百日咳

百日咳の多くの場合、家族内感染です。大人でも学校や職場で集団感染することもありますが、大人は死亡することはありません。問題は、赤ちゃんをはじめ家族にうつすことです。母親からもらう免疫力が弱いために新生児でもかかることがあり、6か月以下とくに3か月以下の乳児が感染すると重症化します。

日本でも、昔に比べれば減りましたが、年間1万人くらいかかっていると推定(診断が難しい)されます。年長児や大人でせきが長引くときは、百日せきのこともあります。低年齢で感染すると症状が重くなるので、多くの国では生後2か月頃からワクチンの接種を開始しています。

症状や経過
最初は鼻水と軽いせきが出て、かぜのような症状を示します。スタッカートのようにコンコンコンコンという短いせきが長く続いてでてくるようになると、有効な抗菌薬でも病状を止めることはできません。そのうちにそのせきの続く時間が長くなって、10秒以上続きます。そうなるとたいへん苦しく、顔が真っ赤になります。せきが続くために息ができません。10秒以上続いたところで、やっと苦しそうに息を吸い込みます。「うーーーーー」と音を出して吸い込むので、英語ではウープ(WHOOP)と言います。実際には、母親が見ていられないくらいに苦しそうな症状です。目が血走ったり、舌の筋が切れたりもします。乳児の場合、特に生後3か月以下ではそのまま息が止まって、死亡することもあります。この時期を何とか乗り切ると少しずつせきがおさまってきます。大人の場合、苦しいですが死亡することはありません。しかし完治するまで2~3か月かかり、これが百日せきと言われる理由です。

重症になると
もっとも深刻な合併症は息ができなくなる無呼吸です。生後6か月以下とくに3か月以下の乳児では無呼吸を起こしやすいのでたいへん危険です。呼吸が止まる場合には人工呼吸が必要になり、死亡することもあります。また、血液の中の酸素が減って、脳症(低酸素性脳症)もおこります。けいれんをおこしたり、知能障害などもおこります。また肺炎を起こすこともあります。

予防は?
四種混合(DPT-IPV)ワクチンまたは三種混合(DPT)ワクチン(いずれも定期接種、不活化ワクチン)で予防します。生後3か月から4週間隔で3回受けると予防効果が高くなります。

自治体によっては、四種混合(DPT-IPV)ワクチンの無料券(接種券)が生後4か月過ぎに届くところもあるようですが、2か月で保健所から送付するように依頼されても、法律的には断わられる理由はありません。

百日咳は、特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症です。母親からの免疫(経胎盤移行抗体)が数%のみと期待できないため、乳児期早期から罹患し、乳児(特に生後6 カ月以下)では死に至る危険性も高い。百日咳ワクチンを含むDPT 三種混合ワクチン接種(ジフテリア・百日咳・破傷風)は我が国を含めて世界各国で実施されており、その普及とともに各国で百日咳の発生数は激減している。しかし、ワクチン接種を行っていない人での発病はわが国でも見られており、世界各国でいまだ多くの流行が発生している。1990 年にロシアから始まったジフテリアの流行同様、ワクチン接種が滞れば再び流行の可能性のある感染症である。

百日咳は世界的に見られる疾患で、いずれの年齢でもかかるが、小児が中心となる。わが国における百日咳患者の届け出数(伝染病予防法では届出伝染病として全例報告)は、ワクチン開始前には10万例以上あり、その約10%が死亡していた。百日咳ワクチンは1950年から予防接種法によるワクチンに定められ接種が開始され、1958年の法改正からはジフテリアと混合のDP二種混合ワクチンが使われ、さらに1968(昭和43)年からは、破傷風を含めたDPT三種混合ワクチンが定期接種として広く使われるようになった。これらのワクチンの普及とともに患者の報告数は減少し、1971年には206例、1972 年には269 例と、この時期に、日本は世界で最も罹患率の低い国のひとつとなった。しかし、1970年代から、DPTワクチン、ことに百日咳ワクチン(全菌体ワクチン)によるとされる脳症などの重篤な副反応発生が問題となり、1975年2月に百日咳ワクチンを含む予防接種は一時中止となった。その結果、1979年には年間の届け出数が約13,000 例、死亡者数は約20~30例に増えた。その後、1981年秋からこの無細胞百日咳ワクチンを含むDPT 三種混合ワクチン(DTaP)が導入され、その結果、再びDPT の接種率は向上した。また、1981 年7 月から「百日せき様疾患」として、定点医療機関(以下、定点)からの報告による感染症発生動向調査が開始され、伝染病予防法に基づく届出数の約20 倍の患者数が報告されるようになった。1982年には全定点からの報告数が23,675(定点当たり12.59)で、その後は約4 年毎に増加するパターンを示しながら減少した。
 1994年10月からはDPT ワクチンの接種開始年齢がそれまでの2歳から3カ月に引き下げられた。
 1997年には報告数が2,708(同1.12)、1998年には2,313(同0.97)に減少した。1999年4月施行の感染症法の元では「百日咳」として定点把握疾患に分類され、全国約3,000の小児科定点から報告されており、2000年3,787例(同1.29)、2001 年1,800例(同0.60)、2002年1,488 例(同0.49)である。また、この報告数を元に算出した年間罹患数の推計値は2000年2.8万人、2001年1.5万人である

