がNOAUTOLINK:

心電図所見

健診の心電図は、ほとんどがコンピューター診断です。最近のコンピューターは、だいぶん賢くなっていて「異常なし」と判定された場合は、ほぼ正常といえるようなレベルになっています。ただ、いろいろ異常所見が書いてある場合は、まだまだおかしな面もたくさんあって、特に異常Q波の診断や不整脈、ST変化の判定などが苦手なので、人間の目で確認する必要があります。たつの市では、学校心臓検診と言って、小学校1年生と中学校1年生、約1600人の心電図検査を行っていますが、コンピューター診断をそのまま二次検診に回していると、保険診療がパンクしてしまうので、循環器専門の委員が心電図判定を行って、しっかりオーバーリードして本当に異常なものだけを二次検査に回すようにしております。

さて、あなたの心電図の結果、どういった所見が書いてありますか? 
所見は、医学用語なので意味不明ですよね。
簡単に、説明しています。(自検例ではありません。他人のふんどしで相撲をとっているのであしからず)
詳しくは、かかりつけの先生に聞いて下さいね。

画像の説明

心電図は、心臓の収縮(電気的活動)を体表面から捉えたもので、P波は心房の収縮、QRS波は心室の収縮、T波は心室の弛緩を表しています。



ノッチ、スラー、分裂

正常な心電図波形とは異なる場合でも病的な意義はなく、正常亜型(normal variant)と呼ばれる範疇の所見があります。Ⅲ誘導やaVL誘導、移行帯(胸部誘導のV3、V4誘導)では、心臓の電気的興奮ベクトルを垂直に近い方向から見ているので電気的興奮が心室を伝搬する過程でわずかな電気ベクトルの振れが正から負、負から正への電流の変化を生じさせるためにQRS波にノッチやスラー、分裂などの変化を起こす。

画像の説明



画像の説明


異常Q波

心筋に高度な器質性変化、特に壊死や障害が加わった際に、QPS波高は減少する。異常Q波は、Q波の幅が広く、深くなっています。心電図変化の中で最も重症な変化のひとつです。心筋梗塞がその代表疾患ですが、その他、心筋症や肺気腫、左脚ブロック、WPW症候群などがあります。いずれも精査が必要な疾患です。 心筋の異常がないかどうか、一度、心エコー検査をしてみましょう。

画像の説明

しかし、実臨床で最も多いのは、コンピューターの過剰診断です本当に異常Q波ですか?ということと、異常Q波の出ている誘導がどこかということが大事なのです。QRS波形の最初の振れがマイナスで始まる時、これをQ波と呼びますが、ⅠⅡaVLV5V6に見られる小さなQ波は、心室中隔の興奮で起こる正常なQ波で、中隔性Q波と呼ばれます。aVRは、異常Q波が出るのが正常です。健康者を主たる対象とした集団健診において、異常Q波と診断される大多数は健常者です。異常Q波とは、幅が0.04秒以上、深さはR波の1/4以上というのが一般的であり、両方、満たせばよりいいのですが、深さよりも幅が重要です。その診断には、Q波の測定は正確を期す必要がありますが、実際の臨床では、異常Q波なんて、だいたいでいいという感触はありますよね。

                             Q波の測り方


異常Q波の正常例を示します。

40歳 男性 生来健康で、健診で異常Q波を指摘されています。5mmを超える大きなQ波がⅢ誘導に認めます。Ⅲ誘導のみ(aVF誘導のみ、aVL誘導のみなども同じ)の異常Q波があってもかまいません。特に幅の狭い尖鋭なQ波、T波の陰転を伴わない場合は、正常と言ってもいいでしょうか。

画像の説明
              健常者(正常)

Ⅲ誘導に見られる小さなQ波は、しばしば陰性T波を伴うこともありますが、吸気でなくなる場合もあります。(心臓の位置がやや横位から縦になって、電気軸が変わるからでしょうか)

