現在、世界の人口は70億人とも言われていますが、B型肝炎に感染したことがある人は、WHOの報告では20億人余り(多い報告では40億人)いると言われ、世界の人口の1/4はB型肝炎にかかっているわけです。その中でHBs抗原陽性のキャリアが2億4000万人いると推定されています。地図は、HBs抗原陽性率の違いで3段階(8%以上、2-8%、2%未満)に分けて評価されていますが、そのうちの75%が東南アジアと極東に集中しており、日本も中蔓延国になっており、4人に1人はB型肝炎に罹ったことがある(HBs抗体陽性and/orHBc抗体陽性)と報告されています。日本にいるとどうしてもC型肝炎ばかりが重要視されているようですが、グローバルに言うと圧倒的にB型肝炎が重要性が高いウイルスです。

画像の説明

B型肝炎ウイルス保有者(HBVキャリア)は、わが国で約130~150万人と推定されています。B型肝炎ウイルスは、遺伝子型によりジェノタイプA~G型の7種類に分かれており(ウイルスの塩基配列が8%以上違う)わが国ではジェノタイプC型、次いでジェノタイプB型が多く認められます。HBVは主に血液を介して感染しますが、わが国では、出産前後に母親から赤ちゃんに感染する『母子感染(垂直感染)』による感染がほとんどです。(B型肝炎の90%以上)成人になってからの感染は、性交渉、覚醒剤の回し打ち、刺青、医療上の針刺し事故などによる『水平感染』が主です。多くが急性肝炎を発症し、安静・食事療法にて自然に治癒しますが、約1%で劇症肝炎という非常に重症の肝不全になることがあります。

画像の説明

 

画像の説明

また、最近のB型急性肝炎は、A型遺伝子の割合が30%近くになっています。主に性交渉が感染の原因になっています。わが国でも欧米に多いジェノタイプA型が外国から持ち込まれ、A型遺伝子の場合は、20〜30%で慢性化し、肝硬変、肝がんへと進んでいきます。

 

肝臓がんと診断された患者さんのその原因となった肝臓の病気を調べてみると、C型肝炎とB型肝炎が大多数を占めるわけですが、C型肝炎による肝がんは、新しいHCV治療薬の登場によってここ数年で明らかに減少しています。一方、B型肝炎については新しい治療薬も開発されていますが、その割合はほとんど変わっていないのが問題です。しかし、最近になってやっとB型肝炎にも少し光が見えてきました。それは、C型肝炎のように治るようになったというわけではないので、まだまだ道半ばということは否めないのですが、HBs抗原の量を測るとB型肝炎の病態がわかるようになってきたということです。HBs抗原を陰性化を目指す治療をすれば、臨床的治癒(略治)?に持っていけるのではないかという新しい展開を迎えているわけです。

 
肝がんの原因

診断

B型肝炎を診断するためには、血液検査でHBs抗原という蛋白質が血液中にあるかどうかを調べます。HBs抗原がある場合、HBVに感染しています。(HBs抗原が陽性となるまでには、HBVに感染してからおよそ2~3ヵ月かかります)さらにHBV DNA量(ウイルス量)HBe抗原・抗体の有無、腹部エコーなどを進めていきます。

画像の説明

B型肝炎

 

