日本脳炎

日本脳炎ワクチン
乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン」(新ワクチン)

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区分定期
種別不活化
投与経路皮下注
1回投与量3歳未満:0.25ml
3歳以上:0.5ml
合計接種回数3回目 (旧製品は4回)
標準スケジュール1回目:生後6ヶ月〜3歳
2回目:1回目の1〜4週間後(できれば4週間)
3回目:2回目の概ね1年後(ここまでは、Ⅰ期で7歳半未満までに終了すれば可能)
Catchupスケジュール日本では特に勧告されていない
ブースタースケジュール日本では特に勧告されていない
  • Ⅱ期 9歳児 1回(9〜13歳未満まで可)
  • Ⅲ期は、有効性が低いため、平成17年7月29日に廃止

    尚、平成17年5月から差し控えによって、接種機会を逃した未接種者の救済接種が、段階を追って始まりました。
  • Ⅰ期、Ⅱ期の未接種の救済(H7.6.1〜H19.4.1生まれ)
      接種可能年齢は、20歳未満(国が20歳としているのは、勧奨の差し控えの責任をとって、20歳までは、定期接種の枠で行い、ワクチンの供給量を踏まえ、期間に一定の余裕を持たせているだけなので、目安が着いた時点で、また変更になる可能性もあり、忘れないうちにⅠ期から概ね5年ぐらいで接種しておくほうが、無難であろう)
    • Ⅰ期の接種回数 
      • 0回 残り4回を接種
                     Ⅰ期初回分(6日以上の間隔をあけて2回接種)
                     Ⅰ期追加分(概ね1年後に1回接種)
                     Ⅱ期(Ⅰ期終了後、概ね5年後に1回接種)
      • 1回 残り3回を接種
                     Ⅰ期分(6日以上の間隔をあけて2回接種)
                     Ⅱ期(Ⅰ期終了後、概ね5年後に1回接種)
      • 2回 残り2回を接種(Ⅰ期初回が終了したケース)
                     Ⅰ期追加分(概ね1年後に1回接種)
                     Ⅱ期(Ⅰ期終了後、概ね5年後に1回接種)
      • 3回 残り1回を接種(Ⅰ期が終了したケース)
                     Ⅱ期(Ⅰ期終了後、概ね5年後に1回接種)

いろいろややこしいですが、合計で4回打てばいいわけです。ただ、4回目は、そう慌てずに、概ね5年後がベターです。


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日本脳炎ワクチンがこれだけ、ややこしく泥沼化してしまうのも、厚生労働省の責任だけでなく、ワクチンに対するアレルギーという日本の国民性が深く関与しているということがあります。マウス脳由来日本脳炎ワクチンは、使用期限が平成22年3月9日のもので最後となり、予防接種法にもとづく日本脳炎予防接種には乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン(新ワクチン)のみを使用することとなりました。平成21年6月2日より、1期のみにしか認めておりませんでしたが、平成22年8月27日に、やっと新ワクチン供給のめどがついたようで、日本脳炎2期に使用するワクチンとしても認められました。 厚生労働省において、2005年5月からの「積極的勧奨の差し控え」の間に定期接種の年齢を超過した13歳以上になってしまった人への救済措置は現時点としては明らかにしていません。

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日本脳炎救済接種_460px 3




日本脳炎ワクチンは、6か月から接種可能ですが、標準的な接種期間は3歳になっています。ブタの抗体保有率が常に高い九州、中国、四国地方等にお住まいの方(日本脳炎患者発生が多く認められた地域)や日本脳炎発生頻度の高いアジア地域 への長期滞在(ことに雨期など)などの理由で希望のある方で、日本脳炎ワクチンの接種をこれまでに1度も受けたことがない定期予防接種対象者の方(現在3~7歳半の小児)は、夏になる前に、個別に接種をすすめるという考え方は妥当であると思います。この場合、従来の日本脳炎ワクチン定期接種年齢の範囲であれば、従来通り定期接種として扱われます。それ以外の年齢では、これも従来通り任意接種の扱いです。今回の国の決定は、「国による積極的な勧奨は控える」というものであり、日本脳炎予防接種法による定期接種対象疾患から外したわけではありません。したがってこれまでの定期接種対象となる年齢の小児に対してinformed consentを得た上での日本脳炎ワクチンの接種は、費用の負担、万一の場合の事故の救済などについて、従来通り定期接種としてみなされることは国からの説明でも明らかです。

