インフルエンザ

平成21年5月から、新型インフルエンザで世界中が大騒ぎとなりました。日本においても成田空港での検疫のパーフォーマンスは、国民のパニックを抑えるためには一定の効果があったと思われますが、潜伏期間を考えれば、国内への進入を完全に阻止できないことは、みんなわかっていたのです。そんな中、あえて火中の栗を拾ったのが、神戸の一開業医だったのです。僕などには到底できないことで(ついつい、なんてバカなことをって言ってしまいそうになる)畏敬の念さえ抱かされました。その後の検証で、神戸発のインフルエンザは行政の極端と思われた対策によって収束しており、全国への広がったインフルエンザは、それぞれ別の海外ルートからの進入で蔓延していったことが証明されています。

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            朝日新聞(平成21年5月17日)



インフルエンザは出世頭
インフルエンザも数年前までは風邪症候群の十把一絡げの仲間でした。なぜ、そんなに立派になったのでしょうか?インフルエンザが大勢の人が罹り社会的な影響が強いことや一部の人で重症化する症例があることなども言われていますが、そんなことは以前からわかっていたことで、最大の要因は、インフルエンザに効く薬が作られたことです。インフルエンザを治療することが出来て初めて、風邪症候群から分けて診断する意味があるという訳です。


かぜ症候群
かぜは、正式には「風邪症候群」といい、上気道(鼻腔・咽頭・喉頭)に炎症を起こす病気の総称です。そのほとんどがアデノウイルス・ライノウイルス・インフルエンザウイルスなどのウイルス感染によるものですが、溶連菌などの細菌やクラミジア、マイコプラズマなどによって起こされるものも含み、アレルギー・寒冷など非感染性のものもあります。

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扁桃炎(A群β溶連菌)や肺炎(マイコプラズマ)など一部のものしか抗生剤が効きません。ほとんど(8〜9割)は、ウイルスが原因で、抗生剤が効かない(効かないばかりか副作用が起こりやすい)ことがわかると思います。


かぜの原因の多く(80~90%)はウイルスですが、なんと200種類以上もあり、ウイルスの培養検査をして、ウイルスを同定してもかぜを起こすウイルス(ライノウイルス・アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルスなど)に直接効く薬はなく、また結果がわかる頃には病気も治ってしまうため、日常臨床の場で原因を特定することは行われていません。

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普通感冒

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一般的には、成人で 1~2回 、 学童3~4回 、 幼児5~6回 、乳児で7回、1年間でかぜにかかると言われています。かぜをひいてしまったら、安静、保温、栄養の3原則を守ってなるべく早く治るよう心がけることがもっともよい対応といえます。冬なら、部屋全体を適温に保ち、汗が出たときには、体が冷えないように、肌着を取り換えることも必要です。食事内容は、栄養価の高いものにこしたことはありませんが、何も無理して食べる必要はありません。食欲と嗜好に応じて、食べればよいでしょう。ただ、発汗のため、からだの中の水分が不足がちになるので水分を十分にとるよう心がけることが大事です。



インフルエンザの臨床像

インフルエンザの特徴は、感染力が強く流行しやすいこと、全身症状(倦怠感や食欲不振、関節痛など)が強く、合併症を伴いやすいことなどです。

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インフルエンザウイルスについて

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A型インフルエンザウイルスの表面にはヘマグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)の2種類のタンパク質がウニの棘のように突き出ており、Hは15種類、Nは9種類あり(カモは全種類持っている)人に感染するものでは、H1N1(今回の新型)H3N2(香港かぜ)などに分類される。


インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型に分類されるが、C型は、症状が軽微で普通のかぜと変わらないので、一般的にインフルエンザと言えば、A型とB型を指す。A型は多くの亜型があるが、B型は1種類のみである。

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1918年から全世界と襲ったスペインかぜは2000万人以上の死者を出し、疫病史上有数の大被害となった。その後、アジアかぜ、香港かぜ、ソ連かぜと人類は20世紀に4回の大流行を経験した。

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A型インフルエンザは、毎年マイナーチェンジを繰り返し、数十年単位で流行が続きます。目先が変わるので、毎年のようにインフルエンザに罹ってしまう人もいますが、突然、フルモデルチェンジして全く違うタイプに変わることがあります。これが、新型インフルエンザです。現在、流行しているA型インフルエンザは香港かぜ(H3N2)とソ連かぜ(H1N1)の2種類であるが、香港型は1968年から既に40年以上経過しており、いつフルモデルチェンジしてもおかしくない状態でした。

