甲状腺

卒煙証書 2

甲状腺の病気」といわれても、なかなかピンとこない人が多いと思います。甲状腺は、体の新陳代謝を盛んにするホルモンを作る臓器です。甲状腺ホルモンって何をしているかよくわかりませんよね。精神的にも体力的にも体を活発にするホルモンとでもいいましょうか。胎児の発育に重要な働きをしたり、子どもの成長を促したりするので、足りないと成長もできず、知能も遅れます。人間だけでなくあらゆる動物が生きていくために必要不可欠なホルモンで、オタマジャクシは蛙になれず、「カエルの子はオタマジャクシ」になってしまいます。わかったようなわからないような・・・。


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甲状腺は内分泌器官(ホルモンを作る臓器)のひとつであり、食物(おもに海藻)に含まれているヨウ素(ヨード)を材料にして甲状腺ホルモンを合成しています。甲状腺ホルモンは、脳や心臓、骨、筋肉、皮膚など全身の新陳代謝(食物として摂取されたたんぱく質、脂肪、炭水化物は、代謝されて体の組織を作るために利用されたり、エネルギーになったりする)を刺激したり活発にしたりする作用があり、神経や活動の調整をする働きをています。


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甲状腺は首の前側、のどぼとけのすぐ下にあり、蝶が羽を広げたような形でたて4cm、厚さ1cm、重さ15gくらいの小さな臓器で、気管を包み込むように気管の前面にくっついています。正常の甲状腺は柔らかいので、外から手で触ってもわかりませんが、腫れてくると手で触ることができ、首を見ただけで腫れているのがわかります。

甲状腺ホルモンは、多くなっても少なくなっても調子が悪くなります。疲れやすい→うつ病? 動悸→心臓病? 
むくみ→腎臓病? 便秘→消化器病? 体重減少→がん 物忘れ→認知症、その他、自律神経失調症、高血圧、糖尿病、肝機能異常などの病気と間違えられやすいのです。甲状腺ホルモンが多くなる病気の代表的がバセドウ病、足りなくなる病気の代表が橋本病です。どちらの病気も女性に多く見られます。

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甲状腺ホルモンは、甲状腺の濾胞細胞でヨードを原料にヨウ素(ヨード)の元素を4つ持っているサイロキシン(T4)と3つ持っているトリヨードサイロニン(T3)と呼ばれる2種類の甲状腺ホルモンが作られます。濾胞細胞から血液中に分泌され、肝臓や腎臓においてT4はT3へと変換されます。血液中のT4とT3は、そのほとんどがタンパク質と結合した状態で血液中を流れています。そして、そのごく一部が遊離型ホルモン(FT4、FT3)として、活性型となり全身で作用します。

甲状腺機能を最も鋭敏に示すのは甲状腺刺激ホルモン(TSH)です。TSHは、脳下垂体から分泌され、甲状腺ホルモン(T3とT4)の分泌量を一定に保つよう調節する役割をがあります。血液中のT4、T3はタンパク質と結合しており、ホルモンとしては作用しないため、タンパク質と結合していないFT4(遊離サイロキシン)、FT3(遊離トリヨードサイロニン)も測定します。スクリーニング検査では、TSHとFT4の2項目を検査します。血液検査のパターンは3つしかありません。

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脳下垂体から分泌されたTSHが甲状腺細胞膜のTSH受容体(TSHレセプター)に結合すると、その刺激により甲状腺ホルモン(T4、T3)の合成と分泌が行われます。血液中に分泌されたT4、T3は、今度は逆に下垂体に作用しTSHの分泌を抑制するように働きます(ネガティブフィードバック)。そして、これらお互いの刺激と抑制作用によりホルモン分泌の調整がなされ、私たちの血液中のホルモン濃度は一定に保たれています。

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バセドウ病(甲状腺機能亢進症)

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バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に作られる病気、すなわち甲状腺機能亢進症を起こす代表的な病気です。バセドウ病は、女性に多く、男女比は、1:4人ほどです。発病年齢は、30歳代をピークに20〜40歳代と若い年代に多いようです。


