おたふくかぜ

 
おたふくかぜワクチン
(流行性耳下腺炎)
画像の説明
区分 任意
種別
投与経路 皮下注
1回投与量 0.5ml
合計接種回数 2回
標準スケジュール 1回目:1歳

2回目:3〜6歳
Catchupスケジュール 1回目:同定し次第すぐに

2回目:4週間後
ブースタースケジュール 日本では特に勧告されていない
接種料 1回 6000円



ワクチンを接種した場合に、合併症を起こすことがあります。たとえば、おたふくかぜのワクチン接種を受けると、数千人に1人(0.05%程度)、無菌性髄膜炎(むきんせいずいまくえん)が起きるケースがあります。しかし接種を受けないで自然にかかった場合は、約2〜10%(100人に2〜10人)の患者に無菌性髄膜炎が起こるといわれていて、ワクチンを接種した方が、発生する割合ははるかに少ないのです。また、ワクチンで起こる無菌性髄膜炎は、ふつうはひどくならず、短期間の入院か外来治療で済みます。 ワクチンを接種した時に起こる副反応と、ワクチンを接種しないでその病気にかかった時の危険性をくらべると、ワクチンを接種しないで重症になった時の方が、ずっとこわいといえます。

名称未設定

おたふくかぜは、流行性耳下腺炎とよばれますが、実際は、耳下腺の病気ではなく、 髄膜炎、脳炎、睾丸炎などをおこす全身の内分泌系や中枢神経系に炎症をおこす全身病なのです。右表は、自然感染とワクチンによる障害の比較です。報告により若干の頻度の差はありますが、ワクチンの有用性があきらかです。思春期以降にでは、睾丸炎を併発し(片側なので、不妊症になることは少ない)かなり痛いようです。

 



おたふくかぜ(五類感染症(定点把握) 第二種)
好発年齢    3〜6歳
潜伏期間    16〜18日
伝搬可能期間  ウイルス排泄期間は発症数日前から症状出現9日後までであるが、主たる伝播可能期間は発症2日前から症状出現5日後頃まで
出席停止の期間 耳下腺の腫脹が消失するまで

画像の説明

画像の説明

2~3週間(接触後に3週間経って、発症しなければ移っていない)の潜伏期のあと、発熱・頭痛・耳下腺の腫れで始まります。耳を痛がったり、食事の時に口を開けるのを痛がったりします。ほぼ同時期に両方の耳下腺(耳たぶの前下方から後ろにかけての皮膚)が腫れ、押すと痛むようになります。まず片方が腫れ、2~3日後にもう片方が腫れてきます。(30%は片方だけが腫れます)顎下腺だけが腫れることもあります。約過半数に耳下腺の腫れと同時に38~39℃くらいの発熱が見られます。(熱がなく耳下腺だけが腫れることもあります)3日目くらいが腫れも熱も最大で、 腫れは7〜10日間くらいで治ります。高熱が5日以上続く時、頭痛が強く、何度も吐く時は、髄膜炎の可能性を考えます。食べ物を噛むときに痛みを感じることがあるので、やわらかくのど越しのよいものを食べられるだけ食べましょう。プリン、おかゆ、うどんなどかまなくても良い物がいいでしょう。唾液の分泌を促進するような酸味(すっぱいもの)の強いものは控えたほうがいいでしょう。

 

流行性耳下腺炎


意外に多いムンプス難聴

画像の説明

ムンプス難聴の頻度は、従来15000人に1人と言われていましたが、2003年に厚労省の研究で、 実際は1000人に1人以上の難聴発症が推測されています。ムンプス難聴は、多くの場合、片側の聴力が保たれるために、特に小児では、本人も周囲も気づかないで経過する場合も珍しくない。このため、後に難聴が発見されても、原因不明の感音性難聴を診断され、突発性難聴と診断された中には、ムンブスの不顕性感染も含まれている可能性もあります。ムンプスは、不顕性感染も多く、また耳下腺が腫れる前からウイルスを排出しているため、完全な予防は困難です。日本では、副作用のために1993年にMMRが中止されて以来、この予防接種は任意接種であるが、日本以外の先進諸国では、MMRの2回接種でが世界基準で、ムンプスを制圧しており、我が国においても十分な議論が必要な時期にきている。

 



また、おたふくかぜに罹った?

