ウイルス性肝炎

現在、肝炎ウイルスとしてはA型、B型、C型、D型、E型の5種類が知られています。その他にF型、GBV-C型(G型)、TT型(H型)が報告されています。B型肝炎、C型肝炎の一部の患者については、国の責任を認め、患者救済が決まった。エイズにしろ、水俣病にしろ、国の無作為が大きなつけとなって患者さんにのしかかっています。肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、最後の最後になるまで症状が現れません。肝臓癌の最大の原因とされるC型肝炎は、薬で治る時代になってきました。早期発見、早期治療するためには、肝炎ウイルス検査をすることが重要です。
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2007年12月29日

 

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日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人はがんで亡くなると言われています。しかし、人は必ず死ぬのです。死なない人なんていませんよね。順番です。なにかでは死ぬわけで、ただその病気ががんというだけです。なぜ、がんが増えてきたか? それは、長生きするようになったからです。人生50年しか生きられなかった時代では、がんや心筋梗塞などの病気はあまりなかったのです。

その内訳は、男性では肝臓癌は3位、女性では、5位となっています。

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わが国の肝がんによる死亡者数は1975年以降急増しており、2004年には約3万2,000人が死亡しています。

 

肝がんは、地域ごとに死亡率に違いがあり、近畿地方以西で比較的多く、兵庫県と大阪府がトップ争いをしています。

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兵庫県の中でも西播磨地区、特にたつの市は高い死亡率となっています。

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この不名誉な状況の改善するには、どうしたらいいでしょうか?
どのような対策が必要か、いっしょに考えていきましょう。

肝炎ウイルスには、肝細胞を壊すほどの力はありません

上の図では、ウイルス(やアルコール)が肝臓を壊しているような大変怖そうなウイルスが描かれていますが、実際は肝炎ウイルスはひ弱なウイルスで肝細胞を壊すほどの力は持っていません。肝炎ウイルスは肝細胞に感染しても本性を隠しておとなしくして、肝細胞と仲良くしているふりをしています。裏では、虎視眈々と肝癌を作る準備をしていますが、猫をかぶっているのです。免疫細胞は、肝炎ウイルスが、悪さをしないか監視しています。肝炎ウイルスが、不穏な動きをするとリンパ球などの免疫細胞は、肝炎ウイルスが感染した肝細胞自体を丸ごと攻撃して(免疫細胞は、肝炎ウイルス自体を認識・攻撃できません)肝細胞が破壊されて肝炎が起こるわけです。

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GOT
:グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ
GPTグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ

GOTは、アミノ酸のアミノ基を、オキサロ酢酸やα-ケトグルタル酸に転移(トランスアミナーゼ)させて、別のアミノ酸を生成する酵素です。(体に必要なアミノ酸を再合成しています)GPTは、アラニンからグルコースを糖新生する時に必要な酵素です。GOTやGPTは、肝細胞の中あり、肝細胞が肝炎などで破壊された際に血液中に漏れ出して上昇するわけです。(逸脱酵素)GOT、GPTは、肝臓の細胞だけに存在しているわけではなく、いろいろな臓器に含まれています。GOTは、心筋>肝臓>骨格筋>腎臓に多く、GPTは、肝臓≫心筋>骨格筋に多く存在し(GPTは、肝臓の臓器特異性に優れている)これらの組織が、病気で障害されると、血液中のGOT/GPT値で、臓器の障害の程度を推定しているのです。 ちなみに、γGTPはアルコールの摂取に敏感に反応して肝臓でつくられている酵素です。2週間ほど禁酒して値が下がるようならアルコールが原因でしょう。100以上ある人は、精密検査をした方がいいでしょう。アルコール以外の原因としては、お薬やサプリメント、肝炎、肝硬変、肝癌、胆石症、膵がんなどがあります。

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従来は、GOT、GPTといっていましたが、生化学者が名前をかえました。最近ではアメリカ流にそれぞれAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)という呼び方が、国際的な標準になりつつあります。

 

B型肝炎

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B型慢性肝炎は、C型慢性肝炎に比べあまり注目されていませんが、肝臓癌の原因の20%を占める重要な疾患です。現在、我が国ではB型肝炎ウイルスに感染している人は130万人いると推計されています。毎年、6000人の人がB型慢性肝炎からの肝臓癌で亡くなっており、ここ30年間減っていません。最近、新たな発見や新薬の登場でB型肝炎の診断や治療が大きく変わってきています。

国内では1987年より急性B型肝炎報告数の調査が始まりました。1999年の全数把握サーベイランス開始から数年間は年間報告数の減少がみられましたが、近年は毎年約200人程度で停滞傾向にあり、この原因のひとつとして父子感染や兄弟間感染などによる水平感染の増加が考えられます。

B型肝炎

 

我が国のB型慢性肝炎の主な原因は母子感染でしたが、1986年に「HBV母子感染防止事業」が実施されてから若い世代には、感染者が非常に少なくなっていますが、それでも40歳以上では、現在でも1%以上の高い値となっております。

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たつの市の肝炎ウイルス検診でも毎年50名前後のB型肝炎ウイルスの感染者が見つかっています。

