CKD

なぜ、CKDが騒がれるのか? 最近、突然この単語で言われるようになったと思うのですが、決して新しい概念ではありません。慢性腎不全って昔からありますよね。どこがどう違うのでしょうか。専門の先生方に伺うと・・・透析患者が30万人を超え、この30年で約6倍になっています。慢性腎不全が、こんなに増加している疾患であることをアピールするために、CKD君が登場したようです。(日本人400人に1人が透析している計算になります。「CKDを知っていますか?」毎年3月第2週の木曜日は世界腎臓デー。CKD誕生の狙いは、各種さまざまな原因で起こる腎臓病を一般内科医や患者さんにわかりやすくするために、主に蛋白尿と腎機能を指標として取りまとめて、CKDという1つの病名として定義しなおしたというわけです。CKD(Chronic Kidney Disease)は「慢性腎臓病」と訳されています。CKDの定義は、腎機能の障害(蛋白尿(0.15g/gCr以上)など)もしくはGFRが60以下が3ヶ月以上持続していることとなっています。

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透析導入の原疾患は、1998年に「糖尿病性腎症」が、「慢性糸球体腎炎」を抜いて第1位になり、その後も増加を続けていたが、この数年は増加が鈍ってきている。「腎硬化症」の割合も年々増加している。透析患者の医療費は年間約500万円ともいわれ、このまま減少傾向が続けば医療費削減の効果も期待される。

尿にアルブミンが出ると腎障害の進行が早いということがわかってきました。糖尿病の人で考えてみると、腎臓が正常だった人が、「微量アルブミン」が出るようになるのは年2%ぐらい、また「顕性蛋白尿」がでるようになるにも年2%くらい、さらに「腎不全や透析に移行するする人」も年2%くらいと同じ比率ですが、「微量アルブミン」の人は年3%くらいの死亡率、「顕性蛋白尿」の人は4.6%の死亡率、「腎不全や透析の人」はなんと19.2%の死亡率になってしまいます。(イギリス人)

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CKD患者さんで最も多い死因は,末期腎不全ではなく心血管疾患によるものだということです。CKDの二大原因が高血圧と糖尿病であり,同時にこれらが心血管疾患発症の極めて重要な危険因子でもあります。腎機能障害が、それほどたいした事がないレベルでも心血管系イベントの発生率が高く、指数関数的に増えていきます。

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 eGFR(推定糸球体濾過量)

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このややこしい指数関数の計算式では、電卓も使えませんが、最近は検査室(電子カルテも)が対応してくれています。

さて、最も正確に腎機能を表す指標として、GFR(糸球体濾過量)があります。GFRを正確に調べるためには、身体の中に入れても、生物活性を有しない安定な物質として存在し、そのまま腎臓の糸球体からのみ濾過されて、尿として体外に排出される物質があれば、血中と尿中の濃度変化を測定することによって糸球体の働きを正しく評価できることになります。

イヌリンは、普段よく食べているタマネギ、ゴボウなどに含まれており、食品添加物としても広く使用され、パンに入れると“きめ”が細かくなり、モチモチした食感になります。クッキーに入れるとサクサクします。イヌリンは、チコリ(菊苦菜 キクニガナ)の根から抽出される果糖が直鎖上に結合し、その末端にブドウ糖が付加された平均分子量3000~8000の多糖類の一種で、尿細管で再吸収も分泌もされないことから理想的なGFRを測定できる物質であり、そのためイヌリンクリアランス(Cin)はGFRのゴールドスタンダードとされています。しかし、この検査は測定手技が煩雑で、準備を含めて2時間以上を要し、点滴静脈注射の間に2度の採血、採尿が必要で患者負担もあるため、普通は、クレアチニン・クリアランスという検査を行ってGFRを測定するのが一般的です。

クレアチニン(Cr)は、筋肉内でアミノ酸の一種であるクレアチンの代謝産物です。血液中のクレアチニンは腎臓の糸球体でろ過され、尿細管ではほとんど再吸収されずに(分泌はされるため、GFRより少し高くなる)尿中に排出されます。腎臓の機能が障害されていると、尿中に排泄される量が減少し、クレアチニン値は、腎臓の機能の低下とともに値が高くなってきます。基準値は、だいたい男性で0.6~1.1mg/dl、女性で0.4~0.7mg/dlです。(0.7以下ならほぼ正常です)患者さんの症状などによって異なりますが、血清クレアチニン値が8.0mg/dl以上となると透析導入が検討されます。筋肉の老廃物であるクレアチニン値は、個人の筋肉量に左右されます。腎機能が同じであっても男性よりも女性、若年者よりも高齢者の方が低値となる傾向があります。また、クレアチニンは腎機能(糸球体ろ過量)が50%以下に低下するまでは上昇しないため、軽度の腎機能障害の判定には適していません。

クレアチニン・クリアランスという検査も短時間法で行ったとしても分単位の処置が必要で、開業医の外来で行うにはちょっと煩雑で、やる気にはなりません。(24時間法は、蓄尿が必要で言うまでもありません)計算には、尿と血液のクレアチニン濃度、尿量、身長、体重などが必要です。

最近では、CKDという概念が出てきたこともあり、より簡単に腎機能が求められるように考え出されたのが実測GFRの値をもとにして血清クレアチニン値と年齢、性別という三つの要素をかけあわせたeGFR(推算糸球体濾過量)が幅広く用いられるようになりました。(国際的統一見解)上記の計算式は、日本腎臓学会が全国763名を対象として実測GFR(イヌリンクリアランス)と血清クレアチニン値、年齢から日本人向けに作成されたものです。