画像の説明


42歳 男性。ⅢaVF誘導に異常Q波を認め、Ⅱ誘導にも小さなQ波を認めます。このようにⅡ誘導にQ波を伴う場合は、深くなくても幅が40mm秒以上あれば心筋梗塞の疑いが強くなります。よって、Ⅲ誘導にQ波がある場合は、ⅡとaVF誘導とセットで見ることが大切です。Ⅲ誘導には陰性T波もあり、下壁の心筋梗塞の疑いが濃厚ですが、実は正常です。本症例は、移行帯がV5V6になっており、時計軸方向回転によってQ波が見られています。時計軸方向回転が起こると、前額面では、ベクトル環の上下が入れ替わり、興奮ベクトルはまず左上を向いてから左下、右上と回ります。左上に向かう初期ベクトルは、ⅢaVF誘導にに大きなQ波をⅡ誘導にも小さなQ波を作ったわけです。そして、最後に興奮が伝わる左室後基部の右上後へ向かう終末ベクトルがより右に向かうことで、Ⅰ誘導でS波が、aVR誘導でR波が描かれます。心筋梗塞との鑑別には、下壁梗塞では、初期ベクトルが下方へ向かわないで、右上に向かうのでaVRの初期r(rS波)で始まるはずである。

画像の説明
              健常者(時計軸方向回転)


41歳 男性 BMI29の肥満体です。横位心では、左軸偏位を呈しやすいが、ⅢやaVFにQ波が認められる時には、Ⅰ誘導でS波を呈することが多い。この症例もaVRで終末R波が認められることから下壁梗塞は否定できそうです。

画像の説明
               健常者(肥満)


では、本当に病気があって、異常Q波になっている症例です。

75歳 男性。V1〜V3のQSが目立ちます。心筋梗塞との鑑別には、Q波の起始部にスラーやノッチがなく、ST-Tも異常を認めない。また、V5V6でR波の電位が小さいので、肺気腫の可能性が高い。QS波形が、肺気腫により滴状心となり、心臓より相対的に高い位置で記録された結果なら、1〜2肋間下方で記録することで、rS波が記録されるはずである。(もし、心筋梗塞なら同じQS波形のままで記録される)

画像の説明
            慢性閉塞性肺疾患(肺気腫)

36歳 女性。V1〜V3に見られるスラーやノッチは、たとえ小さくても(異常Q波の診断基準を満たしていなくても)陳旧性心筋梗塞に見られる特徴的な所見ですが、年齢からは、虚血性心疾患は考えにくい。ST変化もエストロゲンによるジキタリス様効果の可能性が高い。よく見るとⅡaVRV4〜V6に小さなδ波に気づくかどうかで診断がつきます。B型WPW症候群の診断は、明らかなδ波があれば容易ですが、臨床的には、はっきりしない場合も多く、QRS波の立ち上がりに鋭さを欠いていないかそういう目で見ることが大事です。また、別の機会に記録した心電図と比較することも有用です。
画像の説明
              WPW症候群

V1〜V4の同時記録で時相分析してみると、V1V2でQ波の起始部に見えた時相は、V4に示されたδ波の始まりに一致しており、V1V2のQSの所見は、真のQSではなく、陰性δ波が先行した結果QS様に見えただけというわけでした。


トリは、主役の心筋梗塞ですが、誰にでもわかるようなものはおいといて、あえて「ん〜 どうかな」という症例を出してみます。

65歳 男性。高血圧の初診の心電図である。もしこれが、集団健診での心電図だったら、文句なく「異常なし」と判定されてしかるべきものであろう。しかし、1年前に狭心症を思わせる胸痛の既往があったため「ん〜 どうかな」となったわけです。V1〜V3のQSは、きれいであり、肺気腫も疑われますが、V5V6のR波の振幅が減少していない点が合いません。V1のJ点がわずかにあがり、STがわずかに上昇しながら、陰性Tに移行(T terminal inversion=心筋症でも見られる)している部分に心筋梗塞のなごりが残っています。心エコーで、前側壁と心尖部に運動低下を認め、冠動脈造影で左前下行枝seg6に90%の狭窄を認めました。

