頭部打撲

まずは、高エネルギーの頭部外傷(打撲の域を超えていそう)である交通事故や転落事故は、原則、脳神経外科のある病院に紹介してします。(当院を受診することはほとんどありません)また、頭部打撲後に、意識障害がある(元気がない、ぼんやりしている、一度起きてもすぐに眠り込んでしまう。呼びかけても目をさまさない。会話がおかしい、見当はずれのことを言う)吐き気や嘔吐。気分が悪く食事がとれない。けいれん、ひきつけが起こる。たんこぶができた局所以外の激しい頭痛。片側の手足のしびれ、動きが明らかに悪い、半身に力が入らない、物が二つに見える(複視)などが認められれば(裂傷を伴い、出血量が多い場合も外科的処置が必要なら)即紹介です。

軽症の場合は、自宅での経過観察でOKですが、頭を打った日は、できるだけ安静にしてお風呂や飲酒は控えましょう。一人暮らしの場合は、身内の元に身を寄せることが難しければ、身内や知り合いに3時間おきに電話をかけてもらい、安否確認をしてもらうほうが無難です。少し時間が経ってから頭痛や、嘔吐、意識障害などがおこる場合もあります。急性硬膜外血腫は、受傷直後は異常がなくても、2〜3日後から1週間後に内出血によって症状が出てくる事があります。また、慢性硬膜下血腫は、数ヶ月後に何となく様子がおかしい、ぼんやりしている時間が多い。眠りがちになった、活動性が低下した。これらの症状が見受けられると、その後は頭痛、吐き気などの症状が現れ始めます。その後、運動麻痺、言語障害、尿便失禁を来たし、記憶障害が出てくることも少なくないので、頭を打った後は、しばらくの間、家族が体調の変化がないかを注意深く観察してあげて下さい。

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難しいのは、子どもの頭部打撲後の判断です。小児は、頭でっかちで転びやすく、頭部打撲は、日常茶飯事です。全部、紹介するわけにもいきません。悩む症例も多いのですが、とりあえず、当院に来院された時点で、落ち着いて対応してくれそうな家族(重症なら、救急車を呼んでいます)として、こちらも過剰な反応は控え、良識的な対応を心がけています。ただ、軽症と思われても、不安が強い家族で頭部CT検査を希望される場合も病院に紹介しています。

外来診察で普段と変わった様子がなく、食欲や機嫌がふつうで、頭を打ってすぐ泣いて(意識障害はなかったか)直後だけの反射的な嘔吐は心配ありません。こぶを冷やして経過をみてもいいと思います。ただ、乳幼児では症状がわかりにくい場合もありますが、機嫌がよい。元気に遊んでいる。ミルクの飲みや吸い付きが普段通りなどが確認します。経過観察は、受傷後最初の1〜3時間以内は特に注意する必要があり、6時間、12時間さらに24時間と時間が経っても元気なら、リスクは減っていきます。

子供さんが頭部を打撲した時はその局所の皮膚が赤くぽつぽつと点状に変色していることがあります。これは皮下組織の毛細血管から出血した痕跡なので特に心配はありません。皮下出血が多いとその部分が腫れて「硬いたんこぶ」になります。これは皮下組織内に血液が固まっている状態ですので皮下血腫と呼ばれます。一方、たんこぶが硬くならず、やわらかい風船や氷枕を押したときのようなブヨブヨしたたんこぶができる時があり、帽状腱膜下血腫と呼んでいます。帽状腱膜とは頭蓋骨の上を帽子のように覆っている膜で、この血腫は帽状腱膜と頭蓋骨の間の隙間に血液が貯留している状態です。頭の形が変形するくらいに巨大になることもあり、吸収されるのに数週間かかることもありますが、心配はありません。

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