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診療所にも救急の患者さんは来ます。救急車からの要請も自院にかかりつけの患者さんなら受けています。幸運な事?に、昔はずいぶん寛容な時代でした。救急車が一晩で何台入る野戦病院で、ピ〜ポ〜ピ〜ポ〜と鳴るたびに、研修医ひとりで冷や汗をかきながら、ずいぶんと鍛えられたものです。

救急は、なんと言っても初期治療が最も重要です。

 

頭痛

絶対に放置してはいけない危険な頭痛の特徴は、

 

(1)突然発症の頭痛 発症した時刻が何時何分、テレビでCMになってトイレに行こうとした時など具体的に言える場合

(2)人生最悪の頭痛 「痛みの程度を0〜10として10が想像できないほど痛いとしてどのくらいですか」と聞きて、8以上を答えた場合

(3)どんどん痛みが悪化 髄膜炎とかクモ膜下出血、脳出血を考える

その他、全くの初めての頭痛(今までの頭痛とは違う)5歳未満、50歳以上の頭痛、手足の麻痺など神経症状を伴う頭痛、発熱や痙攣、意識障害を伴う頭痛、項部硬直を伴う頭痛、外傷歴のある頭痛、担がん患者の頭痛などは注意が必要です。

 

くも膜下出血 (1)(2)(3)の一つでも当てはまれば、すぐに専門医療機関に紹介しましょう。

可逆性脳血管収縮症候群 RCVS:Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome

クモ膜下出血の除外が最も大事なので、バットで殴られたような激しい頭痛となると紹介でいいんですが、頭部CTを撮ったけれど、異常ありませんでしたというお返事、さて、ではこの頭痛は何?いわゆる雷鳴頭痛として発症し、クモ膜下出血との鑑別が難しい疾患です。単純CTでは診断がつかず、MRIやCTアンギオで確定診断しますが、血管が収縮している時に撮らないと診断できないため、初診時に診断がつくのは半数ぐらいになってしまいます。誘因薬剤としてトリプタン製剤(片頭痛)や抗うつ薬があります。

 

一次性穿刺様頭痛

針で突き刺されたような鋭い痛み(程度はさまざま)で、前頭部、側頭部に多いがさまざまで、70%の症例で三叉神経領域以外に生じ、1つの領域からほかに移動し、同側あるいは反対側(両側)の頭部に移動することもある。有病率は2〜35%と稀な疾患ではない。片頭痛や緊張型頭痛と併存することも多い。女性に多く(男性の2倍)平均年齢は20〜50歳。ストレスや体調不良、天候、睡眠不足、疲労などが増悪因子になることが多い。痛みは不規則な頻度で、1日に1回(68%)複数回(4%)数秒以内の穿刺様頭痛が繰り返し起こる。通常は3秒以内(80%)であるが、120秒まで持続することもある。悪心、嘔吐、光、音過敏、アロディニア、めまいなど伴うことがあるが、結膜充血、流涙、鼻汁などの自律神経症状は認めない。治療は、インドメタシンが良く効く。手を温めるのも有効です。予後は良好で多くの症例で自然寛解します。

 

一次性咳嗽性頭痛

咳嗽性頭痛の大半はアルノルド・キアリ奇形I型で、他には脳脊髄液圧低下、動脈解離、中咽頭・喉頭蓋窩の腫瘍が原因のことがあります。一度は画像で精査をして症候性が否定できれば一次性咳嗽性頭痛となります。一次性咳嗽性頭痛は咳やいきみ、息ごらえで胸腔内圧の上昇により誘発される突発的に起こる頭痛で、持続時間は1秒〜2時間となっておりますが,多くは頭痛出現直後にピークに達し,数秒〜数分の間で良くなります。主に40歳以上で見られることが多く,咳が多いとそれに比例して頭痛の強さが強くなります。通常は両側性で後頭部に痛みがあり、60〜70%の方にめまい,悪心,睡眠異常といった随伴症状を認めます。高血圧症、COPDの合併例が多い。治療は、インドメタシンが有効で、予後は良好で自然経過で軽快します。

 

頭部打撲 24時間の経過観察が必要です。

胸痛

胸痛といえば、鑑別診断に挙げなければならない疾患に、急性冠症候群、急性大動脈解離、肺血管塞栓症、緊張性気胸、食道破裂が5Killersと呼ばれています。緊張性気胸や食道破裂は頻度も少なく、前者3つを押さえておけばいいでしょう。肺血管塞栓症は、昔は解剖して初めてわかる稀な疾患でしたが、最近では、どこでも造影CTができるようになって簡単に見つかるようになってきました。頻度的には、急性冠症候群と急性大動脈解離の2つですが、急性冠症候群が、急性大動脈解離より100倍は多いわけです。

急性心筋梗塞 メタボリックシンドロームのMさんが「胸が痛い」

肺塞栓 昔は、診断できないと言われていましたが、今見逃すと・・・

precordial catch syndrome 小児の胸痛の8割を占める。

ボルンホルム病 夏から秋、発熱と胸痛(体動で悪化)

モンドール病 圧痛を伴う洗浄の索状物と胸痛

 

腹痛

僕が、救急外来で最も苦手な主訴は「腹痛」です。問診票に「腹痛」と書いてあったらちょっと嫌ですね。少し構えて、気合を入れ直す感じですかね。なにせ鑑別診断をする疾患が多すぎです。心筋梗塞など腹部以外の疾患も混じってきます。まあ、実際の臨床では、軽い急性の胃腸炎から便秘なんてものも多いわけですが、安易に胃腸炎、便秘って診断しているときは、ゴミ箱診断になっていないか自問自答しなければなりません。胃腸炎は、必ず「嘔気」「嘔吐」「水様性下痢」の三徴が揃わないと診断したらダメですね。ノロウイルスやロタウイルスは、口から入って上部空腸に感染します。胃の動きが止まってゲ〜ゲ〜吐きます。小腸から水分がたくさん出て、おしっこのような水様便が何回も出ます。下痢が伴わない時は、安易に胃腸炎とは診断しないようにしましょう。便秘も浣腸して「少しよくなった」とよしよしと思っていても、帰る間際にやっぱり痛くなった?これって便秘じゃないわけですね。これらの中から急がなくてはならない腹痛を拾い上げる作業がまずは必要です。高齢者や乳幼児、精神疾患の患者さんは、症状が乏しい場合もあります。特に血管系疾患は腹膜炎を伴いません。腹膜炎症状があるだけが重症ではないわけです。

 

急性腹症 最もやっかいな、最も苦手な・・・訴えです。

尿路結石 七転八倒してたらちょっと安心 

前皮神経絞扼症候群(ACNES) 腹直筋外縁付近の腹痛でカーネット徴候陽性 

Fits-Hugh-Curtis症候群 若年女性の深呼吸で増悪する右季肋部痛

 

低血糖 意識がない! 見逃し厳禁、まず否定すること。

糖尿病昏睡(高血糖) ケトアシドーシスと高浸透圧性があります。

失神 恐るるに足らず。原因により、予後が全然違います。

アナフィラキシー 蜂、クスリ、食物アレルギー

高カリウム血症 透析しているKさんが「しんどい」 

不整脈 手を出すのは血行動態の落ち着いてるnarrow QRSまで。

喘息発作 苦しい〜「ヒューヒュー ゼイゼイ」

急性喉頭蓋炎 「喉が痛くて、唾も飲み込めません」

鼻出血 マイナーエマージェンシーの代表です。

小児救急 子どもの救急ガイドライン 〜兵庫県医師会〜