画像の説明


急性心筋梗塞での心電図変化を示します。まず、T波が増高し、ST上昇を認めます。胸が痛くなって、すぐに来院された場合は、この時点での心電図にお目にかかることが多いようです。その後、異常Q波が出現し、数日かけてSTが下がってきてT波が陰転し、最終的には、異常Q波と冠性T波が残ります。
画像の説明


心筋梗塞では、心臓のどこの部位の血管が詰まると、12誘導のどこの部分にST変化や異常Q波、陰性T波が出るというパターンがあります。例えば下壁の心筋梗塞の場合では、II, IIIとaVF、前壁中隔だとV1〜V4、側壁だとⅠaVFV5V6という具合です。

画像の説明


R波の増高不良

poor r progressionのみで、他にST-T異常を伴わない場合は、異常なし。
reversed poor r progressionは、ほとんどが心筋梗塞(心筋症でも見られる)

心筋梗塞以外でもV4V5のQ波は左室肥大で

リバースなら必ずおかしい

電気軸

性状電気軸は、ー30°〜+90°とするのが、一般的であるが、電気軸の偏位で重要なのは、右室肥大と左脚のヘミブロックの診断であって、電気軸の偏位自体は病的意義はない。電気軸は、加齢によって左に偏位すると言われている。+90°以上の右軸偏位も30歳前であれば正常であり、40歳以上であれば、ー30°以上左軸偏位しても左脚前枝ブロックや左室肥大の所見がなければ問題ない。よって、30歳以下の左軸偏位、40歳以上の右軸編位に注目すればよい。

画像の説明

左軸偏位

右軸偏位


S1S2S3パターン

S1S2S3パターンとは、文字通りに解釈すれば、I、II、III誘導のすべての誘導にS波が認められるパターンを指します。教科書的には、S1S2S3パターンが見られる場合として、 右室の肥大(大血管転移症、Fallot四徴症、心室中隔欠損症) 肺気腫、肺塞栓、自然気胸、漏斗胸、Straight back syndromeなどが疾患が記載されていますが、検診レベルの集団においては、S1,S2,S3パターンは、健常者(若年者、無力性体質者) がほとんどで、臨床的な意義はなく、放置可でOKとされていることが多いようです。 肺疾患を心電図で見つけたいのならば、S1S2S3パターンよりは、肺性PやS1,Q3,T3、右脚ブロックなどの所見の方が有用でしょう。

画像の説明

上記の心電図は、広義のS1S2S3パターンです。狭義では、I、II、III誘導のすべての誘導で、R波よりもS波が大きいときを言います。 広義のS1S2S3パターンでは、正軸も含め、いかなる電気軸もとりうることになります。 I、II、III誘導のすべての誘導で、R波とS波がほぼ等しい場合、前額面に対して垂直なので電気軸を測定することが困難となり、不定軸と呼ばれます。狭義では、極端な軸偏位、-90度から-150度になります。

画像の説明



高電位

右室肥大

右室の慢性的な圧負荷によって生じ、原発性肺高血圧症や二次性肺高血圧症を招く、僧帽弁狭窄症、慢性肺塞栓症、ファロー四徴症、肺動脈弁狭窄症、慢性閉塞性肺疾患などで観察される。

心電図所見としては、右軸偏位、肺性P波、V1〜V3(ⅡⅢaVFも)のR波増高(R/S比>1)ストレイン型STT変化、ⅠaVL V5V6の深いS波などが複数以上存在する。

