食物アレルギー

石けんと食物アレルギー

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せっけんと食物アレルギー、普通はちょっと結びつきませんよね。最近、主に顔に起きる原因不明の小麦アレルギーの症状が、悠香(福岡県)が販売した「茶のしずく石鹸(せっけん)」が犯人であることがわかりました。 患者の報告が500人を越え、その1割に呼吸困難や全身の腫れ、血圧低下など救急受診や入院が必要となる重篤症状が見られ、一時意識不明になった症例もありました。 ほとんどが20歳代~60歳代の女性で、同じ洗顔用のせっけんを使用していたという共通点から、そのせっけんに含まれていた小麦由来成分「グルパール19S」 という加水分解小麦がアレルギーの原因物質(アレルゲン)だと特定されました。化粧品でこれほど大規模なアレルギーが発症した例はなかったので、今回、石鹸の中の成分により、小麦アレルギーを発症することは、予想できなかったとと思います。では、どうして小麦成分が入っている石けんを使って、小麦の食物アレルギーになるのでしょうか?石鹸などはほぼ毎日使用するわけで、ごく少量しかアレルゲンが付着しなかったとしても、繰り返し使っていると一部の人で、この“加水分解コムギ”が少しずつではありますが目の粘膜、鼻の粘膜、顔の皮膚に付着しからだに侵入し、からだがこの成分を危険なものと判断し、外に出さねばならないと判断したために、この石鹸を使ったひとの一部は、この含有成分“加水分解コムギ”に対してアレルギーになってしまいました。これは、食物アレルギーの一部が経皮感作(皮膚をとおして感作する)でおこることを実証したともいえるのかもしれません。


免疫反応

どんなに清潔な暮らしをしていても、私たちの周りにはいつもばい菌が存在しています。病院の無菌室にでもいない限り、私たちはばい菌といっしょに暮らしているようなものなのです。そんな中で私たちは常にばい菌をやっつけながら健康を保っています。体内へ侵入してくるばい菌を排除する防御機構を免疫と呼んでいます。ばい菌と言ってもいろんな奴がいて、その種類によってやっつける方法もかなり違います。

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血液を顕微鏡で見ると「あられ」のようにみえますが、少し大きめの紫や赤のやつが、地球防衛隊?いや生体が、外からのばい菌(ウイルスや細菌など)に対して防御反応の主力である白血球たちです。
骨髄(血液の工場)には、いろいろな血球細胞のもとになる幹細胞(stem cells)が存在し、細胞分裂によって、形や機能は異なる血球細胞へと分化しています。

リンパ球 抗体を作ったり、ウイルスの感染した細胞を殺す。
好酸球  寄生虫を攻撃、アレルギーに関与。
好塩基球 ヒスタミンを放出。
好中球  細菌を貪食する。
単球   マクロファージになり、何でも食作用が強い掃除屋さん。

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自然免疫と獲得免疫

(1)自然免疫
「自然免疫」という言葉自体は、変な言葉です。もともと免疫とは「一度○○にかかったら、二度と○○に罹らない」という意味のはずですが、 自然免疫は二度目でも全く強まるわけではありません.相手がどんなバイ菌であっても、何者かも分からずとにかく排除しようとする「人が生まれつき持っている一次防御反応」 マクロファージ(Mφ)や好中球などによって貪食される 非特異的な防御反応なのです。こんなものは本来免疫でもなんでもありませんと言いたいところですが、この皮膚や粘膜での一次防御の働きは決してバカにできません。ほとんどの たいしたことないバイ菌がここで防御されるから健康を保っていられるのです。

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(2)獲得免疫
マクロファージは外敵を食べて掃除するだけでなく、司令塔である「ヘルパーT細胞」に外敵の進入を報告します。獲得免疫には「 体液性免疫系」と「細胞性免疫系」があります。ヘルパーT細胞は、 体液性免疫系の「B細胞」に「ばい菌を逮捕しろ」と命令し、 細胞性免疫系の「キラーT細胞」に「ばい菌を殺せ!」と命令を出します。 体液性免疫は、B細胞と抗体が主役です。細菌に対する防衛隊です。抗体が細菌に結合すると、好中球の貪食能が飛躍的にパワーアップします。
細胞性免疫の主役は、キラーT細胞です。 ウイルスや細胞内に寄生する細菌(結核菌、サルモネラ、レジオネラ、クラミジアなど)やガン細胞に対する防衛隊です。

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ホコリや花粉なんかにいちいち反応するなよ!

