夜尿症

早く治った方がいいに決まっている

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夜尿症は、世界共通で「5歳を過ぎて週に2回以上の頻度で、少なくとも3カ月以上連続して夜間睡眠中の尿失禁を認めるもの」と定義されています。夜尿症は自然に治っていく例が多いのですが、身体に悪影響を及ぼすものでないことから、とかく放置されることが多い病気です。しかし、それは大人の目から見た他人事であり、当事者のお子さんの小さな世界にとっては、プライドをかけた一大事であり、夜尿のためにお子さんが自信をなくし、心理面や社会面、生活面に様々な影響を与えるます。あるデータでは、8~16歳の夜尿症患者さんへのアンケートでは、いじめよりも悪い精神的外傷として、3番目の出来事として報告されています。このような状況自体がストレスとなって夜尿が治るのを遅らせることにもなるため、なるべく早く治った方がいいに決まっています。夜尿症に効くお薬もあるので、学齢期になっても夜尿が治らず、一人で悩まんないで、積極的に医療機関で相談することをお勧めします。

「おねしょ」と「夜尿症」の違いは年齢です。つまり、幼児期の夜尿をおねしょといい、5~6歳(小学校入学前後)以後を夜尿症というのが一般的です。

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生まれて2歳頃までは毎晩夜尿をしますが、その割合は年齢とともに減っていきます。2~3歳児ではその1/2~1/3、4歳児では1/4のお子さまが夜尿をしています。5、6歳で約15%、小学校低学年で約8%、小学校高学年で約5%(1クラスに1~2名程度)いるとされる頻度の高い病気なのです。12歳を過ぎると、その多くは消失していきますが、成人になっても夜尿がみられる場合があります(0.1~0.3%程度)。

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夜尿症の主な原因は、「夜間の尿量が多いこと」と「夜間の膀胱容量が小さいこと」です。

●夜間の尿量が多い(抗利尿ホルモンの夜間分泌不足)
夜間の尿量をコントロールするのに重要なのが、抗利尿ホルモンです。これは、脳から分泌されるホルモンで、昼間少なく、夜になると多く出ます。そのため、夜につくられる尿量は昼間につくられる尿量よりも少なくなります。抗利尿ホルモンの分泌のリズムは、通常、成長とともに整ってきますが、夜尿症の子どもの中には、夜だけ抗利尿ホルモンの出方が悪いため、夜間の尿量が多くなっていることがあります。

●膀胱容量が未熟(不安定膀胱)
夜間の膀胱機能は子どもの成長とともに発達していき、夜間は昼間の1回の尿量の1.5~2.0倍は貯められるようになり、4~5歳になると夜間トイレに一度も行かなくてもよい位のおしっこを貯められるようになります。しかし、夜尿症の子どもの中には、膀胱の機能が未発達で、膀胱のためが小さいことがあります。また、寝る前に排尿しても全部出せずに残尿が残る場合もあります。

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生活指導が大事

夜尿症のタイプにもよりますが、適正な生活指導によって生活リズム(食事や塩分・水分の摂取時間・摂取量の見直し、就寝前のトイレでの排尿など)を改善するだけで、数ヵ月で約2割が改善します。

●水分の摂取時間、摂取量に少し注意する
習慣的に水分を多く取っていることがおねしょの原因となることがあります。水分摂取で大切なことは、だた水分を制限するということではなく、日中に多く夕方から減らすというように、水分摂取リズムを意識することが重要です。具体的には、運動し汗をかく朝から午前中はたっぷりとって、午後から多少控えめにします。特に、夕食後から就寝前2~3時間は飲水、飲食をしないようにするのが原則で、やむをえないときでも200mLまでにすることが勧められます。(夕方以降の飲水量は10ml/㎏以下に抑える)牛乳も多量に飲むと、蛋白質、カルシウムが過剰となり、尿量が増えて、膀胱のためも悪くなります。また、水分を控えているつもりでも果物をたくさん食べているお子さんもいます。

●塩分をとりすぎるない
スナック菓子には塩分がたくさん含まれているので、お菓子を食べるとと喉が乾いて、その結果、水分もとりすぎることになります。塩分をできるだけ控えめにしましょう。

