ウイルス性肝炎

A型、B型、C型? 血液型じゃないの・・・

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B型肝炎、C型肝炎の一部の患者については、国の責任を認め、患者救済が決まった。エイズにしろ、水俣病にしろ、国の無作為が大きなつけとなって患者さんにのしかかっています。肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、最後の最後になるまで症状が現れません。肝臓癌の最大の原因とされるC型肝炎は、インターフェロンにて治る時代になってきました。早期発見、早期治療するためには、肝炎ウイルス検査をすることが重要です。

2007年12月29日


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日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人はがんで亡くなると言われています。しかし、人は必ず死ぬのです。死なない人なんていませんよね。順番です。なにかでは死ぬわけで、ただその病気ががんというだけです。なぜ、がんが増えてきたか? それは、長生きするようになったからです。人生50年しか生きられなかった時代では、がんや心筋梗塞などの病気はあまりなかったのです。


その内訳は、男性では肝臓癌は3位、女性では、5位となっています。

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わが国の肝がんによる死亡者数は1975年以降急増しており、2004年には約3万2,000人が死亡しています。


肝がんは、地域ごとに死亡率に違いがあり、近畿地方以西で比較的多く、兵庫県と大阪府がトップ争いをしています。

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兵庫県の中でも西播磨地区、特にたつの市は高い死亡率となっています。

禁煙外来 のコピー

この不名誉な状況の改善するには、どうしたらいいでしょうか?
どのような対策が必要か、いっしょに考えていきましょう。

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肝臓(かんぞう)は、腹部の右上に位置して、肋骨の下に収まっている最大の臓器(1000〜1400g)です。


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生レバー 
平成24年7月から食品衛生法に基づいて、牛のレバーを生食用として販売・提供することを禁止されました。これは、牛のレバーを安全に生で食べるための方法がないため、もし生で食べると、腸管出血性大腸菌による重い食中毒の発生が避けられないからです。

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あんきも 
鮟鱇(アンコウ)の肝臓(きも)です。大きな頭で、大きな口、鋭い歯が並んでいて、見た目はちょっとグロテスクで、おいしいとは思えない深海魚です。発達している。茨城県の久慈浜漁港が水揚げが多い。肝が肥大化する11月から2月が一番美味しい時期とされる。

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フォアグラ 
世界三大珍味(キャビア、トリフ)として有名なフランス料理の長い伝統から生まれた食材です。ガチョウや鴨などに必要以上にエサを与えることにより、脂肪肝を人工的に作り出したものです。


門脈とは?

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肝臓には、ちょっと変わった血管があります。通常、ヒトの血管系では、心臓→動脈→毛細血管網→静脈→心臓と血液が流れます。つまり、酸素や栄養は、心臓から動脈血として、全身のいろいろな臓器(肝臓、胃、腸、腎臓、脳、筋肉など)に運ばれて行き、静脈血として、心臓にもどってきます。


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毛細血管は、平滑筋と結合織がなく、内皮細胞と基底膜だけで出来ており、組織と血液の間の物質交換に有利な構造であり、交換血管と呼ばれます。



肝臓も体循環の血液の流れとして、肝動脈という血管から酸素や栄養を受けていますが、もうひとつ門脈(解剖学の概念で、二つの毛細血管網にはさまれた血管を指します)という消化管と肝臓をむすんでいる血管があります。胃や腸などの消化器で吸収された栄養分は、直接静脈血として心臓にもどずに、いったん肝臓へ運ばれて、加工されたり、蓄えられたりしています。

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肝臓ってなにをしているの?

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心臓はポンプ、胃腸は栄養の消化吸収、腎臓はおしっこを作っている、脳は考えている、筋肉は、・・・だいたいイメージがわかりますよね。肝臓は何をしているのでしょうか?肝臓は、500種類以上の仕事をしています。あまりにもたくさんの仕事をしているので、わけがわからないという感じでしょうか。簡単に?言えば、肝臓は体の化学工場で、糖やタンパク質、脂質などの代謝、つまり栄養素の合成や貯蔵、分解、エネルギー産生、また、薬、アンモニア、アルコールなどの解毒作用、胆汁の産生や分泌など重要な仕事をしています。


肝臓は2千5000億個の肝細胞でできており、肝小葉と呼ばれる六角柱の塊の集合体です。肝臓は、7/6と切除しても肝機能は正常に働くぐらい、大きな予備能と再生能を有し、門脈という血管があって酸素不足になることも少なく、かなり悪くなっても滅多に症状が現れない「沈黙の臓器」と言われています。
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代謝ってなんでしょう?

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生体内での物質の化学的な変化を代謝といいます。代謝は、大きくは同化と異化の二つに分けられます。同化は、外界から取り入れた簡単な物質から、からだを構成する複雑な物質を合成することで、エネルギーを消費します。異化は、からだを構成する複雑な物質を簡単な物質に分解する過程であり、エネルギーを産生します。生物が生きていくために必要なエネルギーは、ATP(アデノシン三リン酸)の化学エネルギーに変換されてから、いろいろな生命活動のエネルギーとして利用されています。難しい話は置いといて、ミトコンドリアには多くの酵素が存在し、酸素の存在下で、たくさんのATPを合成しています。

私たちは、食べた物から栄養素を取り入れ、それを活動するためのエネルギーや生命の維持に必要な物質に変えています。この営みを「代謝」といいます。 エネルギー源となる栄養素は、炭水化物や脂質、タンパク質の3大栄養素です。これらが体内で分解されて、それぞれブドウ糖、アミノ酸、グリセリンと脂肪酸になり、体に必要なさまざまなエネルギーに変わります。肝臓では、エネルギー源となるグリコーゲンを貯えて必要に応じてエネルギーを生成するほか、体に必要なタンパク質の生成・分解、コレステロールの生成などが行われています。

