パーキンソン病
パーキンソン病が、助成対象から外れる?
「難病」「特定疾患」などの名前を聞いた事があると思いますが、知ってるか知らないかで、医療費がかなりかわってきてしまいます。法律ってわざとわかりにくくしているとしか思えませんよね。
「難病」とは、昭和47年の難病対策要綱において(1)原因不明、治療方針未確定であり、かつ後遺症を残す恐れが少なくない疾病(2)経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病と定義されています。現在わが国には約400種類の難病があると言われていますが、難治性疾患克服研究事業として調査研究の対象となっているのは130疾患であり、130疾患のうち、診断基準が一応確立し、かつ難治度、重症度が高く、患者数が比較的少ないため、公費負担の方法をとらないと原因の究明、治療法の開発などに困難をきたすおそれのある56疾患について、特定疾患治療研究事業として、医療費の自己負担の軽減対策をしてきました。
しかし、これまでの難病対策では患者数が極度に少なく、助成の対象から取り残され、高額な医療費負担を強いられてきた難病患者も多く、不公平感が高まっていました。厚労省は、昨年10月(平成25年)に平成27年にも新制度を導入し、是正を図る方針を発表。素案では、医療費助成の難病を、現行の56疾患から、約300疾患に拡大。医療費助成の対象となる難病の認定基準を患者数が人口の0.1%程度以下としているため、平成23年度現在、パーキンソン病は約11万6500人おり、その境界線上にあるため、助成対象から外れる可能性もあります。そもそも助成する難病の数が大幅に増えるので、国もいままで放っておいた難病の人を助けるために予算をつけたんだなと思いきや、お金はそのままで対象疾患だけ増えているので、申請書にどれくらい重症を書くところを付け足して、軽症の人は特定疾患の認定をしないようにしています。つまり、いままで特定疾患として医療費を助成されていた人が今回からは認定されず、他の人と同じように2割3割負担しなくてはならなくなったわけです。それはそれで困る人がたくさんでてきますよね。国もお金がないなか、そのお金をなにに振り向けるかの選択を間違わないようにやってもらわなければなりません。
神経内科、精神科、心療内科ってどう違うの?
パーキンソン病は、手が振るえたり、筋肉が固くなったりして、動作が緩慢になり、転倒しやすくなる神経の変性疾患です。
神経の病気というとみんなちょっと引きますよね。気のせい・・・ですか?
「神経内科に紹介します」
「そんなところには行きたくありません。気狂いではありません?」
神経内科、精神科、精神神経科、神経科、心療内科など、よく似た紛らわしい名称が並んでいます。
神経内科は、循環器内科や消化器内科、呼吸器内科と同じで、内科のひとつです。精神的な問題ではなく、脳や脊髄、神経、筋肉に病気があり、体が不自由になる病気を扱います。だからこの場合の「神経」というのはいわゆる「神経が細い」とか「神経質」という意味ではなく、実際に脳から筋肉に信号を伝えたりしている実体のある脳や脊髄、抹消神経、筋肉の病気をみる内科です。病名としては、脳血管障害やパーキンソン病、ニューロパチーなどです。精神科、精神神経科、神経科、これらの科は精神科の仲間で、不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などの心の病気を専門に扱う科のことです。病名としては、うつ病や統合失調症、神経症などです。また、心療内科が主な対象とするのは心身症です。心身症とは、労働環境や家庭環境、災害のトラウマなどによるストレスなどによって、特定の器官に限定されて身体症状が現われる疾患を、心身症と呼んでいます。(例えば、気管支ぜんそくや胃潰瘍、過敏性腸症候群、アトピー性皮膚炎、心臓神経症など)つまり、こころとからだ、そして、その人をとりまく環境等も考慮して、統合的に治療するのが心療内科ということになります。心療内科と精神科の線引きはファジーです。中には精神科と神経内科どちらでも見る病気もあり、痴呆やてんかんなどはその代表的なものです。ごく大まかに言えば、身体の症状がメインならば心療内科、心の症状が主体ならば精神科ということになります。心療内科は心理的な問題がもとで体に異常をきたしたような病気を扱い、もともと内科のトレーニングを受けた先生が多いですが、一部精神科の先生方も心療内科として診療を行っています。
