B型肝炎

Hepatitis-B vaccine
区分任意
B型肝炎母子感染予防事業(保険適応)
種別不活化
投与経路10歳未満:皮下注
10歳以上:筋注
1回投与量10歳未満:0.25ml
10歳以上:0.5ml
合計接種回数3回目
標準スケジュール1回目:生下直後〜生後2ヶ月
2回目:1回目の4週間後
3回目:1回目の5〜6ヶ月後
Catchupスケジュール1回目:年齢を問わず同定し次第直ぐに、乳幼児〜思春期は特に必須
2回目:1回目の4週間後
3回目:1回目の5〜6ヶ月後


B型肝炎ワクチンは「肝臓がん」と「STD(性感染症)」の予防ワクチン

最近、子宮頸がんワクチンというのが登場し、たつの市でも中学校1年生に公費接種が行われています。ヒトパピローマウイルスの感染を予防して、子宮頸がん(実は、前癌状態の子宮頚部上皮内腫瘍CIN2,3を減らす)を予防するワクチンです。そう考えると、B型肝炎ワクチンも、肝臓がんを予防するワクチンなんですよね。B型肝炎ウイルスに感染しても、誰もがキャリア(持続感染:ウイルスを体内に保有した状態)になるわけではありません。しかし、赤ちゃん、とくに3歳以下の乳幼児が感染すると、キャリアになる危険性がずっと高くなります。キャリアのうち約10%の人は慢性肝炎を発症し、肝硬変へと進行し、肝硬変になると3人に1人が肝臓がんを発症しています。また、急性肝炎から劇症肝炎を起こし、死に至るケールもあります。日本では、B型肝炎ウイルスのキャリアは、人口の1%で約100万人と推定されています。

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我が国のB型肝炎対策は、キャリア(ウイルスを体内に保有した状態)の母親からの感染予防であり、母親が妊娠中に検査を行ってB型肝炎キャリアであることがわかった場合は、母子感染(垂直感染)予防として、出産したかかりつけの医療機関で、生後2日以内に抗HBs人免疫グロブリン(HBIG)を投与し、その後B型肝炎ワクチンを健康保険で接種できます。(1986年から開始)

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母親がキャリアでない場合は(任意接種)必ずしも生後すぐに接種する必要はありませんが、3才未満で感染すると慢性化しやすくなるので(できるだけ早く接種すれば免疫もでき易い)生後2か月からヒブ、小児用肺炎球菌ワクチンなどとの同時接種がお勧めです。また、ワクチンの効果は10~20年前後とされています。10~15歳頃に追加接種をすることが望まれます。女児は11歳頃に、HPVワクチンとの同時接種も勧められます。

B型肝炎は母子感染(垂直感染)や輸血だけでなく、知らない間にかかることも多いVPDです。近年、父子感染や感染経路不明で乳幼児がB型肝炎ウイルスに感染する例が増えており、母子感染予防だけでは、対策が不十分といえます。B型肝炎は、キャリアとよばれる感染者の体液(汗・涙・唾液・血液・粘液・精液)から感染します。HBVは、汗や涙でも感染するので、通常の日常生活の中で感染が起こるので、幼稚園/保育園や学校など、子供同士が触れあう場所では、キャリアからの感染は防ぐことはできません。さらに、感染した場合も、症状がないか感冒のような症状が数カ月続くだけなので、本人も気づかないまま感染源になってしまい、家族内や幼稚園/保育園・学校・職場内での集団発生の報告もあります。しかし、キャリア児を特別扱いすること・・・されることは、きわめて問題の多い対応です。そういった子供たちを作らないためにも、ユニバーサルワクチネーション、生まれた子ども全員にB型肝炎ワクチン接種をすることが大切なのです。

全世界では、約3億人がB型肝炎ウイルスに感染し、それに関わる病気で、毎年約60万人が死亡しています。B型肝炎は、世界では、一般的な性感染症のひとつです。WHO(世界保健機関)は、1992年、世界中の子どもたちに対して、生まれたらすぐにこのワクチンを国の定期接種として接種するように指示しており、ほとんどの国で定期接種が常識となっています。これは、ユニバーサルワクチネーション(全員接種)といい、母子感染(垂直感染)、父子などからの乳児期の水平感染、性交渉での成人の水平感染をすべて解決できます。B型肝炎ワクチン接種率ごとに色分けしています。日本では、せいぜい海外出張・赴任時や海外渡航時にB型肝炎ワクチン接種が推奨されるぐらいで、ほとんど知られていませんが(接種率は1%以下)、このB型肝炎を軽く見ている日本の現状が一番の問題なのです。