難しいお話しはさておき、ここからが本題です。アレルギーという言葉から連想するのはどういったことでしょうか?「サバを食べたら、じんま疹が出た」でも、サバが腐っていたというわけではありませんよね。スギなどの花粉が飛ぶ春先になると鼻や目がかゆくなる「花粉症」で困っている方も多いと思います。気管支喘息やアトピー性皮膚炎もアレルギー性疾患です「アレルギー」をひとことで言うなら「過剰な免疫反応」のことです。細菌はウイルスなどのばい菌が体に侵入したときは、いままでお話ししてきたように、免疫防御反応に頑張って、働いてもらわないと困りますが、ホコリや花粉などは、これらが体内に入ったからといって、放っておいてもそれほど悪さをするわけではありません。しかし、そんなどうでもいいようなアレルゲン(ホコリや花粉など)に対してまでやたらと反応してしまう人がいます。しかも厄介なことに、ちょっと変な免疫防御反応をを起こしてアレルギー性疾患を引き起こ してしまいます。つまり、アレルギー体質の人は、病原体(細菌やウイルス)が体内に入ってくるときちんとIgG抗体を作って撃退するのに、相手がホコリや花粉だとなぜかIgE抗体を作ってしますのです。この原因不明の「なぜかIgE抗体を産生してしまう」性質のことをアトピー性といいます。

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なぜ、IgE抗体を産生してしまうのか?

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人類は数百万年にわたり寄生虫と共生してきました。終戦直後の1949年には、日本人の寄生虫の感染率は63%もありました。この寄生虫に対しては、長年にわたり、 IgE抗体が担当していました。 僕らが小さい頃は、まだ一般家庭の大小便は、地下に備え付けの便槽に貯めておかれ、定期的に農家のおじさんが、肥え桶で一軒一軒汲み取りに来てくれて、この大小便が、当時の唯一の肥料になったのです。津山の田舎では、遊んでいてよく肥だめにはまったものです。この「有機肥料」を、野菜などに直接ふりかけて使用したわけですから、たとえ良く水洗いしたとしても、他人の大便が口に入ってしまっていたのです。 現在では想像することが困難な程の悪い衛生状態でありました。最近は、生活環境が整備され、寄生虫の感染率も0.2%以下になってしまいました。つまり、IgE抗体は、活躍するところがなくなり、「失業状態」になっていました。そこに表れたのが、花粉やダニなど人類にとって敵か味方かわかりにくいもの(寄生虫も原則的には、人には害を与えない)に対して(良いか悪いかは別にして)IgE抗体が担当するようになってしまったのではないかという説もあります。さらに、抗菌グッツなど過度に純粋培養された?現代っ子たちは、生きていくのに必要な食物に対しても過度にIgE抗体を作ってしまうような体(アトピー体質)になってきているのです。

全国の公立小、中、高等学校に在籍する児童生徒のうち、10人に1人は何らかのアレルギー疾患を持つことがわかりました。 既に、アレルギー疾患はまれなものではなく、学校の自分のクラスに各種アレルギー疾患の子供たちが多数在籍していることを認識してしなければなりません。


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食物アレルギーの原因食物

アレルギーの原因になるものを「アレルゲン」といいますが、食物アレルギーを引き起こす食品として卵、牛乳、小麦の割合が多くなっています。その他、さばやいかなどの魚介類、バナナやキウイなどのフルーツ、大豆、ピーナッツ、そばなどがあります。これらのアレルゲン食品は年齢によって原因となる割合が異なります。

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                      厚生労働省科学研究報告より

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アレルギー症状では、最も多いのが皮膚症状(じんましん、痒い、皮膚が赤くなる、顔が腫れるなど)です。呼吸器症状(咳、ゼイゼイする、呼吸困難)、粘膜症状(口が腫れる、目が赤くなる腫れるなど)、消化器症状(腹痛、吐く、むかむかする、下痢)などの症状も同時または別々に出現します。