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糖質代謝

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炭水化物は、消化によってブドウ糖などに分解され、小腸粘膜から吸収された後、肝臓に運ばれます。肝臓に運ばれたブドウ糖は、そのまま血液中を運ばれて、各組識でエネルギー源として利用されるほか、肝臓や筋肉ではグリコーゲンとして蓄えられます。(グリコーゲンは、再びグルコースに変えられてエネルギーの生成に使われます)肝臓でのグリコーゲン貯蔵量は最高約 300 kcal、筋肉では最高約 600 kcal といわれています。グリコーゲンの貯蔵量には限界があり、余分なブドウ糖は中性脂肪となって肝臓や脂肪組織に貯蔵されます。そのため、炭水化物を取り過ぎると肝臓や脂肪組織に脂質がたまり、肥満や脂肪肝につながります。肝臓で貯蔵されているグリコーゲンは、4~5時間で使い果たされます。肝臓のグリコーゲンが少なくなると、次に、脂肪組織が分解され始めます。(心筋、骨格筋では、遊離脂肪酸がエネルギー源になる)肝臓で遊離脂肪酸からケトン体がつくられ、ケトン体は脳でエネルギー源として利用される。さらに絶食が続くと、糖原性アミノ酸が筋肉から持ち出されます。糖原性アミノ酸とは、ブドウ糖に変換できるアミノ酸のことで、筋肉の減少が始まってしまいます。ここまでいくダイエットは、注意が必要です。


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 5%ブドウ糖液

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血糖100mg/dlというと、血液全体で5Lとすると5gの糖が入っているという計算になります。5%のブドウ糖液というと500mlに25gも糖が入っています。血糖に換算すると5000mg/dlという値になってしまいます。患者背景がわからない意識障害の場合は、生食を点滴することを習慣づけておくことは大事なことですね。


脂質代謝

食べ物から取った脂質は、中性脂肪、リン脂質やコレステロール、タンパク質とともに「カイロミクロン」になってリンパ管に入ります。そして、胸管を通って静脈に入り、心臓を経て全身、肝臓に運ばれます。皮下、腹腔、筋肉の間などにある脂肪組織に運ばれて体脂肪として貯蔵されます。貯蔵された脂質は、エネルギーが不足すると必要に応じてエネルギー源として消費されます。肝臓に貯えられた脂質からはコレステロールがつくられます。その大部分が胆汁の成分として使われますが、そのほか細胞膜や神経の成分となったり、ステロイドホルモンの原料になります。

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ケトン体とは、アセト酸、β-ヒドロキシ酢酸、アセトンなどの総称です。脂肪を分解するときに生産され、筋肉や脳で使われるエネルギー源となります。過剰になると、ケトン血症やケトン尿症となり、食欲低下、顔色不良、倦怠感、吐き気・嘔吐、腹痛 ... 昏睡などが起こります。激しい運動、ダイエットなどでの糖質不足、糖尿病などで消費量以上の脂肪分解が多くなると症状をでてきます。


タンパク質(アミノ酸)代謝

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食べ物から取ったタンパク質は、消化されるとペプチドとなり、さらにアミノ酸に分解されて、小腸から吸収されます。そして肝臓に運ばれたアミノ酸は一部がタンパク質に合成され、その他のアミノ酸は血液によって体の各組織に運ばれ、細胞を構成する成分や酵素、ホルモンなどにつくり変えられます。


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自然界には約500種類ものアミノ酸が発見されていますが、私たちのカラダのたんぱく質を構成しているのはわずか20種類です。私たちが肉、魚、穀物などを食べると、そのたんぱく質は、20種類のアミノ酸に分解され、私たちのカラダの中で再び、たんぱく質、すなわち体たんぱくに組み換えられます。その際、11種のアミノ酸は他のアミノ酸から体内で合成して不足を補うことができますが、残る9種類は食事から摂取することが不可欠です。このように体内で合成できないものを必須アミノ酸とよんでいます。


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いったん合成されたタンパク質は一定の割合でアミノ酸に分解され、絶えず新しく合成されるタンパク質と入れ替わっています。不要になったアミノ酸から出るアンモニアは肝臓で尿素に変えられ、腎臓を経て尿中に排せつされます。


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 尿素窒素(BUN)

尿素と尿素窒素というものがあるが、これらは別物です。尿素とは、アミノ酸の最終代謝物質です。体のタンパク質は、アミノ酸になり、アミノ酸はアンモニアに分解される。そしてこのアンモニアは、肝臓の細胞の尿素サイクルにより、尿素となります。尿素は、アミノ酸の最終代謝物質であり、血中の尿素は、腎臓から尿に排泄されます。尿素は、O=C-NH2-NH2 で 分子量が60の物質で、尿素窒素は、N-N で 分子量28です。つまり、尿素窒素は、尿素の分子式の窒素(N)だけをとったものなのです。血中では、尿素として存在していますが、検査では、尿素窒素を測定しています。尿素窒素が上昇する疾患は、排泄させるおしっこが出なくなる時とアンモニアの生成が多く、尿素がたくさんつくられる時です。腎不全、タンパク摂取量の増加、タンパク異化亢進、消化管出血などにより、尿素窒素は上昇します。



肝臓の病気

肝臓に病気を起こす原因には、肝炎ウイルス、アルコール、過食、薬などがある。 ちなみにA型とE型は急性肝炎で治りますが、B,C,D型は体の中にウイルスが残り、慢性肝炎になることがあります。