抗原(HBV由来) 抗体(体内で作られる)
HBs抗原 HBVの外殻を構成する蛋白質の1つ。B型肝炎ウイルスが現在感染していることを示す。急性肝炎では,肝炎発症前より血中に出現し,ALT値改善に前後して陰性化するが、キャリア-では通常生涯にわたり陽性が持続する。抗原の血中力価はウイルス量を反映し、キャリア-では肝炎増悪時に高値となる。 HBs抗体 B型肝炎ウイルスの中和抗体で,感染の既往を意味する。陽性者には既にウイルスは存在せず,再感染の危険もない。感染から時間がたつと抗体価は低下し,感度の低いPHA法では陰性となる場合がある。急性肝炎では、発症6ヵ月以上たってから陽性化する。HBワクチンを接種した場合にも陽性になる。
HBc抗原 HBVを構成する蛋白質の1つだが、まだ検出するための方法がない。 HBc抗体 HBc抗原に対する抗体。
IgM-HBc抗体 急性肝炎では、発症に前後して陽性となり、2~6ヵ月後に陰性化する。B型劇症肝炎では,HBs抗原が速やかに消失し、HBs抗体陽性となる場合があるので、IgM-HBc抗体測定が診断に際して必須である。キャリア-でも急性増悪時には陽性になるが,急性肝炎に比して抗体価が低い。
IgG-HBc抗体 急性肝炎ではIgM-HBc抗体に引続き上昇し、ほぼ生涯にわたって血中に存在する低力価陽性の場合は、過去にHBVに感染したことを示す。高力価陽性(200倍希釈血清でも陽性)の場合は感染の持続を意味し、B型肝炎ウイルスキャリア-であることを示す。HBc抗体陽性、HBs抗体陰性は一般にB型肝炎ウイルスの既往感染と考えられてきたが、免疫抑制薬,副腎皮質ステロイドを投与するとHBV-DNAが陽性化することから,本質的にはキャリアと同等であると考えられている(HBV再活性化:de novo肝炎)
HBe抗原 HBVが増殖する際に過剰につくられる蛋白質。肝臓でHBVが活発に増殖している状態で、感染力が強いことを示す。急性肝炎では,肝炎発症に前後して一過性に出現、ALT改善とともに陰性化するが、キャリア-でHBe抗原陽性の症例は、血中ウイルス量が多く感染性が高く、肝炎を発症する可能性が高い。 HBe抗体 HBe抗原に対する抗体。感染力が弱いことを示す。急性肝炎では,HBe抗原陰性化に引続き陽性となるが、キャリア-でHBe抗体陽性の症例は,血中ウイルス量が少なく肝炎を発症しない可能性が高い。HBe抗原,抗体とも陽性の症例は,HBe抗原のみ陽性の症例と同様に扱う

 

画像の説明

HBc抗体を測定する意義

 HBc抗体は、B型肝炎ウイルス(HBV)由来の蛋白HBc抗原に対して免疫反応を示して作られた物質です。HBc抗体が陽性の場合は,B型既往感染例と診断されます。HBs抗体も陽性となる症例が多いのですが、HBc抗体が単独陽性の場合もあります。一般的には、B型既往感染例でHBc抗体は陰性となることはないとされていますが、HBV再活性化に関する前向き研究(持田 智 埼玉医科大学教授)では、HBVワクチン未接種にもかかわらず、HBs抗体のみが陽性でHBc抗体が陰性の既往感染例も存在します。B型既往感染例のうち72%がHBc抗体、HBs抗体がともに陽性例、19%がHBc単独陽性例、7%がHBs単独陽性例であったと報告されています。ちなみに、HBVワクチンを接種した場合は、HBs抗体のみが陽性でHBc抗体は陰性になります。わが国では、B型既往感染例の発生率は50歳以上の年齢層で約25%であり、総数は1000万人以上であると推計されています。HBc抗体には、IgM-HBc抗体とHBc抗体(総)があります。IgM-HBc抗体はHBV感染初期に3~12ヵ月間、一過性に高力価で出現するため、B型急性肝炎の診断に有用です。HBVキャリアの急性増悪でも低力価で陽性化することがありますが、抗体価で鑑別できます。一方、HBc抗体・総はHBc抗原に対する抗体の総称で、感染の比較的早期から血中に出現しほぼ生涯にわたって持続します。HBV感染者を既往感染も含めて最も広く検出する抗体です。

通常HBV感染診断は、HBs抗原の検出により可能ですが、HBs抗原量が少ない場合や一過性感染ではHBs抗原が検出されない場合があり、このような症例ではHBc抗体の検出は意義があります。また、HBs抗体はまれに陰性化することがあるが、HBc抗体は持続陽性を示すため、最も感度のよい感染マーカーといえる。HBc抗原の存在期間に比例して抗体価が上昇するため、持続感染では一過性感染の場合と比較して桁違いに抗体価が高くなり、抗体価が高い場合は持続感染と診断でき、抗体価が低い場合は一般に急性肝炎の治癒(既往感染)と考えるられます。しかし、母子感染のB型慢性肝炎も多くは思春期頃に肝炎を発症し、30歳までにセロコンバージョンして鎮静化します。すると高齢になる頃には、HBV DNA陰性化、HBsAg陰性化、更にIgG HBc抗体低力価~陰性化になる人がいます。よって、HBc抗体低力価陽性の人は、念のために HBV DNAを検査した方が良いです。そこまでしても,高齢者の場合は, HBV DNA陰性でも慢性肝炎だった可能性は否定しきれません。腹部エコー検査等で肝臓の変形や肝内エコーの粗造がないかを見て傍証にしますが、アルコールを飲んでいたらそのために肝炎の所見が出ます。つまりなかなかクリアカットに区別するのは難しいところがあるのが実臨床です。