即時型食物アレルギーの頻度

食物アレルギーの頻度は、乳児で 5〜10% であり、年齢とともに減少して、小中学生では 1.3% 位と推測されています。即時型食物アレルギーで食後 60 分以内に症状があらわれ病院を受診した患者さんの厚生労働科学研究班の全国調査(右図)では、調査期間中に医療機関を救急受診した 2501 例中、 乳児が 803 例(32.2 %)と最も多く、1 歳児が 522 例(20.8%)で乳児と 1 歳児で救急受診例の半数以上を占め、5歳以下では 80.1%でした。年齢とともに救急受診例は減少していきますが、一方では 20 歳以上の成人も 6.0 %みられました。このデータが病院受診者の調査であることを加味すれば、成人の食物アレルギー患者も相当多数存在すると考えられます。

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症状の頻度では皮膚症状(じんま疹や発赤、かゆみ)が約9割と最も多く見られます。全身じんま疹、喉頭浮腫、呼吸困難、血圧低下、意識障害など、アナフィラキシー(稀に生命にかかわることも)も約10%にみられます。

 

アナフィラキシーによる年間死亡者数

日本で毎年 3 人程度が、食物のアナフィラキシーショックが原因で亡くなっています。 食物以外にも、蜂毒や薬物などが原因で起こります。

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                      (厚生労働省 人口動態統計)

アナフィラキシーABC

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最も多いのは、やはり蜂ですね。アレルギーのある人は、1回目より、2回目、3回目と重症になることが多いようです。山へ行くときは、化粧は薄め、白い服にしましょう。(黒い服、花柄は控えましょう)外来に、蜂に刺されてから30分以上して来院され、局部の腫れと痛みだけだと、冷やして、ステロイド軟膏ぐらいでOKでしょうか。じんま疹ぐらいなら抗ヒスタミンで様子もみれます。しかし、アナフィラキシーを起こしているようなら注意が必要です。アナフィラキシーショックで、死ぬのはなぜでしょうか。ひとつは、喉頭浮腫です。喉の奥が腫れて、ゼロゼロ言っているようなら危険です。挿管の用意をしておきましょう。次に、喘息発作です。呼吸がしにくい、咳などの症状があれば、危険です。聴診するとヒューヒュー言ってませんか?。最後に、末梢血管が広がって、ショック状態です。顔や末梢が真っ赤になって、血圧が55/触診 脈120なんて言えば、緊急事態ですね。

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アナフィラキシーショック

まずは、ボスミン(エピネフリン)0.3mg 筋注(なるべく大きな筋肉 臀部か大腿外側)です。
10分様子をみて、良くならないようなら、再度 0.3mg 筋注します。

◎酸素投与     必要に応じて
◎輸液       リンゲル液(500〜1500ml)
◎ステロイド    ソル・コーテフ 500mg点注
◎抗ヒスタミン薬  アタP 筋注

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たまに、高血圧でβ遮断薬、α遮断薬、ACE阻害薬などを服用しており、ボスミン筋注が効きにくい人がいます。そういう場合は、グルカゴンの筋注(クリニックにはおいていない)が効果あります。ステロイドや抗ヒスタミン薬は、効果発現まで4時間以上かかります。一旦よくなったとしても、二峰性で症状がぶり返す場合(5〜33%)もあり、 最低でも4時間は経過を見て、原則は入院して経過観察です。(特に子供は、24時間)


食物アレルギーの診断

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何を食べたか?どれくらい食べたか?食べてから発症までの時間は? これらが、診断のヒントになります。症状が出現して30〜60分でピークに達し、重症でなければ半日以内に消失します。同じような食品を食べたときに同じような症状を経験する こと(再現性)は、原因アレルゲンを決定するうえで重要な情報となります。

 

血液検査

血液中の食物アレルゲンに対する血中抗原特異的 IgE 抗体の有無を調べる検査です。アレルゲンごとのIgE 抗体の量です。血液中のIgE抗体の量(UA /ml) をわかりやすいように 0 〜 6 にクラス分けしてあります。クラスが高いほどアレルギー症状が起きやすくなります。たとえば、牛乳のクラスが5ですから、牛乳を飲むとアレルギー症状が起きる可能性が高いということです。アレルゲンの頻度として高いものは、乳幼児に多いのは、牛乳と卵白、小児に多いのは小麦と大豆、ゴマ、大人に多いのは、魚介類と果物で、年齢を問わず多いのは、そばとピーナッツです。

