子宮頸がんワクチン 

 

子宮頸がん予防ワクチン(サーバリックス、ガーダシル) 画像の説明
区分 定期
種別 不活化
投与経路 筋注
1回投与量 0.5ml
合計接種回数 3回
標準スケジュール 【サーバリックス】1回目:10歳以上の女性
2回目:1回目の1ヶ月後
1回目の6ヶ月後
【ガーダシル】1回目:9歳以上の女性
2回目:1回目の2ヶ月後
1回目の6ヶ月
Catchupスケジュール 標準スケジュールに同じ
副反応 このワクチンにはワクチン効果を高めるためにアジュバントと呼ばれる”免疫増強剤”が添加されています。アジュバントを含むワクチンは、疼痛・発赤・腫脹など注射接種部位の局所反応が強くなる傾向があります。
接種料 1回 16254円

 ※未成年者への接種には保護者様の同意を必要です。

 ※妊娠中は接種はできません。
 ※平成23年1月から予防接種費用の助成が始まりました。対象者は、中学1年生相当〜高校1年生相当の女子
接種料:無料

 

子宮頸がん予防ワクチンは、海外ではすでに100カ国以上で使用されています。日本では2009年10月に承認され、2009年12月22日より一般の医療機関で接種(任意)することができるようになりました。2013年4月より小学校6年生から高校1年生の女子に定期接種となりました。接種率は70%を超えましたが、接種後に体の痛みや脱力、倦怠感などを訴える人が相次ぎ、同年6月に厚労省は積極的勧奨を中止しました。非常に重要なワクチンが定期接種化されたにもかかわらず、センセーショナルな報道が続いたことで接種率は一気に1%以下に落ち込みました。

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サーバリックスは 1回の接種では十分な抗体ができないため、半年の間に3回の接種が必要です。きちんと最後まで接種することが重要です。ワクチンを接種すると血中に抗体ができ、その抗体が粘膜に染み出すことでHPVの感染を防ぎます。なお、サーバリックスの予防効果の期間については、高い抗体価が接種後6.4年維持されることが報告されており、また統計モデルからはほぼ20年間は予防出来ると推定されています。

日本では現在公費で受けられるHPVワクチンが2種類あります。子宮頸がんの原因の50〜70%を占める遺伝子型「16型」「18型」に対応した2価ワクチンの「サーバリックス」と「16型」「18型」に加えて「6型」「11型」にも対応する4価ワクチンの「ガーダシル」でこちらは尖圭コンジローマという病気の予防も想定しています。海外ではさらに9価ワクチンの接種が進んでいます。

理想的には性体験前の若い女性に接種するのが最も効果的です。従って、多くの国では優先接種対象は11歳~12歳の女子とされています。 ヒトパピローマウイルスは2年程度で自然に排泄され、再度感染を繰り返すウイルスですので、成人の方、性交経験のある方でも再感染予防はとても重要です。サーバリックスの適応は、日本でもEUでも10歳以上の女性となっていて、上限はありません。(アメリカは25歳まで)何歳までにすべきかは今後の検討が待たれますが、常識的には性交渉のある45歳ぐらいまでの女性に有効性があると考えるのが妥当ではないでしょうか。


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がんは予防に時代へ

子宮頸がんは子宮の入り口付近(外子宮口)にできるがんです。普通の婦人科の診察でこの部分を観察したり、検査すべき細胞や組織を採取することが可能です。したがって、早期発見が容易なわけです。

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子宮頸がんの原因は、ほぼ100%がヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染です。 HPVは私たちの生活環境に広く存在するウイルスで、接触によって皮膚や粘膜に感染するのが特徴で、ほぼ全ての人が一生に1回は感染すると言われています。HPVは皮膚や粘膜に感染するウイルスで、100種類以上のタイプがあります。このうちの約15種類は子宮頸がんの原因となることが多いため、発がん性HPVと呼ばれています。中でも、HPV 16型HPV 18型と呼ばれる2種類は、子宮頸がんを発症している20~30代の女性の約60%から見つかっています。 子宮頸がんの原因となる発がん性HPVの99%はセックスで感染します。特別な人だけが感染するのではなく、発がん性HPVは、わが国でも15~19歳の半数以上、20~24歳の36%に感染が認められたとする報告があり、 すべての女性の約80%が一生に一度は感染していると言われているとてもありふれたウイルスです。このため、性行動のあるすべての女性が子宮頸がんになる可能性を持っています。 ところが、男性の性器での発がんはまれなのです。皮膚に感染するとイボなどになります。

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しかし、発がん性HPVに感染しても多くの場合、感染は一時的で、90%以上はウイルスは自然に排除されますが、何回でも罹ります。一部が持続感染し、前がん病変(がんになる前の異常な細胞)となり、さらに数年から十数年かけて子宮頸がんに進展するのはごくわずかです。また、HPVはその殆どが上皮細胞にのみ感染するため、自然感染しても十分な獲得免疫が得られません。