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肝炎ウイルスには、肝細胞を壊すほどの力はありません

上の図では、ウイルス(やアルコール)が肝臓を壊しているような大変怖そうなウイルスが描かれていますが、実際は肝炎ウイルスはひ弱なウイルスで肝細胞を壊すほどの力は持っていません。肝炎ウイルスは肝細胞に感染しても本性を隠しておとなしくして、肝細胞と仲良くしているふりをしています。裏では、虎視眈々と肝癌を作る準備をしていますが、猫をかぶっているのです。免疫細胞は、肝炎ウイルスが、悪さをしないか監視しています。肝炎ウイルスが、不穏な動きをするとリンパ球などの免疫細胞は、肝炎ウイルスが感染した肝細胞自体を丸ごと攻撃して(免疫細胞は、肝炎ウイルス自体を認識・攻撃できません)肝細胞が破壊されて肝炎が起こるわけです。

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GOT:グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ
GPT:グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ

GOTは、アミノ酸のアミノ基を、オキサロ酢酸やα-ケトグルタル酸に転移(トランスアミナーゼ)させて、別のアミノ酸を生成する酵素です。(体に必要なアミノ酸を再合成しています)GPTは、アラニンからグルコースを糖新生する時に必要な酵素です。GOTやGPTは、肝細胞の中あり、肝細胞が肝炎などで破壊された際に血液中に漏れ出して上昇するわけです。(逸脱酵素)GOT、GPTは、肝臓の細胞だけに存在しているわけではなく、いろいろな臓器に含まれています。GOTは、心筋>肝臓>骨格筋>腎臓に多く、GPTは、肝臓≫心筋>骨格筋に多く存在し(GPTは、肝臓の臓器特異性に優れている)これらの組織が、病気で障害されると、血液中のGOT/GPT値で、臓器の障害の程度を推定しているのです。 ちなみに、γGTPはアルコールの摂取に敏感に反応して肝臓でつくられている酵素です。2週間ほど禁酒して値が下がるようならアルコールが原因でしょう。100以上ある人は、精密検査をした方がいいでしょう。アルコール以外の原因としては、お薬やサプリメント、肝炎、肝硬変、肝癌、胆石症、膵がんなどがあります。

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従来は、GOT、GPTといっていましたが、生化学者が名前をかえました。最近ではアメリカ流にそれぞれAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)という呼び方が、国際的な標準になりつつあります。


C型肝炎

わが国でのC型慢性肝炎の患者さんは、肝炎症状のない持続感染者(キャリア)を含めると150万~200万人いると推測されています。年齢は40歳代以上に多く、C型肝炎ウイルス対策が講じられる以前の輸血などの医療行為による感染が背景にあることを示しています。しかし医療機関で何らかの治療を受けている人は50万人にすぎず、残りの100万~150万人の中には自分がC型肝炎ウイルスに感染していることに気づいていない人もいる可能性があります。

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たつの市の肝炎ウイルス検診でも毎年50名前後のC型肝炎ウイルスの感染者が見つかっています。 B型肝炎ウイルスの感染者とほぼ同等な数が毎年見つかっています。 まずは血液検査をしてみましょう。

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慢性肝炎の経過を説明するためによく見られる図であります。C型慢性肝炎(B型肝炎もほぼ同じ経路)は放っておくと、気がつかないうちに肝硬変へと進み、肝臓癌ができてしまいますよ。ちゃんと調べて治療しましょうというわけです。しかし、ここでよくおこる勘違いは、C型肝炎=肝がん、B型肝炎=肝がんと短絡的に結びつけ、隠れキリシタンを見つけるように、肝炎ウイルス検査をして、見つけたらインターフェロンをというような肝炎ウイルスを目の敵にするようなやり方はいかにも日本人らしい過剰反応であります。実際には、慢性肝炎(B型、C型)のほとんど(8〜9割)はがんにもならず、一生、慢性肝炎のままで終わります。1〜2割だけが肝がんになるわけで、なにも起こらない人まで目くじら立てて追いかけ回す必要もないわけです。インターフェロン治療も楽になったと言っていますが、とてもお金がかかる大変しんどい治療です。僕ならなるべくならしたくありません。1〜2割の肝がんになりそうな人を上手に見つけて専門医に橋渡しするのがプライマリケア医の仕事なんです。

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肝がんの原因の8割がC型肝炎ウイルス由来であると言われています。

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C型肝炎にかかっているどうかは、血液検査をしてみなければわかりません。


肝炎ウイルス検査の医療機関における無料受診について

20歳以上のたつの市民で肝炎ウイルス検査をしたことがない方
(職場検診で肝炎ウイルス検査が項目にない方)が対象です。

 問い合わせ先 龍野健康福祉事務所 0791-63-5140


HCV抗体

第2世代、第3世代HCV抗体が、C型肝炎ウイルス感染のスクリ-ニングに用いられています。C100-3(第1世代HCV抗体)以外にコア領域など3種類の抗原基を含む合成ペプチドを用いた検査法で、C型肝炎ウイルス感染者での陽性率は95%以上と高く,偽陽性例も稀で、一過性感染でC型肝炎ウイルスが排除された症例でも陽性を示す場合がある。

コア抗原
C型肝炎ウイルス量を反映し,インタ-フェロン投与中ないしは投与後の効果判定にHCV-RNAとともに用いられる場合がある。国民基本健康診査のウイルス健診では,経費節約のためにHCV-RNA測定前にコア抗原を測定し,これが陽性の場合はキャリアと診断している。

HCV-RNA
C型肝炎ウイルスの存在証明とウイルス量の定量のために測定される
アンプリコア定量法(ハイレンジ法,オリジナル法)
アンプリコア定性法
リアルタイムPCR法(TaqMan PCR法)
各方法の感度は、リアルタイムPCR法>アンプリコア定性法>オリジナル法>ハイレンジ法
2008年以降は定量範囲が広く,感度も最も良好なリアルタイムPCR法(TaqMan PCR法)を利用するのが一般的になっています。定量評価は,インタ-フェロン治療の効果を予測する際に重要である

アンプリコア定量法: 100 KIU/mL以下
リアルタイムPCR法 5.0 Log copy/mL以下
の症例はインタ-フェロン治療の有効性が高い



もしHCV抗体が陽性と判定が返ってきたら、現在も体の中にC型肝炎ウイルスがいるのか、もういなくなって治った後なのかを判定するためには、HCV-RNA検査を受ける必要があります。