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プロバビリティカーブ(症状誘発の可能性、確率)

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プロバビリティーカーブは、縦軸が症状誘発の可能性、横軸が特異的IgE 抗体価の測定値です。このカーブは実際に食べたら、どのくらいの確率で症状が起こるかの参考になります。牛乳のIgE 抗体の測定値が61.4UA /mlなので、ほぼ100%なので、「飲んだら、症状がでる可能性が高いので、まだ飲まない方がよいね」となります。ちなみに、牛乳の IgE 抗体の測定値が3. 0UA /ml のあかちゃんだったら、症状が誘発される確率は1歳未満の児では約90 %、1歳児では約50 %、2歳児以上の児では約 30%ということになります。同じ値でも、年齢が低いほどアレルギーがおこる可能性が高くなるわけです。小麦はクラス 3の陽性です。しかし、小麦は特異的IgE抗体価と症状があまり相関しないと言われています。つまり、数字が高くても、食べて症状がでないことがある反面、低いのにアナフィラキシーショックなど重篤な症状を起こすことがあります。あくまでも血液中のIgE抗体の量は、目安であって本当に症状を引き起こすかどうかは一人一人違うので注意が必要です。


皮膚テストや食物経口負荷試験は、アレルギーの原因の確定診断を行います。アナフィラキシーショックを誘発する危険もあり、専門医療機関にお任せします。

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プリックテストは、抗原特異的IgE抗体を証明するための皮膚テストです。食物経口負荷試験は、食物アレルギーの原因食物の確定や耐性獲得の診断、食物制限の再評価のために行います。明らかな誘発症状を経験してから 1 年以上経過し、IgE抗体価が低下傾向にある食物について、医療施設の負荷試験の経験や医療体制を踏まえ、安全に実施できる時期や方法を決定します。リスクの高い負荷試験は専門施設に入院して行います。

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ヒスタミン中毒

魚を食べたらじんましんが出た、アレルギーかもしれない!と思ったことはありませんか?もしかしたら、それは食中毒かもしれません。1型アレルギーと似たような症状を示す食中毒に、ヒスタミン食中毒があります。ヒスタミン食中毒は、ヒスタミンを多く含む食品を食べることでおこります。主な原因食品はサバ、マグロ、イワシ等の赤身の魚です。

ヒスタミンは体内でも合成されますが、食中毒の問題となる場合は、ヒスチジンというアミノ酸を多く含む食品を室温等の不適切な温度で保存した場合に、食品に付着したモルガン菌(Morganella morganii)等のヒスタミン産生菌によって産生されます。ヒスタミンの中毒量は22~370mgとされています。

図2ヒスタミンの生成経路

原因食品を食べた直後~1時間程度してから、味覚異常(ピリッと苦味を感じる)口の痺れ、顔面のほてり、喉の灼熱感、口渇、中枢神経症状(頭痛、めまい、不安感)消化器症状(吐気、嘔吐、腹痛、下痢)循環器症状(動悸、血圧低下)呼吸器症状(喘鳴、呼吸困難)じんましん等のアレルギー様症状です。ヒスタミン中毒を蕁麻疹+急性胃腸炎の合併、もしくは食物アレルギーと診断しないよう注意が必要です。

治療は、H1受容体拮抗薬、症状が強い時には、H2受容体拮抗薬を併用します。通常、24時間以内に自然軽快します。重症のヒスタミン中毒でアナフィラキシーとの鑑別が困難な場合の初期治療は、アナフィラキシーに準じて対応します。

ヒスタミンは加熱や冷凍では分解されないので、一旦ヒスタミンが蓄積した魚は加工してもヒスタミン中毒を生じます。ヒスタミンが増加しても味や臭いは変化しません。販売店で購入した生のサバを25℃、4℃、-30℃でそれぞれ保存し、ヒスタミンの増加を調べました。サバを25℃で24時間放置すると、ヒスタミンの量は4,500µg/gに増加しました。これはこのサバを4.9g食べただけで食中毒を発症する量です。(食中毒の発症量を22mgとした場合)一方、冷蔵庫に保存した場合、1週間まではヒスタミンが増加しませんでしたが、2週間以上保存するとヒスタミンが増加しました。また、-30℃では4週間保存後もヒスタミンは増加していませんでした。このことから、食品の保存温度、保存期間には注意が必要であることがわかりました。予防は、鮮度の低い魚は食べないようにしましょう。