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子宮頸がん予防ワクチンを接種することでHPV 16型とHPV 18型の感染を防ぐことができますが、全ての発がん性HPVの感染を防ぐことができるわけではありません。子宮頸がんを完全に防ぐためには、子宮頸がんワクチンの接種だけではなく、定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。子宮頸がんになるまでには、通常、数年~十数年と長い時間がかかるので、がんになる前の状態(前がん病変)を発見し、治療することが可能です。ワクチン接種後も、 少なくとも2年に1度、 定期的に子宮頸がん検診を受けるようにしましょう。

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子宮頸がんは、初期には全く症状がないことがほとんどで、自分で気づくことはできません。そのため、不正出血やおりものの増加、性交のときの出血などに気がついたときには、がんが進行しているということも少なくありません。がんが進行すると、子宮をすべて摘出する手術が必要になることもあり、妊娠、出産の可能性を失い、女性にとって心身ともに大きな負担となります。また、まわりの臓器にがんがひろがっている場合には、命にかかわることもあります。

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がんと言えば、一般的には60歳前後がピークで、加齢に伴って起こってくるもので、女性のがんといえば、乳がんが一番に思い浮かぶ人も多いと思われます。しかし、子宮頸がんは若年女性に多く発生するがんで、特に20〜30歳代では乳がんを抜いて第1位を占めるに至っています。つまり、子供を産んで、かわいい我が子の育児の真っ最中に自分ががんの闘病生活をしなければならないという、大変なことになるのです。早期に発見し治療を始めれば治る病気ですが、子宮の一部を切り取る治療は流産や早産の原因になることがあり、治療で子宮を摘出して妊娠できなくなる人もいます。人生を考える上にも後悔しても後悔しきれない、子宮頸がんは、年間約1万5000人が発症し、約3500人が死亡しています。それが予防できるのであれば、絶対受けるべきだとは思いませんか?

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子宮頸がんの増加の原因は、多くの若い女性の検診率の低迷と性交渉開始年齢の低下と性行動の多様化の中で、若年者に ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が蔓延している可能性が高いと考えられる。

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              性行経験率の年次変化

子宮頸がん予防ワクチンは、子宮頸がん全体の50~70%の原因とされる2種類(16型・18型)のヒトパピローマウイルス(HPV)に予防効果があり、16型HPVと18型HPVの感染やがんになる過程の異常(異形成)を90%以上予防できたとの報告があります。(子宮頸がんそのものを予防する効果はまだ証明されていません)


子宮頸がんのがん保険に入ると考えると安い

子宮頸がん予防ワクチンは、3回打てば、4万8000円ちょっとかかります。(今は公費です)たしかに高いワクチンですが、 予防効果は20年続くとすると、1か月たったの200円で子宮頸がんが予防できるのです。考えれば、こんな安いがん保険はないですよ。10歳代の若い女性の方に絶対的にお勧めですが、20歳代~30歳代の若いお母さんにも、お勧めします。

子宮頸がん予防ワクチン接種の積極的な接種勧奨の差し控えについて

前回の肺炎球菌とヒブ騒動はなんとか乗り切った厚労省も今回の女学生の涙に寄り切られてしまいました。(こういう言い回しは不謹慎かもしれません)確かに、接種後に体の痛みを訴える中高生が相次ぎました。3ヶ月間で143件(うち体の痛みを訴える副作用報告は37件)と公表されています。しかし子宮頸がん予防ワクチンは、その有効性が認められ、世界保健機関(WHO)が接種を推奨し、多くの先進国では公的接種とされています。既に世界中で接種された多くのデータから10年以上前に、これらの副作用とワクチンの因果関係ないと結論づけられています。いまさら、専門家検討会がどうあがいても、日本で行われたあれっぽっちのデータで、副作用かどうかを含めワクチンの安全性を検証することなんかできるわけもなく、厚労省お得意の目くらまし作戦で、今後、ほとぼりが冷めない限りは、勧奨の一時中止を見直されることはないでしょう。確かに痛いのをうそはと言いません。アジア系の黄色人種にだけにたくさん起こる副作用の可能性もゼロではないかもしれないが、タミフルと異常行動との関係と同じで、多くのデータを集めてもなかなか証明することは難しいと思います。国が本当にやらなければならないのは、接種勧奨の差し控えではなく、副作用の原因の追求、痛みの治療、予防接種の健康被害の救済制度を手厚くすることであり、このまま中止を余儀なくされるようならば、子宮頸癌の検診率を本気であげるような施策に取り組まないと誰も救われません。100%安全なワクチンなんてありません。たまたま副作用がでてしまった人には大変残念なことではありますが、子宮頸癌で亡くなる人は年間数千人います。さらに、癌で亡くならなかったとしても、手術や不妊の問題などもあり、その副作用と天秤にかけて判断するのが国の仕事なのです。

