「日本人の女性平均寿命 世界一から転落」

かつての事業仕分けで蓮舫さんの「2位じゃダメなんでしょうか」という発言がありました。たしかに、スーパーコンピューターとかいう日本が得意な科学技術の分野では、1番にならないとダメなんでしょうね。特許なども一番の人だけなので、医薬品など外国が特許を持っているものが多く、使えば使うほど高額な医療費が海外に流出しています。しかし、平均寿命は2位でも立派ではないでしょうか?

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2011年の日本人の平均寿命は女性85.90歳、男性79.44歳で、前年比で女性は0.40歳、男性は0.11歳縮んだことが7月26日、厚生労働省が公表した簡易生命表で分かりました。主な国・地域別で、日本人女性の平均寿命は2010年まで26年連続世界一でしたが、11年は香港の86.7歳を下回り2位となりました。厚労省は「多数が死亡した東日本大震災が大きく影響している」と説明されていました。

 
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小学校時代には名探偵、明智小五郎が出てくる江戸川乱歩シリーズを夢中になって読んだものです。つなみに江戸川乱歩(1894年 – 1965年)はアメリカの文豪エドガー・アラン・ポーをもじったものです。乱歩の初期の作品で大正14年に発表された「心理試験」という秀作があります。心理試験というと精神発達遅延や認知症の診断に使う知能検査が頭に浮かびますが、この小説では、捜査の手法として心理試験を用いているわけです。蕗屋清一郎が下宿屋をいとなむ老婆を絞殺した。老婆がためていた大金をねらって・・・。その老婆の説明の下りに「その家のあるじは、官吏の未亡人で、といっても、もう六十に近い老婆だったが、・・・」と書かれている。つまり、大正時代では、50歳代後半では既にお婆さんというわけです。まあ平均年齢が50歳なので、現代の80歳代後半と思えば、当たり前と言えばその通りであります。

 

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人間五十年 下天のうちを比ぶれば 夢幻の如くなり 一度生を得て成せぬ者はあるべきか」これは、幸若舞「敦盛」の一節、信長が桶狭間の合戦に赴くに際して、謡いかつ舞ったとされるものです。

 

戦国時代から1940年頃までほとんど伸びなかった日本人の寿命が、戦後の30年間で30歳近く伸びたわけです。国立長寿医療センター研究所(愛知県)によると、実際の寿命の限界は分からないが、120歳ほどと推測してされています。日本人の寿命はどこまで延びるのでしょうが?一説ではまだまだ、10〜20歳は伸びるという話もあるようですが、貧しい寝食に耐え抜いた肉体と精神を持った戦前の世代が、現代の医学の恩恵を受けて始めて成立した物語で、メタボリックシンドロームと呼ばれる世代、マクドナルドにまみれた子供たちに、そんな未来は待っていない、医学にそんな魔法のような力は存在しないと思っています。


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図を見れば、高所得ほど平均寿命が長く、低所得国ほど平均寿命が短いという一般傾向が認められます。

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「世界で一番いのちの短い国」としてシエラレオネという国が取り上げらえています。ちなみに平均寿命は34歳ということでした。アフリカの子供たちのお腹がぽっこりと出ているのは、栄養失調で低アルブミン血症になり、お腹に腹水が溜まっているからです。昔「世界がもし100人の村だったら」という本がありました。世界全体では、50人は栄養失調に苦しみ、25人は雨露しのぐ家がなく、25人の子供は働いています。17人はきれいな水が飲めません。日本人として生まれたこと(2%)で幸せなんです。

 
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ここで「平均寿命」という言葉の定義について解説を加えておきましょう。素人的には平均寿命というと、例えば、お婆ちゃんは100歳まで生きたけど、孫は生まれてすぐに心臓の病気で亡くなったとすると、平均寿命は、100÷2=50歳です。女性が平均平均寿命で86歳であれば、若くしてがんで亡くなる人もおられるので、人口の半分女性が、95歳当たりまでは普通に生きていなければなりません。実際はどうでしょうか?確かに、老人ホームには90歳以上の高齢者はたくさんおられますが、そこまで生きられる人が人口の半分はいません。つまり、厚生労働省が発表している平均寿命というのは、世界中で同じ基準で計算されているので、全くデタラメな数字をでっち上げているわけでありませんが、一般国民が思っている感覚とは少し違うことは確かです。

 