画像の説明

V1V2でR波増高の鑑別診断

反時計方向回転 移行帯がV1V2に来るだけで、STT変化を伴わない。

画像の説明

後壁梗塞 V1〜V3のT波増高。側壁(ⅠaVL V5V6)下壁(ⅡⅢaVF)にq波やST異常を伴う。(結構、難しい)本症例は、回旋枝の完全閉塞でした。

画像の説明

左室肥大

診断基準としてSokolow&Lyonらの、V1のS波+V5orV6のR波>35mmが有名です。心エコー所見からのCornell criteriaでは、V3のS波+aVLのR波>28mm(男)>20mm(女)というものもありますが、若年者に当てはめるとみんな左室肥大になってしまうので、35歳以上という条件付けが一般的です。ST-T異常は、後述する「ストレイン型パターン」になりますが、虚血との鑑別は難しいところですが、やはりR波高が大きい場合は、虚血を絡んでいるにしろ左室肥大が濃厚です。左室の圧負荷で心筋が肥大している場合に、ストレイン型を示す場合が多く、容量負荷の典型例では、T波は陽性のまま増高していることが多い。

画像の説明

ST-T異常

画像の説明

心電図でST部分(QRS波の終わりからT波の始めまで)からT波にかけての部分の異常で、主にこの部分の変化をいうが、では正常なST-Tは、どういうものなのかというわけですが、STというと水平な部分があってというイメージですが、実際はそうではなく、ニュアンス的には、だらっと上がって、すっと下がるのが正常です。

ST-T異常は、主にST低下が多く、その変化の仕方によっていろいろな分類がされていますが、一般的には、A:上り坂(upstroke) は、正常な場合が多く、B:ストレイン型(strain) は、左室肥大(虚血もありえる)、C:盆状降下(sagging) は若い女性の非特異的ST-T変化、D:水平(horizontai)とE F :下り坂(downstroke)は、虚血性心疾患を疑わせます。

画像の説明

A:上り坂(upstroke)
B:ストレイン型(strain)
C:盆状降下(sagging)
D:水平(horizontai):
E :下り坂(downstroke)軽度
F :下り坂(downstroke)高度


45歳 女性。BMI18のやせ型。集団検診で心電図異常でチェックされました。なんの自覚症状もありません。V5V6のST低下が目立ちます。軽いストレイン型ST低下のパターンで、左室肥大や虚血を疑うST変化ですが、どうでしょうか。V5のR波が2.6mVぎりぎりですが、やせ型なのでありかなって感じです。高血圧もありません。ストレイン型にしては、T波の終末に陽性相あり(一般的には、陰性T波に引っ張られてSTが下がって基線にもどるので、陽性相はないと言われている)陰性T波が浅い割には、J点からST低下が大きいので虚血の方が疑われそうですが、動脈硬化のリスク因子はひとつもありません。こういった非特異的ST−T変化と呼んでいますが、集団検診などで、健康な女性(特に中年女性に多い)にしばしば見られ、悩ましい限りです。

画像の説明画像の説明
             健常者(神経循環無力症)

よく模式図的に示されているような真っすぐなSTがあって、ぴょこっと左右対称のT波が盛り上がっているような場合は、prolongation of ST segmentもしくは、sharp angle of ST-Tと表現され、ちょっと虚血の臭いがする心電図というわけです。

陰性T波

心電図変化の中で最も頻度が高いのは、T波の変化です。その中で、T電位の減少は女性に多く、そのほどんどが健康者です。陰性T波の臨床的意義判定に当たっては、年齢、性別、誘導の情報が必須です。健常者でも、過呼吸、食事、精神的要因で起こることも知られています。一般的にT波は、陽性(上向き)でR波の1/10以上あるとされています。陰性T波とは、T波が陰性(下向き)で、0.5mV以上のものをいうことが多く、臨床的に問題となる最も多いものは、虚血性(狭心症や心筋梗塞)の疾患で、同時にQRS波の異常やST部分の異常を伴うことが多い。

心尖部肥大型心筋症 深くて左右対称

心内膜下梗塞か脳内出血
 
陽性T波
左右対称で高いピンっと尖ったテント状 Kが高くなるほど高くなる

Kが低くなると テントの布が余って、U波が高くなる(低K血症)