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ちなみに、バセドウ病という病名は、1840年にこの病気を研究発表したドイツの医師カール・フォン・バセドウ(1799〜1854)にちなんで名づけられました。ドイツ医学の流れをくむ日本ではバセドウ病と呼ばれていますが、ドイツ語圏以外の国では、イギリス人医師の名前にちなんで、グレーブス病と呼ばれているようです。


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症状

バセドウ病は、甲状腺腫、眼球突出、甲状腺ホルモンの過剰によって起こる症状の3つの症状が代表的な症状とされていますが、この3つの症状が出そろっている患者様はむしろ少数派です。

バセドウ病に伴う症状のなかで日常生活に一番大きな影響を与えるのは、甲状腺ホルモンの過剰によって起こる症状でしょう。じっとしている時でも、走っている時と同じくらい新陳代謝が活発で、暑がりになり、汗をたくさんかいて、必要以上に無駄なエネルギーの浪費しているので、とにかく疲れやすい、いつもゴロゴロしているという病気です。最も代表的な症状は動悸です。また、指先のふるえが目立ち、文字が書きづらくなったり、お茶をくむ時にこぼすようなこともあります。さらにエネルギーの消費が激しいため、食欲はあるのに太らない、あるいはやせるということになります。これ以外にも、下痢をしがちになる、皮膚がかゆくなる、筋肉が衰えるなど、さまざまな症状があります。

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甲状腺腫は、くびの前面が全体的にふくらみ(びまん性甲状腺腫)くびが太くなったように見えます。人によってはれの程度はさまざまですが、一般的には若い人の方が大きくなりやすい傾向があります。甲状腺腫の大きな人は薬による治療が難しく、手術や放射性ヨウ素(ヨード)治療(アイソトープ)の適応となる場合が多いようです。

バセドウ病は眼の出る病気といわれますが、眼球突出は実際にはそう多い症状ではありません。眼球が突出するのは、眼球の後にある脂肪組織や眼球を動かす筋肉の体積が、炎症やむくみによって増えるためです。その結果、眼球が前方に押し出されてくるのです。眼の症状は、甲状腺の機能異常の程度とは必ずしも一致しないので、治療によって甲状腺の状態がよくなっても、眼の症状も一緒によくなるとは限りません。




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検査

甲状腺疾患の中で、バセドウ病と橋本病は自己免疫性甲状腺疾患とも呼ばれ、自己(主に甲状腺)に対する抗体の産生が病気の原因だと言われています。
TSH低値かつFT4高値を示す甲状腺機能亢進の病態では、バセドウ病と無痛性甲状腺炎や亜急性甲状腺炎とを鑑別するため、抗TSHセプター抗体検査をします。

TSH高値かつFT4低値の甲状腺機能低下の病態では、橋本病とそれ以外の甲状腺機能低下症とを鑑別するため、抗サイログロブリン抗体または抗TPO抗体検査をします。橋本病患者の多くは甲状腺機能が正常のため、異常が認められなくても橋本病の疑いがある場合にはこれらの抗体検査をします。

甲状腺自己抗体の検査
サイロイドテスト(ATG、TGPA)、抗サイログロブリン抗体(TgAb)
甲状腺濾胞細胞内に貯蔵されている糖蛋白(サイログロブリン)に対する自己抗体。
慢性甲状腺炎(橋本病)で高頻度に陽性となるが、バセドウ病でも陽性となることがあります。

マイクロゾームテスト(AMC、MCPA)、抗TPO抗体(TPOAb)
甲状腺組織から抽出されたマイクロゾーム分画に対する自己抗体であり、後にペルオキシダーゼであることが判明しました。サイロイドテストと同様、橋本病、バセドウ病で陽性となります。