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まずは血液検査をしてみましょう。

B型肝炎


B型肝炎ウイルスは、分娩時の垂直感染によって持続感染状態となり、成長にしたがって免疫機能が成熟すると、20〜30歳でウイルスを体から排除するために免疫反応を起こして肝炎を発症します。10~20%の症例ではウイルス増殖抑制がうまくゆかず、肝炎が持続する慢性肝炎となりますが、そのうちの80〜90%はセロコンバ-ジョン(HBe抗原が陰性、HBe抗体が陽性になる状態)を起こして肝炎が沈静化し、臨床的に治癒すると考えられてきました。しかし、B型慢性肝炎はC型慢性肝炎と比べて、病態が多様で複雑であり、慢性肝炎から突然に癌ができたり、臨床的に治癒したと考えていた症例(セロコンバ-ジョン)が気づかないうちに線維化が進行し、肝硬変、肝癌になる症例が少なからずあることがわかってきました。

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C型肝炎

わが国でのC型慢性肝炎の患者さんは、肝炎症状のない持続感染者(キャリア)を含めると150万~200万人いると推測されています。年齢は40歳代以上に多く、C型肝炎ウイルス対策が講じられる以前の輸血などの医療行為による感染が背景にあることを示しています。しかし医療機関で何らかの治療を受けている人は50万人にすぎず、残りの100万~150万人の中には自分がC型肝炎ウイルスに感染していることに気づいていない人もいる可能性があります。

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たつの市の肝炎ウイルス検診でも毎年50名前後のC型肝炎ウイルスの感染者が見つかっています。 B型肝炎ウイルスの感染者とほぼ同等な数が毎年見つかっています。 まずは血液検査をしてみましょう。

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慢性肝炎の経過を説明するためによく見られる図であります。C型慢性肝炎(B型肝炎もほぼ同じ経路)は放っておくと、気がつかないうちに肝硬変へと進み、肝臓癌ができてしまいますよ。ちゃんと調べて治療しましょうというわけです。しかし、ここでよくおこる勘違いは、C型肝炎=肝がん、B型肝炎=肝がんと短絡的に結びつけ、隠れキリシタンを見つけるように、肝炎ウイルス検査をして、見つけたらインターフェロンをというような肝炎ウイルスを目の敵にするようなやり方はいかにも日本人らしい過剰反応であります。実際には、慢性肝炎(B型、C型)のほとんど(8〜9割)はがんにもならず、一生、慢性肝炎のままで終わります。1〜2割だけが肝がんになるわけで、なにも起こらない人まで目くじら立てて追いかけ回す必要もないわけです。インターフェロン治療も楽になったと言っていますが、とてもお金がかかる大変しんどい治療です。僕ならなるべくならしたくありません。1〜2割の肝がんになりそうな人を上手に見つけて専門医に橋渡しするのがプライマリケア医の仕事なんです。

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肝がんの原因の8割がC型肝炎ウイルス由来であると言われています。C型肝炎にかかっているどうかは、血液検査をしてみなければわかりません。


もしHCV抗体が陽性と判定が返ってきたら、現在も体の中にC型肝炎ウイルスがいるのか、もういなくなって治った後なのかを判定するためには、HCV-RNA検査を受ける必要があります。

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血液検査(HCV-RNA検査)で、実際にC型肝炎ウイルスが体の中にいることが確認されれば、C型慢性肝炎という診断されます。

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C型肝炎の原因は、血液を介したものですが、いくら考えても記憶にございませんということも多いようです。
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慢性肝炎の臨床経過を診るために大事が指標は、肝炎などで肝細胞が破壊された際に血液中に漏れ出してくる(逸脱酵素)GOT、GPTと、肝臓の線維化が進むと、脾臓が腫れて、血小板が下がってきます。GPTが15は全く正常、50〜80ぐらいは黄色信号、100ぐらいからちょっと赤信号、300以上になるとなんらかの介入が必要なレベルです。よく肝機能が高いから肝臓が悪いと勘違いされている方がいますが、肝機能が上がっているのは、体が肝炎ウイルスを除外しようとして闘っている結果にすぎません。風邪を引いて熱が出るのと同じです。肝機能異常が何回も繰り返すと言うことは、肝炎ウイルスのたちが悪いということで、インターフェロンによる根本的な治療を考える必要があるかもしれません。風邪も解熱剤を出しても風邪はなおりません。だた、1週間を超えても熱がなかなか下がらないような場合は、たちの悪い病原体の退治を考えなければならないのと同じです。血小板は、肝炎の進行を予測するのには最もいい指標で、13万以下になってくると、画像診断は欠かせません。

 


肝炎ウイルス検査の医療機関における無料受診について 

20歳以上のたつの市民で肝炎ウイルス検査をしたことがない方(職場検診で肝炎ウイルス検査が項目にない方)が対象です。

特に以下のような方々は、HBV検査を受けておくことをおすすめします。
1972年以前に、手術または輸血を受けた方
家族にB型慢性肝疾患(慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌)の患者さんがおられる方
新たに性的な関係をもつ相手ができた方
長期に血液透析を受けている方
妊婦
その他(過去に健康診断等で肝機能検査の異常を指摘されているにもかかわらず、その後肝炎の検査を実施していない方)

 

肝炎治療費の助成について(インターフェロン治療・インターフェロンフリー治療・核酸アナログ製剤治療)

B型肝炎、C型肝炎の早期治療を促進し、肝硬変や肝がんへの進行を未然に防ぐ観点から、抗ウイルス治療(インターフェロン治療、インターフェロンフリー治療及び核酸アナログ製剤治療)にかかる月々の医療費の自己負担額を、各世帯の所得に応じて軽減する事業です。

問い合わせ先 龍野健康福祉事務所 0791-63-5140

 

肝臓の疾患については、姫路日赤 森井先生(肝臓専門医)との連携しています。