HBs抗原とHBs抗体、HBV-DNAが全て陰性であるが、HBc抗体が陽性であるドナーから肝移植が行われた場合、レシピエントにB型急性肝炎(ときに劇症肝炎)が発症する可能性が高いことが知られています。B型肝炎既往感染者でもHBs抗体が陰性化することがあるため、HBV感染の既往を証明するためには、HBc抗体を検査することに意義があります。HBV感染後に血中にウイルスが存在しなくなっても,肝臓にはかなり長期にウイルスが存在するものと考えられています。HBV感染の既往は肝移植の際のドナーとして適合するか否かの判定にHBc抗体の測定は重要です。また、いわゆるoccult(latent)HBV感染と呼ばれるような症例においても肝癌の発生には留意すべきです。

B型既往感染例は、感染経路で2種類に分類され、管理の仕方が異なります。大部分は成人期の水平感染例で、肝炎は一過性で治癒しており、HBc抗体は低力価陽性です。この場合はHBs抗体も陽性になりますが、感染後は抗体価が漸減し、高齢者では陰性となる場合もあります。一方、少数例ですが注意を要するのは、幼少期の垂直ないし水平感染によるB型キャリアです。免疫監視期の非活動性キャリアは、高齢になるとHBs抗原が陰性化して、既往感染例と同様の肝炎ウイルスマーカーを呈するようになります。この時期は寛解期と呼びますが、HBc抗体は高力価で、HBs抗体は陰性の場合が多いのが特徴です。一過性感染例と寛解期のキャリアのいずれかは、HBc抗体価で推定します。一般的には低力価の場合は一過性感染による既往感染、高力価の場合は持続感染と解釈されています。従来のRIA法では200倍希釈で陽性のとき高力価といわれていましたが、最近では最も頻用されているCLIA法では10.0 S/CO以上を高力価するのが一般的です。

肝発癌リスクの差異に基づいて管理法も異なります。一過性感染による既往感染例は,未感染例と同程度の肝発癌リスクとみされ、基本的に肝癌のスクリーニング検査は行いません。しかし、B型既往感染の日本人で、肝発癌リスクを前向きに評価したエビデンスレベルの高い検討はありません。HBV感染者における肝発癌リスクはHBV-DNA量とHBs抗原量によって規定されますので、両者陰性の既往感染例は、リスクがきわめて低いと考えられています。一方「HBs抗体が陰性でHBc抗体が高力価」の寛解期のキャリアの症例ではHBV-DNAが検出される場合もあり、HBe抗体陽性の非活動性キャリアと同様、6~12カ月ごとに腫瘍マーカーを測定し、1年に1回は腹部超音波検査を実施することが推奨されます。

 

 

B型慢性肝炎(キャリア)の自然経過

画像の説明

B型慢性肝炎(HBV持続感染)の経過です。感染初期の子供の頃は免疫寛容期で、HBs抗原、HBe抗原陽性でGPT正常の肝炎は起こっていない無症候性キャリアで、ウイルスはたくさんいる状態(HBV-DNA高値)が続きますが、成人期になってくると免疫排除期になって肝炎がおこります。ウイルスはこれから逃れようとして、pre-coreとかcoreプロモーター領域に変異が起こってHBe抗原の産生が著しく抑制されたウイルスに置き換わる現象が起こります。これをセロコンバージョンと言ってHBe抗原陽性からHBe抗体陽性になって、そうこうしているうちにウイルスのいろいろなところに変異が起きてきて、ウイルスがあまり増えなくなり、ウイルスの量の減ってきて(HBV-DNA低値)GPTも正常になり肝炎も起こらなくなって非活動性慢性肝炎期へ移行していき、ここまでくれば一安心とされてきたわけです。(僕が研修医時代はこれでよかったんですが・・・