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血液検査(HCV-RNA検査)で、実際にC型肝炎ウイルスが体の中にいることが確認されれば、C型慢性肝炎という診断されます。

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C型肝炎の原因は、血液を介したものですが、いくら考えても記憶にございませんということも多いようです。
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慢性肝炎の臨床経過を診るために大事が指標は、肝炎などで肝細胞が破壊された際に血液中に漏れ出してくる(逸脱酵素)GOT、GPTと、肝臓の線維化が進むと、脾臓が腫れて、血小板が下がってきます。
GPTが15は全く正常、50〜80ぐらいは黄色信号、100ぐらいからちょっと赤信号、300以上になるとなんらかの介入が必要なレベルです。よく肝機能が高いから肝臓が悪いと勘違いされている方がいますが、肝機能が上がっているのは、体が肝炎ウイルスを除外しようとして闘っている結果にすぎません。風邪を引いて熱が出るのと同じです。肝機能異常が何回も繰り返すと言うことは、肝炎ウイルスのたちが悪いということで、インターフェロンによる根本的な治療を考える必要があるかもしれません。風邪も解熱剤を出しても風邪はなおりません。だた、1週間を超えても熱がなかなか下がらないような場合は、たちの悪い病原体の退治を考えなければならないのと同じです。血小板は、肝炎の進行を予測するのには最もいい指標で、13万以下になってくると、画像診断は欠かせません。


治療

患者さんのからだの調子によってC型慢性肝炎の治療目標と治療方法を決めます。治療目標には「C型肝炎ウイルスをからだの中から排除する」と「肝臓の炎症を抑えて病気の進行を遅くする」という2つがあります。現在、C型慢性肝炎の方のウイルスを排除できる可能性のある唯一の治療法はインターフェロン療法(リバビリンの併用)です。ウイルスを完全に排除すれば、病気が肝がんに進む心配はありません。治療してもウイルスを完全に排除できなかったり、からだの調子によりウイルスを排除する治療を受けられなかった場合でも、病気の進行を遅くする治療方法として、グリチルリチン製剤、ウルソデオキシコール酸、瀉血などがあります。

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                      肝庇護療法



アルコールは、原則として禁止です。

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C型肝炎ウイルスにもインターフェロンが効きやすいタイプと効きにくいタイプがあります。RT-PCR法により、C型肝炎ウイルスの遺伝子型(HCV genotype)抗体検査によりC型肝炎ウイルスのサブタイプ(HCV serotype)のサブタイプを決定します。日本人の70%は、ウイルス量が多くインターフェロンが効きにくいタイプ(1b型)(serotype 1 = genotype 1b)であることがわかっています。(serotype 2 = genotype 2a 及び 2bは、インタ-フェロン治療の効果あり)

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インターフェロン治療によってウイルスを排除できる割合は、インターフェロン治療が使われるようになった1990年代は5%程度でしたが、抗ウイルス薬(飲み薬)と組合せた治療法や、改良型のインターフェロンを使った治療が行えるようになったこと、ウイルスの状態に応じた最適なインターフェロン治療の種類や治療期間が分かってきたことで徐々に高くなってきました。
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従来のインターフェロン単独療法が効きにくいウイルス遺伝子型(1型)でウイルス量の多い患者さんでも、 ペグインターフェロン・リバビリン併用療法で48週間治療すると、治療終了後6ヵ月の時点で、 50%の患者さんでウイルスが排除できる(C型慢性肝炎が治る)ようになってきました。さらに、HCV遺伝子の増殖に必要なタンパク質(プロテアーゼ)を阻害する薬を併用した(三剤併用療法)治療法では、70%と著効が得られています。


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インターフェロン治療は、過去に比べ格段に進歩し、大変複雑化しています。いろいろな影響因子を考慮してインターフェロンの治療方法を選択しなければなりません。三剤併用療法は、貧血や重篤な皮疹の合併症があり、肝臓専門医、皮膚科専門医が常勤する医療機関でしかできないという縛りも付いています。(姫路日赤 森井先生(肝臓専門医)との連携しています。)


たとえC型肝炎ウイルスが排除できなくても、インターフェロン治療をすることで肝がんの発生率をさげることができます。つまり、インターフェロンは、C型肝炎ウイルスの性格を変えているようです。(癌を作ろうとするたちの悪い奴を、更生させて不良少年ぐらいにまろやかにする)

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肝機能異常をなるべく抑えた方が、肝がんの発症率を下げることが出来ます。



肝炎インターフェロン治療費の助成について

B型肝炎、C型肝炎の早期治療を促進し、肝硬変や肝がんへの進行を未然に防ぐ観点から、インターフェロン治療及び核酸アナログ製剤治療にかかる月々の医療費の自己負担額を、各世帯の所得に応じて軽減する事業です。   

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    問い合わせ先 龍野健康福祉事務所 0791-63-5140


副作用

C型慢性肝炎のインターフェロン治療は、肝炎を治癒させるという画期的な治療法であることは間違いありません。しかし、マスコミで報道されているように「非常に楽に肝炎が治る治療が・・・という表現にはかなり誇大広告と言わざる得ません。インターフェロン治療は、半年から1年かかる大変つらい、患者負担の大きな治療です。インターフェロンというのは、インフルエンザなどのかぜを引いたときに体で産生されるサイトカインの一種です。内因性インターフェロンが産生されると、頭が重たく、体がだるくなって、食欲もなくなり、ちょっと横になって寝ていたいという感じになります。かぜの場合は、2〜3日我慢していれば、治るので辛抱もできます。インターフェロン治療というのは、人工的にかぜ状態を作るようなものです。それを半年、1年我慢せいと言うわけです。相当にしんどいです。くたくたになって、うつにもなりますよね。また、その他にもいろいろな副作用もあります。治療には、専門医療機関との連携し、経過観察をすることで、患者さんへの不利益を最小限にすることが大切です。そして、肝硬変への進行を抑え、肝臓癌の早期発見、早期治療へと結びつける土台つくりが出来るわけです。