百日咳の診断は病原体である百日咳菌の検出(分離)ですが、発症後3週間での検出率は1~3%と低く、臨床的に典型な百日咳例は55.3%、特に成人の百日咳例は2.2%と低いことから、発症後4週間以上の場合は百日咳抗体検査を行います。

従来、細菌凝集反応による百日咳抗体(山口株、東浜株)検査が汎用されてきましたが、試薬製造中止に伴い現在では検査受託していません。

百日咳百日咳菌という細菌によって引き起こされる急性呼吸器感染症で、感染力が大変強く、咳による飛沫で感染します。最初のうちは普通のかぜと変わりませんが、1~2週間が過ぎるとだんだんと激しい咳に変わり、特徴的な咳きこみ発作を起こします。

三種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風)ワクチン未接種者を中心に幼児で散発していますが、最近では成人の百日咳が問題になっています。これは小児期に受けた
ワクチンの効果が年とともに弱くなり、抗体価が下がることによって百日咳に感染してしまうためです。

ワクチン接種後の抗体価は6~10年で減衰し、成人で3週間以上続く咳の原因の2割弱が百日咳だと報告されています。好発季節は春から秋、特に8、9月に多く発生します。

確定診断は鼻咽頭からの百日咳菌の分離同定が必要ですが、検出率が低いため、血清抗体価を測定します。

百日咳菌抗体(細菌凝集法)検査は、ワクチン株である東浜株と比較的最近の流行株である山口株の2種類の抗体を測定します。感染初期と2週間以上経た時期のペア血清測定を行い、4倍以上の上昇で診断します。シングル血清(1回の検査)で診断する場合は、ワクチン未接種者や10歳以上では東浜株、山口株のいずれかが40倍以上、10歳未満ではいずれか320倍以上が目安とされています。ところで、ワクチン接種者では抗体価が長期間持続することがあり、いずれか1280倍以上で最近の感染を強く疑うという報告もあります。

一方、百日咳菌抗体精密(EIA)検査は、PT(百日咳毒素)抗体とFHA(線維状赤血球凝集素)抗体を測定します。FHAはパラ百日咳菌などにも存在するため、PT抗体価の上昇で診断します。ワクチン未接種者で10EU/mL以上、ワクチン接種者ではペア血清測定で2倍以上の上昇、シングル血清では100EU/mL以上あれば最近の感染を疑います。血清診断ではワクチン接種歴などを確認し、総合的に判断する必要があります。

百日咳抗体(EIA)検査は百日咳から分泌される百日咳菌毒素(PT)と菌体表面に存在し宿主への感染成立に関与する接着因子の1つである繊維状赤血球凝集素(FHA)に対するそれぞれのIgG抗体価を測定します。百日咳感染後90%以上でPT抗体およびFHA抗体が検出でき、咳などの症状が現れた2~3週間後から抗体価の上昇が認められます。

PT抗体は百日咳菌に最も特異性が高い検査で感度76%、特異度99%、感染後平均4ヵ月半で著明に減少し始め、1年以内に82%は陰性化すると報告されています。このため、単血清でPT抗体価が100EU/mL以上あれば、最近(4週間以内)の百日咳感染の指標となります。

一方、FHA抗体はパラ百日咳菌など他の菌体にも存在するため交差反応があり、ワクチン接種を行った健常者で高力価での保有率が高いことから診断には用いません。

DPT三種混合(ジフテリア、百日咳、破傷風)ワクチンに含まれる百日咳ワクチンにはPTとFHAが主要抗原として使用されているため、ワクチン接種の効果判定に有用です。

画像の説明

百日咳は、「14日以上の咳があり、百日咳に特有の咳(発作性の咳込み(paroxysmal cough/staccato)、吸気性笛声(whoop)、咳き込み後の嘔吐)」で診断しますが、咳発作が夜間に多いこと、眼瞼の浮腫(百日咳顔貌)を伴うこと、チアノーゼ・無呼吸を伴うなどがあります。

この5年間の統計では、20歳以上の百日咳患者の増加が特徴的です。これには、1975年2月から1980年まで、ワクチン事故のため百日咳ワクチンが中止され、この年代に生まれた人に免疫を持たない人が多いことも一因と思われます。