TSHレセプター抗体(TRAb、TBII)
TSHレセプター抗体は、TSH受容体に対する自己抗体で、バセドウ病では90%以上が陽性となります。この抗体の結合により、TSH受容体が刺激され甲状腺ホルモンが増加します。ラジオレセプターアッセイ法で測定したものをTBII、バイオアッセイ法で測定した刺激抗体をTSAbと言います。

抗体値の測定は、バセドウ病の診断、治療効果や再発の指標として有用です。慢性甲状腺炎(橋本病)の患者様の中には、稀にこの抗体が陽性となる場合もありますが、これは、甲状腺刺激阻害抗体(TSBAb)がTRAbとして測定されるためです。
サイログロブリン 

サイログロブリン(Thyroglobulin)とは、血中に分泌される甲状腺ホルモン(T4=サイロキシン)の直前の物質のことです。甲状腺組織の中で合成され大量に貯蔵されています。正常の状態では血液中にはほとんど出ていきません。甲状腺に病気が出現した時に血液のサイログロブリン値が高い値を示します。その値は血液中の濃度で表現されます(正常値35ng/ml以下)。

サイログロブリンは甲状腺の血液検査でしばしば測定されるもので、Tgと記されています。血中サイログロブリン値は、

甲状腺を刺激する物質で甲状腺が刺激された時以外にも甲状腺の炎症で甲状腺組織が破壊された時や甲状腺の腫瘍がサイログロブリンを産生する時にも高い値を示します。つまり、バセドウ病以外でも、良性、悪性の甲状腺腫瘍や慢性甲状腺炎などでも値が高くなります。

甲状腺乳頭癌や甲状腺濾胞癌になった方は、甲状腺全摘術の後に腫瘍マーカーとしてサイログロブリンの測定を行います。もし低下していた血中サイログロブリン値が高くなった時は、頸部のリンパ節の再発、遠隔臓器への転移、たとえば肺転移や骨転移などが考えられます。
サイログロブリンの値が高いだけでは、甲状腺癌の確定診断はできません。(良性悪性の鑑別はできません)良性悪性の鑑別には超音波検査、細胞診などを行います。サイログロブリンの特殊な使い方として、甲状腺から遠く離れた組織(たとえば肋骨や腰の骨)が腫大した時、その組織の中にサイログロブリンが存在するかを顕微鏡で観察して、サイログロブリンが陽性であれば甲状腺癌の転移と診断されます。

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次に、甲状腺の病気で高頻度にみられるのはバセドウ病と橋本病ですが、両者ともに自己免疫性疾患のため自己抗体の有無を調べます。


バセドウ病の治療開始については、抗甲状腺薬の副作用の出現率が結構あり、しかも治療も長期になるので、素人の血液検査のみによる診断で、安易に治療を始めるのではなく、きちんと専門医の確定診断を仰ぎながら、無痛性甲状腺炎の鑑別などを含め慎重に始めたい。バセドウ病の診断ガイドライン(日本甲状腺学会 2010)の検査所見によると、FT4の高値、TSH低値(0.1μU/ml以下)抗TSHレセプター抗体(TRAb, TBII)陽性(または刺激抗体(TSAb)陽性)に加え、放射性ヨード(またはテクネシウム)甲状腺摂取率高値、シンチグラフィでびまん性を確かめることで確定診断としています。

治療

甲状腺ホルモンの過剰とは、本人しかわからないつらい症状です。1日のリズムも狂ってしまい、「グットモーニングがない病気」といわれるくらい、寝起きが悪く午前中はずっと調子が悪いという人も少なくありません。 また、イライラしたり、集中力がない、落ち着きがないといった精神的にも不安定になり、仕事の能率が落ちたり、子どもの場合は学校の成績が急激に低下したりします。体の状態がこれではどうしようもありませんね。きちんとした治療を受けることが大事です。