ところが、 B型肝炎からがんができる発がん率を見てみると、肝硬変からの発がん率が一番高くて年に1.2〜8.1%、慢性肝炎からも0.5〜0.8%がんが出てくるわけですが、HBe抗原が消えて、HBV-DNAも低値になって、何回測ってもGPTも正常である患者さんからも0.1〜0.4 %がんが出てくることがわかっています。だから、B型肝炎の方に「もう来なくていいですよ」とはなかなか言えないわけです。なぜこうなるかというと、セロコンバージョンした時点ですでに隠れ肝硬変の方が混ざっているからなんです。確かに、HBe抗原陽性からHBe抗体陽性にセロコンバージョンし、肝炎が沈静化(GPTが正常)が持続して、この時点で肝の線維化が進んでいなければ、特になんの治療もいらないわけです。(一生健康な90%のグループ)しかし、セロコンバージョン後(HBe抗体陽性)も慢性肝炎が続く患者さん(HBe抗体陽性慢性肝炎期)を放っておくと肝硬変に進行していくので、HBe抗原陽性陰性に関わらず、肝炎が持続し肝の線維化があれば、インターフェロンや核酸アナログで治療しなければなりません。

 

B型肝炎

B型肝炎

 

治療が必要(がんができやすい)な患者さんの見分け方

では、HBe抗原陽性からHBe抗体陽性にセロコンバージョン(HBe抗体陽性)し、肝炎が沈静化が持続(GPTが1年以上経過を見て、3回以上正常値を確認)している症例を非活動性キャリアといいます。この中には、なんの治療もいらない症例と癌ができやすい症例が混ざっているわけです。これを見分ける方法として、この時点で肝の線維化が進んでいたり、セロコンバージョン後(HBe抗体陽性)も慢性肝炎が続く患者さんがいるので、HBe抗原の陽性陰性に関わらず、肝炎が持続し肝の線維化があれば、インターフェロンや核酸アナログで治療しなければなりません。 

台湾で行われた大規模なコホート研究で、HBVDNA量が多ければ多いほど、肝硬変や肝癌になりやすいことがわかっています。(ウイルス量が104/mL以上では、 肝細胞癌合併のリスクが高くなる)

https://heart-clinic.jp/wp-login.php?action=logout&_wpnonce=7ce9154cc7

HBV-DNA量の測定法は、飛躍的に進歩し、以前は、TMA法(LGE/mL)またはPCR法(Log copy/mL)で測定していましたが、2008年からは、2.1logコピー/mlまで測定可能なリアルタイムPCR法(TaqMan法:Log copy/mL)も保険適応されています。HBV-DNA量が5.0 Log copy/mL未満の場合には肝炎は沈静化する場合が多い。HBV-DNA定量法は、肝硬変、肝癌の発症リスクを最も強く反映する予測因子であるため、非常に重要で、高感度の測定法として強く推奨されています。

画像の説明

さらに、ALT値やHBV DNA量以外の因子で、臨床的に肝がんができやすい患者さんは、年齢が40歳以上(C型肝炎は60歳以上)と若年者でもがんができやすくなり、血小板数が15万以下の患者さんは、がんができやすいようです。

そして、最近のB型肝炎の治療におけるキーワードはHBs抗原です。今までの教科書ではHBs抗原は、B型肝炎にかかっているかどうかをみる検査で、HBs抗原が陽性であれば、B型肝炎に感染しているわけで、1回測ればいい検査でした。しかし、最近の研究でHBs抗原量を測れば、治療がうまくいっている人はだんだんHBs抗原量が減ってくることがわかってきました。つまり、HBs抗原を陰性化するためにはどういった治療をしたらいいのか、HBs抗原を繰り返し測定することで、今の治療がどのあたりまできているか、うまくいっているのかがわかるようになるわけです。

台湾の大規模なコホート研究で、HBs抗原量を測定し、そこからどれくらいの確率で癌がでてくるかをみたものですが、HBs抗原量が100未満の患者さんからはほとんががんが発生していませんでした。100〜999の患者さんでは、100未満の人に比べて2.85倍、1000から9999の患者さんは5.22倍、がんができやすいことがわかりました。