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1997年に香港で3歳の男の子から新型インフルエンザ(H5N1)が検出され、ニワトリから直接人間に感染したと考えられている。(それまではトリから人間に直接感染することはないと考えられていた)同年17名の患者、5人が死亡した。160万羽のニワトリを殺処分して沈静化した。


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それ以降も、中国、ベトナム、タイ、インドネシアなどでも鳥インフルエンザの人への感染例が報告され、日本でも高病原性の鳥インフルエンザ(H5亜型、H7亜型)が相次いで発生し、鳥インフルエンザが新型インフルエンザとして大流行するのは時間の問題と思われていました。


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しかし、流行したのは、豚インフルエンザでした。2009年4月26日、メキシコにおける豚インフルエンザ事例が報告されて以来、5月16日には神戸で第1号が見つかり、あっという間に世界を席巻しました。


新型インフルエンザウイルスが出来るまで

ちょっと難しいお話しですが、簡単に説明すると、インフルエンザウイルスは普段はカモを中心とした水鳥が持っていますが、それがニワトリに伝染し、一部が突然変異などで高病原性の鳥インフルエンザとなり、ニワトリがたくさん死んだりします。これ自体が、人間にとってすぐに危ないというわけではありませんが、(直接、感染することがあることは1997年の香港の例などでわかりましたが、それが人間同士の間では移りやすいというわけではない)、流行の直前まできているということです。つまり、人間の間でもインフルエンザは流行しており、豚は鳥からも人間からもインフルエンザが移りやすい動物です。豚の体の中で、鳥からもらったインフルエンザウイルスと人間からもらったインフルエンザウイルスが混ざって(遺伝子再集合)人から人へ流行しやすいインフルエンザウイルスができることがあります。これが今回起こったのです。古典的豚インフルエンザウイルス(1918年に流行したスペインかぜと抗原性が似ている)が遺伝子再集合を繰り返した結果、パンデミック(世界的な大流行)を起こしました。その他の出来方として、人の中で遺伝子再集合が起こったり、突然変異すると新型インフルエンザができる可能性があります。

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インフルエンザの診断

インフルエンザの症状の特徴は、全身症状が強く表れることです。普通の風邪は、鼻水や咳、のどの痛みなど上気道を中心とした局所の症状が主で、熱も微熱で食事なども普通に食べられることが多いですが、インフルエンザの場合は、それらのかぜ症状に加えて、38.5度以上の発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛や全身倦怠感、食欲不振などが見られます。

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そこで、これはインフルエンザかなと思う症例に、インフルエンザウイルス迅速診断キットで検査をすると、5〜15分ぐらいでインフルエンザかどうかを判定できる。
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インフルエンザウイルス迅速診断キット

インフルエンザウイルス迅速診断キット」は、最初しか必要ないのです。インフルエンザが流行るまでは、診断するために有用かもしれませんが、一旦、流行ってしまうと、典型的なインフルエンザ様症状を有する場合は、ほとんどがインフルエンザです。当院では、インフルエンザウイルス迅速診断キットで診断する必要ないと説明しています。検査しなくても、抗インフルエンザ薬を希望される方には処方します。こんな症例に、インフルエンザウイルス迅速診断キットを使って、陽性にでるのはあたりまえでしょう。もし陰性に出たらあなたはどうしますか?陰性に出てもインフルエンザの可能性が高いのです。まずは、感度は100%ではありません。原因は、時間が早すぎたのかもしれません。手技的なことかもしれません。陰性と判定されても抗インフルエンザ薬を飲むんだったら、臨床診断でも十分でしょう。インフルエンザウイルス迅速診断キットも3000円もするんですよ。 もし、陰性にでたら、抗インフルエンザ薬を飲まないで、普通の風邪薬を飲みたいというのであれば、検査をする意味はあるかもしれません。別に風邪薬でも1日長く寝ていたら治りますから。


インフルエンザの治療薬

A型にもB型にも有効なノイラミニダーゼ阻害薬で、インフルエンザを感染した細胞に封じ込めて増殖を阻止するお薬です。48時間以内に内服が必要です。

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   タミフル 5日分        リレンザ 5日分
   1日2回 飲み薬         1日2回 吸入薬

タミフルは「異常行動が起こる」として、原則として10代は使用禁止になっています。

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純日本製の抗インフルエンザ薬がいよいよ登場です。今年の供給量は、400万人分と少ないようですが、やっと薬がない、輸入がどうこうという心配がなくなりました。1日1回だけの投薬で、タミフルやリレンザの5日間分に相当する効果が得られるということで、吸入ですが、薬局で薬剤師の目の前で指導しながら吸入できるので失敗も少なく、確実なのもいいようです。