私たちが体を動かそうとすると、脳の「大脳皮質」から全身の筋肉に、運動の指令が伝わります。このとき、私たちの意図どおりに体が動くように、運動の調節を指令しているのが神経伝達物質の「ドパミン」です。ドパミンは、脳の奥の「黒質」にある「ドパミン神経」でつくられています。パーキンソン病になると、このドパミン神経が減少し、ドパミンが十分につくられなくなります。その結果、運動の調節がうまくいかなくなり、体の動きに障害があらわれるのです。
パーキンソン病は、運きが悪くなる病気です。初期は、軽い症状ですが、徐々に長い時間をかけて進行するのでうまく付き合っていくことが大事で、発症から10~15年は独立した日常生活が可能ですが、それ以上では介助が必要となり、15~20年で寝たきりの状態になります。パーキンソン病の患っている方は、10万人におよそ100人といわれています。決して、稀な病気ではありません。神経変性疾患の中では、認知症に次いで2番目に多い疾患です。発症年齢は55~65歳、75~84歳がそれぞれもっとも多く、社会の高齢化とともに患者数も増加傾向にあります。パーキンソン病は、60歳を超えると1%に見られるようになリます。
パーキンソン病の診断
パーキンソン病の典型的な姿勢です。患者さんが、表情も乏しく、とぼとぼとゆっくりとした足取りで診察室に入ってこられるところを見たら、その雰囲気で、当たりをつけられます。
パーキンソン病は、多くは中年40歳以後に発症し(高齢になるほどその割合も増える)手足のふるえ、筋の固さ、動作の遅さ、歩行の拙劣さ、転びやすさなどの運動症状や様々な全身症状・精神症状も合併する進行性の神経変性疾患であり、本疾患と似た症状を来たすものを、原因を問わず総称してパーキンソン症候群と呼んでいます。
パーキンソン病の診断は、これらの症状がそろっている必要はありません。振戦がない患者さんもおられます。これらの症状が、パーキンソン病の薬をのむことでよくなれば、ほぼ間違いありません。(治療的診断)CTスキャンやMRIでは異常がみられません。
(1)手足のふるえ(振戦):最初は左右どちらかから始まり、次第に両側が振るようになります。パーキンソン病の振戦は、安静にしている時にみられるのが大きな特徴です(安静時振戦)これはほかの病気の振戦が手足を動かしているときだけに現れて、休めているときには現れないのと対照的です。
(2)筋の固さ(固縮、強剛):本人の自覚はありませんが、診察のために手や足を曲げたり伸ばしたりすると、鉛のような強い抵抗を感じます。手首の屈伸をしてみると歯車をまわしているようなガクガクガクとした抵抗が感じられます。
(3)動作の遅さ(無動):日常のすべての動作が遅くなります。まばたきも少なくて表情のない、硬い顔つき(仮面様顔貌)になり、小さくて聞き取りにくい声(小声)、書く字が小さくなります。(小字症)歩くときも腕の振りがなくなり、歩幅も小さくなります。服のボタンがかけられない、靴の紐が結べない、コンピューターのマウスのダブルクリックができない、財布から小銭が出せないなど日常生活にも支障が出てきます。
(4)バランスの悪さ、転びやすさ(姿勢反射障害):症状が進むと出てくるやっかいな症状です。ちょっと説明するのが難しいのですが、他の疾患にないパーキンソン病に特有の症状です。人間の体は倒れそうになると姿勢を反射的に直して倒れないようにする反応が備わっています。しかし、パーキンソン病の患者さんでは、この反応が障害されているために、バランスが保てずに転けてしまいます。また、転んだときにとっさに手で体を守ることができず、大けがをすることもあります。前屈みの姿勢で歩幅の小さな歩き方「小刻み歩行」や足が床にへばりついたようになり前に進めない「すくみ足」歩いているとだんだんと小走りになり止まれない「突進現象」などもみられます。以上がパーキンソン病の主な4大運動症状ですが、これらのうち2つ以上認められる場合に、パーキンソニズムがあると判定されます。
