緩和ケア

 私の母は膵臓癌で亡くなりました。行年66歳でした。見つかった時は癌は6cmであり、既に腹膜にも播種しており手遅れの状態でした。余命数年と予想されましたが、現実には4ヶ月であっという間に逝ってしまいました。現在、がんによる死亡が年間30万人を超えており、我が国の死因の第1位となっています。

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勤務医時代は循環器医として心筋梗塞ばかり診ていましたので、癌の患者さんを診ることはほとんどありませんでした。しかし、開業すると、癌の患者さんはたくさんおられます。病院で治療されても最後は自分の家で死にたいと希望されて、在宅を依頼される患者さんもたくさんおられます。

緩和ケアの定義は、いろいろあるようですが、WHO(2002)によると

緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、QOLを改善するアプローチである。

最後の死ぬ間際まで、その人らしく生きるためには、身体的な苦痛がないということが最も重要なことです。癌の患者さんとのお付き合いは、2週間ぐらいのこともあれば、数年になることもあります。癌の患者さんが望む可能な限り快適な時間を過ごすための処方箋が「緩和ケア」です。

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日本では、癌の痛みは我慢するものと思っています。

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日本で「がんの痛み治療」の普及が遅れているのは、医療用麻薬に対する誤解や偏見があるためです。麻薬と聞くと不安に思う方もいらっしゃるでしょうが、痛みのある人に医師が適切に使用する医療用麻薬は、安全で効果的です。

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中毒になる
慢性的に痛みのある人が適切に、医療用麻薬を長期間使用し続けても、中毒(習慣性)になることはありません。疼痛下では、κ受容体が活性化され、耽溺性、耐性を生じないとされています。医師の指導の下で適切に使用した場合には、中毒になる頻度は0.2%以下と報告されています。

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死期を早めてしまう
医療用麻薬でキチンと痛みを取ることによって、気力・体力が回復し、がんと向き合うことが出来、生活の質も向上して、最後まで自分らしさを保つことが出来ます。昔は最後の最後まで痛み止めを使っていなかったので麻薬を使うと最後という間違ったイメージが定着していますが、痛みはがんの経過のいずれの時期でも生じ得ます。がんの早期でもいたみの強さに応じて適応を判断して使用することで、決して死期を早めるというようなことはありません。麻薬の使用量と予後には相関はありません。

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次第に効かなくなってくる
医療用麻薬の使用量が増えていくことがありますが、これは効かなくなっているのでははなくて,がんの進行に伴って痛みが増強したために、量が増えているためです。鎮痛のための医療用麻薬の十分量を適切に使用することが大切です。


日本では、がんの痛みを持つ患者さんに対して緩和治療が行われているのは、わずか4割と報告されています。患者さんも医師に痛みを訴えていないのです。

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痛みがあったら、がまんしないで遠慮なく医師や看護師さんに伝えましょう。


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WHO方式がん疼痛治療法の基本は、医療用麻薬を十分量を適切に使用することです。軽度の痛みに対しては、NSAIDsまたはアセトアミノフェン、軽度〜中等度では、コデインなどオピオイド鎮痛薬を使用し、アセトアミノフェンは併用します。高度な痛みに対しては、オキシコドンのようなオピオイド鎮痛薬を使用します。しかも、痛みの治療は、必ずしも第一段階から導入するのではなく強い、耐え難い痛みの場合は、最初から痛みの程度に合った第三段階のオピオイドを使用することが大切です。

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  WHOの三段階除痛ラダー


1)非オピオイド
 アセトアミノフェン 食事が食べられなくても(空腹時)胃腸障害少ない
 セレコックス    抗炎症作用も必要な場合はこちらを選択
 ロキソニン、ボルタレンは、屯用で使用。(坐剤もあり)副作用として、腎機能障害(浮腫んだり)消化管障害(胃痛、貧血)出血傾向などに注意。