画像の説明

平低T波

心電図変化の中で最も頻度が高いのは、T波の変化です。その中で、T電位の減少は女性に多く、そのほどんどが健康者です。平低T波や二相性T波の臨床的意義判定に当たっては、年齢、性別、誘導の情報が必須です。健常者でも、過呼吸、食事、精神的要因で起こることも知られています。一般的にT波は、陽性(上向き)でR波の1/10以上あるとされています。平低T波とは、T波がR波の1/10以下のもの、二相性(陰性と陽性)のT波のものをいうことが多く、臨床的に問題となる最も多いものは、虚血性(狭心症や心筋梗塞)の疾患で、同時にQRS波の異常やST部分の異常を伴うことが多い。

画像の説明

PR延長(Ⅰ度房室ブロック)

心房〜心室間のどこかで伝導が遅れた(0.2秒以上)状態です。ただ遅れるだけでP波の後に必ずQRS波が続きます。迷走神経が亢進している若年者や運動選手ではよく見られる変化で、進行しなければ心配ありません。より重症な房室ブロックⅡ進行すれば、めまいや眼前暗黒感などの症状がおこります。症状がなければ、経過をみましょう。

房室ブロックⅡ度(モビッツ)
房室ブロックⅡ度(ウェンケバッハ)
完全房室ブロック

WPW症候群

RSR’パターン
不完全右脚ブロック
完全右脚ブロック

右脚は1本 左脚ブロックは前枝と後枝がありますが、たこの脚どころか沢山あるので切れにくい 完全に切れる場合は、かなり広範囲でやられないとおこらない=重症と考えます。

脱分極と再分極の生理
脱分極と再分極は反対方向なので同じ方向
追いかけるので逆を向く
清く正しいのは、V1がrsR’の二峰性になる、V6幅の広いS波、aVRが幅広いR波がある。
理由があるか 前下行枝の心筋梗塞 右室肥大(右軸偏位 肺性P 右側胸部誘導にストレインT波=右室肥大)右室の心筋症など

完全左脚ブロック

正常な心電図では、ⅠaVLV5V6には、中隔性Q波があるが、左脚ブロックでは、これがないのが特徴。完全左脚ブロックは、重篤な心臓病が見られ予後も悪いと言われるが(左室全体が刺激伝導系を通っていないので、背後に心筋梗塞などの異常が隠れていてもわからないので、全例精査が必要)経過も良い場合も少なくない。また、同じ完全左脚ブロックでもV1〜V3がQS型を示す例とrS型を示す例がある。これは、右室壁の興奮が早めに起こればV1でrSとなり、右→左への心室中隔興奮の方が主として反映されれば、QSとなると解釈されている。

画像の説明


心室内ブロック

心室全体への興奮の広がりが遅くなり、QRS波の幅が広くなっています。心筋の異常が原因となっていることもあるので、一度、心エコー検査をしてみましょう。


上室性期外収縮

上室性期外収縮

期外収縮とは、本来予想されていた(期待されていた)タイミングよりも早く収縮が起こることを言います。本来の洞結節(内科師長から出た命令)から起こった収縮ではないため、異所性の興奮(他の病棟の師長が出した命令)でP波の形が異なっています。つまり、心房から発生した電気刺激で、洞結節からの規則正しいリズムから逸脱して、やや早いタイミングで心臓の収縮が起こった不整脈を上室(心房)性期外収縮といいます。上室(心房)性期外収縮は、ほとんどの方が自覚症状がないことが多く、健康診断ではじめて指摘されることもめずらしくありません。原因は、睡眠不足や過労、精神的、肉体的ストレス、たばこなどが引き金になっていることが多く心配ありませんが、 頻発するようなら、まれに心疾患を伴う場合もありますので、原因の病気がないかを一度は調べてもらったほうがよいでしょう。