図3保存条件とヒスタミンの量


食事療法の実際

食物アレルギー食事療法の基本は、必要最小限の除去にとどめ、成長に伴い治っていくことを念頭において解除をすすめ「食べること」を目指したものです。

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アレルゲン摂取回避のためのポイントは、原因食品を食材として用いないで調理することが、最も基本的かつ合理的な方法です。現在の日本の食糧事情においては、栄養面の代替で問題を生じる心配はありません。食品によっては加熱調理による抗原性の低下が可能です。卵は加熱することで抗原性が低下します。(牛乳のカゼインや小麦は、加熱しても抗原性に変化なく、余り影響を受けません)マグロはだめでも高圧加熱処理したツナ缶は食べられることがあります。発酵でも低アレルゲン化され、大豆アレルギーでもしょうゆ、味噌、納豆は食べられる場合もあります。また、牛乳のカゼインを加水分解した製品や乳清由来のタンパク質を使用した牛乳アレルゲン除去調製粉乳など低アレルゲン化食品の利用などが挙げられます。

アレルギー物質の食品表示について

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加工食品を買う場合には、アレルギー物質の食品表示について理解しておかなければなりませんが、 これがたいへん難しいのです。食品衛生法の改正により、2002 年 4 月から容器包装された加工食品1g中に特定原材料(卵、牛乳、 小麦、そば、落花生、エビ、カニ)が数μg以上含まれているときには、アレルギー表示が義務付けられるようになりました。
ちなみに、アレルギーを起こす量、数μg(マイクログラム)/g(ml)とは、たとえば、1リットルの水に、牛乳0.3ml(1滴は0.05ml)加えた濃度ぐらいです。

必ず表示されるもの(義務品目 7品目)

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表示が勧められているもの(推奨品目 18品目)

食物アレルギー のコピー

特定原材料に準ずる  注意) 2008年からエビとカニは、義務品目になりました。


いつものことながら、何にでも例外というものがあります。対面販売の惣菜やお弁当、店頭調理品、レストランなどでは、表示義務がないので、気をつけましょう。

アレルギー物質の表記名にはいろいろな書き方があります。

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たとえば、義務品目の「卵」の場合、代替表記として「たまご、鶏卵、あひる卵、うずら卵、タマゴ、玉子、エッグ」が認められています。更に、これがわかりにくくしている原因ですが、当然「卵」が含まれていると類推できる特定の加工食品( マヨネーズ、かに玉、親子丼、オムレツ、目玉焼、厚焼玉子、オムライス等)が表記されている場合も改めて、「卵」と表記する必要はないことになっています。

 

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「乳」は、もっとややこしく、代替表記として「生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、加工乳、クリーム(乳製品)、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ(乳製品)、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー(乳製品)ホエイパウダー(乳製品)、たんぱく質濃縮ホエイパウダー(乳製品)バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料」特定加工食品として「アイスクリーム、生クリーム、ヨーグルト、ミルク、レーズンバター、バターソース、ガーリックバター、ラクトアイス、アイスミルク、カマンベールチーズ、プロセスチーズ、ブルーチーズ、コーヒー牛乳、牛乳がゆ、乳糖」が認められています。なんでこんなにややこしいのでしょうか?「乳」と併記すればそれでいいわけで、なぜ、わざわざわかりにくくするのでしょうか?わけわかりませんね。これも日本の縦割り行政の弊害のひとつではないでしょうか。

耳慣れない食品表示も消費者には、やさしくない表記です。

  • 乳化剤  混ざりにくい2つ以上の液体を乳液状またはクリーム状にする添加物で、卵黄や大豆、牛脂から作られます。 牛乳から作られるものではないので、牛乳アレルギー患者でも摂取できる。
  • 乳酸菌  乳酸菌食べ物を発酵して乳酸を作り出す細菌の名前。ヨーグルトや乳酸菌飲料などの乳製品の発酵によく利用されますが、菌そのものは牛乳とは関係なく、牛乳アレルギー患者も摂取可能。しかし、乳酸菌で発酵した乳(発酵乳)は原材料が乳であるため、牛乳アレルギー患者は摂取できない。
  • カゼイン 牛乳に含まれる主なたんぱく質で、熱では凝固しにくいのですが、酸で固まる性質があります。結着性に優れているので、アイスクリームやソーセージ類、お菓子、パンなどに使われています。
  • ホエイ  牛乳に含まれるたんぱく質で、酸や酵素で固めた時に残る液体の部分(乳
清)。牛乳を加熱すると表面に生じる薄い膜はこのたんぱく質です。
  • タンパク加水分解質 肉、魚、大豆、小麦、とうもろこしなどのたんぱく質を、ペプチドからアミノ酸まで分解したもの。うま味調味料として使用されます。
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加水分解質