2)弱オピオイド
 リン酸コデイン 咳止め 便秘の副作用に注意 
 ペンタジン   
 トラマール(トラマドール)常用量以上増やしても効果増強なし

3)オピオイド 
 モルヒネ系   呼吸困難にはこれを
 オキシコドン系 便秘、嘔吐、眠気などの対応を
 フェンタニル系 副作用が少ない

副作用対策
便秘については、カマグ、プルゼニド、漢方など。
嘔吐については、ノバミンを併用して、2週間ほどで中止。
眠気については、メガシャキ、眠眠打破(カフェイン入りドリンク)で

補助薬剤
神経を巻き込んだ痛み      リリカなど
電気が走るような痛み      ガバペンなど
骨の痛み、息苦しい しんどい  ステロイドなど
しびれ             抗うつ薬など

ホットパック 入浴サービス リハビリ、マッサージ(関節、筋肉を動かす)音楽療法、ペットなど考えられる緩和ケアを施しましょう。


「痛み」は人によって感じ方や程度が異なり、主観的な感覚ですから「どのくらい痛いか」を客観的に評価することができません。そのため、「評価スケール」という痛みの強さを測る“ものさし”のようなものが使われています。

視覚的評価スケール(VAS:Visual Analog Scale)

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「0」を「痛みはない」状態、「100」を「これ以上の痛みはないくらい痛い(これまで経験した一番強い痛み)」状態として、現在の痛みが10cmの直線上のどの位置にあるかを指で示す方法です。

数値評価スケール(NRS:Numerical Rating Scale)

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VASと似た方法として、痛みを「0:痛みなし」から「10:これ以上ない痛み(これまで経験した一番強い痛み)」までの11段階に分け、痛みの程度を数字で選択する方法です。国際的に痛みの評価ツールとして合意されているスケールです。

表情評価スケール:FRS(Face Rating Scale)

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痛みの程度を、笑っている顔から泣いている顔の6段階の表情で表わし、現在感じている痛みがどの表情に近いかを選択する方法です。



日本でもWHO方式がん疼痛治療法で、90%以上のがん患者さんの痛みが消え(完全な除痛+ほぼ完全な除痛)、残りの患者さんの痛みも軽くできたという結果が出ています。

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日本での「がんの痛み治療」は、まだ始まったばかりです。がん性疼痛に使われた医療用麻薬の消費量をみても、日本人のがん患者さんが、いかに痛みをがまんしているのかがうかがえます。

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アルコールに対して強い人、弱い人がいるように、鎮痛のための医療用麻薬の十分量にも個人差があります。 痛みが消えるまで、医療用麻薬の量を増やしていきます。 たとえ医療用麻薬の量が増えたとしても、それによって中毒を起こしたりすることはありません。痛みが消えるその量が、その方の十分量なのです。これは「WHO方式がん疼痛治療法」の最も大切なことの一つです。


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とは言っても・・・

病気の症状の中でも「痛み」は、昔から医療の原点であり、実際の臨床では、がんの疼痛に限らず、痛みに苦しみながら、病院を渡り歩いている患者さんも多いのが現状です。腰痛にしても80%は原因不明です。慢性疼痛が緩和されるかどうかは、患者さんの痛みの歴史を拝聴し(診断の曖昧さや医療に対する不満、不信が多い)病態を十分に説明し、治療に限界があることを念頭に置いて、治療のゴールを痛みの消失ではなく、日常生活の目標(旅行に行ける、散歩が出来る)などに置き換えていくことが大事です。

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終末期で、がんの患者さんが在宅に帰ってきた時、痛みについては「夜、寝られていますか?」と聞いてみましょう。夜に痛みで目が覚めると言った症状がある場合は、すぐにオピオイドの増量して、十分に睡眠がとれるようにしてあげることが大切です。次の段階で、昼には安静にしていたら痛みがない状態まではなんとかもっていけるようにします。理想的には、動いても痛くないと言うレベルですが、内臓痛が主体の場合は、なんとかなりますが、骨転移やそけい部や頚部などで神経を巻き込んでいる場合は、痛みを完全に取ることは難しい、少し痛みは残りますなど、説明しておく方がいいでしょう。


痛みとは?