2010年の女性の平均寿命は86.30歳でした。2010年時点で、当院に高血圧で通院されている80歳のとめさんは、平均年齢まで後6年生られるというのは正しくありません。平均余命という指標で計算します。つまり、とめさんは、いろいろな事故や病気を乗り越えて、80歳まで生き延びた実績があります。つまり、0歳のあかちゃんと条件が違うわけです。80歳の時点で生きている人の平均余命は11.46歳なので(平成10年度)とめさんは、平均91歳までは生きられるということになるわけです。2010年の女性の平均寿命は86.30歳という数字は、2010年時点での0歳児の平均余命ということになります。つまり、2010年におぎゃ〜と生まれた女児は、社会情勢などで大きな変化が無い限り、平均的に86.30歳まで生きられることを意味しています。しかし、本当に86歳まで生きれるかどうかは、未来のことですから、神のみぞ知る、どうにでも水増しできそうというわけです。平均寿命とは、実際の人が生きたことの平均値ではなく、平均余命の期待値に過ぎません。

 

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100歳を超える高齢者の「行方不明」の調査が、全国的に行われているようですが、現時点では、兵庫県が最も多い?(ちゃんと調べたから)と書いてあります。特殊な例外はあるのかもしれませんが、ごく通常の日本人の家族では、身内の高齢者の安否に気遣うはずであり、届け出る子や孫、近親者がいない場合を除けば、亡くなった場合の死亡届は速やかに提出するはずで、生存も安否も判らないまま、また捜索願も出さずに、数年、数十年という長期間に渡って放置するとは先ずあり得ないことのように思われます。また「行方不明」が判明するまでの長期に渡り、当人の存在の有無の確認を怠って、福祉を提供していた当該の地方自治体にも責任があるかもしれません。高齢者手当、年金が目当ての「死亡隠し」の事例があるとすれば、明らかな犯罪です。未だ全数ではないが、100歳以上の高齢者の「行方不明」が1000名を越えたということが、平均寿命に影響を与えるのではということが話題になっていたが、前述したように、平均寿命が0歳児の平均余命ということを考えれば、その数値はほとんど影響を受けません。

 
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なぜ、日本人の平均寿命が世界トップクラスなんでしょうか。最も平均寿命を伸ばした理由は「乳児の死亡率の減少」です。乳児の死亡は寿命0歳ですから、この乳児死亡率が下がるだけで、大人の寿命は延びていなくても平均寿命を押し下げます。大正末期までは、出生が1,000児に対して、150児(15%)も死亡していました。それから、だんだんと低下して行き、戦前には10%以下、1961年には、5.2%、2002年には3%まで減少し、世界のトップクラスになっています。(2010年も3%で世界一)ちなみに乳児は、生後1年未満、新生児とは生後1ヶ月未満の赤ん坊のことです。新生児死亡率は、1000人出産当たりに死亡する人数。日本では、1000人中1人が亡くなります。新生児死亡率の世界平均は、1000人中26人です。(WHO加盟国193カ国)

 

画像の説明新生児死亡率、平均寿命は世界一という影に隠れて、あまり知られていませんが、幼児(1〜4歳)の死亡率は世界21位(人口10万人あたり24.5人)に急落します。その幼児の死因の1位は誤飲や風呂でも溺死など不慮の事故です。重症のあかちゃんの治療を行う新生児集中治療室(NICU)の整備は進んでいますが、小児集中治療室(PICU)を備えた救命救急センターは、全国で2割ほどしかありません。国は、小児救急電話相談窓口を47都道府県に設置して、人口100〜300万人の広域に、PICUを新設するよう動いているようです。

 

 

 
 
 
画像の説明日本は、世界一優秀な医療制度?、国民皆保険制度によって、80%の方が病院でなくなるというお国柄です。病室では、気管切開して、人工呼吸して、高カロリー輸液、胃瘻・・・いわゆるスパゲティー症候群と呼ばれた風景が見られます。本来は、長野県のピンピンコロリ運動ではありませんが、健康寿命で勝負をしないとダメなんじゃないかと思います。(平均寿命と健康寿命は、算出の仕方が全く違うので単純な比較はできないのですが)最近は、医療費の問題もあり、在宅医療(第三の医療)への転換を余儀なくされ、自らの意思で延命治療を希望しないというと表明されるケースも増えてきました。2025年、団塊の世代が後期高齢者の仲間入りする時には、たつの市の高齢化率は32%になるようです。確かに、ない袖は振れないのですが、将来ある小児救急医療にもバランス良くお金を入れるのが政治の役割ではないでしょうか。