みずぼうそう

 

 
水ぼうそうワクチン(水痘) 画像の説明
区分 任意
種別
投与経路 皮下注
1回投与量 0.5ml
合計接種回数 2回
標準スケジュール 1回目:1歳

2回目:1回目の3ヶ月後
Catchupスケジュール 1回目:同定し次第すぐに

2回目:7歳未満の場合1回目の3ヶ月後、7歳以上の場合1回目の4週間後
ブースタースケジュール 日本では特に勧告されていない
接種料 1回 7985円

1回目の接種後約3か月たったら2回目を受けるのがしっかりと免疫をつけるために必要です。世界では、2回接種がみずぼうそうワクチンの標準的な受け方です。1回だけの接種では数年以内に約20~50%の人が発症します。ワクチンを接種していると、多くの場合、接種しないで自然感染するよりも軽くすみ、水疱のあとも残りにくくなります。

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水痘ワクチンは、日本で開発され(岡株)1980年代から世界に広がりました。 副反応はほとんどないワクチンですが、多いものは局所のかゆみと発赤です。接種後1〜3週間後に発熱や発疹がでることがまれにあります。水ぼうそうワクチンは任意接種で受ける方が少なく、伝染力も強いので、地域で流行している時や保育園に入園するなどいつどこで感染するかわかない場合は1歳前でも早めに接種するようにしましょう。

みずぼうそう(水痘)(五類感染症(定点把握) 第二種)
好発年齢    1〜3歳
潜伏期間    14〜16日
伝搬可能期間  発疹出現1~2日前から水疱が痂皮化するまでの7~10日程度、伝染
力があるとされる
出席停止の期間 すべての発疹が痂皮化するまで

水痘(みずぼうそう)は、ウイルスを含有する飛沫もしくは飛沫核による空気感染、あるいは痂皮になってない皮膚症状からの接触感染もありえます。人から人への水痘の感染はたいへん起こりやすく、家族の一員が水痘に感染した場合には、家族の内(水痘に対する免疫がない人)の約90%が感染すると言われています。水痘は、生まれたときからかかる可能性がありますが、母親からの免疫で生後6か月までは水痘にかかりにくい児もいます。

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みずぼうそうは、1〜3歳に多く、以後発生は減少します。乳児では6ヶ月以降に増えてきます。少ないですが、20歳以上の報告もあります。

 
 

水痘

 

もらってラッキー?

母親A「保育園でみずぼうそうが流行っているらしいわね」
母親B「あら、うちの子まだ罹ってないわ。どうしましょう」
母親C「早く病院に行って、ワクチン打ってもらいなさいよ」
母親B「ワクチンって?いくらなの?」
母親C「8000円だったかしら」
母親B「結構、高いんですね。どうしようかしら」
母親A「うちの子は、先月、Dちゃんからもらってよかったわ」

なかなかワクチン接種の道は険しい・・・ようです

たしかに水ぼうそうは、幼稚園ぐらいで罹った場合は、合併症も稀で軽くてすむ場合が多いかもしれませんが、症例によっては水疱が数え切れないぐらい多数になり、熱も40℃を越す子供もいます。致死率は、大人で高く(10万人対で30人)、次いで乳児(10万人対で7人)1〜19歳(10万人対で1〜1.5人の死亡)と報告されています。日本でのデータはありませんが、4000〜5000人に1人は水痘脳炎になり、30〜50人ぐらいは亡くなっている勘定になります。決して「水ぼうそうをもらってラッキー」という病気ではないのです。

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2歳男児が、ヘルニアの手術で入院。(水痘ワクチンの接種歴は1回で、入院前の3週間で水痘の曝露歴はなし。水痘の発症リスクは非常に小さいと考えられる)ところが、入院翌日に体幹に皮疹が発見され、PCR検査で水痘の確定診断となる。こういったすり抜けて入院してくる水痘感染児は予測のしようがありません。水痘は、発疹が現れる48時間前から感染性があるので、そこまでさかのぼって病棟内の曝露者を確認し、水痘の免疫がない小児が曝露していたら、ワクチンを緊急接種しなければなりません。小児病棟には、白血病や悪性腫瘍、腎炎などで大量のステロイドホルモンを服用しているお友達がたくさん入院しています。ワクチンを接種できない小児にはアシクロビルを予防内服させ、重度免疫が低下している小児には、γグロブリンを投与して発症しないことを祈るしかありません。東京都立小児総合医療センターでは、こうした水痘による病棟閉鎖を年間に10回近く余儀なくされているわけです。(水痘ワクチンの接種を呼びかけるポスターのモデルさんに協力とのこと 日経メディカル 2012/2/14)

女の子の場合などには、顔に水ぼうそうの痕が残り、本人は、思春期以降、気になるようになります。その後の化粧代を考えれば予防接種代なんでしれたものですよ。キメの細かい肌へは、先行投資が大事なのです。

 



