特発性器質性肺炎

正常な肺には、気管支が末梢に20 回以上分かれた先に吸い込んだ空気を入れるぶどうの房状の 「肺胞」と呼ばれる小さな袋が多数あります。器質化肺炎とは、肺胞から肺胞近くの細気管支にかけての炎症および気腔内のポリープ状の器質化組織が特徴的な病気で、一部で肺胞と肺胞の間への炎症細胞(おもにリンパ球、単球)が浸潤します。 原因として、薬剤、膠原病、血管炎、放射線肺臓炎、 悪性病変(リンパ腫など)感染症(結核、非結核性抗酸菌症、マイコプラズマ感染など)など様々な疾患と関連していますが、原因がわからないものは特発性器質化肺炎と呼びます。50歳代から60 歳代に多く、性別の差や喫煙との関連はみられません。発症のメカニズムは明らかにされていませんが、何らかの吸入物質によりフィブリンという線維性のタンパク質が出現し、それが吸収されない場合線維化が進んでし まい、器質化肺炎となると言われています。症状は、比較的急性(数日から数週間)の経過で、せきや息切れがみられます。発熱やだるさなど風邪様症状が出現することもあります。ただし、検診で無症状のうちに発見されることもあります。診断は、胸部CT検査の所見が重要で、肺の中に多発する濃い影と淡い影が見られ、しばしば細菌性肺炎の影と類似します。また、移動性の影(一部の影が改善するのに他の部位で新たな影が出現し、一 見影が移動したように見える)が認められることもあります。気管支内視鏡で気管支肺胞洗浄や肺生検を行い、顕微鏡で観察して診断が確定します。治療は、咳や息切れがなどの症状が出現する、影の範囲が拡大するなどの変化がみられれば治療の対象となります。治療はステロイド薬を経口投与していきますが、悪化した場合には、ステロイドパルス 療法(短期間で大量のステロイドを点滴する)をおこなうこともあります。しかし、まれではある が自然に改善することもあることから、無症状で肺の影の広がりが大きくない場合は、無治療で経 過を見ることもあります。予後は、一般的にステロイド薬が良く効き、数週から3 か月以内の経過で80%以上の患者さんが改善しま す。ただしステロイド薬の減量や中止により再発 することがあるので注意が必要です。

細菌性肺炎と診断し抗菌薬加療を開始したにもかか わらず治療効果が乏しい場合,鑑別すべき疾患に器質化肺炎(organizing pneumonia, OP)があリます。細菌性肺炎に続発した経過の早い二次性器質化肺炎(secondaryOP,SOP)の診断に難渋した症例を経験し たので報告する。

OPには,発症原因が不明な特発性器質化肺炎(cryptogenic OP, COP)と感染症や薬剤性・膠原病・ 悪性疾患・放射線照射後などに続発する S O P がある。 感染症を原因とするものは,細菌,特に肺炎球菌によるものが多いが,ウイルス,寄生虫,真菌と,様々な病原体が原因となる。OPの発症は亜急性の経過が多く,診断まで6〜 10 週間かかるとの報告もある。OP は市中肺炎様の症状および画像所見を呈するが, 浸潤影主体の多発病変が時間経過による自然消退・新病変出現を繰り返すことが特徴的な画像所見とされる。B A L F の典型的な所見は,リンパ球分画が20〜40%と増加し,CD4/ CD8T細胞比0.9未満に減少する 。抗菌薬に反応しない肺炎に対しては O P を鑑別診断に含め,積極的に B A L を施 行しなければならない。