HBs抗原量

治療

B型慢性肝炎の場合は、ウイルスを体から排除することはほぼ不可能なので、治療の目的は「ウイルスの増殖を低下させ、肝炎を沈静化させること」となります。しかし、B型慢性肝炎と診断されても必ずしもすぐに治療を始めなければならないというわけではありません。なぜなら治療をしなくても自然にセロコンバージョンが起こって肝炎が沈静化することが期待できる事例もあるからです。B型肝炎の自然経過では、持続感染は出生時または乳幼児期の感染によって成立し、肝機能正常なキャリアとして経過し、成人期に免疫能が発達するに従い、顕性または不顕性の肝炎を発症します。多くの患者さん(90%)では慢性肝炎期がある程度続いている間に、HBe抗原が陰性化しHBe抗体が陽性になって、ウイルスの増殖活性が低下してASTやALTは正常化し炎症が鎮静化します。これをセロコンバージョンと言います。うまくセロコンバージョンが起これば、肝臓の線維化進行もほぼ停止し、この状態を非活動性キャリアと言います。ここまで来るとまずは安心、第一段階の目標は達成です。35歳未満の場合は、自然経過でセロコンバージョンが起きることが期待できるため、一般的には35歳までは経過観察が行われますが、Genotype A, B、ALT値31 IU/L以上の症例は(以前は、GOTやGPTは80以下にコントロールしていれば、肝硬変まですすむことは稀と考えられていましたが、最近ではなるべく低くできれば正常値である30以下に抑えるべきとされています)早めに治療した方がいいとされる症例もあります。治療が必要かどうかを決定するには、年齢、HBV DNA量(ウイルス量)、ALT値、肝病変(炎症、線維化)の程度から判断するガイドライン(HBV DNA 4logコピー/mL以下の場合、肝臓に線維化がある確率はわずか0.7%)があります。その結果、セロコンバージョンが起こる可能性が低く、肝硬変へ進行する可能性が高い場合(肝炎の進行度が新犬山分類でF2あるいはA2以上)治療が検討されます。35歳以上の場合は、セロコンバージョンが起こる可能性が低く、肝硬変へ進行する可能性が高い場合、エンテカビルあるいはラミブジン治療を行い、肝機能の正常化、HBV増殖抑制を目指し、肝硬変、肝がんへの進行を阻止します。原則的に若年者 (35歳未満) では、インターフェロンが第一選択になります。(母子感染でGenotype Cかつ高ウイルス量例はIFNに抵抗性があり)中高年 (35歳以上)では、核酸誘導体のエンテカビルが第一選択になります。(Genotype C、ALT値31 IU/L以上の例は、HBs抗原陰性化は極めて困難)IFN(Peg-IFN)と核酸アナログとを使用して、HBe抗原陰性化とHBV DNA量を持続的に低用量に減ったり、陰性化すると肝病変の進展や発癌が抑制され、第二目標は達成です。ただ、ここまで行っても肝癌になるリスクはありますので、HBV DNAが消えたからそれで良しとせずに、HBs抗原が陰性化するところを目指すのが今できる治療の最終目標になっているようです。

では、実際にはB型肝炎の治療は何のためにしているのでしょうか。決してALTを正常化するためにしているわけでもなく、HBVDNAやHBs抗原を陰性化するためにやっているわけではありません。当たり前のことですが、B型肝炎の治療の目的は、肝硬変にならないようにする、肝不全や肝癌ができないようにして、元気で長生きしてもらうためにやっているわけです。そのためには、治療に際してB型肝炎キャリアの自然経過を十分理解した上で、個々の症例がどの時期にあるのかを考えて、症例に適した治療開始時期や治療法を決めることが重要です。実際の臨床現場において、かかりつけ医(非専門医)の立場で、血液検査だけでは、線維化があるかどうかはなかなか判断が難しく、治療方針の選択には、治療薬の特性や年齢、ALT値、HBe抗原の有無、HBV-DNA量、HBVジェノタイプ、HBs抗原量、画像診断(エコー、CT、MRI) 、肝生検などいろいろな要素がからんでおり、肝臓専門医(肝生検のできる施設=姫路赤十字病院)との連携が不可欠となっています。(ここから先は、細かすぎて私の関与できるところではありません)