●寝る前にはトイレに行く習慣を
寝る前にトイレに行くことは、膀胱に残った尿を空にする意味でとても重要です。子どもが自らトイレに行くように、習慣をつけましょう。

●排尿抑制訓練(日中おしっこをがまんする訓練)
子どもがもじもじするとつい「トイレに行きなさい」と促してしまうご家族の方がいますが、これもおねしょにはよくない場合があります。尿があまり貯まっていないのに排尿を促すと尿を貯めておくことができなくなります(膀胱が大きくなりづらい)。膀胱の貯めを増やすには、おしっこのがまん訓練が有効です。学校から帰った後、家でおしっこをがまんさせ、もうだめだというぎりぎりまでがまんさせる訓練です。がまん尿量の目安は、6~8歳で150mL、9~11歳で200mL、12~15歳では300mL以上は貯められるようにします。この量より少なかった場合は膀胱型であると考えられます。昼間にパンツが濡れるような場合は、その多くが膀胱型です。このタイプの原因は、膀胱の発達が十分でないために膀胱が過敏な反応(不安定膀胱)を起こしている場合があります。

●冷えに対しても配慮
夜尿を悪化させる要因に冷えがあります。夏場におねしょがなくなった子どもが、秋から冬には、おねしょがみられることはよく経験することです。手足が冷たい、しもやけができやすいというように、冷え症状を認めた場合には、寝る前にお風呂に入って体を芯から温める、布団を少しだけ暖めておくなどの配慮が勧められます。

●規則正しい生活のリズムの確立を
膀胱や尿道のはたらきを調節している自律神経は、規則正しい生活をしていないと、上手くはたらいてくれません。薬で治療することになっても、生活のリズムがしっかりできていないと効果もでにくくなります。規則正しい生活は、夜間の抗利尿ホルモンの分泌にも好影響を及ぼすと考えられています。毎日一定の時間に起きる、寝る、食事するようにしましょう。また、お子さまを毎晩無理やり起こして排尿させることは、睡眠リズムを崩し、夜中の尿量を調整する抗利尿ホルモンの分泌を減らしたり、夜間の膀胱の貯めを悪くしたりして、夜尿がひどくなる原因になることもあり、避けるべきとされています。

●おむつの使用
「おむつの使用は、おねしょを長引かせるの?」という質問は多くあります。幼児期でも、学童期の子どもでも、おむつをしているからおねしょが長引くということはありません。お子さまが嫌がらないようなら、後片付けが楽になりますので、使うことは特に問題ありません。

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医療機関への受診の目安

生活指導による治療効果を観察し、改善がなければ薬物療法を検討します。夜尿症は、今日明日治るものではありません。また、原因は子どもごとに異なります。年齢と夜尿頻度からみた適切な対策をとることが勧められます。幼児期のおねしょは正常です。少しゆとりを持ってみてあげて下さい。ご家族は、あまり神経質になったりしないで、前の年の同じ季節を思い出し、夜尿の回数がどのように変化したのかということを観察しながら様子を見て下さい。学童期のおねしょは「夜尿症」と呼ばれます。夜尿症は、小学校低学年で約10%、小学校高学年で約5%にみられるポピュラーな病気です。小学校1、2年生で週に数日の夜尿頻度であれば、特に対策も急ぐ必要はありません。

ただ、10歳〜中学生になると治りにくくなります。小学校低学年でも、毎晩、あるいは週の半分以上夜尿をしている場合や夜尿の量が多くぐっしょり濡れている場合、小学校3年〜4年以上で週に1回程度でも適切な対策を取らないと長引くこともあります。また、夜尿だけでなく、日中に漏らしてしまう場合などは、膀胱や腎臓の器質的な異常も考えられ、医療機関などに相談することをお勧めします。

