した薬で、前立腺肥大症で生じる酸化ストレスを軽減し、排尿困難や頻尿といった尿トラブルの症状を緩和する効果があります。