画像の説明


心室性期外収縮

心室性期外収縮

期外収縮とは、本来予想されていた(期待されていた)タイミングよりも早く収縮が起こることを言います。本来の洞結節(内科師長から出た命令)から起こった収縮ではないため、異所性の興奮(内科病棟のスタッフのひとりが勝手に出した命令)でP波がありません。つまり、心室から発生した電気刺激で、洞結節からの規則正しいリズムから逸脱して、やや早いタイミングで心臓の収縮が起こった不整脈を心室性期外収縮といいます。心室性期外収縮は、ほとんどの方が自覚症状がないことが多く、健康診断ではじめて指摘されることもめずらしくありません。原因は、睡眠不足や過労、精神的、肉体的ストレス、たばこなどが引き金になっていることが多く心配ありませんが、まれに心疾患を伴う場合もありますので、期外収縮があるといわれたら、原因の病気がないか、また期外収縮から危険な不整脈に移行する可能性がないかを一度は調べてもらったほうがよいでしょう。

画像の説明



心房細動
房室接合部調律
洞性頻脈

心拍数 正常 60〜100
100〜250 頻脈
250〜350 粗動
350〜   細動


上室性頻拍

narrow QRS tachycardia(幅の狭いQRSで規則的な頻拍症)
リエントリー回路のサイズによって、分類される。
(1)房室回帰性頻拍 かの有名なWPW症候群で、房室結節を順行しケント束を逆行する上室性頻拍で、P'波はQRS波から離れてその直後に認められる。
(2)房室結節回帰性頻拍 房室結節付近に二重伝導路が存在し、これをリエントリー回路とする頻拍を生じる。
(a)common type 順行路として遅伝導路、逆行路として速伝導路となり、心房と心室の興奮の時相はほぼ同時となり、P’波を全く認識できない(48%)かP’波が、QRS波直後に認めらる偽性R’波、偽性S波を生じる(46%)稀にP’波が、QRS波直前に認める偽性q波を生じる。(2%)
(a)uncommon type 稀ではあるが、逆回転で、順行路として速伝導路、逆行路として遅伝導路の場合は、逆行性のP’波は、QRS波からかなり離れた部位に出現し、long RP' tachycardia(RP'>P'R)が認めらる。

画像の説明

 リエントリー
不整脈を起こす原因のひとつに、リエントリー(副伝導路)と呼ばれる機序があります。正常な心臓は、一本の指令系統で動いていますが、正常な刺激伝導系とは別に、もう一本の伝導路が存在することがあります。これを副伝導路と呼びます。この副伝導路に、一方向にしか流れない性質と伝導がゆっくりになる性質があると、いつまでも電気信号がぐるぐる回り続けてしまうようなことが起こり、頻脈性不整脈になってしまうのです。

新宮305


洞性徐脈

健康な心臓は、洞結節から発せられる電気刺激で、1分間に60回〜100回程度の規則正しいリズムで、収縮を繰り返して全身に血液を送り出しています。これを正常洞調律といいます。洞性徐脈は、心臓の拍動リズムの規則性は保たれていますが、回数が、遅くなる状態で(1分間に60回未満)ほとんどは、自律神経(迷走神経)によるもので、運動すれば増えるので、病的意義はありません。しかし、めまいや息切れ、体のだるさ、失神などの症状を伴う場合や、極端に少ない場合(1分間に40回以下)などは、洞停止や洞房ブロックなどを伴う可能性もありますので、精査が必要です。

画像の説明

不整脈

洞不全症候群は、ペースメーカー埋め込みによる予後の改善はない。QOL改善のため。
完全房室ブロックは、突然死の可能性高く、ペースメーカーの絶対適応
低電位差
反時計回転
時計回転
胸部誘導におけるr波の増高は、V1からV2、V3と進むにつれて順次r波が大きくなり、(本当はR/S比が多くなり)V3かV4付近でR/S比が<1から>1に逆転する(移行帯)のを正常としています。このr波の増高がなかなか進まず移行帯がV5付近にずれ込んでいるのを時計方向回転(足の方向から見上げて)と言います。しかし、時計方向回転は、胸部誘導での体の横断面での電気軸の変化を表しており、前額面上での電気軸(左軸偏位、右軸編位など)とは関係ありません。電気軸上の概念であり、必ずしも実際に心臓がその方向に回転している訳では有りません。