「体の組織の損傷、あるいは潜在的な組織損傷に関連した不快な感覚的、精神的な状動的な体験」とされている。痛みの伝達の認知は、通常、末梢神経→脊髄→視床下部→大脳へと伝達される。最終的には頭で認知されているので、その時の様々な環境、心理、肉体の状況により、同じ様な強さの刺激が違った強さの痛みとして感じられる。同じ程度の交通事故を起こして頸椎捻挫をしたとしても、自損とおかまを掘られた場合では、痛みの強さは違うのが人間です。さらに、相手のでかた次第で、痛みは強くなったり、弱くなったりするものなのです。痛みの感じやすさ(疼痛閾値)として痛みが強くなる因子として、不眠、疲労、不安、恐怖、怒り、抑うつ、孤独感などがあり、痛みを弱める因子として、熟眠、会話、気晴らし、楽しさ、安らぎなどがあると考えられています。


トータルペイン(全人的痛み)

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患者さんから 「私のこの痛みは誰も分かってくれない」 という言葉をよく耳にしますが、これは痛みの複雑さを端的に表しています。患者さんが 「痛い」 と訴えたら、身体的苦痛への対処だけでは解決しないことが多く、本当にそんなに痛いの?と思いがちですが、 その原因はともかくとして、その個人の情動体験としての痛みをそのまま受け止めることから、適切な痛みへの対処が始まることを認識すべきなのです。痛みは、症状のひとつと言うだけでなく、痛みそのものを疾患としてとらえて治療を始めなければいけません。


痛みの種類

臨床的に痛みを分類すると、外傷や手術などによって生じる「侵害受容性疼痛」神経自体が何らかの障害を受けて生じる「神経障害性疼痛」特別に組織の障害はなく、いわゆる精神的に生じる「心因性疼痛」の3つに分けられます。これらの痛みは、単純に分けられるものではありません。それぞれが混在して存在します。「転倒して膝が打った」「包丁で指を切った」「夕食を食べてお腹が痛くなった」「介護疲れで頭が痛い」と言われたとき、どの痛みが主たるものかを想像しなくてはなりません。

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また、体性痛(表面痛と深部痛)、内蔵痛、関連痛、心因痛に分けられますが、この内、心因痛以外の痛みが、侵害受容体性疼痛になります。

もうひとつの分け方としては、急性痛、慢性痛などという分け方もあります。実際の臨床の現場では、慢性疼痛といわれ、疼痛のコントロールに難渋する患者さんがいます。初期段階では、それぞれの疼痛が独立して存在していても、痛みを放置しておくと、痛みの悪循環で重複して発生したり、長期にわたって持続するようになってしまいます。「慢性疼痛」の定義は、通常治癒するに必要な期間を超えて痛みが続くような場合で、概ね3ヶ月以上続くことが目安です。

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最初の急性疼痛として、通常の痛みである侵害受容性疼痛により、大脳皮質で「痛み」として認識されると同時に、交感神経系も刺激され、アドレナリンが分泌される。また、脊髄反射によって運動神経が刺激されて、筋攣縮が生じ、血管が収縮して痛みを感じる領域が虚血を招き、炎症が誘発され、生体内に存在するブラジキニンやカリウムなど様々な発痛物質や発痛補助物質が生成される。このような痛みの悪循環が完成されてしまうと、痛みの発生・維持のメカニズムが複雑に絡み合って、元来の疼痛の原因が消滅しても痛みがとれず、難治性の慢性疼痛に進行していくことは稀ではなく、できるだけ早期に疼痛治療を始めることが非常に大切になります。

疼痛緩和の目標

もっとも大切なのは、患者さんが痛みを受け入れて安心して過ごせるということです。慢性疼痛を治療するときに最も重要なのは、ゴール設定です。長期にわたり、疼痛が持続している人の痛みをゼロにすることは簡単ではありません。薬を徐々に増量し、副作用と相談しながら、落としどころを模索する症例もあることは事実です。まずは、寝られること、30%減 → 半減で外出、家事など痛みをあるけれど日常生活が改善できるようになる。ここを目指すようにしましょう。