姫路日赤 森井先生(肝臓専門医)との連携しています。

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B型肝炎

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B型慢性肝炎は、C型慢性肝炎に比べあまり注目されていませんが、肝臓癌の原因の20%を占める重要な疾患です。現在、我が国ではB型肝炎ウイルスに感染している人は130万人いると推計されています。毎年、6000人の人がB型慢性肝炎からの肝臓癌で亡くなっており、ここ30年間減っていません。最近、新たな発見や新薬の登場でB型肝炎の診断や治療が大きく変わってきています。



我が国のB型慢性肝炎の主な原因は母子感染でしたが、1986年に「HBV母子感染防止事業」が実施されてから若い世代には、感染者が非常に少なくなっていますが、それでも40歳以上では、現在でも1%以上の高い値となっております。

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B型肝炎ウイルスは、分娩時の垂直感染によって持続感染状態となり、成長にしたがって免疫機能が成熟すると、20〜30歳でウイルスを体から排除するために免疫反応を起こして肝炎を発症します。10~20%の症例ではウイルス増殖抑制がうまくゆかず、肝炎が持続する慢性肝炎となりますが、そのうちの80〜90%はセロコンバ-ジョン(HBe抗原が陰性、HBe抗体が陽性になる状態)を起こして肝炎が沈静化し、臨床的に治癒すると考えられてきました。しかし、B型慢性肝炎はC型慢性肝炎と比べて、病態が多様で複雑であり、慢性肝炎から突然に癌ができたり、臨床的に治癒したと考えていた症例(セロコンバ-ジョン)が気づかないうちに線維化が進行し、肝硬変、肝癌になる症例が少なからずあることがわかってきました。

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B型肝炎の診断

血液検査でHBs抗原という蛋白質が血液中にあるかどうかを調べます。HBs抗原がある場合、HBVに感染しています。(HBs抗原が陽性となるまでには、HBVに感染してからおよそ2~3ヵ月かかります)さらにHBV DNA量(ウイルス量)HBe抗原・抗体の有無、腹部エコーなどを進めていきます。

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抗原(HBV由来)抗体(体内で作られる)
HBs抗原HBVの外殻を構成する蛋白質の1つ。B型肝炎ウイルスが現在感染していることを示す。急性肝炎では,肝炎発症前より血中に出現し,ALT値改善に前後して陰性化するが、キャリア-では通常生涯にわたり陽性が持続する。抗原の血中力価はウイルス量を反映し、キャリア-では肝炎増悪時に高値となる。HBs抗体B型肝炎ウイルスの中和抗体で,感染の既往を意味する。陽性者には既にウイルスは存在せず,再感染の危険もない。感染から時間がたつと抗体価は低下し,感度の低いPHA法では陰性となる場合がある。急性肝炎では、発症6ヵ月以上たってから陽性化する。劇症肝炎などの重症例では早期に陽性化する場合もあり、入院時にHBs抗原陰性、HBs抗体陽性であっても、成因がB型であることを否定できない。HBワクチンを接種した場合にも陽性になる。
HBc抗原HBVを構成する蛋白質の1つだが、まだ検出するための方法がない。HBc抗体HBc抗原に対する抗体。HBVの感染を防御する働きはない。
IgM-HBc抗体急性肝炎では、発症に前後して陽性となり、2~6ヵ月後に陰性化する。B型劇症肝炎では,HBs抗原が速やかに消失し、HBs抗体陽性となる場合があるので、IgM-HBc抗体測定が診断に際して必須である。キャリア-でも急性増悪時には陽性になるが,急性肝炎に比して抗体価が低い。
IgG-HBc抗体急性肝炎ではIgM-HBc抗体に引続き上昇し、ほぼ生涯にわたって血中に存在する。低力価陽性の場合は、過去にHBVに感染したことを示す。高力価陽性(200倍希釈血清でも陽性)の場合は感染の持続を意味し、B型肝炎ウイルスキャリア-であることを示す。HBc抗体陽性、HBs抗体陰性は一般にB型肝炎ウイルスの既往感染と考えられてきたが、免疫抑制薬,副腎皮質ステロイドを投与するとHBV-DNAが陽性化することから,本質的にはキャリアと同等であると考えられている(HBV再活性化:de novo肝炎)
HBe抗原HBVが増殖する際に過剰につくられる蛋白質。肝臓でHBVが活発に増殖している状態で、感染力が強いことを示す。急性肝炎では,肝炎発症に前後して一過性に出現、ALT改善とともに陰性化するが、キャリア-でHBe抗原陽性の症例は、血中ウイルス量が多く感染性が高く、肝炎を発症する可能性が高い。HBe抗体HBe抗原に対する抗体。HBVの感染を防御する働きはない。ウイルス量と増殖が落ち着いている状態で、感染力が弱いことを示す。急性肝炎では,HBe抗原陰性化に引続き陽性となるが、キャリア-でHBe抗体陽性の症例は,血中ウイルス量が少なく肝炎を発症しない可能性が高い。HBe抗原,抗体とも陽性の症例は,HBe抗原のみ陽性の症例と同様に扱う



HBVDNA量

血中のB型肝炎ウイルス存在を直接証明する方法で、慢性肝疾患では,肝炎活動性と一致して変動し、HBV-DNAポリメラ-ゼに先行して上昇することが多い。HBVDNA量は、肝硬変や肝癌のリスクを最もつよく反映する予測因子です。肝硬変の発生頻度は、ウイルス量(HBVDNA)が多くなるにつれて高くなることが示されています。また、肝がんの場合も同様にHBVDNA量が104コピー/mL以上では、300コピー/mL未満の症例に比べて有意に頻度が高くなることが報告されています。