すくみ足 突進現象
非運動症状
非運動症状として自律神経障害と精神症状があります。自律神経障害では便秘が最も多く、あぶら顔、多汗、よだれ、起立性低血圧などがみられます。精神的には抑うつ的になる、元気がない、不安になる(20〜40%)ことが知られています。情報処理に時間がかかるようになり、意思決定も困難に、最近のことも思い出せなくなるなど認知機能障害も40%ほどの人に認められます。幻視も認められますが、自己否定もでき、お互いやり過ごす程度のことが多いです。また、体のあちこちの痛い、刺すような、焼けるような、疼くような痛みと表現されることもあります。その他にも不眠、便秘、発汗、頻尿、立ちくらみ、疲れやすいなど、非運動症状がたくさんあります。まさに運動症状はパーキンソン病症状の氷山の一角と言われています。パーキンソン病の症状は多岐に渡り、十人十色と言われています。10人いたら10人とも症状の組み合わせが違います。
動作が遅くなる、手足や体幹がこわばる、手足がふるえるというパーキンソン病の運動症状に似た症 状は、パーキンソン病以外の病気でも現れることがあります。また、パーキンソン病を確実に診断でき る検査法も現在のところありません。そのためパーキンソン病の診断は、簡単ではありません。このように診断が難しいパーキンソン病では、運動症状とともに特徴的な非運動症状をてがかりとし て総合的に診断します。
パーキンソン病を適切に診断するため、国内外でパーキンソン病の診断基準が作られています。診断 基準に共通する点は、まず運動症状の有無を確認し、続いてパーキンソン病の裏付けとなる症状と、 パーキンソン病以外の病気の裏付けとなる症状を照らし合わせて、パーキンソン病かそれ以外の病気で あるかを判断します。例えば、パーキンソン病などの運動の障害がかかわる病気の国際的な学会の診断基準では、動作が遅くなることを必須として、それに加えて手足や体幹のこわばり、手足のふる えの2つの症状のうちの少なくとも1つがあれば「運動症状あり」と判定します。「運動症状あり」と判定した 場合には、パーキンソン病の可能性が高い症状とパーキンソン病が否定できる症状を照らし合わせて診断を進めることとしています。
パーキンソン病の診断は問診と診察を中心に行いますが、その判定は神経内科専門の医師でも難しいことがあります。そこで、診断をより確実なものにするため、複数の検査結果を参考にします。 主な検査には、MRI脳画像検査、脳血流スペクト検査、MIBG心筋シンチグラフィ、ドパミントラン ダットスポーターシンチグラフィ(DATスキャン®)、嗅覚検査があります。
MRI脳画像検査 |
脳内の部位の形の変化を見る検査。パーキンソン病では異常が見られない。脳梗塞や 脳腫瘍などパーキンソン病以外の病気で異常が見られる。 |
ドパミントランスポーター シンチグラフィ(DATスキャン®) |
脳から全身に信号を送る際の仲立ちとなるドパミントランスポーターの状態を見る検査。パーキンソン病やレビー小体型認知症では、ドパミントランスポーターが減る。 |
MIBG心筋シンチグラフィ |
心臓の交感神経の機能を見る検査。パーキンソン病では、心臓の交感神経の機能が低下し ていて、MIBGの取り込みが少なくなる。ただし、取り込みが低下していても心臓の働き に影響はない。 |
脳血流スペクト検査 |
脳の血流量を見る検査。パーキンソン病だけでは初期には血流量は落ちない。パーキ ンソン病以外の病気、認知症を合併すると低下が見られる。 |
嗅覚検査 |
嗅覚の検査。パーキンソン病では、早い時期から嗅覚が落ちてくることがあるため、 早期発見に利用できる。 |