  国立感染症センター 

百日咳は、1975年以前に、すでに稀な疾患となっていて、1年に1例も見ない年があるぐらい幻の疾患でした。しかし、事故の多発によりワクチンが中止になった1975年以後、百日咳は急激に流行し、

成人では、長く続く咳の約20%は百日咳との報告があり、子どもでの診断の根拠となる白血球増多(15000以上)、リンパ球増多(70%以上)が認められないことが多いことなども知っておく必要があります。

EIA法 PT(百日咳毒素)IgGの実用化
従来の百日咳凝集素価(山口株、東浜株)の測定に変わって、PT(百日咳毒素)IgGの測定が、新しくキット化され、実用化されました。今後、血清診断はこのPTIgG(EIA)の抗体価で診断されるようになっていきます。
この抗体は感染後、平均4ヶ月半で、cut-off値以下まで低下し、1年以内に82%が陰性化すると報告されています。

臨床症状
14日以上の咳があり、かつ下記症状を1つ以上伴う(CDC1997,WHO2000)
発作性の咳き込み
吸気性笛声(whoop)
咳き込みの後の嘔吐

実験室診断では、LAMP法+ペア血清による診断、百日咳菌分離培養、
遺伝子診断などなど限られた施設しかできない血清診断

【 凝集素価 】
DPTワクチン未接種児・者
流行株(山口株)、ワクチン株(東浜株)いずれか40倍以上
DPTワクチン未接種児・者または不明
単血清では評価できないペア血清での流行株、ワクチン株のいずれか4倍以上の有意上昇を確認する必要がある。
【 EIA法:PT(百日咳毒素)-IgG 】
DPTワクチン未接種児・者
10EU/mL以上(Ball-ELIZA)
DPTワクチン未接種児・者または不明
ペア血清:確立された基準はないが、2倍以上を原則とする
参考:単血清:94EU/mL以上(Baughman AL 2004) 100 EU/mL以上(de Melker HE 2000)

診断基準に基づく、PAIgG抗体価を基準とした、診断は以下のようになります。
阪南中央病院小児科のトピックス
治療と感染管理
抗菌薬としては:EM:14日又はCAM:7(~14)日
経静脈的投与としては、PIPC
乳児の重症例には免疫グロブリン
家族内や保育施設内の濃厚接触者には、できるだけ早期に予防内服(EM14日、CAM7日)
濃厚感染者:3フィート以内での接触 1時間以上の同室
接触21日までの観察(潜伏期は通常7~10日 最長21日が根拠となっています)
百日咳が疑われる医療従事者は、適切な抗菌薬(通常CAM)を5日間内服終了まで就業制限

新生児が百日咳に罹患したときには、CAMの有用性はその危険性(肥厚性幽門狭窄症)を大きく上回ると考えられます。

ワクチンの重要性
現行2期接種(11~12歳)DTワクチンに変えて、百日咳ワクチンを加えた3種混合ワクチンへの変更(DT→DTaP)が強く望まれており、準備が進められています。
早期の法整備が期待されます。

病原体は、グラム陰性桿菌である百日咳菌(Bordetella pertussis )の感染によるが、一部はパラ百日咳菌(Bordetella parapertussis )も原因となる。感染経路は、鼻咽頭や気道からの分泌物による飛沫感染、および接触感染である。
百日咳の発症機序は未だ解明されていないが、百日咳菌の有する種々の生物活性物質の一部が、病原因子として発症に関与すると考えられている。病原因子と考えられるものとしては、線維状血球凝集素(FHA )、パータクチン(69KD 外膜蛋白)凝集素(アグルチノーゲン2、3)などの定着因子と、百日咳毒素(PT)、気管上皮細胞毒素、アデニル酸シクラーゼ、易熱性皮膚壊死毒素などの毒素がある。

