体が勝手に動く
 

A君は小学1年の頃、突然首を何度も傾けたり、うなづいたりしていて、その度にお母さんは、「そんなとこはやめなさい」と注意していました。ある日、A君はお母さんにこう訴えました。「僕はわざと首を動かしていないよ。勝手に首が動くんだ。つらい時もあるんだよ。だから怒らないで」お母さんは驚いてかかりつけ医の小児科の先生に相談に行きました。「それはチックと言って、本人の言う通り、勝手に体の一部が動いてしまうんですよ」先生に言われて理解したお母さんは、叱るのをやめました。チックは18歳以下、特に7歳前後で起こりやすく、4週間以上1年未満続くものを「一過性チック」1年以上続くものを「慢性チック」と言います。症状によって「運動チック」と「音声チック」があり、運動チックはさらに、肩をすくめたりまばたきをするなど、一つの筋肉が動く「単純運動チック」(図①)と、跳びはねたり匂いをかぐなど、複数の筋肉が動く「複雑運動チック」(図②)があります。音声チックも、せきや鼻鳴らしなどの「単純音声チック」(図③)と、他人や自分の言葉を繰り返す「複雑音声チック」(図④)があります。これが社会的に受け入れ難い言葉を発することもあり、「コプロラリア」と呼ばれます。
チックが起きたとしても自然におさまることも多いので「ひょっとして・・・」と思っても慌てず、怒らず、寄り添うことが大切です。また、音声チックと運動チックが同時に1年以上続くケースを「テウレット症候群」と言います。脳の機能の違いによるもので、親の躾や対応によるものではなく、故意に行なっているものでもありません。緊張やストレスがかかると出現する人もいれば、リラックスした状態で出現する人もいて、よくなったり悪くなったりを繰り返します。自分の動きを制御できないのはつらいものです。周囲の人たちは症状を理解したうえで、気にせず自然体で接してほしいと思います。