ここ数年で、パーキンソン病の診断がより早期にできるようになりました。パーキンソン病の診断は、手足のつかいにくさ・硬さ・ふるえといった症状の聞き取りや、診察での筋固縮・動作緩慢・振戦・姿勢反射障害といったパーキンソン病らしい所見から、総合的に診断していきます。これは現在も変わらない基本なのですが、2014年よりダットスキャンという画像検査が可能となり、この検査がパーキンソン病の診断に大きく貢献するようになったためです。パーキンソン病で減少するドーパミン神経細胞では、ドーパミントランスポーターというタンパク質が減少することがわかっています。ダットスキャンはこのドーパミントランスポーターの量を数値として測定します。これまで脳MRIや採血といった検査ではわからなかったパーキンソン病の診断が、ダットスキャンでわかるようになった、画期的な検査です。診察で微かに筋固縮や動作緩慢が疑われる場合に、このダットスキャンを実施し、ドーパミントランスポーターを測定することで、パーキンソン病の診断がより早期にできるようになりました。正常な場合は、ドパミントランスポーターに集積された薬剤が三日月形、あるいはカンマ形を示す。パーキンソン病の場合は、薬剤の集積量が低下したり、左右が非対称の形になったりする。
ドバミン神経細胞には、ドパミンを再び取り込み、ドパミン量を調整する部分(ドパミントランス ポーター)があります。ドパミン神経細胞が壊れると同じくドパミントランスポーターが減少します。この変化を画像でとらえているのです。しかし、DATスキャンで取り込みが少なくなる疾患は、パーキンソン病だけでなく、進行性核状麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症などで線条体ドパミン神経の脱落が見られる。
パーキンソン病は、1817年にイギリスのジェームス パーキンソンという開業医がこの病気の特徴を報告しました。そして、1913年にフレデリック・レビーが、中脳黒質の神経細胞内の封入体 (レビー小体) を初めて見つけました。脳の黒質という部分の神経細胞は「ドパミン」という神経伝達物質を作り、それを線条体に送って、体を動かす機能を調節する働きをしています。パーキンソン病は、黒質のドパミンを作る神経細胞が減ってしまうために脳が出す運動の指令がうまく伝わらず、なめらかな動作ができなくなってしまい、様々な症状が出てくる病気です。
黒質とは、脳の中の「中脳」という場所にある、黒い色をした組織のこと。パーキンソン病の発症に大きく関わっている「ドパミン」という物質を作っている黒質の神経細胞がメラニン色素を多く含んでいるため、正常では黒く見えます。しかし、パーキンソン病では黒質の神経細胞が急激に減少するため、黒色がうすくなっています。
パーキンソン病の臨床経過
L-dopa服用開始後の3〜5年間は「ハネムーン期」と呼ばれているくらいに症状のコントロールが順調な時期があります。その後、服薬に伴う症状の変動(wearing-off現象、on-off現象)や不随意運動(ジスキネジアやジストニア)が出現する時期を経て、幻覚や妄想、認知症の合併が顕著化してきます。
パーキンソン病の重症度を表す指標としては「ヤールの重症度分類」と呼ばれる指標があります。症状が軽いものから重いものまでⅠ~Ⅴの段階に分けます。この重症度分類はパーキンソン病の症状の重さや治療効果を測定するための指標として広く活用されています。
パーキンソン病の治療
ドーパミン補充療法ができるようになり、今では天寿を全うできるようになっています。病状が進むと、本人が意図しないのに体が動くジスキネジア(不随意運動)が表れたり、薬の効果が薄れたりすることが起こりますが、主治医(専門医)とよく相談し、こまめに薬を調整するのが大事です。こうした薬物療法や、並行して行うリハビリも症状を改善します。
(1)薬物療法
ドーパミン前駆物質(L-ドーパ剤) マドパー、メネシットなど