患者さんが病気なって、手術してそれ治したげると「ありがとうございます」って感謝されますが「甘いもの食べるな」「お酒控えましょう」「たばこ止めましょう」って言っても、うるせえ奴やなあって思われるだけです。予防接種も同じで、一生懸命勧めても誰も感謝してくれませんし、なにかあったら恨まれます。しかし、ワクチンほどたくさんの子どもたちの病気を防ぎ、命を守ってくれる薬は他にはありません。「自分の娘なら必ず打ちます。」国はなにかにつけ及び腰です。前線部隊であるかかりつけ医が、どんなに嫌われても信念をもって予防接種を推進していくことが大事なんだと思っています。

 

接種の積極的な接種勧奨が再開

8年以上にわたって接種の呼びかけが差し控えられましたが、その間にワクチンの有効性や安全性に関するデータが蓄積され、再開へと繋がりました。また、積極的勧奨を控えていた時期に接種のタイミングを逃した人に対しても公費で「キャッチアップ接種」ができることが決まりました。

子宮頸部高度前がん病変の予防に対する 4 価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの有効性(感染減少)と効果(前がん病変減少)は、これまでに示されてきたが、4 価 HPV ワクチン接種と接種後の浸潤子宮頸がんのリスクとの関連を示すデータは不足していました。スウェーデンからの論文(NEJM)で2006~2017 年の間に登録されている約167万人の 10~30 歳の女児・女性を対象としたHPV ワクチン接種と浸潤性子宮頸がんのリスクとの関連について追跡研究を行った。子宮頸がんは、1回以上の4 価 HPVワクチンの接種を受けたことのある約53万人(ワクチン接種集団)中の19 人と、ワクチン接種を受けなかった約115万人(ワクチン非接種集団)中の 538 人で診断された。子宮頸がんの累積発生率は、ワクチン接種を受けた女性では 10万人あたり 47 件、受けなかった女性では 10万人あたり 94 件であった。HPVワクチン接種の有無による子宮頸がんの累積罹患率は、オレンジ色が非接種、青が17~30歳での接種、緑が17歳未満での接種、ワクチンの効果は一目瞭然です。

追跡調査時の年齢や他の関連が予想される因子で補正を行うと、ワクチン接種集団の非接種集団に対する発生率比は 0.37(95% CI:0.21~0.57)であった(63%の減少効果)。すべての関連因子で補正を行うと、発生率比は、17 歳になる前にワクチン接種を受けた女性での発生率比は 0.12(95% CI:0.00~0.34)(88%の減少効果)、17~30 歳で受けた女性で 0.47(95% CI:0.27~0.75)(53%の減少効果)という結果になった。スウェーデンの 10~30 歳の女児・女性において、4 価 HPV ワクチン接種は、国レベルでの大幅な浸潤性子宮頸がんのリスク減少と関連し 4価HPVワクチン接種は、大幅な浸潤性子宮頸がんのリスク減少と関連があることを示した。接種した年齢が若いほど、浸潤性子宮頸がんの発生率の低下は著しい。

WHO(世界保健機関)の「ワクチンの安全性に関する専門委員会」(GACVS)は2015年12月、「ワクチン接種推奨に変更があるような安全上の問題は確認されていない」 とする声明を出し、「積極的な接種勧奨の差し控え」のままの日本を名指しで批判しています。厚労省は安全性が確認されるまでの間、強い勧奨を一時中止するとし、原因や有効性、安全性について研究を行うと言っていましたが、いったいどんな研究をしたのでしょうか。一番問題なのは、「何が分かったら、接種を再開するか、あるいはしないのか」というエンドポイントを明確にしていない点です。結局は、ほとぼりが冷めるまで待っていたら、スウェーデンが恰好のエビデンスを作ってくれたわけです。HPVワクチンの積極的な接種勧奨の差し控えて8年以上過ぎて、国内のデータとしては、名古屋市の調査と祖父江班の研究があります(しょぼいですね)名古屋市の調査は、「全国子宮頸がんワクチン被害者の会」が名古屋市に調査の要望書を提出し行われたもので、中学3年生から大学3年生相当の年齢の女性7万960人を対象に2015年9月に調査、最終報告は2016年3月。3万793人の回答を年齢補正して24項目の症状について分析した結果、HPVワクチン接種群が非接種群より有意に多い症状は見られなかったとしています。祖父江班の研究は、名古屋市の調査が「全国規模で研究していない」という声が被害者から上がったために、大阪大学教授の祖父江友孝氏が、研究代表者を務めた厚生労働省研究班による全国疫学調査。2016年12月に、(1)HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する者が一定数存在した、(2)本調査によってHPVワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係は言及できないと報告しています。いずれの報告にしろアンケート調査による観察横断研究は、ワクチンと接種後の症状との因果関係を調べるには適していない手法です。WHOのGACVSは、2017年7月にHPVワクチンに関する安全性評価において、科学的分析とは裏腹に、世界では症例観察に基づく誤った報告や根拠のない主張が注目を集めている。合理的根拠に乏しい主張によって接種率の低下する国が増え、実害をもたらしていることに対し、委員会は引き続き懸念を表明するとしています。結局、HPVワクチン問題の一番難しいのは、個別の症例では因果関係を完全には否定できない点です。何事にも「例外」はあり得るし、どんな人にも100%安全な薬剤はないからです。