水虫

白癬(水虫)は、皮膚糸状菌という真菌(カビ)によって生ずる感染症で、日本では10種類ほどの白癬菌が知られていますが、その中で最も頻度が高いのが、トリコフィトン・ルブルムとトリコフィトン・メンタグロフィテスです。代表的なものは足に生ずる白癬で、足白癬(水虫)、股にできるのは股部白癬(インキンタムシ)股以外の体に生じた白癬は体部白癬(ゼニタムシ)また髪の毛に白癬菌が感染したものは頭部白癬(シラクモ)と呼ばれます。また爪に感染したものは爪白癬、手に感染したものは手白癬と言われます。いろいろな名前で出ています。

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白癬菌はケラチンという蛋白を栄養源に生きているカビですので、ケラチンが多く存在する皮膚の表面の角層(垢となって落ちる場所)に病変を作ります。粘膜にはケラチンが余りありませんので、口の中が白癬になることはありません。また角層が変化したものが、毛や爪ですので、毛や爪に白癬菌が感染することもあります。

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水虫といえば、以前までは5:3で男性の比率が多かったのですが(足白癬の発症要因の一つは白癬菌が長期間足に付着することですので、実際は一日中靴を履き続けなければならないサラリーマンの方が、裸足でいる時間が多い小児や主婦より、足白癬の頻度が高くなっている)近年では女性の社会進出が増え、1日中靴を履いている機会が増えてきたことやブーツが流行したこと、一般に女性の方が足白癬を気にして来院する人が多いため、女性の患者数が急増し、最近では1:1とほぼ同じ比率になっています。また、20歳を過ぎると足白癬患者数が急増します。これは、社会人になると靴を履く時間が増えるため、白癬菌が足に付着している時間が増え、足白癬になると考えられています。我が国の疫学調査では、日本全体での患者数は1000万人以上で、5人に1人は足白癬があり、また10人に1人は爪白癬に悩まされています。

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水虫は、高温多湿が大好き

白癬菌が増えていくためには、適度な温度と湿度が必要です。そういった意味では、梅雨時から夏の靴の中は汗をかきやすく蒸れた状態で、白癬菌には格好の住み家です。白癬菌が皮膚内に侵入し、感染が成立するまで最低24時間かかるので、靴・靴下を履く場合は、 通気性のあるものを選び、長時間靴をはき続けない方がよいでしょう。もし長時間靴を履き続ける場合は、時々脱いで風を通す、できればサンダルのような風通しがよい靴を履くようにして、なるべく足を蒸らさない工夫をしましょう。また、靴を頻回に洗って、しっかり乾燥させることが大切です。

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夏が過ぎ秋になると白癬菌の増殖が止まり、その数が減ってきて、冬期になると自然に軽快します。白癬菌は角層の下にまで増殖しないと、痒みや水膨れといった症状を起こさないので、白癬菌が少なくなると、治ったように見えます。つまり冬には白癬菌が少なくなって、症状が出なくなっているだけで、白癬菌は残っています。白癬菌が残っていると、春から夏にかけて高温多湿の季節になるとまた白癬菌は増え、足白癬の症状が出てきます。

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水虫には4つのタイプがあります

足白癬は、足の指の間の皮が剥けたり、白くふやけたりする趾間型と足の裏に小さな水膨れが生じ、水膨れが破れると皮が剥ける小水疱型(汗疱型)、ヒビ、アカギレのように足の裏全体が硬くなる角質増殖型、爪が白く濁ったりする爪白癬に分類されています。

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足の指がむずむず、ふにゃふにゃ、じゅくじゅく。水虫で多い症状は、この趾間型水虫です。足の指と指の間にできます。なかでも薬指と小指の間が圧倒的に多くなっています。皮がむけてかさかさする乾燥型とじゅくじゅくして赤く、皮がふやける湿潤型になります。かゆみの症状は共通ですが、かゆみの強さは湿潤型のほうが強いようです。