画像の説明

ST上昇
高いT波

心室頻拍
リドカインでは、洞調律に戻るのは、10%もない。アミサリンが使われることが多いが、血圧が低ければ、心室細動になってしまうかも。当院では、静注の抗不整脈薬は置いていないので、そのまま救急搬送して、意識レベルが落ちた時点で、除細動となります。

特発性心室頻拍は、カテーテルアブレーションの適応になるが、原因不明は、ICD、心筋梗塞後24時間以内は再発しないので、経過観察

QT延長

画像の説明

QT延長症候群とは、①心電図上のQTc間隔の延長、②失神発作(あるいは急死の家族歴)を示す症例をいいます。 心電図のQT間隔が延長するような状態では、心室筋各部で興奮持続時間のばらつきが多くなり、いろいろな危険な不整脈が生じ易くなります。



日常診療で、このような心電図異常を見る場合は、抗不整脈薬や向精神病薬の副作用電解質異常 (低K血症、低Ca血症, 低Mg血症 )など後天性のものがほとんどで、その他、循環器疾患、神経系疾患でみられる。一方、明らかな原因が無く、 先天性(遺伝性)QT延長症候群があります。最近、心筋細胞膜のイオンチャネルの遺伝子異常が原因であることがわかってきました。「QT延長症候群」の遺伝には2つのタイプがあります。子供4人のうち3人が病気になる優性遺伝(Roman-Ward症候群)と子供4人のうち1人しか病気にならない劣性遺伝(Jervell and Lange-Nielsen症候群)です。劣性遺伝の患者さんの場合は、生まれつき両耳の聴力が低下しています。そのため生まれつき耳の不自由な方では1,000人に2~3人の割合でこの病気が見つかると言われています。

Roman-Ward症候群(先天性QT延長症候群の90%がLQT1〜3で占められる)
名称未設定

発作が起こらなければ無症状です。発作による症状は立ち眩み、動悸、気分不快などで、ひどい場合には意識を失います。治療は、交感神経の働きを抑える薬により突然死はかなり予防できます。しかし、薬物療法にて効果のない症例は、交感神経の切断やペースメーカー、植え込み式除細動器の手術を行います。

画像の説明

 torsade de pointes(Tdp)
torsade de pointes型心室頻拍の( torsade de pointesという言葉は、フランス語で、「トルサード・ド・ポアンツ」と発音します。torsadeとは「捻れた房毛」、 pointe(s)は「針、釘、(針の)尖端」などの意味です) 心電図所見は極めて特徴的で、QRS軸の極性が5~20心拍を周期として徐々に変動します。(上に尖ったり、下に尖ったりしてます) 直ちに適切な治療を行わないと極めて容易に心室細動に移行するため、極めて危険な不整脈です。

 


QT短縮

ブルガダ型心電図

我が国では、かなり以前から一見、健康そうな青壮年男性が、夜中にうなり声を発生突然死するという例があることが知られており、昭和31年に東京都監察医務院の吉村先生が「ぽっくり病」と呼ばれました。この病気は、東京都で年間100例くらい見られていましたが、原因不明で、そのまま時間が過ぎてきたわけですが、世界には偉い人がいるもので、1992年にスペインのBrugada先生が、反復する失神発作などの前駆症状を有し、特発性心室細動の中の一疾患群として、共通する心電図所見があることを報告し、ブルガダ症候群と呼ぶようになりました。近年の遺伝子解析により、約20~25%の例では原因が心筋Naチャネルの変異で責任遺伝子はSCN5Aとされ、分子病であることが明らかになっています。