L-ドーパは補充療法といわれ、脳で欠乏しているドーパミンを補うことを目的とした治療です。不足しているのはドーパミンですが、脳には血液脳関門というバリアがあってドーパミンは脳に入れないので、前駆物質のL-ドーパを服用します。L-ドーパは脳に入った後、ドーパミンになります。しかし、ほとんどのL-ドーパは脳に到達する前に血液中でドーパミンに変換されてしまうので、大量に服用する必要があり、食欲不振や吐き気などの消化器系の副作用が多くみられました。そこで、L-ドーパとともに血液中で分解しないための阻害剤が入った合剤を服用するのが一般的で、これによりL-ドーパの量も約5分の1ですむようになっています。(商品名;メネシット、マドパーなど)
パーキンソン病の治療は、年齢、運動機能の状態、認知症の合併の有無、生活環境、患者さんの気持ちや考え方、これまでの治療経過などを考慮します。ガイドライン的には、症状が顕著になって、生活に支障が出始めた時点で、治療介入を行います。早期(初期)治療は、高齢者(70歳以上)や認知症がある患者さんは、L-dopaで開始します。若い人は、L-dopa長期投与による運動障害の合併症を考慮して、ドーパミンアゴニストで開始します。しかし、若い人でもでも運動機能障害が強い場合や仕事を続けなければならない事情ある患者さんもL-dopaを考慮します。
ダットスキャンのSPECT画像は、線条体におけるドパミントランスポーター(DAT)の分布を可視化することで、ドパミン神経の変性・脱落を伴うパーキンソン病(PD)を含むパーキンソン症候群(PS)の早期診断や、レビー小体型認知症(DLB)の診断精度の向上、治療方針の決定に寄与する診断技術である。PSの早期診断に加え、ドパミン神経脱落を伴うDLBと、伴わないアルツハイマー型認知症(AD)など他の認知症との鑑別にも有効である。
パーキンソン病の治療の中心となるのは、薬物療法とリハビリテーションです。病気の進み方は個人差がありますが、初期の方が進むスピードが速いため、早めに適切な治療を受けて、規則正しい生活(薬のきちんとした服用、積極的なリハビリテーション)を送ることが大切です。リハビリテーションを行う上では、きちんと薬を服用して体を動かしやすい状態にしておくことも必要です。リハビリテーションを早くから行うことで、発症から長い年月が経っていても、移動、食事、入浴などので介助を必要とすることが少なくてすみます。パーキンソン病のリハビリテーションの種類には、①体力維持のための運動(有酸素運動)、②筋肉と関節の柔軟性維持のための運動、③筋力維持のための運動、④姿勢や歩行の改善と苦手になりやすい動作の練習、⑤呼吸訓練があります。これらの運動をかたよりなく取り入れてメニューを作ることをお勧めします。
Wearing-off現象(on-off現象)
L-dopaの長期使用に伴う副作用として説明されています。L-dopaの効いている時間が短くなってしまったために、次の服薬までに効果が消退してしまう現象です。よって、パーキンソン病薬の効果発現、消退に伴い、パーキンソニズムの改善、悪化(onとoff)が見られる現象をいいます。一日の中で体の動きの良いときと悪いときの差が大きくなり、電気を入れたり切った時のように突然効いたり、効かなくなる状態をさします。
L-dopaの長期服用していると、L-dopaの薬物動態が変化していると言われています。L-dopaの血中濃度は、服用後に急速に上昇し、2時間持たずにすとんと落ちてしまい、L-dopaの半減期が短くなっていきます。これに加えて、効果発現の閾値が上昇し、ジスキネジアの閾値は下がってくるため、L-dopaの血中濃度を、丁度いい具合にコントロールする事が大変難しくなるわけです。
パーキンソン病の進行は患者さんによって異なり、一概にはいえませんが、L-dopa治療開始後5~6年で約30%、9~14年で50%以上の患者さんがwearing-off現象等の症状の日内変動に悩むといわれています。
ジスキネジア(dyskinesia)