画像の説明

35歳以上

 

B型肝炎の治療は、2000年に登場した核酸アナログ薬の登場によって大きく変貌しました。僕らが医者になったころは、まだ、C型肝炎も発見されておらず(nonAnonBと呼ばれていました)治療と言えば、強ミノのウルソぐらいしかなく、大学では、免疫を賦活するステロイド離脱療法という研修医にはちょっと危なかっしい治療が行われていました。その後、インターフェロン(ペグインターフェロン)が応用されるようになり、核酸アナログ薬「ラミブジン」「アデホビル」「エンテカビル」「テノフォビル」が登場してきました。

画像の説明

 

B型慢性肝炎の治療は、インターフェロン核酸アナログ製剤の2本柱です。インターフェロンに加え、核酸アナログ製剤の登場により、専門医療機関との連携しHBV-DNA量を減少させ、B型肝炎患者さんにおける肝硬変、肝臓癌の発症を従来よりも抑制できると期待されています。Peg-IFNは48週間投与が基本で、HBe抗原陽性陰性は関係なく、抗ウイルス効果は弱いですが、耐性株の出現はなく免疫賦活作用があり、比較的若い人で、あまり繊維化のすすんでいない(F1〜F2)ウイルス量も少なめの慢性肝炎がよい適応で、1年限定で使用され、ドラックフリーの臨床的治癒(略値)にもっていくことが期待されます。一方、核酸アナログ製剤は強い抗ウイルス効果を発揮し、ほとんどの症例でHBV DNAの陰性化までは達成されます。ラミブジンを長期間投与すると、ラミブジン耐性株が高頻度に出現し、肝炎が再び起きる場合にはエンテカビル、テノフォビルへの変更が検討されます。エンテカビルの抗ウイルス作用は高く(ラミブジンを1とすると、約1,500)エンテカビル耐性株の出現も低いとされています。しかし、お薬を止めると肝炎が再発することが多く、ずっと飲み続けなくてはなりません。核酸アナログは、肝癌の発生率を減少することが報告されていますが、発癌抑制効果が全例で見られるわけではなく、現時点では肝線維化進行例に限られていますので、核酸アナログ製剤投与されて経過良好であっても肝癌のスクリーニングを怠ってはいけません。

 

B型肝炎の治療

 

35歳以上の場合は、セロコンバージョンが起こる可能性が低く、肝硬変へ進行する可能性が高い場合、エンテカビルあるいはラミブジン治療を行い、肝機能の正常化、HBV増殖抑制を目指し、肝硬変、肝がんへの進行を阻止します。しかし、ラミブジンを長期間投与すると、ラミブジン耐性株が高頻度に出現し肝炎が再び起きる場合にはアデホビルの追加、あるいはエンテカビルへの変更が検討されます。エンテカビルの抗ウイルス作用は高く(ラミブジンを1とすると、約1,500)エンテカビル耐性株の出現も低いとされています。

核酸アナログ

ちなみに、バラクルード(エンテカビン)は核酸アナログ製剤を服用すると、B型肝炎ウイルスは減少し、94%の症例でHBV DNAの陰性化します。とてもよく効くお薬です。しかし、HBs抗原はなかなか陰性化できません。10年お薬を飲み続けても10%しか消えません。どうしてこうなるのか?これは、核酸アナログ製剤の作用機序を理解しているとわかります。B型肝炎ウイルス(HBV)は、もともと不完全な2本鎖DNAですが、肝細胞内に侵入し肝細胞の核内で、HBVのDNAポリメラーゼにより安定な形の完全閉鎖二本鎖DNAであるcovalently closed circular DNA(cccDNA)になってずっと肝臓の中に止まるわけです。cccDNAは、いわゆる鋳型としてmRNAが作られ、これを介して逆転写でDane粒子、HBs抗原、HBe抗原、中空粒子、小型球形粒子、管状粒子などいろいろなウイルス粒子が再構築されるわけです。血中のDane粒子は、核酸(HBV-DNA)を含む感染性のある完全粒子で、(外殻を形成する蛋白であるHBs抗原は、核酸を含まない小型球形粒子と管状粒子表面に存在する)核酸アナログは、複製に使われる材料とよく似た物質で、RNAからDNAがつくられる過程で本来の材料と入れ替わり、複製をストップします。(下図の矢印のところ)Dane粒子(HBV-DNA)の産生過程においてはHBVのDNA polymerase(逆転写酵素)が必要であるため,エンテカビルなどのDNA polymerase活性を阻害する核酸アナログ製剤の投与により,ウイルスの増殖が抑制され,血中HBV DNAは速やかに低下するわけです。一方、cccDNAからのmRNAを介したHBs抗原,HBe抗原,中空粒子の産生は逆転写酵素を必要としないため、核酸アナログ製剤を投与してもHBs抗原は消えにくいわけです。