生来持続する1次性と、6カ月以上夜尿がない期間を経て再燃した2次性に分けられるが、後者では、心因性(家庭や学校などでの諸問題)後天性疾患の発症(脳・脊髄疾患、糖尿病など)も考えます。また、夜尿のみの単一症候性と、夜尿に加えて昼間の症状(尿失禁、頻尿、尿意切迫感など)を伴う非単一症候性に区別されますが、後者では、泌尿器科的疾患(尿路奇形、尿路結石など)代謝・内分泌疾患(糖尿病、尿崩症など)脊髄疾患(潜在性二分脊椎など)発達障害(ADHDなど)心理的要因などの合併の頻度が高くなります。夜尿症の児の95%以上は夜尿を呈する器質的疾患を有しませんが、5%未満で泌尿器科的疾患(尿路奇形、尿路結石など)、代謝・内分泌疾患(糖尿病、尿崩症など)、脊髄疾患(潜在性二分脊椎など)、発達障害(ADHDなど)が存在しています。



夜尿相談シート

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夜尿症の重症度は、そのお子さまの年齢、夜尿の頻度、夜尿の量、原因などに大きく影響され、個々のお子さまで異なります。また、頻度は多くないですが、夜尿症の中には、便秘、糖尿病甲状腺機能亢進症、神経因性膀胱や腎臓に器質的な異常が原因であることがあります。昼間もパンツが濡れること(昼間遺尿症)がある場合は、夜尿だけの子どもに比べて、器質的異常が多いことが知られています。詳細な問診(尿漏れや排尿の状況、昼間遺尿・多飲多尿・頻尿・排尿時痛・切迫性排尿の有無など)診察(潜在性二分脊椎の存在を示唆する腰背部の凹みの有無、便秘など)尿検査を行って、5%未満の頻度で見られる基質的疾患の存在を見落とさないようにしなければなりません。

同じ年齢で、毎晩夜尿があるお子さまでも、治りやすい夜尿症と治りにくい夜尿症があります。A君とB君の夜尿記録を比べてみると、A君の方がB君より回数が多く、早い時間帯に夜尿がみられています。つまり、B君よりA君の方が治りにくい夜尿症といえます。夜尿の頻度以外に、夜尿がおこる時間帯を把握しておくことが大切です。夜尿症は、就寝後の早い時間帯にしていた夜尿が、徐々に朝方にシフトしていき、その後、夜尿をしない日が出てきて、頻度も減少して、治癒へと向かうのが一般的です。B君は数ヶ月から1年以内で夜尿症が治ることが期待されますが、A君はかなり治りにくい夜尿症と思われます。

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お子さまの夜尿症が多尿型(夜間尿量が多いタイプ)の場合は、抗利尿ホルモン薬の経口投与により、7~8割が改善します。ちなみに改善とは1週間の夜尿回数が半分以下に減少することを指します。膀胱型(膀胱容量が小さいタイプ)の場合は、抗うつ薬や抗コリン薬の投与により、約3割が改善します。薬物療法は病型によって使い分け、多尿型には、デスモプレシンを用いた抗利尿ホルモン療法を、膀胱型には、抗コリン薬、三環系抗うつ薬を、混合型には、これらの薬剤の併用療法を行います。

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当院では、アラーム療法はしていないので、生活指導がおおまかにできている場合は、ミニリンメルトOD錠120μg就寝前内服より初めて、2〜4週間で判定、240μgまで増量し、それでも効果がないようなら専門医に紹介させて頂いております。(残念ながら、ミニリンメルトOD錠は夜尿症に対して保健適応はありません)

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おむつに漏れた尿の重さと起床時の尿量の合計が夜間尿量であり、0.9ml/㎏体重/hr(睡眠時間)(最大量250ml)を超える場合には夜間多尿と判断する。一方、昼間に可能な限り排尿を我慢させて尿量を測定する。これが機能的膀胱容量であり、7ml/㎏体重(最大300ml)を下回る場合には膀胱容量過少と判断します。