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欧米型のB型肝炎

従来、大人になってB型肝炎ウイルスに感染した場合は、ほとんどが急性肝炎になり、慢性化することはないとされてきました。しかし、

B型肝炎抗体(HBs抗体)陽性者は年齢とともに増加し、50歳代で20~30%台に達します。


劇症肝炎

昭和62年、三重大医学部付属病院で、同病院の小児科医師2人と看護師1人がB型肝炎に感染し、医師2人が劇症肝炎で死亡する感染事故が起きました。3人がほぼ同時期にB型肝炎に感染し、劇症肝炎を発症したのです。劇症肝炎とは肝細胞が急激かつ大量に壊れてしまう病気で、死亡率は極めて高く、救命率は20%とされています。劇症肝炎の約40%はB型肝炎ウイルスが原因ですが、B型急性肝炎から劇症肝炎へ移行するのは1%以下とされ非常にまれとされています。日本での劇症肝炎患者は年間1000人程度なのに、同じ病棟で働く3人が同時期に劇症肝炎を発病したことは、何らかの共通した感染経路があったと考えられましたが、3人ともも針事故等の感染の心当たりはないと話しています。厚労省は、医療従事者の業務上疾病による労災認定を再調査し、約2年間で73人の医療関係者がB型肝炎を発病し、8人が死亡していたことを明らかにしました。73人の職種の内訳は、医師12人、看護師47人、臨床検査技師10人であった。そのほとんどは、患者の採血時に自分の指を刺して感染したものでした。厚生省は各医療機関に医師や看護師らのワクチン接種を指示していましたが、B型肝炎ワクチンは約2万円(自己負担)だったため普及していなかったことが原因です。医療従事者にとって、劇症肝炎はいつ自分の身に降り掛かってきても不思議ではありません。厚労省はこの事故で、国立病院の医療従事者約3万人に国費でB型肝炎ワクチン接種を受けさせる方針を決め、民間病院でもB型肝炎ワクチン接種が普及するようになりました。現在では、原則として30歳以下の医療従事者全員が肝炎ワクチンを接種しています。


ハネムーン肝炎

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夫婦間では、肝炎はどれくらい移るのでしょうか?配偶者のどちらかがB型肝炎ウイルスを持っていて、それを知らずに結婚し、新婚旅行から帰って間もなくB型急性肝炎を発症したケースを「ハネムーン肝炎」と呼ばれています。
配偶者の奥新先生(本当はβの2回打ちで有名)の文献では、妻から夫への感染が検討され(92名)1年で70%、2年で90%で、多くの者は結婚後2年未満に感染していました。一方、結婚後B型急性肝炎を発症したものは10%で、その多くは半年以内でした。劇症肝炎は見られませんでしたが、一般的には、1000例に2例(0.2%)発症すると言われています。この時の検討で妻から夫への感染というところがミソで、ロマンチストで格好つけの男性は、妻がキャリアであることに寛大で、もし劇症感染を起こしても本望というところがあるようですが、女性は現実的で夫が肝炎とわかると洗濯物を別にして(なんとなく気持ち悪い)お風呂に入る順番も逆転していることが多いと聞いています。


de novo肝炎(B型肝炎の逆襲)

HBVは、肝細胞の表面(細胞膜)に付着し、外側のカプセルを脱いで、DNA(遺伝子)だけを細胞の中に送り込みます。ウイルスDNAは自己複製を開始し、感染が成立します。HBVが感染した肝細胞は、感染の目印を細胞表面に表示します。この目印細胞を免疫システム(リンパ球)が攻撃して肝炎がおきます。免疫システムからの排除攻撃・肝炎が発生すると、ウイルスDNAは、cccDNA(covalently closed circular DNA)に形態を変化させて、潜伏状態になります。cccDNAに変化すると感染の目印が消え、リンパ球の攻撃・肝炎が終息します。ただし、リンパ球を主体として免疫システムの炎症が終息するだけで、肝細胞・核内に侵入したウイルスDNAは排除されることはありません。HBVに感染後、まず初期反応として、キャリアになるか、急性肝炎を発症するかどちらかの経過となりますが、肝炎症状が鎮静化し、キャリアの慢性化や急性肝炎が治癒しても、肝細胞に潜むHBV-cccDNAは、一生共棲することになります。(一度、B型肝炎が体の中を通ったら、臨床上は急性肝炎として治癒しても肝細胞の中ではどうなっているか?はわかりません)つまり、肝炎の炎症反応が終息して、HBe抗体が産生され(セロコンバージョン)血液中のHBV-DNA量が検出されなくなっても・・・実は肝細胞の中には、HBV-cccDNAが残っています。

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このHBV-cccDNAは、非常に行儀の悪い遺伝子です。ゴキブリの卵のように、肝細胞の核の中で一見おとなしく潜んでいますが、実は暗躍の機会をうかがっております。ホスト(患者)の免疫システムに支障が生じた場合・・・たとえば、移植やリウマチ性疾患で免疫抑制剤を使用したり、抗がん剤を服用したり、特定のウイルス感染を合併した場合・・・cccDNAが病原性を持つウイルス遺伝子へと変異し、ウイルスDNAの複製を再開するのです。(de novoとは、ラテン語で「再び、始まる」という意味)