食事療法

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患者さんには「メタボですね。ちょっと体重を減らしましょう」「あと3キロ減ったら、血圧も正常になりますよ」などと簡単に言ってしまいがちですが、僕自身、この2年間、計るだけダイエットと言われるものにトライしましたが、結局1kgも減っていません。つまり、失敗に終わりました。本屋さんに行くとあれだけダイエットの本が並んでいます。長者番付でも、怪しげ?な民間療法の役員が上位ランクされるぐらいに、人にとって食欲との闘いは困難であることを承知の上で解説します。

 

 

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食事療法と言えば、糖尿病を連想する人が多いと思いますが、特別な食事があるわけではありません。食べたらダメというものもありません。反対に、糖尿病にとくによい食品もありません。健康?と思っていると人もいつまでも若いわけではありません。暴飲暴食は身体に悪いということは誰でもわかります。健康を維持するためには、まずは食事が基本です。つまり、糖尿病の食事というのは どんな人にとっても、理想の「健康食」なのです

 
 

 

何カロリー? 何を食べる?

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食事療法の難しさは、目の前の食品のもつ栄養素やエネルギー量がひとつひとつ違っていることです。なにをどれくらい食べたらいいのか、質問しようにも、具体的になにを聞いたらいいのか、質問がわからないって感じですね。

 
 

 

では、具体的に行きましょう

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農家の主婦の花子さん。60歳。
身長145cm 体重52kgです。

 
 




さて、花子さんにとって、1日に摂取する適切なエネルギー量はいくらでしょうか?

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1日に必要なエネルギー量は、仕事のしんどさと体格によって決まります。つまり、きつい仕事をするためには沢山のエネルギーが必要だし、体格が大きければ、消費するエネルギーも大きいのです。

労働の強さの目安は、職業で決めることが一般的です。

 

 

労働の程度

 




花子さんは朝早くから晩遅くまで忙しく仕事をしています。
働き者なので、1kgあたり35Kcalで計算することにします。

次に、花子さんの理想の体重はいくらでしょうか?

BMI Body Mass Index(体格指数)という指標を使います。
標準体重=身長(m)x 身長(m)x22
    =1.45x1.45x22=46kg

花子さんにとって、健康で長生きできる「理想的な体重」は「46kg」ということになります。

 

 

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BMI Body Mass Index(体格指数)

従来の標準体重の計算式は、ブローカー変法が一般的でした。
肥満度=体重(kg)/(身長(cm)ー100)/0.9 しかし、この計算式では身長の低い人ほど厳しく判定されたり、そもそも「標準体重」というものが特に医学的根拠をもたないという問題がありました。
BMIは=体重(kg)/(身長(m)x 身長(m))とは統計学的に求められた値で22の時が、一番疾病の罹患率が低く、理想体重とされています。つまりBMIの小さい痩せた人は、肺炎や結核などの感染症の発病率が高く、BMIの大きい太った人は、糖尿病や心臓病などの発病率が高いのです。BMIは有疾患率がもっとも低い点を「理想体重」と設定しているのがミソで、国際的にも広く普及しています。


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よって、花子さんの1日に必要なエネルギー量は、

 46kgx35Kcal/kg=1610Kcal となります。

 




炭水化物(糖質)タンパク質、脂質

食品にはカロリーと栄養素があります。その中で特に重要なものを五大栄養素といいます。エネルギーのもとになる炭水化物(糖質)と脂質、体をつくるもとになるタンパク質と脂質、体の調子を整える野菜や果物など(ビタミンやミネラル)の大枠は覚える必要があります。

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バランスよく摂る

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炭水化物(糖質)55〜60%、タンパク質15〜20%、脂質20〜25%

ちなみに、アルコールは7Kcal/gになり、エネルギーだけで栄養素はほとんど含まれておりません。

 




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つまり、食事療法のポイントは適正なエネルギー量と各栄養素(糖質、蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラル)をバランスよく摂取することです。

 
 

 