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有効成分の三行目に、水解小麦末とあります。加水分解コムギは“茶のしずく石鹸”以外にも入っていますが、 小麦アレルギーが複数人発症したという報告はまだありません。なぜ、“茶のしずく石鹸”でのみで、小麦アレルギーの患者さんが多発してしまったのでしょうか?同じ加水分解コムギでもメーカーによってその作り方が異なり、さらに製品によって使用濃度や使用方法も異なります。理由として、加水分解コムギの含有濃度が他の製品に比べ比較的高かったということ、洗顔石鹸という使用用途で使用したために、皮膚と違って簡単に洗い流せない眼や鼻の粘膜に石鹸が付着し、長期にアレルゲンにさらされやすくなったこと、さらに、眼や鼻の粘膜は比較的アレルゲンが吸収されやすいこと、また、石鹸は界面活性剤がおもな成分ですから皮膚のバリア機能を多少なりとも破壊し、アレルゲンが吸収されやすくなる可能性などが推測されています。

 

 

口腔アレルギー症候群

それまで普通に食べられていた新鮮な果物や野菜を食べると、口腔局所のアレルギーを生じることがあります。これは口腔アレルギー症候群(OAS)といい、加熱された加工品や市販のジュースでは症状は誘発されません。まれに一気に多量に食べると強い症状が誘発される場合があります。 血液検査では診断がつきにくいため、新鮮な果物や野菜そのものを利用した皮膚試験 (プリック・プリック試験)によって診断が行われます。OASは多くの場合、花粉症を合併しています。食べて変だなと思ったら、それ以上食べないようにしましょう。

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交差抗原性

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ニワトの卵とウズラの卵、これだとよく似ていますから、アレルギー反応が起こるかもしれないと予想しやすいですよね。こうした場合、ニワトリの卵とウズラの卵には交差抗原性があるといいます。メロンに対するアレルギーがある人は、バナナ、アボガド、スイカに対して90%以上の交差性があり、甲殻類にアレルギーがある人も他の甲殻類に70%以上の確率で交差性があるようです。ピーナッツ類の交差性は半分ぐらいですが、アレルギー反応が起こった時は、重篤になるので、避けておいた方が無難だと思います。花粉と果物などの交差性として、シラカバ花粉とリンゴなどバラ科の果物、スギ花粉とトマトといった組み合わせの交差抗原性が原因で発症すると考えられています。 
また花粉以外にも、ラテックス(ゴムの木の樹液)と果物の交差性として、天然ゴム製品による即時型アレルギーで、広範囲な植物(クリ、グレープフルーツ、バナナなど)に交差反応を示すので、あまり関係がないように見えて、油断は禁物です。

 

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

食べるだけなら平気でも、原因となる食品を食べた後に運動することによりアナフィラキシーが起こることがあります。運動で腸での消化や吸収に変化が起き、未消化なタンパク質が吸収されてしまって起きると考えられています。食物依存性運動誘発おもなアレルゲンは、小麦、甲殻類で、ある種の解熱鎮痛剤が発症に関与する場合があります。運動前には原因食品を食べさせない、原因食品を食べた場合、食後2時間(4時間)は運動を避ける(特に午後の体育)皮膚の違和感など症状前駆症状が出現した段階で運動を中止し休憩する、感冒薬など内服した場合は運動を避けるなどに注意しましょう。 

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「先生、慌てないで・・・」


学校の先生もエピペンが使えるようになりました。アナフィラキシー発現時の症状や緊急時の連絡先、内服薬やエピペンの使用のタイミングや使用方法などを理解してもらうようにしましょう。

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緊急時の備え

誤食が確認できなくても、疑わしい症状が見られた場合には、早めに処置を開始します。息苦しさや繰り返す嘔吐が、咳や腹痛、じんま疹よりも先に出現することもあり、それをアレルギー症状と気づくことが大切です。