おたふくかぜが流行し、両側の耳下腺が7〜10日ぐらい腫れたら、診断は容易です。しかし、実際は、軽い症例から、片側しか腫れない症例(3割)全く症状のない不顕性感染症例(3割)まであります。さらに、反復性耳下腺炎(原因はひとつではない)と呼ばれる疾患群もあり(エコーで唾液腺の拡張をみつければ、鑑別可能?)おたふくかぜかどうかの正確な診断はとても難しいのです。おたふくの子供と接触したのに、症状が出なかった場合、「不顕性感染」の可能性もありますが(症状が現れず、知らない間に免疫ができている。免疫があるかどうかは、ELISA/IgG抗体を調べるとわかりますが、検査代もおたふくかぜ予防接種をするのと同じぐらいかかります)もし罹っていたとしても(罹っていなかったとしても)おたふくかぜ予防接種してもブースター効果でより確実な免疫になるだけですから、10歳以上で、とちらかはっきりしない場合は予防接種をしておきましょう。(任意接種なのでお金がかかります)


病原診断
急性期にIgM抗体( ELISA法 )を証明するか、あるいはペア血清で(2週間間をあけた急性期と回復期の2回の血清)で4倍以上のIgG抗体上昇を認めれば感染と判断可能。

画像の説明

REDBOOK2000では、おたふくかぜと風疹は、暴露後接種しても効果は期待出来ないと書かれていますが、実際の臨床の場では、72時間以内では、発症予防できるか軽症になると考えて、接種してもかまわないとする場合が多いようです。もし今回、感染していなくても、接種により免疫を得られればいいわけですから。

 

 

 

おたふくかぜにかかったけんじ君の場合

画像の説明

けんじ君は今年、小学校2年生になる男の子です。春休みが始まった頃、夕食のときに耳が痛いと言い始めました。翌朝になると耳の下も腫れてきました。でも、けんじ君は幼稚園のときに軽くおたふくかぜにかかったことがありました。なんだろうと思って、以前のおたふくかぜのときに診てもらったかかりつけの小児科に行きました。小児科の先生の説明は、幼稚園のときは2日も腫れなかったので、おたふくかぜではなかったと思うということでした。でも今はこの辺で流行っているから、今度こそおたふくかぜだろうということでした。はっきりさせておく方がよいと言われ、血液検査を受けることにしました。また、おたふくかぜで耳が聞こえなくなることもあるので、2週間耳のそばで指をこすって耳の聞こえを確認すること、そして聞こえが悪いようならすぐに連絡するようにと説明され、返事用のはがきも渡されました。4日目くらいから、「左側で聞こえない」ということを言うこともありましたが、ふざけていると思い、そのままにしていました。春休みだったので、その後、小児科には行きませんでした。でも2週間くらいして、やはり左側が聞こえないようだったので、近所の耳鼻科に行きました。聴力検査をしてもらいましたが、「異常なし」ということでしたので、安心して帰ってきました。小児科へは返事のはがきを出していませんでした。新学期になり学校の定期健診で聴力検査がありました。保健の先生は、けんじ君の左側が聞こえていないようなので、校医に連絡を取りました。校医はけんじ君のかかりつけの小児科医でした。小児科医は急いでけんじ君のお母さんに連絡を取り、受診するように言いました。小児科に行くと、内線電話を使って左右の聞こえを調べてもらいましたが、やはり左耳は聞こえていないようでした。小児科で別の耳鼻科を紹介してもらい、聴力検査をしてもらったところ、左は聞えていないということがはっきりしました。耳鼻科の先生は、「おたふくかぜによる難聴なので、治療法はない」と説明しました。お母さんは小児科でけんじ君の左耳が聞こえていないと言われたその日に、妹にはおたふくかぜのワクチンを受けさせました。けんじ君からはうつっていなかったようですが、地域での流行が続いていたからです。その小児科医は、その地域の多くの子どもがワクチンを受けていたら、おたふくかぜの流行は起こらなかったかもしれないと反省し、それからはおたふくかぜワクチンをより積極的に勧めるようになったということです。