   イナビル 1日分
   1日1回 吸入薬


大人の歴とした厚生行政を期待したい

確かに、インフルエンザに効くお薬ができたことは、喜ばしいことですが、世界のタミフルの8割を日本が買い占めていることを異様なことだと感じませんか(まぐろを世界の8割消費しているのとは、ちょっと違う?)いくら欲しくても駄々っ子ではないんですから、ちょっと恥ずかしいなと思うのは僕だけでしょうか。(先進国で、インフルエンザを治療する余裕があり、皆保険制度で、直ぐに診断できるということを差し引いても)自分だけ良ければいいんでしょうか。別に人助けが大好きなわけでもありませんし、格好つけている訳ではありません。昔の日本人って、もっと覚悟ができていて、節度あるというか、慎ましい民族ではなかったでしょうか。エイズやSIRSやエボラ出血熱など恐ろしいウイルスならいざ知らず、数年前までは、このようなお薬がなくても、そんなにパニックにならずに、インフルエンザをやり過ごしていたのです。タミフルやリレンザの実力は、発熱期間を24時間、短くするぐらいのことです。まあ、インフルエンザに罹った時ぐらい、ちょっとゆっくり休むぐらいの心の持ちようが大事ではないでしょうか? 新型インフルエンザの本来の怖さというのは、免疫を持っている人がいないので感染が止めどとなく広がることで、社会システムが破綻してしまうことです。いろいりな会社が閉まって、経済活動がストップしてたくさんの人が巻き添えを食らいます。病院に患者さんが殺到して、医師がバタバタと罹ると治療する人がいなくなったら困ります。電気、ガス、水道などのライフラインが止まっても困ります。警察や消防など治安や安全に不安が起きても困ります。あまり押さえ込みすぎてもパンデミックの恐怖は続きます。どうせ罹る人は罹るのです。2000万人ぐらいづつ、5年ぐらいかけて、ソフトランディングする腕前が、厚生行政の腕の見せ所です。



あえて抗インフルエンザ薬を飲まないという選択肢も

タミフルなどのお薬を飲むとどれくらい効果があるのでしょうか?タミフルを発症後24時間以内に飲むと1日早く熱が下がると言われています。それ以上でもそれ以下でもありません。訳あってどうしても1日でも早く治したい、大きな仕事や大学受験でどうしてもインフルエンザを予防したいという方には有効なお薬かも知れませんが、タミフルは、10歳代には禁忌になっている危険?なお薬です。肺炎や脳症など重篤な合併症を予防するわけでもありません。薬の副作用には特に敏感な日本人が、タミフルに関しては、寛容な理由が理解に苦しむところですが、あえて抗インフルエンザ薬を飲まないという選択肢もあってもいいんではないかと思います。

インフルエンザの罹患率と死亡数

インフルエンザは一般的には、小児がたくさん罹り、その他の年齢層では罹患率は低い傾向にあります。しかし、死亡率でみると、青年、壮年層はほとんど死ぬことはありませんが、高齢者で高く、乳幼児にも若干増加を認めます。死亡原因として、高齢者では肺炎、乳幼児では脳症が重要です。

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インフルエンザの合併症について

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通常のインフルエンザでは、1週間ほどで治癒に向かうが、一部の患者さんで様々な合併症を併発し、遷延化、重症化することがある。乳幼児では脳炎、ライ症候群、高齢者においては肺炎の合併頻度が高く、主たる死亡原因になっている。


インフルエンザ脳症について

インフルエンザ脳症」は5歳児以下に多くインフルエンザによる発熱後、0〜2日以内に発症、約3割が死亡し、後遺症が残る確率も高い病気です。発見が遅れがちですが、インフルエンザにかかった小児が、少し変のことをしゃべったり、奇妙な行動が見られるときには、「インフルエンザ脳症」の重要な警戒サインです。脳症は、A香港型に多いとされています。 毎年100人の小児が死亡し、ほぼ同数に後遺症患者さんがでていると推測されます。インフルエンザに罹って、高熱が出た時に解熱剤(熱冷まし)として「アスピリン」や「ボルタレン」を服用すると「ライ症候群」や「インフルエンザ脳症」など最悪、命が危ない合併症を引き起こす可能性が高くなるとされています。解熱剤の使用では、解熱剤の種類に注意すべきです。乳幼児に比較的安全に使用可能なのはアセトアミノフェン(商品名:カロナール、ナパ、アルピニー、アンヒバなど)です。インフルエンザの流行る時期に安易に市販の風邪薬や自宅にあった熱冷ましなどを使うと危険な場合があります。