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(旧)日本脳炎ワクチンと(新)日本脳炎ワクチン
従来、使用されていた日本脳炎ワクチン(マウス脳由来)は我が国で開発され、WHOにより唯一その安全性と効果が承認されているワクチンで、アジアで広く使用されているものですが、ワクチン接種後に神経系の病気であるADEM(亜急性散在性脳脊髄炎)の重症例が起こったとして、2005年5月から積極的な推奨が差し控えられています。しかし、本当の副反応なのか、紛れ込み事故(たまたま起こったかぜなどの別の病気による原因がワクチンではないもの)なのか医学的検討はなされていません。ちなみに、WHO(世界保健機関)では、日本脳炎ワクチンの接種との因果関係なく 中止する必要はないという立場です。
 従来の日本脳炎ワクチンは、マウスの脳内に日本脳炎ウイルスを接種しこれを採取、精製しワクチンとしたもので、ワクチン液の中に、検出限界以下ながら存在するかもしれない微量のマウス脳成分としてのタンパク質に対する脳アレルギー反応として、極めて稀ながらADEMを生ずる理論的リスクが払拭されないといわれています。 厚生労働省は、潜伏期間と考えられるワクチン接種後10-14日後に神経症状が現れ著しい健康被害が生じた場合には、日本脳炎ワクチン関連で生じた可能性が否定できないとして被害救済の対象と認めています。健康被害が認定された例は平成元年度以降に14例(うち重症例5例)です。厚生労働省の今回の「国による日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨の差し控えについて」は、新たな科学的根拠が判明したわけではありませんが、理論的リスクとしての疑いが払拭されない中で重症例が出現したということで、より慎重を期するという行政判断から、次世代の日本脳炎ワクチン(ベロ細胞由来:マウス脳由来による神経アレルギーの発現があるかもしれないという理論的リスクは回避される)に切り替えられるまでの間、一時的な措置として積極的な勧奨(ほとんどすべての子供に接種を呼びかける)を控えたものと説明されています。

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 急性散在性脳脊髄炎
急性散在性脳脊髄炎(Acute disseminated encephalomyelitis: ADEM)とは、感染症、あるいはワクチン接種を誘因として自己免疫性の機序で発症するのではないかと考えられている小児に稀に生じる原因不明の炎症性脱随性疾患です。ADEMの発症頻度は年間50-60例程度、15歳以下の小児人口100万人あたり年間2-3人の発生であると推計されています。 



日本脳炎とは、日本を含めアジア諸国で流行する病気です。主に水田で発生するコガタアカイエカが媒体し、夏に出現します。潜在期間は約5〜15日。症状は頭痛、発熱、嘔吐、意識障害、痙攣、麻痺等です。日本脳炎ウイルスに感染しても、ほとんどの人は気がつかない程度ですんでしまい、ごく少数の人が発病するにすぎません(100〜1000人に1人)夏季に原因不明の脳炎・脳症が発生した場合には、日本脳炎を鑑別診断の項目に加える必要があります。しかしいったん脳炎症状を起こすと、致死率は20〜40%前後と高く、回復しても半数程度の方は重度の後遺症が残ります。 また人から人へ感染することはありません。 ことに小児では重度の障害を残しやすいとされています。有効な治療法がないので、予防接種で予防する事が大切になります。

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国内では1960年代前半まで年間2000〜4000人の報告数がありましたが、日本脳炎ワクチンが導入された1970年代より激減し、1992年からは年間10人以下の報告となっています。その原因として、日本脳炎ワクチン定期接種により免疫保有者の増加、環境要因の変化として水田の減少や、稲作方法の変化により、コガタアカイエカの数が減少したこと、 増幅動物であるブタが人の居住地から離れて飼育されるようになったため、感染ブタを刺咬し感染したコガタアカイエカが人の居住地まで飛来し(蚊の飛行距離は、概ね2km前後)人を刺咬する機会が減少したことなども要因と考えられます。

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ブタはJEVの増幅動物で、夏季に屠場に集められるブタ(生後5~8カ月)の日本脳炎HI抗体陽性率(=当該年の新規感染率)が調査されています。ブタが日本脳炎ウイルスの感染を受け始める時期は、6~7月頃に九州、中国、四国地方から始まり、8~9月にかけてその地域が広がっていきます。国内に於いて日本脳炎の患者数は減少しましたが、ウイルスの感染を受けているブタは北海道・東北地方を除いては数多く、ことに西日本以南ではブタの感染状況は調査対象の80〜90%に達している地域が多いことが明らかになっています。したがって日本脳炎は国内においては依然、潜在的な危険性を持つ感染症であり、何もしないままであれば感染者そして発症者がやがて増加する可能性をはらんだ、いぜん油断することは出来ない感染症であると考えられます。

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 2005年5月30日の、厚生労働省による日本脳炎ワクチン積極的勧奨の差し控え以降、2008年度の調査でみると、3~6歳での日本脳炎ワクチンの接種率が激減しました。
その結果、ヒトの日本脳炎に対する抗体保有状況は、2008年のJEV抗体保有状況が調査では、中和抗体価10以上の抗体保有率は0歳後半が最低で、1~5歳では15%以下と非常に低く、抗体保有率の低い小児の年齢層が拡大しています。中高年の抗体保有率の低下の原因はよくわかっていないようですが、1~5歳の低下と違って全くゼロではなく、測定できないぐらい低下してるだけで、実際は8割ぐらいの人は臨床的には心配ないのではと考えられています。(本当?)

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自然界の中で動物がウイルスを保有し蚊がそれを媒介するため、環境からウイルスを駆逐することは極めて困難です。日本脳炎ウイルスの媒介蚊であるコガタアカイエカは、夕方以降ヒトを刺す習性があります。 厚生労働省では「蚊に刺されないように気をつけましょう」という啓発のポスターを作っていますが、これもなかなか難しい注文です。

日本脳炎ポスター



また予防接種が不活化ワクチンであるため、免疫の持続は長期間に及ぶものではありません。したがって痘瘡(天然痘)やポリオ、麻疹などと異なり、たとえどんなにワクチンの普及に努めても、疾患やウイルスの根絶を目標にすることはほとんど不可能と考えられます。日本脳炎は潜在的危険性を持つ重症感染症であることには変わりがなく、日本にとって長い目でみて今後も必要なワクチンであると考えられます。