症状

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大部分のこどもにとって発疹の出現が水痘の一番最初の症状です。水痘の発疹は頭皮部分に最初に出現する場合が多く、ついで、体幹部、最後に四肢に出現します。体幹部に最も密に出現します(発疹が少ない場合には、体幹部上部にのみの場合が多い)発疹は、赤い斑点から赤い丘疹、さらには水疱へと変化します。発疹は、透明な液体を中に含んだ数mmの水疱となります(水泡の中に水痘のウイルスがいます。一部、膿疱)水疱は破れて、乾燥してかさぶたになります。5日目ほどで新しい発疹は出現し終えます。経過は1週間ほどですが、発疹のいろいろな段階が混在しています。発疹の数は個人差があり、数ヶ所の水疱の人もいれば、500ヶ所以上の人もいます(平均200〜300ヶ所、家庭内二次感染では2倍)のどの水疱が破れると、飲食時に痛みを訴える場合もあります。他の人への水痘の感染は、最初の発疹が出現する1〜2日前から全部の水疱がかさぶたとなるまでの間に起こります。水痘の潜伏期は、10〜21日(平均14日)大人の場合は、しばしば発疹の出現の1〜3日前から、発熱(70%)頭痛・気分不快を伴います。水痘の合併症としては、患児が汚れた手で患部をひっかくことで水疱の細菌による感染が起こる場合があります。(重症のA群β溶連菌感染症を引き起こすことがあります)また、肺炎、脳炎あるいは死亡することもあります。水痘にかかったら、職場や学校を休んで、通院以外は外出を控えましょう。学校保健法の登校基準では、「すべての発疹が痂皮化するまで出席停止とする。ただし、病状により伝染のおそれがないと認められたときはこの限りではない。」となっています。


お薬(アシクロビル)投与について

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健康な小児の水ぼうそうにお薬を使うかどうかは議論のあるところで、どうしても使わなければいけないというものでもありません。家族内感染の場合は、効果のあるタイミングは既に過ぎている可能性が高いこと、発熱期間や痂皮化促進効果はそれほどないことなど。私のスタンスとしては48時間以内で、家族内の二次感染、7ヶ月〜1歳、7歳以上については、投与を勧める目安にしており、それ以外の子供さんは原則としてはなにもしないで様子を見ております。しかし、保護者が投薬を希望されるばあいにはこの限りではありません。



水ぼうそうの発症阻止について

水ぼうそう患者に接触した時に、発症を阻止する方法として水痘ワクチンの接種する方法とアシクロビルを内服する方法があります。一般的には、水痘に感染の機会があってから72時間(3日)以内に水痘ワクチンを接種すれば、70〜100%で水痘の発病を防止できるとされています。しかし、現実的には、保育園や幼稚園で流行している様な場合は、OKですが、家族内感染(発病2日前から感染源)の場合は気がついた時点でワクチン接種の時期は逸していることが多いと思います。接触後1週間してからアシクロビルを予防投与する方法がありますが、まだまだデータの集積が少ない感は否めません。実際には、阻止に失敗して水ぼうそうが軽く発症した時はいいのですが、発症しなかった時には、感染したかどうかがわかりにくいことが返って悩ましいことになります。水痘抗原による比内反応や抗体の動きなどを追えばいいのですが、なかなかそこまでしませんよね。やはり、当院のスタンスとしては様子を見て、水ぼうそうが発症してから対応した方が、わかりやすく説明できるような感じです。どれがいいかは、家族のご希望に沿った方向で。



ライ症候群

ライ症候群は、水痘及びインフルエンザの急性期に鎮痛解熱剤のアスピリンを服用していたこどもたちに多く見られます。ライ症候群は、原因は不明ですが5〜16歳が大部分で最初の発疹の出現から3〜8日後に嘔吐から始まり、昏睡にいたり、致死率は20〜30%、生存者では脳障害が残ります。感冒薬の中にアスピリンが含まれている場合もあるので注意しましょう。


水ぼうそうと妊娠

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妊娠中の女性が、妊娠28週以前に水痘に罹患した場合、先天性水痘症候群として、低体重出生児、四肢の形成不全、皮膚瘢痕、部分的筋肉萎縮、脳炎、小頭症、白内障等の児の異常を生じることがありますが、発生頻度は2%以下です。
母親(妊産婦)が出産の5日前から2日後までに水痘を発病した場合、生まれた赤ちゃん(新生児)の17-30%で重症の新生児の水痘が見られます。この重症の新生児の水痘では、致死率は20-30%です。出産間際の感染では、母体が水痘の抗体を産生し胎児に伝えるのに十分な時間がないため、新生児は重症になりやすいと考えられます。
ワクチンを接種する場合は、妊婦は出産後に受けて下さい。また、接種後2ヶ月は避妊して下さい。

 

 

水ぼうそうと帯状疱疹の関係は?