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R.E.V.E.A.L.study JAMA Gastroenterology 2006

HBV-DNA量の測定法は、飛躍的に進歩し、以前は、TMA法(LGE/mL)またはPCR法(Log copy/mL)で測定していましたが、2008年からは、2.1logコピー/mlまで測定可能なリアルタイムPCR法(TaqMan法:Log copy/mL)も保険適応されています。HBV-DNA量が5.0 Log copy/mL未満の場合には肝炎は沈静化する場合が多い。HBV-DNA定量法は、肝硬変、肝癌の発症リスクを最も強く反映する予測因子であるため、非常に重要で、高感度の測定法として強く推奨されています。

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B型慢性肝炎の場合は、ウイルスを体から排除することはほぼ不可能なので、治療の目的は「ウイルスの増殖を低下させ、肝炎を沈静化させること」となります。しかし、B型慢性肝炎と診断されても必ずしもすぐに治療を始めなければならないというわけではありません。なぜなら治療をしなくても自然にセロコンバージョンが起こって肝炎が沈静化することが期待できる事例もあるからです。治療開始の判断は、年齢、ウイルス量、炎症や線維化の程度などを評価し、決定ます。その結果、セロコンバージョンが起こる可能性が低く、肝硬変へ進行する可能性が高い場合(肝炎の進行度が新犬山分類でF2あるいはA2以上)治療が検討されます。

35歳未満の場合は、自然経過でセロコンバージョンが起きることが期待でき経過観察が行われます。35歳以上の場合は、セロコンバージョンが起こる可能性が低く、肝硬変へ進行する可能性が高い場合、エンテカビルあるいはラミブジン治療を行い、肝機能の正常化、HBV増殖抑制を目指し、肝硬変、肝がんへの進行を阻止します。しかし、ラミブジンを長期間投与すると、ラミブジン耐性株が高頻度に出現し肝炎が再び起きる場合にはアデホビルの追加、あるいはエンテカビルへの変更が検討されます。エンテカビルの抗ウイルス作用は高く(ラミブジンを1とすると、約1,500)エンテカビル耐性株の出現も低いとされています。

B型慢性肝炎の治療対象は、ALT≧31IU/Lで
HBe抗原陽性は、HBV DNA 5logコピー/mL以上
HBe抗原陰性は、HBV DNA 4logコピー/mL以上
肝硬変では、HBV DNA 3logコピー/mL以上

詳細は、ガイドラインを参照にして下さい。(私の関与するところではありません)

ちなみに、バラクルード(エンテカビン)は核酸アナログ製剤で、B型肝炎ウイルス自身が遺伝子(DNA)を複製して増殖するのを防ぎます。B型肝炎ウイルスは、肝細胞の中でいったんRNA(複製のための鋳型)をつくり、それをもとに肝細胞の材料を使ってDNA(遺伝子)をつくり、そして自己複製します。核酸アナログは、複製に使われる材料とよく似た物質で、RNAからDNAがつくられる過程で本来の材料と入れ替わり、複製をストップします。

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全世界で、全人口の6%に相当する3億5千万人がB型肝炎ウイルスに持続感染しています。B型肝炎ウイルスに、いろいろな種類があることがわかってきて、ゲノタイプ(遺伝子型)を呼ばれています。現在、A〜Gまで7種類の遺伝子型が知られていますが、日本では、B型遺伝子と、C型遺伝子が主です。

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成人がB型肝炎に罹った場合は(性交渉と医療従事者の針事故)99%は急性肝炎で治癒し、慢性化しないので問題になることはありませんでした。(B型遺伝子と、C型遺伝子)むしろ、時々、急性肝炎で終わらず、劇症肝炎で死亡してしまう症例があることで問題となっていました。

肝炎042

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しかし、最近のB型急性肝炎は、A型遺伝子の割合が30%近くになっています。A型遺伝子の場合は、20〜30%で慢性化し、肝硬変、肝がんへと進んでいきます。主に性交渉が感染の原因になっています。針事故においても、B型肝炎ウイルス(HBe抗原陽性)は、感染する率は約30%と高く(C型肝炎ウイルスは3%、エイズウイルスは0.3%)今後、どんどん増えていと考えられます。この問題を解決するためには、日本においてもB型肝炎に対するワクチン接種を積極的に進めていくことが重要です。

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B型肝炎ウイルスは、感染力が強く、母子感染(垂直感染)や輸血だけでなく、知らない間にかかることも多いVPDです。特に夫婦間の性交渉による感染は、1年で70%、2年で90%で、多くの者は結婚後2年未満に感染すると報告されています。(B型急性肝炎を発症したのは10%)近年、父子感染や感染経路不明で乳幼児がB型肝炎ウイルスに感染する例が増えており、母子感染予防だけでは、対策が不十分といえます。B型肝炎は、キャリアとよばれる感染者の体液(汗・涙・唾液・血液・粘液・精液)から感染が起こるので、幼稚園/保育園や学校など、子供同士が触れあう場所では、キャリアからの感染は防ぐことはできません。さらに、感染した場合も、症状がないか感冒のような症状が数カ月続くだけなので、本人も気づかないまま感染源になってしまい、稀とはいいながらも家族内や幼稚園/保育園・学校・職場内での集団発生も報告されています。しかし、キャリア児を特別扱いすること・・・されることは、きわめて問題の多い対応であり、そういった子供たちを作らないためにも、ユニバーサルワクチネーション、生まれた子ども全員にB型肝炎ワクチン接種をすることが大切なのです。母親がキャリアでない場合は(任意接種)必ずしも生後すぐに接種する必要はありませんが、3才未満で感染すると慢性化しやすくなるので(できるだけ早く接種すれば免疫もでき易い)生後2か月からヒブ、小児用肺炎球菌ワクチンなどとの同時接種がお勧めです。