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足にポツポツと小さい水疱ができる症状です。(小水疱型)皮がむけてくることもあります。指の付け根や足の側面、足の裏の土踏まずなどに比較的多く発症し、進行するにつれてかゆくなります。水疱が破れると白や黄色の汁が出ることもありますが、汁には、水虫の白癬菌はいません。同じような水疱が手足にでき、よく水虫と間違えられる疾患に、汗疱や湿疹があります。水虫との違いは白癬菌がいるかいないかの判断ですから、顕微鏡によ確定診断が必要です。


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角質増殖型水虫とも呼ばれ、足の裏の角質が全体的に厚くなり白っぽくなります。表面がザラつき、冬場にはひび割れを起こすことも。小水疱型や趾間型は、季節的に暖かくなると症状がでて、涼しくなると自然に症状が治まってきますが、角質増殖型は季節的変動がなく、むしろ冬期にはひび割れがひどくなります。かゆみやじゅくじゅくといった症状がないため、ほとんどの人は乾燥による肌荒れや加齢による角化と勘違いして特に治療などせず放置しているため、家族や同居人に感染が拡大しやすい水虫でもあります。角質増殖型水虫の場合、白癬菌が角質の深くまで侵入しているため、塗り薬だけでの治療では完治しにくく、ほとんどの場合、飲み薬を併用します。


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一番多いのは爪が白~黄色に濁って厚くって、爪の下がボロボロになります。(爪白癬)角質増殖型の足白癬は爪白癬を合併することがよくありますが、小水疱型、趾間型の足白癬は長い間治療せずに放置していないと爪白癬を合併することはありません。


確定診断は、必ず顕微鏡検査で

「足の指の間や足の裏がかゆい」「足の指の間がふやけて白くなったり、ジュクジュクする」「足の指の間や足の裏の皮が剥ける」「足の裏に小さい水疱ができる」などの症状が毎年夏になると生じ、秋になると自然に治るというエピソードがある場合は、足白癬の可能性が高くなります。ただしこのような症状があっても、季節的変動がなければ、足白癬の可能性は少ないのです。また、白癬菌は角層の下の方まで増殖しないと、痒みなどの症状が出てきません。足白癬の人でかゆがるのは10%程度です。1年中痒みがない患者さんもいますので、足白癬と気がつかずに放置している患者さんが多くいるため、足白癬の感染源になっています。一方で、痒みがあって、足白癬だと思っている人もでも、その20~30%は足白癬ではありません。このような人が足白癬の治療をしても良くならないと訴える自称、水虫まがいの患者も多くいます。足白癬と紛らわしい皮膚病は沢山あります。だから、顕微鏡での診断はとても重要なんです。白癬を治すには、長ければ1年単位で時間がかかる長丁場の治療になります。治りが悪い時に、本当に水虫?ってことにならないように、治療を始める前には、必ず、直接鏡検で白癬菌がいるかどうかを確かめましょう。

白癬菌は皮膚の表面に存在する白癬菌が寄生している部位(病変のどこから検査材料を採取するかが重要)をメスやハサミでとって、カバーグラスで覆って、苛性カリ(KOH)を検査材料にたらして、角層や爪などが溶かして白癬菌を顕微鏡で観察します。この直接鏡検によって白癬菌が見つかれば白癬で、見つからなければ白癬ではありません。同じような病変からいかに白癬菌を見つけ出すかが、餅は餅屋の皮膚科との最大の違いです。