臨床症状
臨床経過は3期に分けられる。
1)カタル期(約2週間持続):通常7~10日間程度の潜伏期を経て、普通のかぜ症状で始まり、次第に咳の回数が増えて程度も激しくなる。
2)痙咳期(約2~3週間持続):次第に特徴ある発作性けいれん性の咳(痙咳)となる。これは短い咳が連続的に起こり(スタッカート)続いて、息を吸う時に笛の音のようなヒューという音が出る(笛声:whoop)。この様な咳嗽発作がくり返すことをレプリーゼと呼ぶ。しばしば嘔吐を伴う。
発熱はないか、あっても微熱程度である。息を詰めて咳をするため、顔面の静脈圧が上昇し、顔面浮腫、点状出血、眼球結膜出血、鼻出血などが見られることもある。非発作時は無症状であるが、何らかの刺激が加わると発作が誘発される。また、夜間の発作が多い。年令が小さいほど症状は非定型的であり、乳児期早期では特徴的な咳がなく、単に息を止めているような無呼吸発作からチアノーゼ、けいれん、呼吸停止と進展することがある。合併症としては肺炎の他、発症機序は不明であるが脳症も重要な問題で、特に乳児で注意が必要である。1992~1994年の米国での調査によると、致命率は全年齢児で0.2%、6カ月未満児で0.6%とされている。
3)回復期(2,3週~):激しい発作は次第に減衰し、2~3週間で認められなくなるが、その後も時折忘れた頃に発作性の咳が出る。全経過約2~3カ月で回復する。
 成人の百日咳では咳が長期にわたって持続するが、典型的な発作性の咳嗽を示すことはなく、やがて回復に向かう。軽症で診断が見のがされやすいが、菌の排出があるため、ワクチン未接種の新生児・乳児に対する感染源として注意が必要である。これらの点から、成人における百日咳の免疫状況に今後注意していく必要がある。
 また、アデノウイルス、マイコプラズマ、クラミジアなどの呼吸器感染症でも同様の発作性の咳嗽を示すことがあり、鑑別診断上注意が必要である。
 臨床検査では、小児の場合には白血球数が数万/mm 3に増加することもあり、分画ではリンパ球の異常増多がみられる。しかし、赤沈やCRPは正常範囲か軽度上昇程度である。

病原診断
確定診断のためには、鼻咽頭からの百日咳菌の分離同定が必要である。培養には、ボルデ・ジャング(Bordet ‐Gengou)培地やCSM (cyclodextrin solid medium )などの特殊培地を要する。菌はカタル期後半に検出され、痙咳期に入ると検出されにくくなるため、実際には菌の分離同定は困難なことが多い。血清診断では百日咳菌凝集素価の測定が行われることが多く、東浜株および山口株を用い、ペア血清(2 週間以上の間隔)で4倍以上の抗体価上昇があるか、シングル血清で40倍以上であれば診断価値は高い。ただし、凝集素を含むタイプのワクチン接種者では、シングル血清での判断に注意を要する。また最近では、ELISA 法による抗PT 抗体、抗FHA 抗体の測定も時に行われる。研究室レベルでは菌の染色体DNA 解析、PCR 法などによる病原体遺伝子の検出も行われる。

治療・予防
 百日咳菌に対する治療として、クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬が用いられる。これらは特にカタル期では有効である。通常、患者からの菌の排出は咳の開始から約3週間持続するが、適切な治療により、服用開始から5日後には菌の分離はほぼ陰性となる。しかし、再排菌などを考慮すると、抗生剤の投与期間として2週間は必要であると思われる。痙咳に対しては鎮咳去痰剤、場合により気管支拡張剤などが使われる。全身的な水分補給が必要なこともあり、また、重症例では抗PT 抗体を期待してガンマグロブリン大量投与も行われる。
 予防では、世界各国がEPI (Expanded Program on Immunization:拡大予防接種事業)ワクチンの一つとして、DPT ワクチンの普及を強力に進めている。わが国で現在使われている無細胞百日咳ワクチンを含むDPT 三種混合ワクチンは、第1期初回として生後3 ~90カ月(標準的には生後3~12カ月)に3回、及びその12~18カ月後に追加接種を行い、第2期として11~12 歳に、百日咳を除いたDT 二種混合ワクチンによる接種が行われている。わが国の無細胞百日咳ワクチンの有効成分はPTとFHA が主であるが、その量比率はメーカーにより異なっている。さらに、それら主成分以外に凝集原、パータクチンを含むものもある。接種後の全身および局所の副反応については、従来の全菌体ワクチンに比較して格段に少なくなっている。
 また、年齢、予防接種歴に関わらず、家族や濃厚接触者にはクラリスロマイシンなどを10~14日間予防投与する。

百日咳は5類感染症定点把握疾患に定められており、全国約3,000カ所の小児科定点から毎週報告がなされている。報告のための基準は以下の通りになっている。
○診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下の2 つの基準を全て満たすもの
 1. 2 週間以上持続する咳嗽
 2. 以下のいずれかの要件のうち少なくとも一つを満たすもの
  ・スタッカートやレプリーゼを伴う咳嗽発作
  ・新生児や乳児で、他に明らかな原因がない咳嗽後の嘔吐または無呼吸発作
 ○上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、病原体診断や血清学的診断によって当該疾患と診断されたもの

学校保健法での取り扱い
 第二種の伝染病に定められており、登校基準は以下のとおりである。
○特有の咳が消失するまで出席停止となる。ただし、病状により伝染のおそれがないと認められたときはこの限りではない。