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 自己免疫性疾患とは?
私たちの体には、自己(自分の臓器や細胞など)と非自己(他臓器や細菌・ウイルスなど)を区別して、体内に侵入してきた異物を非自己として排除するという免疫機能が備わっています。そして、これら異物に対し、攻撃役として働くのが抗体と言われるものです。自己免疫疾患とは、自己を誤って非自己として捉え、これらを排除しようとしてしまう免疫異常で、自己に対する抗体が過剰に産生され、様々な病状を呈します。関節リウマチなどの各種の膠原病がこの自己免疫疾患にあたります。バセドウ病や橋本病などの自己免疫性甲状腺疾患では、甲状腺内にあるタンパク質やホルモン受容体に対して、様々な自己抗体が産生されることが病気の原因になっていると言われています。そして、これらの抗体の有無を測定することで、疾患の診断が行われています。

甲状腺ホルモン補充療法で最もよく使われる薬です。チラーヂンSはthyroxine(T4)と呼ばれるホルモンで、体内でtriiodothyronine(T3)と呼ばれるホルモンに変換され、作用を発揮します。この薬は、甲状腺ホルモンの量が普通より少ない場合、また、甲状腺が肥大しているとき、甲状腺刺激ホルモン(TSH)を抑制し、甲状腺の縮小を目的として服用します。

チラーヂンSの服用方法
1日1回、朝食後に服用します。
少量から始め、少しずつ増量していきます。増やす量や増量する時期は、症状に応じて決められます。飲み始めて、すぐには効果があらわれませんので、決められた量をしっかり飲み続けてください。スクラルファート(アルサルミン)、アルミニウム含有製剤(マーロックスなど)、マグネシウム含有製剤(酸化マグネシウムなど)、コレスチラミン(クエストラン)、鉄剤(フェロミアなど)を飲んでいる方は、チラーヂンSの吸収をさまたげ、効果が弱まることがありますので、服用を8時間以上あける必要があります。妊娠した場合にも服用を勝手に中止してはいけません。

チラーヂンSの副作用
もともと体の中にあるものですから、ほとんど副作用はありません。ただ、飲む量が多すぎると、動悸がする、汗をかきやすい、手指がふるえるなどの症状が現れることがあります。

薬物治療

まずは、第一選択です。が・・・いかんせん副作用があります。
   厳重な経過観察が必要です。
副作用 発疹、じんま疹 5%
       
無顆粒球症   0.3%

アイソトープ治療
手術 甲状腺が無茶苦茶に大きい人
 

**橋本病(慢性甲状腺炎)
慢性甲状腺炎 甲状腺ホルモンが足りなくなる病気の代表です。
たしかに日本人の名前です。九州大学の外科の先生です。
 橋本策(1881〜1934)

ぱっと見た感じで、首が太いなあという感じです。触ると硬いです。

また、慢性甲状腺炎(橋本病)では、甲状腺ホルモンが低い場合には脳下垂体でのTSH分泌が抑制されないため、TSHは高値となります。これらの甲状腺ホルモンとTSHの関係は、言わばシーソーのような関係であり、一方が高くなればもう一方は低くなるといった関係にあります。

橋本病の「自己抗体」は、抗マイクロゾーム抗体
と抗サイログロブリン抗体

治療 薬物治療

足りないホルモンを補充します。 半減期は約1週間と長く、1日1回の内服でOK
(少しぐらい飲み忘れても大丈夫)

(1日必要量 0.1〜0.15mg)
国内産の食品で1回の食事で摂取されるヨード量

甲状腺の自己抗体

自己抗体とは

無痛性甲状腺

亜急性甲状腺

甲状腺がん

単純性甲状腺

食品           食品の量(g)            含有ヨード
昆布・とろろ昆布       5               10~20mg
昆布だし汁昆布       0.5~1.0              1~2mg
ひじき           5~7               1.5~2mg
わかめ(乾)          1~2             0.8~1.50mg
海苔             2                0.12mg
寒天(乾)           10                0.20mg
いわし            100               0.30mg
ぶり             100               0.20mg
塩さけ            100               0.15mg
大豆             20                0.02mg
白米             160               0.06mg
イソジンガーグル       2ml                14mg