以前は、GOTやGPTは80以下にコントロールしていれば、肝硬変まですすむことは稀と考えられていましたが、最近ではなるべく低く、できれば正常値である30以下に抑えるべきとされています。また、肝炎の活動性を見るのに、GPTは不適切で、肝疾患進展の予測因子としてHBV-DNAやHBs抗原量がもっと優れていることがわかってきました。

肝炎ウイルス検査の医療機関における無料受診について

20歳以上のたつの市民で肝炎ウイルス検査をしたことがない方(職場検診で肝炎ウイルス検査が項目にない方)が対象です。

 特に以下のような方々は、HBV検査を受けておくことをおすすめします。
 1972年以前に、手術または輸血を受けた方

 家族にB型慢性肝疾患(慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌)の患者さんがおられる方

 新たに性的な関係をもつ相手ができた方

 長期に血液透析を受けている方
 妊婦
 その他(過去に健康診断等で肝機能検査の異常を指摘されているにもかかわらず、その後肝炎の検査を実施していない方)

肝炎インターフェロン治療費の助成について

平成22年度より、助成対象にB型慢性肝疾患に対する核酸アナログ製剤治療を追加されました。

  問い合わせ先 龍野健康福祉事務所 0791-63-5140


B型慢性肝炎の治療も大きく進歩しました。インターフェロンに加え、核酸アナログ製剤の登場により、専門医療機関との連携しHBV-DNA量を減少させ、B型肝炎患者さんにおける肝硬変、肝臓癌の発症を従来よりも抑制できると期待されています。 しかし、治療方針の選択には、治療薬の特性や年齢、ALT値、HBe抗原の有無、HBV-DNA量、HBVジェノタイプ、 画像診断(エコー、CT、MRI) 、肝生検などいろいろな要素がからんでおり、肝臓専門医との連携が不可欠となっています。

肝硬変

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれているというお話しはしましたが、それでも大半がやられると肝臓も悲鳴を上げざる得ない状態になります。それが、肝硬変です。

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足がむくむ、腹水
肝臓でのアルブミンというタンパク質を作ることができなくなって、血管内の膠質浸透圧を維持することが出来ず、血管外に水分が出てしまいます。

筋肉や痩せる、疲れやすい、だるい、こむらがえり
肝臓でのエネルギー代謝が上手くいかず、糖質代謝の不具合によるタンパク質の異化が進み、いろいろな不定愁訴的な症状が出てきます。

脳症
アミノ酸代謝の不具合で、アンモニアを尿素に解毒することができず、高アンモニア血症による症状です。

出血しやすい
全身の代謝の低下で血管自体がもろくなるのに加え、フィブリノーゲンという凝固因子をうまく作れない、脂質代謝異常による胆汁産生が上手くいかず、ビタミンKの吸収障害による関連凝固因子の低下なども相まって、易出血をきたす。

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黄疸
古くなった赤血球(ヘモグロビン)を壊してできたビリルビン代謝がうまくいかず、排泄障害により黄色くなる。



手掌紅斑、蜘蛛状血管腫
エストロゲンホルモンの代謝異常にて、毛細血管が拡張する。

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腹水のコントロール

肝硬変の死因は、肝癌1/3、肝不全1/3、食道静脈瘤破裂1/3と言われていましたが、最近では、肝不全や食道静脈瘤は管理できるようになってきました。腹水が溜まる原因は、肝臓が作るアルブミンが減って、膠質浸透圧が下がることと門脈圧の亢進による消化管のうっ血によると同時に静脈系のうっ血による循環血漿量の低下により腎血流の減少などがあります。
治療としては、分枝鎖アミノ酸は肝臓ではほとんど代謝を受けずに筋肉で代謝され、アルブミンを増やします。レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が亢進しているので、抗アルドステロン剤とループ利尿剤(サイアザイドも)を併用します。利尿剤が効果がない場合は、腹水穿刺をして1〜2L(パンパンに張っていると5〜6Lはあるので心配ない)抜いてあげると一時しのぎにはなります。繰り返して、コントロール困難な場合は、腹水濃縮再静注や腹膜ー静脈シャント、肝臓内で門脈と静脈を直接結ぶTIPSなどが行われています。

「日常生活では感染しません」と言い切ることが大切です。

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70歳のお祖父ちゃんが、健診で肝炎がみつかって、インターフェロン治療を希望されて、外来に来られました。検査をしても肝炎ウイルスがいる以外は全く正常で、インターフェロン治療の必要はありませんといくら説明しても、どうしてもインターフェロン治療をしてほしいと言って聞き入れません。どうしてそこまで、インターフェロン治療にこだわるのか詳しく聞いてみると、お祖父ちゃんが涙ながらに訴えます。盆、正月にお孫さんが遊びに来るのが楽しみで楽しみで、いつも遊びに来ると腕の中に飛び込んでくる孫が、お母さんの横でじっとしている。よく見るとお母さんが行かせないように袖を摑んでいるのが見える、どうして? 後で息子に聞いてみると、お祖父ちゃんの肝炎がうつったら困るから。奥さんは、洗濯物は別にしている(なんとなく気持ち悪い)当然、一番風呂に入るのが当たり前だったが、今では遠慮して最後に入っている。もう人生の最後になって、こんな仕打ちを受けるとは、本当にくやしい。なんとかしてほしいという訳だったのです。(奥新ワールドより)