・・・とここまでは、比較的簡単です。

 

 

ここからが、食事療法本丸です。

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適正なエネルギー量をバランスよく食べるということをいかに実現するか。 食事療法の方法論は、たくさんあります。ここでは「糖尿病食事療法のための食品交換表」を使いながら、 食事療法の実際を説明します。ちょっと真面目に取り組んでみようを思っておられる方は是非、この本を書店でお買い求め下さい。900円です。

 




3つの約束事があります(分類、単位、交換

一つ目は、食品を6つの食品グループに分けることです。食品をバランスよく摂るためには、それぞれの食品が主に含んでいる栄養素でグループをつくることが必要だと考えました。表1表2は炭水化物(糖質)です。表3表4はタンパク質です。表5が脂質、表6は野菜とキノコ、海藻などに分類します。大まかなところは、大体分かると思いますが、ちょっと難しい食品もあります。たとえば、ジャガイモやカボチャ、とうもろこしは表1のごはんやパンと同じ仲間になります。

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食べる量を量るものさし1単位 = 80kcal

二つ目は、食品を80Kcalづつに小分けしたことです。たとえば、食パン(6枚切り)は半切で「30g = 1単位 = 80kcal」ご飯は茶碗に半分「50g = 1単位 = 80kcal」というような感じです。
「80kcal」 を 「1単位」と表すことで、毎日の献立を作る時のカロリー計算を簡単にすることが出来ます。例えば、1日の摂取エネルギーが 1600kcal の人の場合は、(80で割ると )20単位ということになります。つまり、1日に食べる献立を考えるのに、食品を80Kcalづつに小分けした固まりを20個選んでくると1600Kcalになるというわけです。

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交換できるもの、できないもの

三つ目の約束は、食品の交換は各グループ毎に行い、他のグループとの交換はできないというルールです。このルールを守ると、各栄養素のバランスが崩れなくなるのです。
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では、実際に食品交換表を使ってみましょう。

(1)1日に必要なエネルギー量を単位数に変える

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1単位 = 80kcalなので、1600Kcalは、80で割ると「20単位」ということになります。

 




(2)どの表から何単位とるか

「1日の単位」の振り分けを行います。炭水化物(糖質)55〜60%、タンパク質15〜20%、脂質20〜25%ぐらいに振り分けると、 表1(穀物、いもなど)に11単位、表2(くだもの)に1単位、表3(魚介、肉、卵、大豆製品)に4単位、表4(牛乳)に1.5単位、表5(油脂)に1単位、表6(野菜)に1単位、調味料に0.5単位に配分すると、栄養バランスのよい食事になります。

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(3)朝食、昼食、夕食、間食に配分します。

だいたい均等に分けるようにします。くだものや牛乳を間食にまわして、なるべく食べる回数を増やして、1回の食事量を減らすようにしましょう。

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献立例です。

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表1 ごはん150g(3単位)
表2 オレンジ100g
   (0.5単位)
表3 納豆40g(1単位)を
   オクラ15gを醤油で
表5 金平ごぼうに
   植物油3g(0.3単位)
表6 ごぼう30g 
   にんじん5g
   こんにゃく20g
調味料 金平ごぼうに
   砂糖2g(0.1単位)
   
   味噌汁に味噌12g
   (0.3単位)

 

 

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表1 ごはん150g(3単位)
   かぼちゃ90g(1単位)
表3 豚もも肉60g(1単位)
   を生姜焼きで
表6 レタス20g
   ブロッコリー30g
   ミニトマト20g
表5 生姜焼きをつくるのに
   植物油2g(0.2単位)
   
   ごま3g(0.2単位) 
   調味料 
   生姜焼きをつくるのに
   みりん1g(0.1単位)
表2 りんご75g(0.5単位)

 

 

