不整脈

心室細動、除細動!なんてことは、机上で勉強して出来るって問題ではなく、現場で修羅場をくぐって来た経験があれば出来るわけで、日常診療で極めて稀であり、AEDがあるならやるべし、ないなら救急車を呼んで、心マッサージで正解でしょうか。今回は、発作性上室性頻拍と発作性心房細動に絞って解説します。とりあえずは、心電図が読めるということが前提です。そこのところはよろしく。


発作性上室性頻拍 PSVT(Paroxysmal supraventricular tachycardia)

Narrow QRS tachycardiaの不整脈の代表です。

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原則としてリエントリー性で、4種類あります。リエントリー回路が異なると心房興奮と心室興奮の時間的関係が異なるので、心電図上のP波とQRS波の位置関係も変ってきます。AVNRTでは、心房と心室の興奮のタイミングが重なるため、P波がQRS波と重なって、P波が見えない場合が多いということです。一方、AVRTは、WPW症候群の時に生じるPSVTで、心房興奮が房室結節を通って心室に向かい、心室興奮は副伝導路を通って心房に戻るので、心房心室間に時間差が出来る故、P波とQRS波は重なることはありません。また、リエントリー回路の種類だけでなく、そのリエントリー回路をどっち向きに通るか、また回路を通る伝導速度にも個人差があるため、P波とQRS波の関係にはいろいろなバリエーションがあります。

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全部のバリエーションをすべて憶えるのは大変なので、逆行性P波(ⅡⅢaVFで陰性P波)がQRS波の後にはっきり見えていればWPW症候群のAVRTの可能性が高いということぐらい知っていればいいんじゃないでしょうか。あれやこれやといろいろ考えるのも楽しい人もおられますが、日常診療で遭遇するPSVTは、AVNRTとAVRTで90%を占め、AVNRTなのかAVRTなのかを判別できてなにか得することがあるかと言えば、たいしたことはありません。

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治療はどうするか? AVNRTでもAVRTでもリエントリー回路の中に房室結節が含まれているので、ベラパミル(ワソラン)かATPで停止できます。

教科書的には、まず迷走神経刺激(valsalva手技)を行うとしているが、効果は乏しく、特に眼球圧迫は時代遅れであり、危険であり、苦しがっている患者さんに時間の無駄です。さっさと血管確保して、除細動器、心肺蘇生の心の準備しましょう。(まずは、大丈夫ですが、医者が一人の診療所では、なにが起こるかわかりません。慌てないことが大事です。)

第一選択は、生食100mlで静脈ラインを確保して
ワソラン(5mg)2A 10mgを生食20mlに溶解し、そのうちの10ml(5mg)を5分かけて側注します。

もし、余裕があれば、心電図を記録しながら、ワソランを側注し、PSVTが停止する瞬間を捉えることができれば、ワソランの効果に客観性を持たせることができます。P波とQRS波が見えやすいAVRTにおいて、正常洞調律に戻った前に、P波を認めることでワソランが房室結節でブロックしたことを証明できるわけです。

なぜ、ワソランか?
(1)β遮断薬に比べると陰性変力作用が少ない。
(2)AVNRTであった時に、I群薬よりもきれがいい。
(3)ATPでは、一旦停止してもその後の再発予防効果が期待出来ない。
(4)作用が概ね用量依存的で効果を予測しやすい。
(5)ほとんどのPSVTが、回路に房室結節を含んでいるため、打率が高い。
などが挙げられる。

ワソランにも陰性変力作用、血管拡張作用があり、血圧低下を生じるが、健常心であれば、緩徐に投与すれば10mgまでは耐えられる。また、心拍数が落ちてくることから血行動態が改善され、相殺されます。

ワソラン10ml(5mg)を5分かけて静注しても頻拍のレートが全く変化しなければ、診断が怪しいかも?。しかし、この量では、頻拍発作が止まらないこともしばしばあり。止まらなければ、再度同じ量を5分かけて側注、止まった時点で投与中止します。

これでも止まらなかったら、心房頻拍、心房粗動(2:1伝導ですが、心房伝導比が低下して粗動波を確認できることが多い)心房細動のRR間隔が一定に見えた? 次の一手は、ATPかⅠ群薬、β遮断薬ですが・・・。僕はもう送りバントします。ややこしいことはしないのが、自分のため、患者さんのためです。

ATPでも頻拍発作は止まります。しかし、気管支喘息(禁忌)冠動脈攣縮の危険性、ペルサンチンを内服しているとアデノシンの代謝が遅れて効果が遷延する危険性あります。開業医にいろいろな在庫を抱えておくのも不経済なことです。ATPを急速静注すると、患者さんの心臓が一旦止まります。・・・・・「うっ」・・・・・・・・・・「ん〜」・・・・・・・・・この時間が長いのです。医師一人だと100%?大丈夫と思っていても嫌なものです。また、ATPは一旦停止してもそのあとの再発予防効果が期待できません。

I群薬の追加は、陰性変力作用のダブルパンチになりますし、もしPSVTの原因がAVRT(QRSの後に逆行性P波が見えれば:WPW症候群)だった場合、房室伝導(ワソランで抑制)と副伝導路(I群薬で抑制)の両者の不応期が伸びて、ゆっくりしたPSVTが続く可能性もある。もし心房粗動(2:1伝導)だと、粗動周期を延長させ、1:1伝導になったら大変です。

β遮断薬もまた、陰性変力作用のダブルパンチになり危険です。

不整脈の治療をしていて、もし、危険な不整脈???(頭の中も真っ白)が出てしまったら、心電図を診断しようとするとどつぼにはまります。深呼吸〜。基本に返って、バイタルのチェック、慌てず「大丈夫ですか?」「はい。大丈夫です」と返事があればひと安心です。白目をむいていたら、慌てずに「除細動」って叫びましょう。

顕性のWPW症候群であることがわかっている患者さんがPSVTを起こした場合は、I群薬を優先します。僕の場合は、使い慣れたリスモンダン。リスモダンP(50mg/5ml)を生食10mlに溶解し、5分かけて側注します。効果なければ、同じ物ともう1回、止まった時点で投与中止します。ワソランを投与していて、心房細動が生じると、ワソランが房室結節の伝導を押さえて、副伝導路を経由した伝導が主体となり、興奮頻度が増え、血行動態を危険にさらす。