侵害受容体性疼痛(いわゆる普通の痛み)

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体の組織に害を及ぼすような強い刺激が、侵害受容器に加わると、Aδ線維(最初に感じるズキンとくる痛み:歯を治療中の痛み、弁慶の向こう脛を打った時など)C線維(後からくるじわーとくる痛み:歯の治療が終わってしばらくしてからの痛み、向こう脛を打った後に、ズキズキと残る痛みなど)を経て、脊髄後角に分布する神経細胞に信号が伝えられる。その後、介在ニューロンを経由、あるいは直接、上位中枢へ信号は伝達され、大脳皮質で「痛み」として認識される。

 Aδ線維は、有髄神経で、非常に早く痛みを大脳皮質の感覚野(体性)に運んでいく。NSAIDsがよく効く。
 C線維は、無髄神経で、ゆっくりと痛みを大脳辺縁系(情動)に運んでいく。オピオイドがよく効く。

侵害刺激による痛みの例

◎捻挫した関節、やけど、切り傷が腫れて熱をもって痛む:傷害された組織で炎症が起こり、痛みをおこす化学質 (発痛物質)が出て、侵害刺激となる。また腫れが神経 を機械的に刺激する。
◎虫歯であごまで腫れて痛む:感染に伴う炎症反応、腫れによる物理的刺激
◎おなかの痛み:強い消化管の収縮や拡張:機械的刺激、虚血に伴う発痛物質など腹膜への炎症波及
◎頭痛:偏頭痛でずきんずきんと痛む
◎髄膜炎での痛み:髄膜への炎症 髄膜炎での痛み などなど

白紙

七転八倒している患者さんとじっと蹲っている患者さん、どちらが重症でしょうか?痛みの程度で、判断するのは危険な事もあります。体性痛は、Aδ線維で伝わる強い痛みで、右下腹部とか、左側背部とか場所がはっきり限局していて、動くと痛いので患者さんはじっとしています。内蔵痛は、だいたい体の真ん中あたりで、痛みの局在がはっきりせず、吐いたり、冷や汗をかいたり、患者さんは体の置き場がなくてあっち向いたり、こっち向いたりしています。炎症が腹膜に及ぶと体性痛に変わる事もあります。

通常は、アラキドン酸カスケード系の活性化によってシクロオキシゲナーゼを介して産生されるプロスタグランジンなどの物質が痛みの発生に関与しているため、NSAIDsアセトアミノフェンが第一選択である。効果が乏しい場合は、オピオイド(脊髄後角に作用し、疼痛伝導を抑制する)も選択肢のひとつである。


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 関連痛

関連痛とは、ある部位の痛みを異なる部位の痛みと脳が勘違いをしています。内蔵痛(C線維)が後根に入ると、同じレベルに入ってくる体性痛(Aδ線維)と勘違いして、そのレベルの皮膚の痛みとして感じてしまうわけです。

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例えば、虫垂から入る内蔵痛は同じ高さの皮膚からのAδ線維に投射して、臍のあたりが痛いと感じます。腹腔内の臓器は、腹腔神経節に入って、投射されるところは、せいぜいT5ぐらいまで(肩甲骨の下縁)です。胆嚢炎で有名なのはボアス点(T10レベルの右3cmぐらい)へ投射されます。心臓は、迷走神経と交感神経によって支配されています。この中で、痛覚を伝える知覚線維は交感神経に含まれており、T1~T4の脊髄の後根を通ります。この高さの脊髄の後角に入ってくる皮膚の痛みと取り違えて脳へ伝えてしまいます。また、心臓の心膜には、左右の横隔神経が付着していおり、心筋の炎症が心膜にまで及ぶと、心膜に付着している横隔神経の知覚線維を刺激し、神経発生学的に、横隔膜の刺激は、C2C3の脊髄後角へと伝えられ、両肩の皮膚の痛みとして感じます。つまり、心臓に障害が起きるとC2C3、T1~T4が支配している皮膚領域に関連痛が生じる可能性があります。具体的には、肩の周囲、腕内側から上肢にかけての領域である。心臓の関連痛が左に優位なのは、心臓の左室にて心筋梗塞がおこっているからと考えられています。