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表1 ごはん150g(3単位)
   やまのいも70g(1単位)
表3 まぐろ60g(1単位)
   かれい40g(0.5単位)
   生揚げ30g(0.5単位) 
   を炊き合わせにします
表6 きゅうり20g しその葉
   生わかめ20g 
   穂じそ1本
   かぶ40g にんじん10g
   しいたけ20g なす50g
   えんどう5g
   エンギリ20g
表5 なすとエンギリの炒め物
   植物油3g(0.3単位) 
調味料 みりん3g(0.1単位)

 

 

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牛乳180ml(1.5単位)

 




(4)食品を交換して献立を変えてみましょう

食品交換表には、500種類の食品が網羅されています。朝食をパンにしたり、納豆をロースハムに交換してみましょう。



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◎量るくせをつけましょう

最初をいいかげんにしてしまうとせっかくの食事療法が台無しになってしまいます。目安量は厳禁です。1単位のグラム数を実際に量って料理をするのが原則です。何回も量っていると目安量がわかるようになり、いちいち量らなくても料理ができるようになります。しかし、数ヶ月に1回ぐらいは、目安量が間違っていないか確認することが大切です。

  秤      500g〜1kg 
  計量カップ  200または250ml 
  計量スプーン(大さじ15ml 小さじ5ml)

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油脂のグループには、豚バラ肉やベーコン、ごまやピーナッツなども含まれます。油脂は1gが9Kcalとエネルギー量が高く、計量スプーンで量れるものはできるだけ、量る習慣をつけましょう。

 

 

アルコール飲料について

糖尿病食事療法では、HbA1cが8を超えるようなコントロールができていない状態では、原則禁酒です。アルコールはエネルギー(1gにつき7Kcal )にはなりますが、栄養素ではありません。ですから原則的に他の食品と交換できません。よって、アルコールは常に+αとなるのです。糖尿病のコントロールが出来ている人は、飲んだらダメと言われるとよけいに飲みたくなるのが人情で、アルコールの量は2単位までで抑える事が大事です。

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具体的には・・・ビールは缶ビール1本(350ml)ワインはグラスに3杯、日本酒を1合までです。もっと飲みたいなぁと思われるかもしませんが、ここで我慢できるかどうかが肝心。お酒は飲みすぎると「もう止めよう」と思う気持ちさえ無くしてしまいます。自分で量を決めて、それを超えないでコントロールできることが条件です。

お酒を飲んでもOKの条件(原則はダメ)
食事療法だけで、血糖のコントロールが良好の方
糖尿病の合併症がない
◎標準体重である
◎お酒を制限して飲める
◎中性脂肪が高くない

実際の臨床現場では、こんな簡単にはいきませんけどね。

 

 

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アルコールは飲むと太るの痩せるの?

結論から言うと、太る人もいるしやせる人もいます。高血糖になる場合もあるし、低血糖を起こす時もありわけです。口から入ったアルコールは胃から20%、小腸から80%が吸収され、その大部分が肝臓で処理されます。アルコールを飲むと、酔って気持ちがいい状態になりますが、アルコール(エタノール)が脳に影響を与えているからです。肝臓内では、まず、アルコール脱水素酵素(ADH)やミクロゾームエタノール酸化系(MEOS)により分解されアセトアルデヒドになり、さらに、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)により、酢酸へと分解されます。この酢酸は血液により全身へめぐり、水と二酸化炭素に分解され、汗や尿、呼気中に含まれて外へ排出されます。

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所謂「お酒」には、ほとんど栄養素はなく、成分はアルコールと水です。アルコールには、7Kcal/gのエネルギーがありますが、多くは熱エネルギーに変換され(体がポカポカして、顔が赤くなる)最後は、水と二酸化炭素に分解され蓄積されにくいので、エンプティカロリーなどと称されることもあります。しかし、やはり飲みすぎれば太ることもあります。日本人はアセトアルデヒドを酢酸に分解する酵素の活性が弱い方が多く、肝臓で処理しきれなくなったアセトアルデヒドが血中にたまり、頭が痛くなったり、気持ち悪くなったり、2日酔いになったりするわけです。また、アルコールにより脂肪酸の酸化やTCA回路の活性が抑制され、処理しきれなくなった酢酸はクエン酸から脂肪酸へ合成され、脂肪細胞に蓄積され体脂肪が減りにくくなります。(この辺りは、学生時代以来の生化学の知識で忘れてしまいました)