HBV複製

B型肝炎

核酸アナログを使って、HBV-DNA量が少なくなっても癌ができる患者さんがいます。HBV-DNA量を揃えて見てみるとHBs抗原量が増えれば増えるほど肝癌の発生率は増加していることがあわかります。だからHBV-DNA量が減っているだけではダメ、HBs抗原量が消えること、もしくは100以下を目指してB型慢性肝炎の治療を考える必要がありそうです、

HBs抗原量

では、HBs抗原を陰性化するために、どのような治療が考えられているのでしょうか?どの薬剤をどう使えばよりよい治療に結びつくのか試行錯誤が続いています。身体の免疫反応がないとHBs抗原は消えないわけですが、インターフェロン自体が免疫を活性化する作用があるので、HBs抗原を減らしやすい治療法と言えます。インターフェロン治療が有効な症例は20%、多く見積もっても40%の症例でHBs抗原が消えるんですね。(1年で、核酸アナログは10年で10%)しかし、前もってインターフェロン治療が効くかどうかはわかりません。一方で、治療中にHBs抗原が減ってくる症例は、最終的にHBs抗原が陰性化しやすいとの報告もあります。インターフェロンは原則、若年とされていますが、効果は年齢は関係ないという報告も多いようです。核酸アナログをずっと飲んでいると10年で10%の患者さんでHBs抗原は陰性化します。最初にペグインターフェロンで治療歴がある患者さん、治療する前にGOT、GPTが上昇(200以上)していた患者さんなどでシューブの下がり始めに投与を開始するとHBs抗原は陰性化しやすいようなので、治療のタイミングも重要です。

現在、核酸アナログで治療をしている患者さんはたくさんいます。どうしても核酸アナログをどうしても中止したいという患者さんもおられます。治療中止基準(厚生労働省研究班)に関しては、(1)核酸アナログ薬投与開始後2年以上経過していること(2)血中HBV DNA(リアルタイムPCR法)が検出感度以下(3)血中HBe抗原が陰性を満たした上でHBs抗原量なども考慮して、肝炎の再燃および重症化が高頻度に起きうることを念頭に置いて患者に十分説明した上で慎重に行うことが望ましいとされています。また,核酸アナログ製剤を安全に中止する方法のひとつとして,核酸アナログ製剤中止後にペグインターフェロン単独療法に切り替えるsequential療法あるいはアドオン治療(ペグインターフェロンの上乗せ)が臨床的に試みられている。ちなみに、HBs抗原量が1000以下の患者さんにペグインターフェロン単独療法に切り替えるsequential療法を行うとHBs抗原陰性化を期待できるし、HBs抗原量が1000以上の患者さんでも陰性化までは期待できなくても、長い一生の治療経過の中で、核酸アナログ10年分ぐらいのHBs抗原量減少効果は得られるかも知れません。

 

 

劇症肝炎(急性肝不全)