神経障害性疼痛(しびれ)

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神経組織そのものが傷害された時の起こる痛みです。末梢神経性疼痛(神経根、神経叢、末消神経)と中枢神経性疼痛(脊髄や脳幹、視床、大脳皮質など)があります。その発生には、下行性疼痛抑制系の異常や侵害受容伝達の亢進などの機序が考えれています。しびれが切れた時に似た何とも言いようのない電気の走るようなシビレ痛みなど、様々な表現がなされる(灼熱痛、電撃痛、痛覚過敏、アロディニアなど)痛みの感じる場所は、傷害されている場所から離れたところになることも多い。

神経障害性疼痛の例

◎三叉神経痛
◎肺尖部の肺癌が腕神経叢へ浸潤したときの上肢や肩の痛み
◎腰椎椎間板ヘルニアでの下肢の痛み
◎骨盤内の腫瘍が坐骨神経叢へ浸潤したときの下肢の痛み
◎帯状疱疹後疼痛
◎脊髄損傷後の痛み
脳卒中後疼痛
がんによる神経障害性疼痛
脊髄圧迫症候群や腕神経叢や腰仙部神経叢えの浸潤などがある。がん全体の15〜20%に認めらる。体性痛や内臓痛と異なり、NSAIDsやアセトアミノフェンは無効で、オピオイドなどの鎮痛薬でも十分なコントロールが得られないことも多く、様々に鎮痛補助薬(抗うつ薬や抗てんかん薬)やが併用される。


採血による神経障害性疼痛

ほとんどの看護師さんが肘のやや内側にある一番太い静脈(尺側正中皮静脈)から採血しますが、その下には正中神経(上腕動脈のすぐ内側)が走っており、また内側前腕皮神経(交差している)を傷つける可能性があります。患者さんへの負担や事故のリスクを極力避けるということを考えれば、できれば外側の細い静脈からの採血をお勧めします。橈骨皮静脈は、深部に動脈がありませんし、近くに神経もあまりなく、また外側のほうが痛みを感じにくい(上半身は背面より前面、下半身は前面より後面、一般的に皮膚の柔らかい部分は敏感)とされています。

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採血による神経障害性疼痛の症状は、採血時にひびくような痛みを感じ、針を刺した局部は、腫れたり内出血したりしていないのに、前腕に広かって行くような焼ける様な感覚鈍麻なしびれの様な痛みで(感覚障害あり)NSAIDsを処方しても効果ない場合に強く疑います。トリプタノール(テグレトール)などの処方でよくなる場合もあります。5000〜3万回の採血に1回起こると言われています。医療訴訟になることもあり、気をつけるにこしたことはありません。


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 アロディニア

アロディニア症は、異痛症とも呼ばる症状で、わずかな刺激が激痛に認識される感覚異常を指します。その痛みは神経の痛みではなく、脳が勝手に痛みを感じて起こす症状だと言われています。健常者では、痛みを認識した場合、脳はセロトニン等を出して痛みを抑えるという働きをしますが、アロディニア症の人の場合は、セロトニン等の痛みを抑える物質の量が減り、少しの刺激が激痛に感じてしまうようです。

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アロディニア症は、男性よりも女性に多い症状のようです。帯状疱疹後疼痛、片頭痛などの痛みのメカニズムとして注目されています。片頭痛は、血管の拡張と炎症が脳幹部の三叉神経に伝わることで起こる頭痛といわれています。片頭痛患者が示す症状の中には、顔に風が当たると痛い、メガネやイヤリングが不快、くしやブラシが痛くて使えないといったものがありますが、これらは頭部アロディニアと呼ばれています。さらに脳が過敏になると、頭部だけではなく、手足のしびれや腕時計、ベルトが不快になることもあり、これらは頭蓋外アロディニアに分類されます。また、帯状疱疹後疼痛で悩む人は、衣服が体に擦れるだけで電気が走ったような激しい痛みを感じて、服も着れず、裸でいる人もいます。