Brugada型心電図の定義(学校検診での小児Brugada様心電図例の抽出のための診断基準より)
右側胸部誘導(V1〜V3)のいずれかで、J点で0.2mV以上STが上昇し、かつST-T部位がcoved型またはsaddleback型をとるもの(本症は、ST上昇の程度、T波の所見は変化しうるので、経過をみたり、微妙な場合は、1〜2肋間上の誘導(V1〜V3)記録することでST上昇が強調されて特徴的な心電図所見が描出されることもある)

画像の説明

Brugada型心電図のタイプ分類(2002年コンセンサスレポートより)

画像の説明

右脚ブロックパターン(late r' の小さい場合を含む)をしばしば合併する。
J点は左側胸部誘導のQRS終末点の時相とする。

しかし、このような心電図を示す人は、我が国では稀でなく、検診や外来でしばしば遭遇する心電図所見で(100〜1000人に1人)多くの人は全く健康で、何ら異常なく生活を続ける人が大部分ですが、不整脈事故を起こす人が皆無というわけでもありません。

ブルガダ型心電図には上図のB(coved型)とC(saddle-back型)の2種類があります。
B(coved型)は要注意ですが、C(saddle-back型)であれば、家族歴がなく、失神発作を起こしたことがない方は、日常生活は健康と考え、スポーツ、旅行、勤務などには何の制限もなく、普通のように生活されて何ら差し支えありません。ただ「不整脈」「うつ病」の治療薬で、悪い影響を与えるものがありますから「ブルガダ型心電図」と診断されたことがあることを担当医師にお話し下さい。

Brugada症候群の診断基準
(1)特徴的なBrugada型心電図波形を呈する。
(2)QT延長を伴わない多形性心室頻拍や心室細動およびそれに伴う失神発作が確認されている。
(3)心室細動をおこしうるすべての器質的心疾患および病態が否定される。

coved型の特徴的な波形(薬物負荷の有無を問わず)を呈する場合で
心室細動または多形性心室頻拍の発作が確認される
血縁に45才以下の突然死がある
血縁に coved型の心電図所見を有する例がある
電気生理検査で心室細動誘発が可能
失神
夜間の苦悶状の呼吸(nocturnal agonal respiration)
これらの臨床的背景を持たない例はBrugada型心電図心電図とし、Brugada症候群とはしない

(European Society of Cardiology Heart Rhythm Society の提唱 2002年)

特に下記に注意して、1年に1度の心電図検査を受けて経過を観察して下さい。

(1)家族(主として45才以下の両親、兄弟など)に失神発作、急死などの人がいる。

(2)今までに失神発作などがあった方。

画像の説明

coved型ST上昇を示す例で、V1誘導におけるQRS波とSTの移行部でS terminal delay (*)を認め S波の幅が広くなっている例は心室細動あるいは失神を生じる危険性が高いとされています。

画像の説明

本症候群にみる失神発作は心室細動に由来し、突然死をきたすものがあるので注意が必要です。一般に中年以降の男性に多く、安静時または睡眠時に不整脈発作がおこる傾向あります。本症候群のST上昇の程度やT波の所見は変化するので1回の心電図所見では正確には判定できないことがあります。coved型は、saddleback型より危険度が高いとされていますが、撮影時期により相互に移行している場合もあるためsaddleback型にも注意が必要です。健診や一般臨床の場においてsaddle-back型に遭遇する確率が圧倒的に多い。saddleback型の所見を認めた場合は必ず1肋間上(必要なら2肋間上も)の胸部誘導(V1~V3)も記録すること。また、他の器質的心疾患を除外する目的にて心エコー検査を実施することが望ましい。(例えば、ARVCでは右側胸部誘導においてJ点の上昇や陰性T波の所見はしばしば認められるため、Brugada型心電図(coved 型)との鑑別はしばしば困難を伴う)