かぜ症候群

「高がかぜ、然れどかぜ」

風神雷神

プライマリ・ケアを担う診療所に来る患者さんは、なにを訴えて受診されるのが多いのでしょうか? 一番多いのはやはり、かぜ症状です。個人的にかぜが好きが嫌いかは別問題として、かぜを上手に診なければ、よろず診療所は始まりません。上気道炎の症状である「咳」「くしゃみ」「鼻づまり」「鼻汁」「喉がいがらっぽい」などの症状で受診される患者さんが上位を占めています。勤務医時代は、かぜと言えば、PL顆粒と鎮痛解熱剤を処方することしか知りませんでした。放っておいても勝手に治る病気だし、上手に治す必要性も感じておりませんでした。所詮は、対症療法なので(咳には咳止め、鼻水には抗ヒスタミン剤、痛み、熱には消炎鎮痛剤)わざわざ、病院に行く必要はないのです。薬局で、市販薬を買って飲んでもほとんどの場合は大差がないのだ・・・と不遜にも考えておりました。

よろず診療所の初診時の愁訴は、

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  1位 咳
  2位 発熱
  3位 くしゃみ・鼻水
  4位 喉の痛み
  5位 頭痛
  6位 膝痛
  7位 腰背部痛
  8位 発疹・湿疹
  9位 全身倦怠感
 10位 胃の痛み

しかし、「高がかぜ、然れどかぜ」なのです。慢性疾患でかかっている人は、ついでという感じが多いでしょうが、いつもなら様子をみる、薬局で薬を買うという人が「咳」「鼻汁」「喉が痛い」などのかぜ症状で、仕事を休んでまで、医療機関を受診したとういう場合は、それなりにいつもと違うなにかあるかもしれません。かぜ症状で受診された初診の患者さんのうち、風邪症候群が50.7%。風邪と思っても風邪ではなく、31.4%が呼吸器感染症、6.4%がその他の感染症、11.4%が不明とされています。実は、かぜの診療というのは、風邪薬を出すことではありません。患者さんが風邪?って思っていても(僕も風邪だと思って、実は・・・と冷や汗をかいたことも)たけしの本当は怖い家庭の医学ではないですが、心筋炎?心内膜炎?急性肝炎?急性糸球体腎炎?キランバレー?等々、普通のかぜとして治療をして本当に問題はないかなあ?っとちょっと考える、実は怖い病気がかくれていないかを見落とさないようにすることが本当の仕事なのです。

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さて、頭の中でサーと除外してから、風邪と診断しても、判子で押したような処方をしたのでは、毎日がおもしろくありません。当院では、風邪症候群に対しては、基本的には、漢方薬を処方しています。そうすると、証を決めるために、一通りの問診、診察の上、脈を診て、舌を診て、お腹まで診ることもあります。患者さんも高が風邪でよく診てもらったと喜んでくれ、僕の方も然れどかぜで両方にハッピーな時間となるのです。そんなことをしながら、風邪診療のモチベーションを保つようにしております。そうは言っても漢方の嫌いな人には錠剤を出しますので心配ご無用。当然、咽頭・扁桃炎、肺炎には抗生剤も考慮します・・・。



ごちゃまぜ、かぜ症候群

かぜは、正式?には「風邪症候群」といい、上気道(鼻腔・咽頭・喉頭)に炎症を起こす病気の総称です。そのほとんどがアデノウイルス・ライノウイルス・インフルエンザウイルスなどのウイルス感染によるものですが、溶連菌などの細菌やクラミジア、マイコプラズマなどによって起こされるものも含み、アレルギー・寒冷など非感染性のものもあります。

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かぜの原因の多く(80~90%)はウイルスですが、なんと200種類以上もあり、ウイルスの培養検査をして、ウイルスを同定してもかぜを起こすウイルス(ライノウイルス・アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルスなど)に直接効く薬はなく、また結果がわかる頃には病気も治ってしまうため、日常臨床の場で原因を特定することは、一般的には行われていません。

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最もポピュラーな普通感冒
一般的には、成人で 1~2回 、 学童3~4回 、 幼児5~6回 、乳児で7回、1年間でかぜにかかると言われています。かぜをひいてしまったら、安静、保温、栄養の3原則を守ってなるべく早く治るよう心がけることがもっともよい対応といえます。冬なら、部屋全体を適温に保ち、汗が出たときには、体が冷えないように、肌着を取り換えることも必要です。食事内容は、栄養価の高いものにこしたことはありませんが、何も無理して食べる必要はありません。食欲と嗜好に応じて、食べればよいでしょう。ただ、発汗のため、からだの中の水分が不足がちになるので水分を十分にとるよう心がけることが大事です。


咽頭炎・扁桃炎

新宮422

2歳 女児
喉を見ると扁桃腺に膿がついています。熱は38.5℃。さて、なんでしょうか?