膀胱容量が過少な症例では、デスモプレシンと抗コリン剤を併用で使用することがある。(ベシケアOD錠(2.5㎎・5㎎)1錠、分1、夕食後)昼間遺尿を伴う夜尿症では、ウリトス、ステーブラOD錠(0.1㎎)2〜4錠、分2、朝食後・夕食後の治療に有用である。夜尿症は保険適用ではないので、過活動膀胱・不安定膀胱の治療として使用します。夜尿症の患児の多くが睡眠・覚醒障害を有することから、小児の夜泣き・疳に対して適用ある抑肝散(ツムラ)2.5g、分1、夕食時の併用が有用である。(苦くて飲みにくいので、チョコレートアイスに混ぜるとコンプライアンスが改善する。)かつて汎用された3環系抗鬱剤(トフラニールなど)は、心毒性、肝障害、悪性症候群等の報告により米国では使用禁止であり、欧州でも使用が控えられるようになってきた。本剤の使用は難治の症例に専門医が使用することが推奨されています。

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夜尿症がいつ治るのか大きな不安となっています。夜尿症の子どもには「夜尿症は必ず治るのだ」ということを話してあげて、安心させてあげることが大切です。多くの場合、第二次性徴を迎える12歳を過ぎるころには、夜尿は見られなくなります。「子どもの夜尿が1年でどの程度よくなるのか?」についての報告があります。7~8歳で週の半分以上夜尿をしている子どもを対象(66名)に、夜尿症の自然治癒率を調べたところ、約50%の子どもで夜尿が治った時期は12歳、約90%の子どもで夜尿が治った時期は15歳というものでした。

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夜尿症の自然治癒率(特に何も対応しない場合)は、1年ごとに10~15%の割合で減少するとされています。夜尿症は、治療を受けることによって、治療を受けないで自然経過をみるよりも早く治癒すると報告されています。薬を飲む事によって1年で50%以上、2年で80%以上治癒しており、2〜3倍の割合で早く治って行きます。



夜尿はしようと思ってするわけではないので、いくら怒っても治るものではありません。お子さんの睡眠が深いためで尿意を感じても覚醒できないわけです。夜尿をしたお子さまを叱ってもなんの解決になりません。膀胱やホルモン分泌が未熟なために起こるためにおこっているので、お子さまの成長を見守ることが大切で、他の子や兄弟などと比較して親が焦らないことです。小学校高学年にもなると、外見はそれほどに見えなくても当事者であるお子さまが一番不安に思っているのです。ご家族は、おねしょがあっても、「起こさない」「怒らない」「焦らない」の3点を念頭にお子さまに接することをお勧めします。おねしょをしなかった朝などは、たくさんほめてあげるのもよいことです。


宿泊行事への参加

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学童期になると、キャンプや修学旅行といった宿泊を伴う行事があるため、心配になることが多くなります。夜尿症児のお母さまを対象に実施した、宿泊行事に関するアンケート結果を紹介します。夜尿があることで、宿泊行事への参加を躊躇する割合は約6割おられることがわかりました。その理由としては、「子どもが夜尿であることを友人などに知られる」「付き添いの方に対応をお願いするのが申し訳ない」などでした。宿泊行事は、子どもにとって貴重な経験の場であることはいうまでもありません。宿泊行事への参加を中止することは、決して望ましいことではありません。宿泊行事中は、昼間の運動量が多い、夕食の時間が早い、過剰な水分摂取もしない、起床も早いなど規則正しい生活になるので、夜尿をする頻度はご家庭で生活する時よりもずっと少なくなります。このため、夜尿が朝方で、週1~2日程度の夜尿であれば、就寝前の排尿と夕食時以降の水分制限のみで夜尿をすることはまずありません。ご家族によって対応は様々ですが、週に半分以上夜尿をしている場合などは、本人と十分に話をして、夜尿をする時間帯を観察して、付き添い先生に依頼し、夜起こして排尿をさせてもらうことをお勧めします。相談せずに失敗したときの本人のショックと、先生に知られるという恥ずかしさを比較すれば、どちらが子どものためになるかを考えてみてください。学校の先生方は毎年何人かそうした相談を受けており、周囲に知られないような対処を依頼することは特別なことではありません。夜尿が心配な場合は、先生に相談しておくことで、より安心して参加することが可能となります。夜尿をせずに、宿泊行事を終えることは、お子さまにとって大きな自信となります。