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水ぼうそうと帯状疱疹の原因は、同じウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)によって起こります。最初にこのウイルスに感染した時は、帯状疱疹ではなく、水ぼうそうとして発症します。だからほとんどの場合は、水ぼうそうになるのは子どもの頃です。しかし、治ったあとも水ぼうそうのウイルスは完全に体から排除されるわけではなく「神経節」と呼ばれる、背骨の近くにある神経細胞の集まっているところに潜んでいます。しかし、免疫さんが、そのウイルスを見張っているため、症状が出ることはありません。しかし、加齢、ストレス、疲労などにより免疫力が弱まると、潜んでいたウイルスが、神経節の神経に沿って皮膚への攻撃によって水ぶくれなどのブツブツが現れ、神経への攻撃によって強い痛みが起こります。これが帯状疱疹です。

 

帯状疱疹の症状

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水痘の病原体は、varicella-zoster virus (VZV:水痘−帯状疱疹ウイルス)です。VZVは水痘と帯状疱疹との二つの病気に関わるウイルスです。ヘルペスウイルスの仲間は、感染後に体内で潜在感染を続けることが知られています。水痘は、水痘が治った後も、感覚に関与する神経節に休眠状態で存在します。免疫力が落ちたときには、VZVの再活性化し、帯状疱疹として発病します。アメリカでは、一生涯の間に帯状疱疹になる確率は32%と推計されています。帯状疱疹の第一番目の症状は、痛みで軽いかゆみ、ひりひりした痛みあるいは強い痛みの場合もあります。VZVが潜伏していた神経節でVZVが再活性化することによって神経が傷害され起こります。70-80%の患者で痛みが皮膚病変に先行して、後に出現する皮膚病変の部位で痛みが出現します。痛みが出現して5日以内に、痛みの部位の皮膚の発赤・腫脹と透明な水疱が出現します。病変は体の片側にとどまり、体の正中線は超えません。通常2〜4日間新しい水疱が出現し続け、14日以内に水疱は膿疱となり堅く乾燥します。また、帯状疱疹が治った後も、神経痛が残ることもあり帯状疱疹後神経痛(PHN:postherpetic neuralgia)と呼ばれます。帯状疱疹後神経痛は、数ヶ月から数年続くこともあります。皮膚病変が出始めてから72時間以内に有効な抗ヘルペスウイルス薬の投与を開始できれば、症状を緩和したり有症状期間を短縮する効果は大きいと考えられています。帯状疱疹を発病する小児は少ないですが、胎児や乳児のときにVZVに感染したことがある小児などで、帯状疱疹の発病が見られることがあります。

 



特殊な帯状疱疹

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帯状疱疹における神経の傷害は、感覚に関わる神経の傷害が主ですが、筋肉の運動麻痺なども見られることがあります。外耳道の感覚や表情筋の動きにも関わる顔面神経(第7脳神経)の神経節である膝神経節に潜在するVZVが再活性化して顔面神経麻痺を起こす場合もあると考えられています。顔面神経麻痺の内、耳介後部の痛みの出現の数時間後に片側の顔面の表情筋の麻痺が出現するベル麻痺(Bell’s palsy)については、単純ヘルペスウイルスやVZVの再活性化によるものも含まれていると考えられています。なお、ベル麻痺の回復過程において、傷害された顔面神経の神経線維の再生に誤りを生じ、顔面上部の表情筋を支配する神経線維が顔面下部の表情筋を支配したり、唾液分泌を支配する神経線維が涙腺分泌を支配したりするようなことが起こることがあります。また、近接の内耳神経(第8脳神経)をも傷害し、外耳道や耳介に水疱が出現した場合には、ラムゼー・ハント症候群(Ramsay Hunt syndrome)と呼ばれます。片側の顔面の表情筋の麻痺、めまい・難聴なども見られます。

 



大人の水ぼうそう

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驚いたことに、大人の水ぼうそうは保険適応がない?・・・。平成19年10月から、成人の水痘に対して「バルトレックス」が保険適応になりました。水痘も帯状疱疹も二度かかることがあり得ます。アメリカの統計では4.5〜13.3%(水痘)と報告されています。1回目の水痘の罹患が生後12か月未満などまだ小さい時であったり、水痘の症状が軽かったり、家族に水痘を二度発病した者がいるような場合には、水痘を二度がかりがより起こりやすいようです。

 
 



帯状疱疹予防のための水痘ワクチン

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帯状疱疹は、免疫が弱まると発症する病気なので、体力が低下してくる50歳代以上の方に多くみられます。(一生のうち6~7人に1人)また、ストレスや疲労などの多い20~30歳代の若い患者さんも珍しくありません。(水ぼうそうにかかってから20年くらいすると水ぼうそうの免疫も低下してくるため)

 
 



1998年、60歳以上の約4万人を対象としたランダム化試験が米国で行われ、帯状疱疹発症が51%、帯状疱疹後神経痛が67%減少させたことが報告された。日本でも50歳以上の127例に接種し、その有効性が認められ、2004年から高齢者への接種も可能になった。しかし、添付文書の適応欄には「本剤は、水痘の予防に使用する」としか書かれておらず、混乱を招いている。ただ、用法および用量に関連する接種上の注意として、接種対象者のところに、水痘ウイルスに対する免疫能が低下した高齢者として記載されている。当院では、80歳以上になると帯状疱疹の発症も少なくなり、水痘の予防接種をしても抗体産生が悪いとの報告もあるので、50〜60歳のあたりの元気な高齢者には勧めている。

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