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嘔吐を繰り返す、息苦しい、だるさ、眠気、顔面蒼白、冷や汗、意識レベルの低下が見られるときは、エピペンを注射し、直ちに救急車で病院に搬送しましょう。

 

エピペン®(アドレナリン自己注射器) の使い方

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エピペン®は、1本15000円程度、使用期限は1年ちょっとしかなく、費用負担の大きなお薬でしたが、2011年9月22日、保険適応が認められました。

 

 

まさか、こんなことろから

ノズル共通タイプの自動販売機では、前に購入されたコーヒーのミルクがノズルに残っている場合があります。同様のことは、 お父さんがカフェオレを飲むときに利用したスプーンに残った微量のミルク、食品表示に書いていなくても、工場の生産ラインでの混入などは、メーカーに問い合わせて初めてわかる場合も少なくありません。

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おばあちゃんのお土産? 知ってるはずだけど・・・ (^-^;

アレルギーのことをよく理解してくれ ている家族や親せきからもらった食品であっても、もう一度自分の目で原材料表示を確認することは失礼なことではありません。 食物アレルギーは、決して好き嫌いではありません。最悪、アナフィラキシー反応を起こして死んでしまうこともある疾患なのです。「あれは食べられません」「これもダメ」というのを「なにを我が儘(贅沢)言ってるの、なんでも食べなきゃ大きくなれなませんよ」と昔なら言うでしょうが(スポ根精神で水を飲んじゃダメというのと同じ)その一言が、知らなかったではすまない大変なことになるかもしれません。

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社会的対応はまだまだ

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一般的には、なにかを食べてアレルギーが出たと言えば、「サバを食べてじんま疹が・・・」という程度の認識ではないでしょうか。食物アレルギーで、呼吸が苦しくなって、意識がなくなって・・・なんてことが起こること自体、あまり知られていないのが現状です。また、乳幼児期に栄養価の高い卵や牛乳を血眼になって与えない母親の姿をなにか新興宗教に取り憑かれているかのように見る人もまだまだ少なくありません。社会の対応は、学校から始まったばかりです。その対応レベルは様々で、アレルギーに対応した給食作りで、詳細な献立表を作製して、アレルゲン成分含有の情報を保護者に伝え、給食を全く食べない「完全弁当持参」と食べられない一部の献立の代わりに弁当を持ってくる「一部弁当持参」など。 また、調理の過程で、アレルゲン食品を加えない給食を提供、単品の牛乳や果物を除いたり、除去した食材に対して、替わりの食材を加えたり、調理法を変えたりして完全な献立を提供することまでをいいます。

 

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免疫学的寛容

免疫というのは、非自己(自分の細胞でないもの)に対して排除しようとする反応です。ウイルスや細菌などのばい菌に対しては、たいへんありがたいシステムですが、食事に対していちいちアレルギーを起こしていると生きていけませんよね。食物中のタンパク質が十分に消化されて、アミノ酸かアミノ酸が数個つながったペプチドにまで分解されてしまえば、吸収されても免疫反応は起こらず、栄養素として使われます。乳幼児期には、腸管のいろいろなバリアがまだ完全ではなく、未消化な食物の体内への侵入し、アレルギーをおこしています。しかし、消化能力やバリア、分泌型 IgA を中心とする腸管の局所免疫能が成熟してくると 未消化なタンパク質の吸収が減って、IgEを産生するリンパ球より、ブレーキ役のリンパ球が増えて、アウトグロー(耐性獲得)して、成長とともに食物アレルギーを克服していきます。

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武内澄子さん、食物アレルギーの子を持つ親の会代表。自分の娘さんの生後すぐから大学生になるまでの食物アレルギーの子育てのことが書かれています。この本は、診断や治療法など書いたものではなく、実体験としての日常が書かれているので、同じ食物アレルギーの子を持つ親御さんにとっては、 家庭でのアレルギーの子供への対応はもちろんのこと、 入園・入学後に起こりうる諸問題への対策は(園・学校選び、弁当・給食問題、調理実習や修学旅行・体験学習などへの参加、外食や旅行など)とても参考になるのではないでしょうか。巻末に載せられている食品表示の読み方なども勉強になります。