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糸球体濾過量は、腎臓にどれくらい老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示しており、この値が低いほど腎臓の働きが悪いということになります。「ml/分」という単位ですが、おおよそ腎機能のパーセンテージに対応しており、GFRが75ml/分であれば、腎機能が健康時の75%程度と考えることができます。このeGFRは、血清クレアチニン値は筋肉量、摂取蛋白量でも影響を受けますし、腎臓糸球体の動脈障害が高度なほど、尿細管上皮細胞からの分泌機構が亢進するなどの影響を受けることが明らかにされています。筋骨隆々の人は、少し悪く出るのでスクリーニングとしては問題ありませんが、寝たきりの女性など筋肉量の少ない人は、腎機能低下があっても良いように出るので注意が必要です。eGFRはあくまでも推算値にすぎません。(真の値と±20ml/min以上も解離する可能性があります)



CKDの中で、透析導入原疾患としても最も多いのは糖尿病性腎症です。少なくとも5年以上糖尿病罹患期間があり、0.5g/gCr(g/日)以上の蛋白尿が持続し、糖尿病性網膜症が存在する場合は糖尿病性腎症が疑われます。糖尿病性腎症の臨床病期は、5段階に分かれていますが、個人差は大きいものの平均で30〜40年で透析に移行するとされています。第1期(腎臓が正常が10年)はさておき、微量アルブミンの第2期は10年、顕性蛋白尿の第3期(現在、GFR正常の3A期とGFRが低下する3B期に分かれています)も10年は、血清Cr値が上昇する4期は、2.5年で一気に透析になってしまいます。糖尿病性腎症に加齢に伴う腎機能低下が加わり、CKD3期以降を占める患者が増えてきています。気がついた時には病期が進行してしまっているということがないように注意が必要です。当然、血清Crを腎機能の指標にしていると既に遅そすぎるのはお分かりと思いますが、GFRという指標も3B期で、GFR50未満では、GFR60〜70未満に比べて2倍以上のスピードで腎機能が低下するわけです。(70歳以上では、GFR40未満)既に進んでしまった腎機能障害を元に戻すことは簡単ではありませんが、可逆的な腎障害とされる微量アルブミンの第2期から危険因子(血圧、脂質代謝異常、喫煙、メタボ等)に対する積極的なマネージメントをすることで、透析導入までの期間を延長させたり、心血管イベントの発症抑制が期待される。

糖尿病性腎症の臨床経過
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蛋白尿

透析導入の予測因子で最も鋭敏で簡便な検査法は試験紙法による検尿(蛋白尿)である。蛋白尿の程度別(マイナスから3+以上までの5 段階)に透析導入の発症率をみると、蛋白尿が多いほど高くなる。加齢に伴い腎機能は低下するが、蛋白尿を伴わなければ透析導入が必要になるほど低下しない。



CKDを勉強していて、CKD診療ガイド(2012年版)を見て本当にがっかりしました。高血圧や脂質代謝異常症のガイドラインにしても同じ様なことが言えるのですが、かかりつけ医がこんなややこしい指針を利用できるはずがありません。(僕だけだったらすいません)聞くところによると前回よりもさらに細かく分類されたようです。まさに腎臓専門医の先生方のマスターベーションのたまものですね。確かに、透析まで行く患者さんの数を減らすこと、致死性の高い心血管イベントを抑制することなど、かかりつけ医と専門医との連携は必要かも知れませんが、慢性腎不全の進行を止めるような画期的な治療があるわけでもありません。RA系阻害薬、スタチン、ESA製剤などの調整、NSAIDsなど腎毒性薬剤の中止などを考慮し、血圧管理、糖尿病のコントロールなど、やれることはいつもと変わりません。かかりつけ医の現場で、こんなに細かく分ける意味がわかりません。GFRも3段階ぐらいで十分ではないでしょうか?(かかりつけ医は、腎臓病だけをみているわけではありません)

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ミルセラ注:月1回投与が可能な持続型ESA

持続型赤血球造血刺激因子製剤エポエチン ベータ ペゴル(商品名ミルセラ注)適応は「腎性貧血」。用量は、静脈内もしくは皮下に2~4週間に1回投与する。最高投与量は1回250μgである。多くは、75〜150μgでコントロールしている症例が多い

腎性貧血(腎障害によるエリスロポエチン産生能の低下に起因する貧血)に対する治療薬
ESAは、腎臓で産生される天然エリスロポエチン(165個のアミノ酸からなるペプチドホルモン)と類似の構造を持ったペプチド製剤である。骨髄中の赤芽球系前駆細胞に働き、赤血球への分化と増殖を促すことで、貧血を改善することが認められている。エポエチン ベータ ペゴルは、既存のエポエチン ベータに1分子の直鎖メトキシポリエチレングリコール(PEG)分子を化学的に結合させることで作用の長時間化を実現した製剤である。エポエチン ベータの半減期が9.4時間なのに対し、エポエチン ベータ ペゴルは168~217時間と、10倍以上も長い。血中濃度を長時間維持することで、4週間に1回の投与(初回は2週間に1回)で、至適範囲内までヘモグロビン濃度を上昇させられることが確認されている。

なお、エリスロポエチンのアミノ酸配列の一部を改変し新たな糖鎖を付加させることで血中半減期を延長したダルベポエチンアルファ(商品名:ネスプ)の血中半減期は32.11~48.67時間であり、血液透析患者に対しては1~2週間に1回投与する。

主な副作用は、血圧上昇(7.6%)、シャント閉塞・狭窄(1.4%)、好酸球数増加(1.2%)などであり、重大な副作用としては、脳出血、心筋梗塞、高血圧性脳症、ショック、アナフィラキシー様症状、赤芽球癆が認められている。