いろいろと考えられるんですよね。A群β溶連菌?アデノ?はたまたEBウイルス?・・・とりあえずは、主な3つぐらいは考えるんですが。他にも、インフルエンザ?コクサッキー?エコー?突発性発疹?ヘルペス?ヘルパンギーナ?手足口病?・・・。小児科の教科書を読むとプロ?は見分けられるというようなニュアンスの著者もいます。咽頭所見の「アトラスさくま」というバイブルもあるようです。しかし、僕ら内科医にはなかなか難しい芸当で、とりあえずは、市場調査?お母さんに、通われている保育園や幼稚園でなにが流行っているかを聞いてみます。地域の人口割合に応じて指定された定点医療機関が、インフルエンザや水痘、手足口病などの流行する感染症については、毎週、何人の患者が来院したかを報告しているものを参考にしたりします。

感染症発生動向調査週報(テレビの視聴率調査のようなもので、兵庫県西播磨地区として公表されています)

A群溶連菌

(答)アデノウイルス(AD5)感染症

典型的には、線状の白苔と言われているようですが、この症例は、べたーとした感じの白苔ですよね。(べたーとした白苔はEBが多い)やはり、ウイルスの扁桃腺の白苔のパターンの鑑別は困難です。チェックAd(感度の高いアデノの迅速検査)で診断がつきますが、治療は変わらないので原則行っていません。アデノの好発年齢は乳幼児で、高熱が続くことが多いので、保護者が心配されて診断を希望されるときに検査しています。いまでも、通称「プール熱」と呼ばれていますが、今の時代、プールで広がるなんて誰も思ってもいないのに、この紛らわしい名前で、何時まで呼び続けられるんですかね。


溶連菌感染症

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熱が高く、激しい咽頭痛があり、のどを見ると扁桃腺の白苔の所見での鑑別はなかなか難しいのですが、軟口蓋が赤く(口蓋垂が赤い)ブツブツしていて点状出血が見られる場合は、溶連菌が疑われます。クイックビュー( A群β溶連菌の迅速検査)は、感度はちょっと低いのですが、陽性にでれば、自信を持って抗生剤を出せますよね。 A群β溶連菌は、リウマチ熱(将来に心臓弁膜症の原因になる)の合併を予防するために除菌を目的として重要なのです。当院では、教科書通りに、ベンジルペニシリン10日間(100%感受性あり)投与を行っていますが、なかなか10日も飲めないとのお話しで、セフェムやマクロライドの5日間で代用するケースもあるようです。

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溶連菌の好発年齢は、3歳以上の小児で、突然の発熱を認め、無治療でも3〜5日で自然軽快します。(猩紅熱は、その後、全身に皮疹が出る病気です)


EBウイルス感染症

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典型的には、べたーとした感じの白苔と言われます。EBウイルス感染症にアモキシシリンを投与すると、発疹が出ることがあるので(30歳以上では稀)気をつけなければなりません。咽頭所見だけで鑑別は困難ですが、EBウイルス感染症は、EBウイルスは、幼少時に感染するとほとんどが、不顕性感染(症状が表に出ない)か軽い風邪、扁桃炎の症状で終わってしまいますが、大人になってから感染すると発症は緩徐で2〜3日で発症し(溶連菌は突然の発熱)2〜4週間の有症(溶連菌は3〜5日で解熱)未婚の若年青年に好発し(アデノは乳幼児、溶連菌は3歳以上の小児)両側性限局性の上眼瞼浮腫が見られることもあります。前頚部のリンパ節だけでなく、他の部分も腫れていれば、EBウイルスの可能性も高くなります。抗生剤が効かない場合は、他のウイルス(ヘルペスなど)以外にも、クラミジア、淋菌なども考えられるかも知れません。なかなか奥が深い、悩める咽頭炎、扁桃炎なんです。血液検査でもそれらしい所見(肝機能異常)が見られるかもしれません。

診断には、 VCA-IgGEBNAの測定が有用です。既感染となると幼少時に感染していることになり、終生免疫として今後もEBウイルスにかかることはないわけですが、未感染となると、今後も扁桃炎になる度に、EBウイルスも鑑別にいれないといけなくなりますよね。

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VCA-IgM(viral capsid antigen)は、感度が低い。
VCA-IgGは、有症期までには100%陽性になる。

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 慢性扁桃炎
 急性扁桃炎を年に3〜4回繰り返すようになると、習慣性扁桃炎または反復性扁桃炎と呼びます。小児期に多く、小学校入学前にピークとなります。急性扁桃炎と同じ症状で、咽頭痛、嚥下痛、発熱、全身倦怠感、耳への放散痛などが見られます。口蓋扁桃は赤くはれ、白い塊(膿栓)が付着します。頸部のリンパ節が腫大して痛みを伴うことがあります。扁桃は免疫器官であるので、むやみに摘出するものではありませんが、繰り返す扁桃炎(概ね年間、5〜6回以上の罹患)で、学校生活の質に影響するようであれば、免疫の成熟の10歳以上を目処に積極的に扁桃摘出術を考慮したほうがよいでしょう。

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慢性扁桃炎のもうひとつの病型として、扁桃病巣感染症があります。扁桃自体の症状はほとんどないか、または軽度の咽頭痛、異物感程度にすぎないにもかかわらず、皮膚、腎臓、関節などにさまざまな障害を起こす病態です。 掌蹠膿胞症では、主に手のひらと、足底部にだけ小さな膿疱が多数現れ、赤くなり、皮膚がむけることを繰り返すものです。女性に多くみられます。原因としては、免疫異常、金属アレルギーなどがいわれていますが、IgA腎症は、初期には血尿と浮腫程度しか自覚症状がありません。しかし、長期にみると進行性の病気で20〜40%が腎不全になります。IgA腎症の20〜30%は、扁桃炎に代表される上気道炎を契機に発症し、尿症状の悪化を繰り返します。胸肋鎖骨過形成症では、鎖骨、胸骨、肋骨関節が腫脹し、痛みを伴います。これも女性に多い疾患です。そのほか乾癬、関節リウマチ、微熱も扁桃病巣感染症に含まれます。治療は、病巣感染の原因となっている口蓋扁桃摘出術を行います。手術により、掌蹠膿胞症では皮診の改善、消失が80%以上、胸肋鎖骨過形成症では疼痛改善が81%、IgA腎症では尿蛋白の改善が50%以上にみられます。





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