昭和62年、三重大医学部付属病院で、同病院の小児科医師2人と看護師1人がB型肝炎に感染し、医師2人が劇症肝炎で死亡する感染事故が起きました。3人がほぼ同時期にB型肝炎に感染し、劇症肝炎を発症したのです。劇症肝炎とは肝細胞が急激かつ大量に壊れてしまう病気で、死亡率は極めて高く、救命率は20%とされています。劇症肝炎の約40%はB型肝炎ウイルスが原因ですが、B型急性肝炎から劇症肝炎へ移行するのは1%以下とされ非常にまれとされています。日本での劇症肝炎患者は年間1000人程度なのに、同じ病棟で働く3人が同時期に劇症肝炎を発病したことは、何らかの共通した感染経路があったと考えられましたが、3人ともも針事故等の感染の心当たりはないと話しています。厚労省は、医療従事者の業務上疾病による労災認定を再調査し、約2年間で73人の医療関係者がB型肝炎を発病し、8人が死亡していたことを明らかにしました。73人の職種の内訳は、医師12人、看護師47人、臨床検査技師10人であった。そのほとんどは、患者の採血時に自分の指を刺して感染したものでした。厚生省は各医療機関に医師や看護師らのワクチン接種を指示していましたが、B型肝炎ワクチンは約2万円(自己負担)だったため普及していなかったことが原因です。医療従事者にとって、劇症肝炎はいつ自分の身に降り掛かってきても不思議ではありません。厚労省はこの事故で、国立病院の医療従事者約3万人に国費でB型肝炎ワクチン接種を受けさせる方針を決め、民間病院でもB型肝炎ワクチン接種が普及するようになりました。現在では、原則として30歳以下の医療従事者全員が肝炎ワクチンを接種しています。

 

ハネムーン肝炎

画像の説明

夫婦間では、肝炎はどれくらい移るのでしょうか?配偶者のどちらかがB型肝炎ウイルスを持っていて、それを知らずに結婚し、新婚旅行から帰って間もなくB型急性肝炎を発症したケースを「ハネムーン肝炎」と呼ばれています。
配偶者の奥新先生(本当はβの2回打ちで有名)の文献では、妻から夫への感染が検討され(92名)1年で70%、2年で90%で、多くの者は結婚後2年未満に感染していました。一方、結婚後B型急性肝炎を発症したものは10%で、その多くは半年以内でした。劇症肝炎は見られませんでしたが、一般的には、1000例に2例(0.2%)発症すると言われています。この時の検討で妻から夫への感染というところがミソで、ロマンチストで格好つけの男性は、妻がキャリアであることに寛大で、もし劇症感染を起こしても本望というところがあるようですが、女性は現実的で夫が肝炎とわかると洗濯物を別にして(なんとなく気持ち悪い)お風呂に入る順番も逆転していることが多いと聞いています。大和撫子も死語ですね。

夫婦間



de novo肝炎(B型肝炎の逆襲)

HBVは、肝細胞の表面(細胞膜)に付着し、外側のカプセルを脱いで、DNA(遺伝子)だけを細胞の中に送り込みます。ウイルスDNAは自己複製を開始し、感染が成立します。HBVに感染後、まず初期反応として、急性肝炎を発症するかキャリアになるかどちらかの経過となりますが、HBVが感染した肝細胞は、感染の目印を細胞表面に表示します。この目印細胞を免疫システム(リンパ球)が攻撃して肝炎がおきます。免疫システムからの排除攻撃・肝炎が発生すると、ウイルスDNAは、cccDNA(covalently closed circular DNA)に形態を変化させて、潜伏状態になります。cccDNAに変化すると感染の目印が消え、リンパ球の攻撃・肝炎が終息します。ただし、リンパ球を主体として免疫システムの炎症が終息するだけで、肝細胞・核内に侵入したウイルスDNAは排除されることはありません。肝炎症状が鎮静化し、キャリアの慢性化や急性肝炎が治癒しても、肝細胞に潜むHBV-cccDNAは、一生共棲することになります。つまり、肝炎の炎症反応が終息して、HBe抗体が産生され(セロコンバージョン)血液中のHBV-DNA量が検出されなくなっても・・・一度、B型肝炎が体の中を通ったら、一過性の急性肝炎で治癒した場合でも、cccDNAが産生されて肝細胞の中に残っているわけです。そのため、1回感染すると一生消えないウイルスという事になります。

画像の説明

このHBV-cccDNAは、非常に行儀の悪い遺伝子です。ゴキブリの卵のように、肝細胞の核の中で一見おとなしく潜んでいますが、実は暗躍の機会をうかがっております。ホスト(患者)の免疫システムに支障が生じた場合・・・たとえば、移植やリウマチ性疾患で免疫抑制剤を使用したり、抗がん剤を服用したり、特定のウイルス感染を合併した場合・・・cccDNAが病原性を持つウイルス遺伝子へと変異し、ウイルスDNAの複製を再開するのです。(de novoとは、ラテン語で「再び、始まる」という意味)