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 顕微鏡

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小学生の頃、雑誌のおまけに顕微鏡が付いてて、葉っぱや虫を観たのを思い出します。開業して、本当に久しぶりに顕微鏡とやらを覗きましたが、白癬菌を見つけるのに、結構苦労しました。適当の自己流での限界を感じ、ちょっと勉強してみました。ちなみの当院の顕微鏡はオリンパスのCX21(教育用の廉価版)です。カメラをちょっとかじった人なら、被写界深度という言葉を聞いたことがあると思いますが、ある1点に焦点を合わせた時に,その前後で同時にピントが合って見える範囲のことを言います。被写界深度が浅いと対象物だけにピントが合い、背景はぼやけさせることができ、ちょっとプロっぽい写真になります。逆に被写界深度が深いと,背景までピントが合うようになります。白癬菌を観るのに、鱗屑や爪などは、病理組織標本と比べるとはるかに厚みがあるため、被写界深度をできるだけ深くセッティングして、手前から奥までピントが合って全体が観察しやすくなるようするためには、対物レンズは10倍がいいようです。接眼レンズ10倍×対物レンズ10倍=100倍となります。(実際は、被写界深度以上に検体が厚いので,ピントを上下に動かしてピントを合わせながら観察します)視野もある程度広いので、菌要素の全体像が見え、形態を認識しやすいので、菌要素を見つけやすくなります。また,白癬菌の観察は、無染色標本(色がない)なので、開口絞りを絞ってコンデンサを下げるとコントラストがついてはっきりします。そして、対物レンズを40倍に上げて(接眼レンズ10倍×対物レンズ40倍=400倍)白癬菌(菌糸がくびれて分節胞子となるため,胞子は直線的につながっています)を確認します。高倍率レンズでは、被写界深度は浅くなり、ピントの合う範囲が狭くなるので、微動ハンドルでピントを合わせて観察します。また、開口絞りを絞りすぎたり,コンデンサを下げすぎたりしていると、高倍率レンズでは、暗くなりすぎることもあるため、観察しながら開口絞りとコンデンサを調節します。(上位機種の顕微鏡では、視野絞りや光軸を調整する作業が必要なものもあるようです)鑑別するものとして,真皮の線維(糸状菌より細くまっすぐ) カンジダ(ブドウの房状に胞子がかたまり菌糸や仮性菌糸が見られる)癜風(太く短い菌糸と丸い胞子が見られる)マラセチア毛包炎(胞子しか見られず,しかも癜風の胞子よりも小さい)などがあります。


治療は根気よく、気長に

白癬は、塗り薬をきちんとつければ良くなります。体部白癬や股部白癬は塗り薬を2週間程度つけ続ければ治ります。足白癬では、自覚症状がない部分も含め、指の間から足の裏全体に、最低4週間毎日治療を続けないと治りません。(外用をしっかり塗って、良くならない場合は、足白癬でない可能性があります)しかし角層がかなり厚くなっている角質増殖型と呼ばれる病型や、白癬菌が髪の毛や爪に寄生している場合は、飲み薬を飲まないと治りません。飲み薬は全ての白癬に有効ですが、副作用や他の薬剤との飲み合わせの問題があるなどの欠点もあります。



秘かに悩んでいる人も多い

健康誌の読書アンケートでは、非常に多くの人が繰り返す水虫に、10年以上、悩んでおられます。特に足や爪の水虫と回答したひとが多かったようです。

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なぜ、水虫が治らないのか?そもそも治す気がない?たかが水虫、薬を塗るのを途中で止めてしまっているので、当然の結果なんです。水虫の薬はよく効きますので、通常の足白癬であれば、塗り薬を毎日つければ、見た目はすぐに良くなりますが、2週間程度の外用では白癬菌は完全に消失せず、残っています。しかし多くの患者さんは、自覚症状が消失すれば治ったと思い、治療を中止してしまいます。そのため翌年の夏には残っている白癬菌がまた増殖して、足白癬の症状が出てきます。また足白癬では、自覚症状のない部位にも白癬菌は存在します。しかし多くの患者さんは、水疱や痒みなど症状がある部位にしか塗り薬を使用しません。薬を自覚症状があるところだけでなく、指の間から足裏全体に最低1カ月毎日塗り続けることが大切です。また、爪白癬は、1年以上にわたる治療が必要ですし、その治療を受けている人は少ないので、爪白癬の頻度は年齢に比例して増加し、そして爪白癬が家庭内感染の恒常的な感染源となっています。さらにきちんと塗り薬をつけても、同居している家族から、あるいは患者自身がばら撒いた白癬菌による再感染があります。つまり足白癬が治らない最大の理由は、中途半端な治療と再感染のためです。