パーキンソン病治療薬の服用に伴って生じる不随意運動のことです。自分の意思で行う運動を随意運動といいますが、これに対して、止めようにも止められない、本人の意思に反して手や足、口、舌などがくねくねと動いてしまう運動を不随意運動と言いますが、L-ドーパの長期使用に伴って出現する不随意運動を総称して「ジスキネジア」ということばがよく使われます。薬物の血中濃度が高い時期に、見られる四肢抹消をねじるような運動であったり、四肢の近位部、体幹を含めて踊るような運動であったりします。
マイケルジェーフォックス
L-dopa投与期間と運動合併症の発現
ジストニア(dystonia)
手足、頸(くび)、体幹にあらわれる異常肢位やゆっくりとした不随意運動のことです。L-ドーパの長期使用に伴う副作用として説明されるものですが、ジスキネジアとは反対に、薬が切れてくるときに現れる起きる現象です。足の指が曲がったままになって元に戻せないといった症状です。
ドーパミンアゴニスト(ドーパミン受容体作動薬)
非麦角系(1日1回)レキップCR
ニュープロパッチ(パッチ剤のため、嚥下困難な患者さんにもOK
アポカイン(off症状に対するレスキューとして自己注射 効果発現まで12分)
(パーロデルやカバサールなどの麦角系は、弁膜症や突発性睡眠などの副作用のために、新たにはほとんど使用されない)
ドーパミンアゴニストは、ドーパミン受容体に作用してドーパミンと同じように刺激を伝えることができます。ドーパミンアゴニストはL-ドーパと比べると効いている時間が長いので、症状の日内変動を軽くすることができます現在は、70歳以上の高齢者は別として、早期で症状の軽いパーキンソン病ではドーパミンアゴニストを先ず使用し、充分な治療効果を得られればそれだけで治療を継続し、もし不充分であればL-ドーパ合剤を少な目に併用するという治療法が主流となっています。これは、このようにした方が、クスリの有効な期間を長く維持できると考えられているためです。
◎運動合併症を予防、対処するための治療のポイント
L-dopaを初めから多量に使いすぎない。
できれば、ドーパミンアゴニストで治療を開始する。
L-dopaにドーパミンアゴニストを併用する。
L-dopaの血中濃度ができるだけ一定になるように、L-dopaの1回の服用量を少なくし、服用回数を増やす。
Wearing-off(進行期)の治療
L-dopa賦活剤 トレリーフ(ゾミサミド)
抗てんかん薬(エクセグラン)である。作用機序は、ドーパミン合成促進作用、MAO-B阻害作用、ドパミンを介さない抗パーキンソニズム効果がある。ジスキネジアや幻覚なドパミン刺激による副作用の発現が少なく、振戦に対して効果がある。
アデノシンA2受容体拮抗薬 ノウリアスト(イストラデフェリン)
1日の平均off時間を減少させる。
振戦の治療
(1)強剛、無動を伴っている場合
L-dopaまたはドパミンアゴニストで許容量まで。新鮮がコントロールできない場合は、若年者の場合は抗コリン薬(アーテン)を追加併用
(2)症状が振戦のみ
若年者の場合は抗コリン薬(アーテン)6mg/日まで増量。
(3)効果不十分な場合は、第二選択として、FP(セレギリン:MAO-B阻害薬)コムタン(エンタカポン:COMT阻害薬)トレリーフ(ゾミサミド)の追加投与する。
(4)日常生活に支障がある場合は、手術療法を薦める。
抗コリン剤 アーテン(トリヘキシフェニジル) アキネトン
歴史的には抗コリン剤が最も古くから使われていました。正常な線条体ではドーパミンとアセチルコリンという神経伝達物質の活動のバランスがとれていますが、パーキンソン病ではドーパミンが欠乏するために相対的にアセチルコリンの活動が強くなっています。抗コリン剤は、アセチルコリンの作用を弱めることでパーキンソン病の症状を改善します。
ドーパミンはアセチルコリン神経とギャバ神経に対して抑制的に、アセチルコリンはギャバ神経に対して興奮的に作用してギャバ神経の活動を調節しています。パーキンソン病ではドーパミンが欠乏するために、その抑制作用の低下でアセチルコリンの活動が強まります。ドーパミンの欠乏はギャバ神経への直接の抑制作用も低下させるのでギャバ神経の活動はさらに強まります。ギャバ神経の活動の増加はパーキンソン病の症状の発現に関与していると考えられています。抗コリン剤でアセチルコリンの作用を抑えると、ギャバ神経の活動を抑制できます。
