「間質性肺炎」?かかりつけ医のレベルでは、臨床像、病理も入り乱れて、なかなか難しい概念ですね。胸部CTを依頼して、コメント欄に間質性肺炎の疑いがありますと書いてあるととほうにくれるわけです。なにせ原因がわからないからです。「呼吸」とは、吸った空気が、肺の奥にある肺胞と呼ばれる部屋で、肺胞の薄い壁の中(間質)を流れる毛細血管内の赤血球に酸素を与えると同時に二酸化炭素を取り出すガス交換が行われているわけですが、間質性肺炎は、さまざまな原因からこの薄い肺胞壁に炎症や損傷がおこり、壁が厚く硬くなり(線維化)ガス交換がうまくできなくなる病気です。

図1 正常肺と間質性肺炎の肺

間質性肺炎が存在していても病初期には多くは無症状ですが、少し進んでくると痰を伴わない空咳がでたり、安静時には感じない呼吸困難感が、坂道や階段、平地歩行中や入浴・排便などの日常生活の動作の中で感じるようになります。また、風邪様症状の後、急激に呼吸困難が出現し病院に救急受診することもあり「急性増悪」と呼ばれています。

呼吸困難で来院された患者さんの聴診所見がまずは大事です。背中の下部で捻髪音(パリパリ)というベルクロラ音という乾いた音が聞こえます。SpO2を測定しても安静時では正常のことも多いので、運動時のSpO2を測定するために、SAS(睡眠時無呼吸)の時に行う24時間のサチュレーションモニターを行います。

間質性肺炎を治療するためには、原因を見つけて除去しなければならない訳ですが、その原因を見つける事が容易ではありません。間質性肺炎の原因には、関節リウマチや多発性皮膚筋炎などの膠原病(自己免疫疾患)職業上や生活上での粉塵(ほこり)やカビ・ペットの毛・羽毛などの慢性的な吸入(じん肺や慢性過敏性肺炎)病院で処方される薬剤・漢方薬・サプリメントなどの健康食品(薬剤性肺炎)特殊な感染症など様々あることが知られています。ただ膠原病likeでも診断基準は満たさない、救急抗原が同定できない、お薬も沢山飲んでてどれが原因かわからないということも多いわけです。また、原因を特定できない間質性肺炎を「特発性間質性肺炎」といいます。

間質性肺炎

間質性肺炎の診断は、診断フローに準拠して鑑別診断を行いますが、常に特発性肺線維症(IPF)を意識しながら行います。既往歴・職業歴・家族歴・喫煙歴などを含む詳細な問診、肺機能検査、血液検査からなる臨床情報、高分解能コンピューター断層画像(HRCT)やいままでの検診時の胸部X線画像の変化からなる画像情報、そして外科的な肺生検からえられる病理組織情報から総合的に行います。検査としては、血清マーカーとしてはKL-6(SP-A、SP-D)が重要で、関節痛や皮膚症状がないかを調べて怪しければ、リウマチ因子や抗核抗体を出しておきます。

IPF

特発性間質性肺炎の臨床/病理学分類(国際分類2013)は9つの亜系に分類されています。(憶えるつもりもありません)そのなかで特発性肺線維症(IPF)はもっとも多くて、ステロイドが無効で予後不良な疾患群です。5年生存率は30%で、急性増悪、慢性呼吸不全、肺がんの合併で亡くなっています。

分類

肺胞の線維化が進んで肺が硬く縮むと、蜂巣肺といわれ、胸部CTで確認できます。特発性肺線維症(IPF)には、蜂巣肺がほぼ必須ですが、蜂巣肺があれば、すべてが特発性肺線維症(IPF)かというとそうではありません。膠原病肺や慢性型過敏性肺炎では、蜂巣肺所見を伴うことがしばしば認められます。

図2 肺組織の比較

特発性間質性肺炎のうちもっとも治療が難しい特発性肺線維症は、50才以上の男性に多く、患者さんのほとんどが喫煙者です。やはり喫煙者に多い肺気腫と肺線維症が合併した「気腫合併肺線維症」という病態が、喫煙歴があって息切れを自覚する患者さんに多く認められます。特発性間質性肺炎は家族発生もあり、複数の原因遺伝子群と環境因子が影響している可能性も考えられています。

治療

間質性肺炎の治療の考え方です。まずは、間質に炎症性細胞が浸潤し、TNF-αによって炎症が拡大します。炎症が進行するとTGF-βによって線維化が促進し、蜂巣肺になっていきます。炎症を抑える薬と線維化を抑える薬は別物です。炎症と線維化という病態が一人の患者さんの中に混在しているので、どちらが主体の病態かによって治療法が異なってくる訳です。

間質性肺炎

特発性肺線維症(IPF)以外の場合には、通常確定診断がついた時点から治療を開始します。多くの場合ステロイドを中心とした抗炎症・免疫抑制療法がよく効いて、肺の陰影を含めて呼吸病態が改善するからです。しかし、特発性肺線維症(IPF)はほとんど線維化が主体で炎症の要素は少ないため、ステロイドや免疫抑制剤は使わないで新しい抗線維化療法で治療することが勧められています。胸部画像や肺機能、6分間の歩行試験などの検査結果を総合的に判断し、病気の進行を認めるようであれば、病勢に応じて段階的な治療を行います。咳を抑える薬剤や痰を出しやすくする薬剤による対症療法も日常生活を改善することがありますが、間質性肺炎本体の治療ではありません。最近では抗線維化剤(ピルフェニドン)や抗酸化作用をもつ薬剤(N-アセチルシステイン)の吸入療法など、我国で開発されてきた新たな治療法があります。

病気が進行し呼吸で酸素を十分取り組めない場合には、在宅酸素療法といって日常生活で酸素を吸入する治療法が行われ、必要であれば呼吸リハビリテーションも行われます。さらに肺病変の影響で心臓の負担が増加している場合(肺高血圧症)にはその治療もあわせて行います。また、若いながら呼吸機能の改善が期待できない場合には、一定の厳しい基準を満たすことを確認されたうえで、肺移植の適応も検討されます。

発性肺線維症の経過は個々の患者さんにより様々であるといわれています。一般的には慢性経過で肺の線維化が進行する疾患で、平均生存期間は、欧米の報告では診断確定から28〜52ヶ月、わが国の報告では初診時から61〜69ヶ月と報告されていますが、患者さんごとにその差は大きく、経過の予測は困難です。また、風邪の様な症状のあと数日内に急激に呼吸困難となる急性増悪が経過を悪化させることがあります。喫煙歴のある間質性肺炎の患者さん、特に肺気腫を合併した肺線維症の患者さんには肺がんができやすいことが知られていますので、間質性肺炎の病状が安定していても定期的な検査を受けることをお勧めします。