水虫は移るんです

銭湯やサウナなど大勢の人が使用する浴場、あるいは足白癬患者がいる家庭の足拭きマットには、ほぼ100%白癬菌が存在します。入浴後に、マットから白癬菌が付着しますが、白癬菌が皮膚内に侵入し、感染が成立するまで最低24時間かかるので、素足のままいれば、足が乾燥して、白癬菌は剥がれ落ちますが、十分乾燥しないですぐに、靴下・靴を履き続けると、足白癬になってしまいます。他人の家に上った時も、自宅に帰ったらすぐに、足を洗うか(石鹸をよく泡立て、なでるように洗えば、感染を防ぐことができます。しかし軽石などでかかとなどをゴシゴシ洗いをして皮膚に傷がつくと、12時間ぐらいでも、かえって足白癬になりやすくなるので、要注意です)水虫の薬をつけると、家庭内に白癬菌を持ち込むことを防ぐことができます。

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家庭内に白癬患者がいる場合、長い間同居していれば、足白癬になる可能性はかなり高くなります。白癬菌は、家のいろいろな場所に髪の毛やホコリ、垢(1年以上生き続ける)や爪などにまみれて家具の下や階段、部屋の隅っこなどゴミがたまりやすいところにもいます。皆で共用するもの、例えばトイレのスリッパ、バスマットなどにも存在しますので要注意です。対策法としては、同居している家庭内の足白癬患者や爪白癬患者全員を治さない限り(症状のない人でも感染している可能性があります。よくよく足の観察が大切です)家庭内の白癬菌はなくなりません。また、掃除機をかけ編目に付着した垢を水拭きなどで取り去り、タオルやマットなどは洗濯し、洗濯できないものは濡れた雑巾で水拭きし、風通しをよくして乾燥させることが重要です。家族内感染を防ぐためには、スリッパやサンダルの共有は避けるとか、足ふきマットは別にするなど徹底されるとかわいそうですね。白癬菌は家庭内に白癬患者がいなければ、このような対策は全く不要です。また、ミクロスポルム・カニスというカビは、犬や猫にも感染しているので、接触した顔や体、髪の毛に白癬が生ずることがあります。


爪白癬
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爪の症状には色々ありますが、一番多いのは爪が白~黄色に濁って厚くなって、爪の下がボロボロになることです。爪白癬は爪の先端から始まり、徐々に根元のほうに拡大することが多いようです。また爪の先端から縦に黄白色の筋ができることもあります。爪白癬は痒みはありません。爪白癬は、原則として飲み薬でないと治りませんので、足白癬の段階で治しておいた方がよいでしょう。なお爪は外傷等で様々な変化が起きますので、爪の病変すべてが、爪白癬ではありません。特に手の爪だけの爪白癬はほとんど見かけません。


爪水虫は塗り薬では治りにくい

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爪白癬は飲み薬でないと治りません。飲み薬にはイトラコナゾールとラミシールがあり、前者は他の薬剤との飲み合わせの問題が多く、後者は肝機能などの重篤な副作用をおこす事があるため、治療前と治療開始後2カ月は月1回の血液検査が必須となっています。イトラコナゾールは1週間内服して、その後3週間休薬、これを1パルスとして、3回繰り返すパルス療法があります。ラミシールは1日1回1錠を6カ月以上毎日内服し続ける必要があります。最近は、クレナフェンと言って、爪に塗るお薬も発売されました。いずれにしろ1年にわたる治療が必要です。爪白癬はともより、通常の水虫にしろ、完治を目指すためには、2週間〜1ヶ月以上、お薬を塗る必要があります。長期にわたる治療を完結するためには、最初に顕微鏡で白癬菌の存在を確定しておかないと途中で疑心暗鬼に陥ってどうにもならないことにならないようにしなければなりません。

足白癬、特に趾間型の足白癬では、しばしば趾間の亀裂や糜爛面から、細菌が真皮内に侵入し、蜂窩織炎などの細菌感染症をおこすことがあります。実際、蜂窩織炎の好発部位は足と下腿ですが、その多くは、趾間型の足白癬の傷口から細菌が感染したものです。感染した細菌が劇症型の溶連菌だったり、壊死性筋膜炎をおこすと、死に至ることがあります。特に趾間の皮膚は薄いため、その傷口から細菌が侵入することは多いので、普段から足白癬、特に趾間型の足白癬の治療をしておくことが大切です。