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超過死亡(肺炎)

インフルエンザが直接の「死因」という死者の数は、年間1000人前後ですが、インフルエンザにかかることによって、元々の病気が悪化してしまい死亡に至るという「超過死亡概念による死者数(ピンク色のグラフ)」は、1万人を超えています。つまり、肺炎を合併して亡くなる高齢者が多いと言うことです。古くから「インフルエンザは老人の最後の灯を消す病気」といわれる所以である。

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インフルエンザの予防

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一般の感染症は、接触感染や飛沫感染が主ですが、インフルエンザは、感染力が強く、飛沫感染だけでなく、一部、空気感染することもあるようです。空気感染が認められるものには、結核や麻疹(はしか)などが代表的な疾患であります。



インフルエンザに限らず、感染症の予防の基本は手洗いとうがいです。家に帰ったら、手を洗って、うがいしましょう。

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             あわあわ手あらいのうた




正しいマスクの付け方

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マスクを着用はしているが鼻や顎を覆っていない人を見かけます。 マスク着用にあたって、鼻口顎を覆うことが一番重要なポイントになります。不織布マスクの中には針金が入っており、自分の鼻の形に合わせて針金を折り曲げ、鼻の両脇の隙間をしっかりとふさいでください。不織布マスクは波状になっており、上下に引き伸ばすことができます。鼻あてを片手で押さえながら、あごを包むようにマスクを下まで伸ばして顔にフィットさせてください。(マスク上部の鼻の部分からの漏れが一番多く、隙間があると飛散しているウイルスや微生物等を吸い込む可能性が高くなります。そのチェック法として、両手でマスクを完全に覆うようにして、ゆっくり息を吐いてみてマスクの周囲から息が漏れなければ正しく装着できているといえます。このようにマスクをより自分にフィットさせるには、自分に合ったサイズのマスクを選ぶことも重要です。「男性用、女性用、子供用」や「L、M、S」とサイズがあります。ので、どれでも一緒と思わないでください。不織布製マスクは原則使い捨てですが、1日1~2枚程度を目安に使用してください。交換時、マスク表面にはウイルスが付着している可能性がありますので、ゴムバンドのみを触ってはずし、マスク表面には触らないように注意しましょう。使い終わったマスクは、ビニール袋に入れ、口を閉じて廃棄してください。マスクを廃棄した後、手にウイルスが付着している可能性がありますので、すぐに手洗いを行ってください。                             

マスクはどれくらい役に立つのか?

昨年の新型インフルエンザの最盛期には、日本中からマスクがなくなってしまいました。石油ショックでトイレットペーパーがなくなったのを思い出しました。街ではマスクをしていない人を見つける方が難しい状況になりました。世界中で新型インフルエンザが猛威をふるいましたが、こんな光景がみられたのは、日本だけのようです。

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マスクって本当に効果があるの?ってことですよね。サージカルマスク( 不織布マスク(織っていない布))4~5μmの粒子を阻止できる、N95マスクは、0.3μmの粒子を阻止できるなど、その効果について云々する報道も見受けられますが、なかなか厳密に証明することは難しいのです。たとえN-95のマスク自体がウイルスが通過しないとしても、実際に使うときには、どんなに密着させて装着しても(苦しく短時間しか付けておられません)マスクと皮膚との間の隙間は、ウイルスの何μというような単位を考えれば、完全に防御することは、どう考えてみても無理なもとは明らかです。常識的に考えれば、電車の中や人混みなど2m以内に人が混み合っている状況では、ある程度の効果は期待出来るかもしれません。しかし、少なくとも屋外では、全く意味がないことは確かだと思います。マスクへの過信は禁物ですが、マスクの役割は、飛沫の侵入を防ぐ他にも、呼吸する空気の湿度を保つ、汚染された手で口や鼻を触るのを防ぐなどがあり、上手に利用したらいいんではないでしょうか。


咳エチケット

咳をしている人がマスクをすることは、効果云々の問題ではなく、エチケットです。鼻や口からのウイルスを含んだ分泌物を撒き散らさないようにする効果などは、ガーゼマスクでも充分に役に立つはずです。
屁理屈は言わずに、当たり前のこととして、社会人の常識として守りたいですよね。