線条体のドーパミンとアセチルコリンの関係
ノルアドレナリン補充療法 ドプス 適応 Yahr3におけるすくみ足、立ちくらみ
ドパミン遊離促進薬 シンメトレル グルタミン酸拮抗作用がWearing-offの改善に効果があるという報告もあります。
(2)外科的治療法
脳の特定の部位を破壊してパーキンソン病の症状の改善を図る定位脳手術は、ふるえ(振戦)に対する治療を目的とした視床Vim凝固術、パーキンソン病の症状全般の改善を目的とした後腹側淡蒼球破壊術、視床下核刺激術などです。視床下核刺激術とは脳の深部にある大脳基底核の一部である視床下核(STN)や淡蒼球内節(GPi)、あるいは視床といった部位に埋め込み式の刺激電極を留置し、前胸部皮下に埋め込まれた電池内臓型の電流発生装置から電極先端にパルス電流を流して淡蒼球や視床下核を電気で刺激する治療で、脳深部電気刺激(DBS)とも呼ばれています。外科治療は現在のところ、薬物療法では限界のある患者さんが対象となっていますが、薬物療法に全く反応しないひとの場合は、外科治療をおこなっても効果はみられないようです。
薬剤性パーキンソニズム
パーキンソン病と似た症状がみられるものをパーキンソン症候群とかパーキンソニズムといいます。原因としては、脳血管障害や薬剤性、その他の神経変性疾患などがあります。意外と多いのが、薬剤性パーキンソニズムです。この場合はパーキンソン病と比べて症状の進み方が速いのと、左右差が乏しいという特徴があります。この場合、その薬の服用を止めれば速やかによくなりますので、飲んでいる薬のチェックはとても大切です。
原因となる薬剤として、最も多いのは、統合失調症などの抗精神病薬です。抗精神病薬は脳内のドーパミン作用をブロックする薬なので、当然効き過ぎればパーキンソニズムになります。クロルプロマジン(ウィンタミン)ハロペリドール(セレネース)チアプリド(グラマリール)リスペリドン(リスパダール)身体が落ち着かなくなったり、じっとしていられなくなったり、一部の筋肉が緊張して、口や首が曲がったりするような症状が、比較的典型的です。
三環系抗うつ薬 イミプラミン(トフラニール)アミトリプチリン(トリプタノール)四環系抗うつ薬 ミアンセリン(テトラミド)パロキセチン(パキシル)フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)ミルナシプラン(トレドミン)スルピリド(ドグマチール)などの抗うつ剤の多くも、パーキンソニズムを誘発することがあります。
吐き気止めのメトクロプラミド(プリンペラン)は、ドーパミン拮抗作用があり、継続使用で高率に、パーキンソニズムを起こす薬として知られています。この薬は従って、高齢者には原則は使用せず、長期連用は避けるのが適切です。
その他、バルプロ酸(デパケン)とリチウム(リーマス)、消化性潰瘍薬のラニチジン(ザンタック)は、稀にと報告されています。
薬剤性のパーキンソニズムは、原因となる薬剤を飲み始めてから3ヶ月で起こり(1ヶ月以内の発症が多いですが、個人差あり)急に動きが鈍くなり、小刻み歩行になるのが特徴です。左右差がなく、振るえは少なく(姿勢時、動作時に振える)突進現象も出にくい。ドーパミン製剤で治療しても、あまり効きません。原因薬剤を中止すると軽減しますが,症状が消えるまでに1年以上かかることも稀ではありません。
遺伝もしませんが、若年で発症したヒトではごくまれに遺伝性の原因があることが知られています。パーキンソン病は今のところ完治させることは無理ですが、治療でよくすることが可能ですから、ここに書いたような症状のあるひとは、早いうちに神経内科の専門医に相談することをおすすめします。
根本的な治療法は、まだ確立していませんが、対症的療法は研究が進み、予後の延長やQOLの向上し、天寿を全う出来るようになってきた。
MIBGシンチ(交感神経)
嗅覚障害(耳鼻科の10%)
L−ドーパが効果が早い