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さらに、アルコールには食欲を増進する働きもあるため、アルコールを摂取する際の肴(おつまみ)が問題で、エネルギ-が高い油を使った料理やスナック菓子であれば当然太る原因となります。細かいことを言えば、ビール、日本酒、ワインなどの醸造酒にはアルコール以外に糖質、たんぱく質が含まれていますが、焼酎、ウイスキー、ブランディなどの蒸留酒にはアルコール以外にエネルギーとなるものが含まれておらず、同じ量のアルコールでは醸造酒の方が蒸留酒に比べエネルギー量が多くなるので太りやすくなるといえます。

反対に、やせる場合はどうでしょう。当然ながら、ごはんを食べないでアルコールばかり飲んでいると栄養失調になってしまいますよね。アルコールは身体に必要な栄養素を提供してくれません。また、アルコールの代謝が優先され、ビタミンやミネラル、補酵素など様々な不足により、糖新生も阻害され、低血糖も起こります。つまり、糖尿病については血糖の乱高下を誘発し、危険極まりない状態をを起こします。アルコールを飲む時は、つまみにタンパク質や糖質を摂る(適量)ことが勧められるのは、グルタミンやアラニンがアルコールの代謝を改善したり、低血糖を予防してくれるからです。アルコールを分解する仕事をするのは肝臓です。アルコールを取りすぎれば肝臓に負担がかかり、あまり負担をかけ過ぎると肝臓が弱り肝炎や肝硬変などの障害を引き起こし、悪循環を招く訳です。




清涼飲料、菓子類について

これらの食品はさとうを多く含みます。原則としては、出来るだけ飲食しないように心がけるべきです。お菓子を食べていい日を週に1回だけ作りましょう。

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角砂糖 1個 4g=16Kcal

人工甘味料も使用したものも上手に利用しましょう。
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「甘いもの」「脂っこいもの」「アルコール」には注意

ショートケーキ1個で320Kcal ビール中ジョッキ1杯で240Kcal、せんべい3枚240Kcal あんぱん1個240Kcal ポテトチップス1袋 400Kcal カップ麺1個400Kcalです。牛乳1杯120Kcal

かなり運動したつもりでも消費カロリーは以外と少ない

食べる順番が大事

先に、野菜や海藻類、汁ものを摂ってからごはんを後から食べる方が、血糖値の上がりを押さえます。食後血糖が200を越える人も先に野菜を食べれば、140ぐらいまでしか上がりません。

和食の会席料理は、野菜、海藻、汁もの、お肉やお魚、最後にごはんがでてきます。このコースは理にかなっているわけです。早食いはダメ、20分歩こう、20回噛もう、20分かけて食べよう


どうしても、我慢できないときは・・・

海藻、きのこ、こんにゃくは、カロリーはゼロです。ミネラルや食物繊維を豊富に含んでいます。空腹感をみたすのに上手に利用しましょう。

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裏技 その場ダッシュ!

ダッシュ そのば

小腹が空いた時についつい食べちゃう・・・。それを止めるためのとっておきの裏技があったんです。それは、「その場ダッシュ20回」(約10秒間)立って、その場で思い切り腕を振って腿を上げてダッシュ(足踏みする要領で素早く動かす)するだけなのです。たったこれだけで空腹感を一時的に消すことが出来るんです。なぜ、空腹感が消えるのか?空腹感というのは、低血糖が原因のひとつと考えられています。空腹感を感じている時に、興奮したり運動したりして、ストレスがかかると、アドレナリンが分泌され、肝臓にためていた糖を血液に流し、血糖値を上げます。すると脳は、ごはんを食べたのとと勘違いするのです。(ためしてガッテンより)