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インフルエンザワクチン(予防接種)の効果について

インフルエンザウイルスの表面にある赤血球凝集素(HA)という糖蛋白に対する免疫が感染防御に中心的な役割を果たしています。しかし、HA蛋白をコードするHA遺伝子には頻繁に突然変異が起こるために、HA蛋白の抗原構造が次々と変化します。従って、インフルエンザワクチンにおいては、常に次のシーズンの流行ウイルスの抗原性を的確に予想し、この流行予測に基づいて適切な抗原性を持つウイルスをワクチン株として選択していかねばなりません。最近では、WHOを中心とした地球レベルでのウイルス監視活動に基づいて、南半球と北半球それぞれに予想される流行株に対応したワクチン株の選定が各シーズン毎に検討されており、抗原性が合わずに、ワクチンが効かなかったという事態はほとんど起こらなくなりました。米国でのワクチンの効果についての報告では、ワクチン接種によって、65歳未満の健常者についてはインフルエンザの発症を70〜90%減らすことができます。また、65歳以上の一般高齢者では肺炎やインフルエンザによる入院を30〜70%減らすことが出来るとされています。老人施設の入居者については、インフルエンザの発症を30〜40%、肺炎やインフルエンザによる入院を50〜60%、死亡する危険を80%、それぞれ減少させることが出来るとされています。このように、インフルエンザワクチンは、高齢者を中心としたハイリスク群において、肺炎などの合併症の発生や入院、死亡といった重篤な健康被害を明らかに減少させる効果が示されています。ここで「有効率75%」などの言葉が使われていますが、 これは、「ワクチン接種者100人のうち75人が発症しない」ということではなく、「ワクチン接種を受けずに発症した人の75%は、接種を受けていれば発症を免れた」ということを意味しています。 インフルエンザワクチンの効果に関しては、 ワクチン接種をしなかった場合におこる危険性をワクチン接種によってどのくらい減らすことが出来るかという相対危険で表わすことが合理的であるとされています。

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無理が通れば道理が引っ込む

インフルエンザに罹ったら、あきらめて家で寝ていましょう。インフルエンザか風邪かはっきりしなかった時代は、少々、熱があっても仕事のほうが大事っていうようなことがまかり通っていましたが、やっと家にいるのが常識になってきました。無理して仕事に出ても「熱が出てるのに、頑張ってるなあ、すごい!」なんて誰も褒めてくれません。

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日本におけるインフルエンザワクチンの歴史

インフルエンザは、感染経験の少ない学童生徒が最もインフルエンザに罹りやすく、彼らが集団生活をする学校がウイルスの主な増幅場所であり、従ってインフルエンザは学童生徒によって学校から社会へと広がっていくという考えがありました。この考えに基づいて、1962年にわが国では,インフルエンザを制圧する目的で、全ての学童生徒を対象としたワクチンの集団接種が開始されました。しかし、実際はインフルエンザの流行は制圧できず、社会全体のインフルエンザ流行を防ぐために学童生徒全員にワクチン接種を強制するのは人権問題であるとの批判や副作用に対する行政対応のまずさなどからワクチン摂取率が急激に低下しました。また、これらの批判とは別に、1980年代後半からインフルエンザなどの感染症は本人の責任で防止に努めるべきであるという個人防衛の考え方が提唱され、1994年の予防接種法の改正に際しては基本的にこの考え方が導入され、インフルエンザワクチンは法律に基づく臨時の定期接種からはずされて任意接種になりました。これは、WHOをはじめ世界各国のワクチン政策とは完全に逆行するものであり、日本のワクチン施策が、他国から大きく遅れをとるお粗末な結果となっています。
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インフルエンザ Q&A

Q1 インフルエンザ予防接種をしたのに、かぜを引いた? 
A1
インフルエンザワクチンはインフルエンザウイルスにしか効果を示しません。「かぜ」の原因となるウイルスは100種類以上もあります。インフルエンザウイルス以外の「かぜ」ウイルスの感染すれば、風邪は引きます。「ワクチンは効かなかった」ということではありません。

Q1 インフルエンザ予防接種はいつしたらいいか?
A1
過去10年間のインフルエンザ流行の軌跡です。毎年、初冬から早春にかけて1000万人規模での大流行を繰り返しています。昨年(平成21年)は5月に新型インフルエンザが、出始め、秋にピークを迎えるという予想外の展開となりました。今年のインフルエンザがどういった流行の仕方をするかは、誰にもわかりませんが、通年通りに流行るとすると、来年の1月〜2月がピークとなるので、予防接種をして抗体が産生されるのに3週間ぐらいかかることを考えれば、11月〜12月中旬までにすれば、効果は5ヶ月もちます。

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