ノルバスク

カルシウム拮抗薬とグレープフルーツの飲み合わせについて

白色種

カルシウム拮抗薬とグレープフルーツとの相互作用は、1989年にカナダの研究グループが実験の途中で偶然見つけました。相互作用を起こす成分は、ベルガモチンやジヒドロキシベルガモチンなどのフラノクマリン類が関与することが明らかにされています。フラノクマリン類の含有量は、グレープフルーツの種類によっても違い(白色種>ピンク種、ルビー種)また、果皮>果肉>種の順に含まれており、果皮を使用したマーマレードなどでもその摂取量によっては相互作用が懸念されています。 フラノクマリン類はグレープフルーツ以外の柑橘類、例えば、ぶんたん 、ダイダイ 、ポンカン、伊予柑、ハッサクなどにも含まれています。一方、バレンシアオレンジ、マンダリンオレンジ、温州みかん、レモン、かぼす、りんご、ぶどうなどにはフラノクマリン類は含まれていません。

(1) 薬物の吸収・代謝・排泄と体内動態を示す指標

口から摂取した薬物は、主に小腸から門脈を介して吸収され、肝臓を通って各組織に分布します 。薬物は体にとって異物であり、代謝 (解毒) されて体外へ排出されます。薬物の代謝には肝臓が重要な役割を持っており、その代謝にはチトクロームP450 (CYPs) という酵素による第1相反応 (酸化、還元、加水分解) とそれに続く第2相反応 (グルクロン酸抱合、硫酸抱合、グルタチオン抱合など) があります。CYPsの一つであるCYP3A4は肝臓では全CYPsの約30%ですが、消化管では全CYPsの70%を占めているとされています。

画像の説明

CYP3A4はかなり多くの医薬品の代謝に関係しており、薬物相互作用を考える際に重要な分子種です。カルシウム拮抗薬とグレープフルーツとの相互作用を起こす部位は消化管と考えられ、その作用機序は次のように考えられています。相互作用代謝を受けやすい薬物は、本来ならば小腸上皮細胞に存在する薬物代謝酵素CYP3A4によってある程度代謝を受け不活性化されるため、循環血液中に入る薬物量が少なくなります。しかし、グレープフルーツ中のフラノクマリン類がCYP3A4を阻害すると薬物が不活性化されないため、循環血液中に入る薬物量は多くなり、結果として薬物が効きすぎてしまう状況になります。グレープフルーツジュース200 mL 程度の摂取でもカルシウム拮抗薬の効果が増強されるとの報告があります 。また、グレープフルーツの薬物に対する相互作用は長く持続し 、長いものでは3~7日間持続するとの報告もあり、グレープフルーツと飲み合わせの悪い薬を服用している間はグレープフルーツの摂取は避けるほうがいいでしょう。しかし、もともとCYP3A4による薬物の代謝能にはかなり個人差があり 、グレープフルーツと薬物との相互作用がほとんど認められない人もいれば、かなり影響が出る人もいるということも事実です。また、カルシウム拮抗薬の種類によっても差あり、スプレンジール、バイミカード、アダラート、カルブロック、アテレック、コニールなどは、強く阻害されますが、ノルバスク(アムロジン)はあまり影響を受けません。

カルシウム拮抗薬以外で、当院にある薬の中でグレープフルーツとの飲み合わせがよくない薬としては、リピトール、プレタール、ハルシオンなどがあります。個人差の影響、相互作用を危惧する薬物の副作用の症状と程度を勘案して個別に対応して行くことが必要です。