鎮痛補助薬

抗けいれん薬 
電撃痛など発作性の痛みに効果的である。作用機序としては、興奮性神経の前シナプスに存在するCaチャンネルの遮断作用(リリカ、ガバペン)や損傷神経や脊髄後根神経節に過剰発現し、異常発火の原因となるNaチャンネルの遮断作用(テグレトール)過剰な神経興奮を抑制するGABA系賦活作用(デパケン、リボトリール)などがある。

抗うつ薬
三環系抗うつ薬(トリプタノール)は中枢神経系におけるセロトニン・ノルアドレナリン再取り込みを阻害し、下行性抑制系の賦活化することにより効果を発揮する。灼熱痛のような持続性の痛みに効果的である。鎮痛効果は1週間でみられ、抗コリン作用による副作用に注意が必要である。

局所麻酔薬/抗不整脈
Naチャンネル遮断作用により効果を発揮する。リドカインは内服困難時にも使用でき、他の鎮痛補助薬と異なり眠気の副作用はない利点はあるが、用量依存的に局所麻酔中毒(めまい、興奮、意識消失、けいれん、呼吸停止など)が、全身状態が悪化したがん患者では少量でも生じるので注意が必要です。 

NMDA受容体拮抗薬
グルタミン酸受容体のサブタイプのひとつで、その活性化が、疼痛の促進、増幅に関与している。ケタミンは、NMDA受容体拮抗作用により、鎮痛効果を増幅する。内服困難時にも使用可能な鎮痛補助薬である。

非薬物療法
神経ブロック(硬膜外ブロック等)が著効する症例もある。結果として鎮痛薬の減量が可能になり、その副作用も軽減される。その他、ボツリヌス毒素によるもの、トリガーポイント注射、局所静注療法、関節内注射、鍼灸などがある。また、低侵襲治療法として、脊髄電気刺激療法や胸腔鏡下交感神経遮断術などが行われている。


心因性疼痛

解剖学的には説明のできない痛みで、身体表現性障害に分類されることが多い。抗不安薬や抗うつ薬が選択されることも多いが、薬のみに頼るのではなく、精神心理的治療が必要である。


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鎌田實先生、つぶれかけていた長野県茅野市の諏訪中央病院を「住民とともに作る地域医療」の病院として再生します。最初に赴任したときの下りで、なるべく注射をしない、できるだけ薬は出さない、という医療を徹底的にして、患者さんはますます減っていきました。僕も開業した当時、悩んだ問題です。お年寄りは、注射やお薬が楽しみなんです。これは、病気を診るのではなく、人を診る感覚としては大事なことなのです。大腸カメラの穴あきパンツも諏訪中央病院発のようです。医学はscienceではなくて、artである。医療者がつい口に出してしまう「がんばりましょう」という言葉に傷つく患者さんがいることを心に留めておかなければいけません。

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徳永進先生、鳥取市内に19床のホスピスケア「野の花診療所」を開設しています。いろいろな「お薬」がでてきます。焼き肉であったり、自転車、ホタル狩り、花火大会、ピアノ、ただ道を歩く、碁が打ちたいなど・・・患者さんを癒すのは、みなれた風景であったり、ありふれた日常なんですね。 また、医療者としての徳永先生の飄々とした立ち位置が、大変参考になりました。がんの末期の患者さんを目の前にして、誰も代わってあげられないし、医師としてなにもできないのですが、話を聴いてあげるところからはじめています。やはり、鎌田先生のお話との共通点は「日常のすばらしさ」「あるがままの大切さ」人の人生って、本当に人それぞれですよね。 でも、いろいろあっても終わりよければすべてよしって気がしています。「死は別に恐ろしいことではない」人生が終わる時、いつもの日のように穏やかに過ごせたらいいですね。


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