C型肝炎、B型肝炎もほとんどの人は、感染していても一生なにも起こりません。感染した約2割の人が活動性の肝炎になって、肝癌へと進行していきます。そういう意味では、今まで肝機能も異常を言われたことがない、血小板も正常な人を、みんながみんな肝炎ウイルス検査を受けてスクリーニングする意味があるか疑問です。少なくともあらぬ差別?を免れるために、近所の人はもちろん、学校や職場で自分が肝炎を持っていることを公表する必要は全くありません。「肝炎は、うつりますか?」と聞かれたら、キズがあったら・・・歯磨きは・・・等々、あいまいな薀蓄をたれずに「日常生活では感染しません」と言い切ることが、変な誤解を招かないために大切です。(日常診療は、学会の場ではありません)


NASH:ナッシュ

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     病因別にみた肝臓癌による死亡数の経年的推移

青色のB型肝炎の患者さんの数は横ばいです。赤色のC型肝炎もほぼ横ばいですよね。肝がんの原因は、B型とC型で90%を近くを占め、大変重要なことは百も承知の上でのお話しですが、黄色のバーが徐々に増えてきていますよね。これはなんでしょう?昔から肥満の人に、肝がんが多い(1.2倍)糖尿病に肝がんが多い(2倍)などという報告がありました。最近では、メタボリックシンドロームというような病態にも注目があつまっています。

さて、最近の健診や人間ドック受けられて、健康体と判定されている人でもすべてが正常をいうような人はかなり少ないようです。一番、ひっかかっている異常はなんでしょうか?高血圧、高脂血症、糖尿病、骨粗鬆症(膝が痛い、腰が痛いなどの症状)などが比較的たくさん水揚げされますが、昔から一番多いのは、肝機能障害なんです。ちょっと意外でした。γGTPがちょっと高い、GPTがちょっとなど・・・。

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健診で指摘される肝臓病の疾患では、脂肪肝が3/4を占めます。


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脂肪肝のうち、アルコールを飲む人を除外し、非アルコール性の脂肪肝で、成人の10〜30%で1000万人以上と言われています。その中の10〜20%、100万人以上がNASHと推定されます。NASHの確定診断は肝生検(大滴性の脂肪沈着、肝細胞の風船様腫大、肝小葉実質の炎症性細胞浸潤、線維化)が必須とされています。NASHの発がん年齢の中央値は70歳で、半数でAFP、PIVKAが正常範囲内なので、経過観察には画像診断が必要です。

肝臓がんを見つけるために

人間ドックなどの健診において、腹部エコーなどから偶然に見つかるようなことは、本当に稀です。臨床現場では、B型肝炎、C型肝炎(最近では、NASH)をフォローしていて見つけにいく場合がほとんどです。当院では、半年毎に腹部エコーとCTを交互に行い、腫瘍マーカー(AFP/PIVKA-Ⅱ/AFP-L3)の併用による肝細胞癌スクリーニングを行っています。腹部エコーは、無侵襲で手軽に行えるスクリーニング法として肝癌の早期発見に有用ですが、一方で診断能は術者の技量に左右される検査なので、1年に一度は、CT検査で保険をかけています。(バリバリの肝硬変は半年に一度)

肝癌診療ガイドラインのアルゴリズムです。

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肝癌の腫瘍マーカーPIVKA-Ⅱは、肝で合成される凝固活性がない異常プロトロンビンであり、ワーファリンを飲んでいると高値になるので注意が必要です。小肝細胞癌の診断においては2種類以上の腫瘍マーカーを測定することが推奨されています。

3cm以下の肝細胞癌に対して
AFP     20ng/ml以上  感度23.7〜63.7%、特異度は49.1〜83.1%
PIVKA-Ⅱ  40 mAU/ml以上 感度27.6%、特異度94.7〜95.9%
AFP-L3分画 10%以上     感度22.2-33.3%、特異度93.0-93.8%

肝癌のCT検査の基本はdynamic CTによる造影増強パターンによる診断です。肝癌の血流支配は動脈性、肝実質は門脈優位であり、動脈相では肝癌が実質に比べ高吸収、門脈相では肝実質の増強効果がある程度持続するのに対し肝癌からは造影剤のwash outが進むため、肝癌(中分化型)が肝実質よりも低吸収に描出されるのが典型例です。(high → low

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       動脈相                門脈相

肝臓がん以外に、肝臓に見つかった腫瘍性病変の鑑別診断としては、肝血管腫、胆管がん(腫瘤形成型)大腸がんなどの転移性腫瘍などがあります。

肝血管腫の大半が海綿状血管腫であり、大小の血管腔の腫瘍性増殖により限局性肝腫瘤を形成する良性腫瘍です。血管腔には扁平化した内皮細胞が配列し、血管腔内部には新旧の血栓形成、壊死、瘢痕、線維化、石灰化などの変性が伴い、肝血管腫の一部には、動脈門脈短絡(AP シャント)を示すもの、造影早期相から全体が強く濃染するもの、後期相で一部が点状に濃染するもの、後期相まであまり濃染しないものなど非典型的所見への理解が進み、高い確信度をもって肝血管腫を診断することが可能になっています。超音波検査(ドプラ検査)による肝血管腫診断の有用性も報告されていますが、術者の技量や患者の体格に左右される(死角が存在すること)こともあり、スクリーニング検査としての位置づけに留まっています。dynamic CTによる造影増強パターンでは、動脈相で周囲より点状、小結節状に造影され徐々に中心部にその造影効果が広がっていき、門脈相でも造影効果は持続します。

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1980年代後半になり、MRIの普及が進み単純MRIが造影CTよりも優れるとの結果も報告され、造影CT検査では患者被曝が無視できず、血管腫の二次検査にはMRI が推奨されています。MRIでは、多くの血管腫がT2強調像にて強い高信号を呈します。(ガドリニウム造影検査では、辺縁の結節状濃染が経時的に内部に広がるという所見がみられる)

胆管癌(腫瘤形成型)や大腸がんの転移性肝癌などは、腫瘍血管に乏しく、動脈相で腫瘍周辺がリング状に造影され、門脈相で中心部の遅延性造影を辺縁部の洗い出しが認められます。